2009年 05月 23日
生活とは何か。 本来の意味を確認したくて、漢和辞典を見る。 <生>:草木の芽生え。これが地面にはえて伸びてゆくのが生とある。 <活>:活は水が勢いよく流れる音をいった。形声文字。 草木と水の勢いを表わす言葉が原義である。 普段我々が生活として使うくたびれたイメージとは、真逆の世界である。 生活臭が漂うというような、俯いた視線とは違う。 生(なま)で、生き生き、活き活き。 この<生活>が、社会というシステム化された構造下では、ひしゃげた暗い 感触となって、本来の命の<生活>とは異質のものとなる。 優れて自然的なもの、優れて芸術的なものは、きっとこの<生活>を本来 の意味に復活させる力を保つ。 システム化された社会生活を、<生活>と取り違えたまま 去勢されてはいないか。 命の側に<生活>を取り戻す闘いを放棄し、日常生活、社会生活の枠に 押し込めたまま、公私とかいって振り分けてすませてはいないか。 生(なま)で活き活きした<生活>を、 干物か燻製のように干乾びさせ、解釈していないか。 <生活>をアカデミックでペダンテイックな煙や火で炙り出してはいないか。 干物化し燻製化し化石化する構造的なシステムを、一瞬ぎょっとこじ開け、 解き放つのが芸術・文化の本質力ではないのか。 川俣正のインスタレーシヨンは、日常の生活の隙間を撃つ、 そうした行為であったと今も思う。 古い民家を改造しそこに多くの作家たちが、活き活きとある期間作品を展示し、 繰り返される日々を今送りながら、川俣のインスタレーシヨンは今も続いている ような気がする。 展示もまた、期間限定のインスタレーシヨンだから。 蔦が繁り、野上裕之さんの制作した鉛の看板が鈍く光り、 古民家と作品が一体となって夏冬がある。 いまもあのテトラハウスの時間を、<生活>として生きているのかも知れないと ふっとそう思ったのである。 そして、そうしたシンプルな<生活>を取り戻す為に、随分遠回りして今がある とさえ思えるのだ。 5月は誕生月である。私は自分の誕生月に今立ち会うように、不思議な廻り合せ で、川俣正展を迎えたのかも知れない。 生(なま)に、活き活き、雨模様の今日、草木も水も元気だ。 Yさんの展評の所為か、訪問者が増える。もっと見て感じて欲しい。 あと一週間延期しようか。今年5月はそういう月なのかも知れない。 凝縮し拡散し、溜める時間。 ねえ、佐々木恒雄さん、チQさん、中嶋幸治さん、小林由佳さん、・・・、。 恋しているFさんよ、尾道の野上裕之さんよ。 *川俣正アーカイブ「テトラハウス326」記録展ー5月31日(日)まで。 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2009-05-23 12:45
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Comments(2)
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札幌に居た自分は、なにかに焦っていたようで、「生活」の二字がひどく重苦しく感じられたものです。まわりから「若いうちからガツガツやれ」などと無責任なことを言われ、それに惑い、苦悩の日々。
何も焦ることはなかったのに。 僕は今ようやく生で活き活きですよ。 「過去は未来からやってくる」これはアーティスト多田正美氏の作品のタイトルです、たしか。 草木が繁るように、自分の水脈を見つけられて初めて、アートが理解できるようになるのでしょう。そこが入り口だと感じます。
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nogamiさん>コメントありがとう。嬉しいです。
入口の発見、離れて獲得した未来と過去なのでしょうね。 過去と未来の界(さかい)を今というのかしらね。 いい仕事して下さい。 船大工と表現、その境を燃やして下さいね。 さっぽろでまた、待ってるぜ! |
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