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テンポラリー通信

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2009年 05月 14日

カセットテープ・ノイズー夢の中径(10)

網走に帰った佐々木恒雄さんの置き土産カセットデッキに、
カセットテープを入れて音を聞く。
きゅる、きゅるとテープの回るノイズが聞こえる。
CDにはない雑音が、妙に懐かしく居心地がいい。
かっていろんな音をテープに録音していた。対談、雑談、ダビング。
貰ったテープも随分とある。
これいいよ、とかいって録音してくれたものだ。
ピアソラ、シャルル・アズナブール、矢野顕子、ライブの録音
吉増剛造×大野一雄の対談、福島泰樹絶叫コンサート。
その他なにやら解らないものも随分とある。
きゅる、きゅると、テープの緩みの所為か、なにかどもるように、音を出す。
つい最近まであったものが、もうレトロに感じられ、アナログとなる。
この時間の早さ、保水力のなさは、なんなのだ。
緩み無く、デジタルに世界が構成される時、衛生・安全・秩序の社会は、
時にある暴力的なものに晒される事もある。
自然の猛威やすぐれて芸術的な力が、そうである。
花や青空だけが自然ではないように、
芸術もまた時に暴力的でラデイカルなものだ。
そよ風やさざなみだけが自然ではないように、
心地よいデザイン化されたものだけが美術ではない。
整理され秩序ある都市の街路の地下から溢れる猛々しい水。
暗渠に封印されおとなしく飼育された水の流れが、アスファルトを蹴破って、
姿を顕したように、静かな住宅街に貫板で梱包された仮設空間もまた、
ある種の暴力的猛々しさを保っていた。
このふたつの出来事は、今もきゅる、きゅると、雑音をきしませながら、
私の脳裏に息づいているのだ。
テープの音を発する時の摩擦音。レコードにあった針と盤の擦れる音。
雑音としてカットされ、埋もれ、消去されていった摩擦音。
境(さかい)の軋(きし)み。タッチする、触れる音。
この境界を回復しないで、分離・分類・整理・整頓の境目だけを
容認しつづけて、いいのか。
川俣正の仕事は、都市の中でそうした隙間を不意打ちのように表現として
モノ化した事である。
暗渠化された川が溢れ出るように、都市の隙間が溢れ出るのだ。
それは、間(あいだ)の復権とでもいえるものである。
区別・分断・差別化する境を自立させ、境界の保つ豊かさ・緩さ・その保水力の
再生を意図するものと思える。
間(あいだ)の復権・再生とは、相違するものの復権・再生である。
整理・分類から、ふたつの異なるものの関係性の復権とも思える。
目の皮膚、耳の皮膚、外界と内界の境の存在を顕在化する行為。
きゅる、きゅると回る音のノイズを聞きながら、そんな事を感じている。

*川俣正アーカイブ「テトラハウス326」記録展ー5月12日(火)-24日(日)
 am11時ーpm7時・月曜定休・休廊

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-05-14 12:55 | Comments(0)


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