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テンポラリー通信

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2009年 03月 20日

顕(あらわ)すー弥生・三月(17)

小林由佳さんが絵を仕上げる。
縦20cm横60cmの細長いリキテックスで描かれた絵画だ。
左端に真っ赤な夕陽のような円い赤。右側は青である。
吹き抜け上部の鴨居の位置に飾る。西側窓の下で夕陽が入る位置だ。
写真家はモノクロームの水溜りに映る揺れる心象を、赤と青の色彩の絵画に
置き換える。何かが動いている。
ジャンルの問題ではない。心の様相である。
場はトランス状態である。場を通して転換・変換していく。
展示することで作家も人も視座を転換し転位していく。
ギヤラリーという函は、閉じ蓋をするbox(箱)ではない。
溜まり、澱み、溢れる函なのだ。
さらに今日以降描き続けるという。何かが必要なのだ。
ただ過去の作品を展示するだけでは収まらない何かである。
ここでも十勝へ立つ前の心が表象されていくだろう。
そして今という人生上の大事な時間が刻印されていく。

沖縄の豊平ヨシオさんから夕刻電話の声が届く。
ブログ読んでますよ、グレン・グールドの事を書いてあったのが嬉しくて・・、と言う。
あれは音の彫刻ですよ。
さらに北を目指し、ロココ的な装飾を削ぎ落とし、モノクロームに単純化した音。
あれは音で削ぎ落とした彫刻なんです。
僕は、百点目を今日仕上げました。誰に見られなくてもいい、
ただ創っていくのです。そんな話だった。
あの美しい南の島に生きる人が北への憧れを、グレン・グールドに託してこんなにも
熱く語るとは思わなかった。
シンプルに生きること、装飾を削ぎ落とし、ひたすらにあること。
そこに北も南もなく、ただただ生きる事への純粋な心情が語られていた。
そう思う。
夏再び会いに行きますからと話し、電話を切った。
グレン・グールドにモノクロームな削ぎ落とした音の彫刻を見る南の人。
モノクロームな写真から色彩へと転換する、今十勝へ立たんとする人。
どちらもが素直な様態なのだ。
色彩溢れる夢のような南の空と海を脳裏に浮かべながら、
豊平さんの哀切な亀裂のある青の作品群を思い出している。
小林さんの蜜柑のような赤い円もまた、哀切な赤い亀裂であるのかも知れない。

さっぽろ・石狩・弥生・三月。
時折吹雪く今日である。

*小林由佳展「ソノサキニシルコト。」-3月17日(火)-27日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*及川恒平フォークライブ「はざまの街にて」-3月29日(日)午後3時~
 入場料3000円・予約2500円。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
    

by kakiten | 2009-03-20 12:21 | Comments(0)


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