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テンポラリー通信

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2009年 02月 18日

野上裕之展始まるー如月(きさらぎ)の夢(16)

野上裕之展が始まった。横幅3メートル縦幅1・6メートルの板を正面に吊り、
高さ2メートル程巾45センチの板を重ね、その間に溶かした鉛を流し込む。
するとこの巨大な鯛焼きのような装置から、鉛の造型が出来上がる。
重ねた板を取り外すと、地の板には焼け跡が残り、
その部分の模様が壁画のようになる。
剥した鉛の造型は、その都度左側の壁に展示され鉛色のオブジェとして、飾ら
れている。その繰り返しが何度も続けられて、会場に空間が出来上がってくる。
会期中この行為が続けられどんどん作品が増えていく。
型となる板自体が焼き痕を深くしていき、鉛の作品自体も次第にその厚さを増し、
より立体的なものとなっていく。
また地の板の焦げ目も重なり、移動する事で不思議な紋様を壁に形づくってい
く。2004年に展示した作品のさらなる進化、規模を大きくした展示行為である。
これは、野上さんの今までの作品のある集大成と思える。
会期中作品は増殖し続け、最終日まで続くこととなる。
先週までの花の壁とは違い、鉛の融け木を焦がす匂いが立ち込めている。
汗臭く労働の匂いがする。
偶然とはいえこのふたつの壁の位相は、ともに壁が遮断し区別するものとして存在
せず、壁自体が新たな世界の入口として存在している事だ。
日々花で埋められる事で変容した壁、日々溶かした鉛を流れ込まれる事で痕跡
を形にしていく壁。一方私たちの日常にある意識の壁、現実の様々な区別の壁。
それらは、区別・差別・分断の壁として社会的に存在するものである。
国家・人種・性別・貧富に留まらず、日常の私の意識のなかにも忍び込んでいる。
携帯電話という密室、地下鉄やエレベーターという移動の密室。車という密室。
そこには意識の遮断という<彼我>の密室の壁がある。
表現者は、そこをそれぞれの立ち位置それぞれの表現領域から<私・我>に
閉じる意識の壁を個として開こうとする者と私は思う。
現代の多くの局面に存在する閉じる壁ではなく、開かれるようとする新鮮な壁なの
だ。素材は異なりながらも、ふたりの表現者が試みている事は、その壁の位相の
転換であると私は思う。

*野上裕之展「i」-2月17日(火)-22日(日)am11時ーpm7時
 第二期2月24日(火)-3月1日(日)月曜定休・休廊
*佐々木恒雄展ー3月3日(火)-15日(日)
*小林由佳展「ソノサキニシルコト」ー3月17日(火)-22日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-02-18 15:19 | Comments(0)


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