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テンポラリー通信

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2009年 04月 09日

光の小雪ー歩行の縦軸(8)

60×30cmの天井板材が横4列縦4列床に置かれ、上部一列が壁に立てかけ
られている。吸盤のような突起は削られ、着色されて朝の光に浮かんでいる。
ふっと中原中也の<汚れつちまった悲しみに、今日も小雪の降りかかる>の
詩行を思い出していた。
新建材の一部であろうこの捨てられた規格建材を、丹念に研磨し、色を塗る。
同じサイズのこれら16枚、そして10枚は床から壁に立てかけられている。
さらに南窓際に4枚、少し小さめの正方形のものともう一枚は壁に展示している。
合計30枚の展示である。
ゴミ捨て場に放置されていたこの建材に惹かれ製作した’90年代後半の佐佐木
方斎もまた、この消耗材のようにボロボロの人生の時であったと聞く。
そこから長い閉塞した生活が続く。’80年代の輝けるトップランナーは、その後
世間から姿を消すように遠い記憶の彼方に埋もれていたのだ。
この時期の彼の人生そのものが、この消耗品の建材のように見捨てられた時期
だったのかも知れない。
時の保水力を喪った時間の流れ。過ぎ去る速度のみが進歩・発展のように目まぐ
るしく疾走る。早く、新しく、いつもピカピカの街。遅れること、古いことはすぐ捨てら
れる対象でしかない。そして、今もそのリズムは変わらない。
スピードとニューの象徴がこの新建材という廃棄物である。
豊かさの王国・ランドの代償、それがランドフイル(埋め立て式ゴミ廃棄場)の元を
産む。その処理場を皮肉にも、かって夢の島といったのだ。
死体もまた葬儀を終えれば、一種廃棄物である。同じゾーンにそれがある。
死体の焼却場、犬猫(ペット)の焼却炉、そしてランドフイル。さらに近くのO海水浴
場は、いつのまにかドリームビーチと名付けられている。
この廃棄物3点セットが、物質の豊かさを追い求めた王国・ランドの周囲に散在し
ている。アメリカンドリーム、その物の豊かさへの旺盛な欲望は、排泄物の山を
ランドフイルとして正に’90年代以降の我々の都市生活の内に築いてきたのだ。
ドリーム(夢)といい、ランド(王国)といい、正にこの言葉の真逆の磁場のように、
我々の現在を<汚れちまった悲しみ>として形成している。
佐佐木方斎が’80年代の炎のランナーとして、企画し、出版し、製作した数々の行
為・作品とは対照的な、捨てられ埋め立てられるだけの運命のこの素材を、’90年
代の素材に自らの生き様も含めて表現しようと選択した事を決して軽んじてはなら
ないと私は思う。
貧困の内に見上げた豊かさへの夢(ドリーム)の結果は、現在アメリカ的世界(ラン
ド)の凋落とももにラデイカルな我々の現実でもあるからだ。
このランドとランドフイルの汚れちまった哀しい磁場に、私たちの避けがたい東西と
いう世界の広がりもまた存するのだ。
この一点を基点として見詰めない、いかなるリアルもまた存しない事は自明の現実
と思える。そして東西、トーザイと野放図に広がった物質主義グロバリゼーシヨンの
凋落・限界もまた自明の事と思える。
美術家の眼は、消耗品たる一素材に同時代の軸心を託して表現の礎石を込めたと
、私は今思う。
’70、80年代の純粋抽象「格子群」と同じ構成による配置が、このメタレリーフ展に
はあって、前者の美しい純粋抽象と後者の都市の汚れた廃棄物との対比・相違に
作家の真摯な’90年代以降の生き方を、同時に感じるのは私の思い込みだけであ
ろうか。

*佐佐木方斎展「メタレリーフ」-4月7日(火)-17日(金)
 am11時ーpm7時・月曜定休・休廊

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-04-09 13:05 | Comments(0)


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