閉廊後千葉有造展を見に行く。彼は野上さんの親友である。
ふたりが学生の頃旧テンポラリーで二人展をしている。
その後千葉さんがテンポラリーで個展をして以来の札幌の個展だ。
今回それぞれの個展が重なり、千葉有造展は今週までなので行ける時に行こ
うと野上さん、会場に来ていた中嶋幸治さんも誘い3人で出かけた。
中嶋さんは仕事が早く終ったので夕方から会場にいて、野上さんとは初対面なが
ら気が合うのか、作品が好きなのか、両方だろうけれど色んな話を重ねていた。
野上さんが札幌を出た年齢と中嶋さんが弘前を出た年齢が近かった事も共感を
したようだ。写真家のM夫人が、魚の煮付けとお握り、ワインを差し入れてくれた。
3人で久し振りの家庭料理に舌鼓を打ち、お酒を飲む。絶妙の味付けでお酒が進
んだ。さらに野上さんの母上が届けてくれた大きな鳥のブロイラーをアルミホイル
で包み、ストーブの上で暖め直した。これがまた絶妙な焼き加減で、中嶋さんの
鍋奉行ならぬ炙り奉行の腕が光る。そんないい気持ちで大通りにある地下画廊に
向かう。会場には千葉さんが待っていた。早速作品を拝見する。
デザイン性の高い作品である。売却も目的としていると言う。オフイスの応接室とか
に洒落たインテリアとして置くものといえる。
野上さんの方向性とは大分違う。勿論野上さんの作品もそうした面がない訳では
ないが、それ自体は目的にしていない。創る事と生きる事が濃い関係にある。
その結果が作品となって顕われる。創る過程も含めての展覧会である。
千葉さんの作品展は、出来たものを展示する方が主眼である。見る者と作家の共
有性は、どちらかというと一方通行になる。拝見するということだ。
ビールを奢ってくれたが、なにか落ち着かない。作品を通して自由に話が広がらな
い。ビルの地下2階という閉鎖空間もある。横に喫茶室兼バーもあるようだが、そこ
はそこで声高に喋る人たちがたむろしていて、個展そのものとは関係ないのだ。
作品に囲まれて自然と飲みたい、そう思った。
隣室では女性のヌード写真の展覧会があり、これはこれでまた別世界である。
壁向こうのバー、隣の別展示とそれぞれ異質な空間に囲まれて、千葉さんの会場
で立ち飲みしていたが疲れたので先に失礼した。
私はやはりこうしたビル地下の閉塞空間は苦手である。閉じたサロン的雰囲気には
馴染めないのだ。常時一日中照明だけの暗闇を思うからである。外部を遮断した空
間なのだ。地下を抜け外気を吸い、近くでお蕎麦を食べひとり帰った。
*野上裕之展「i」ー2月17日(火)-3月1日(日)am11時ーpm7時
(月曜定休・休廊)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503