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テンポラリー通信

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2009年 02月 13日

花の壁ー如月(きさらぎ)の夢(12)

正面一面に花の壁が大分出来上がってきた。
真ん中が少し抜けて、白い壁が見えゲートのようである。
ふっとある既視感に囚われていた。
前のスペースの二階の窓を思い出していたのだ。
夏秋蔦が窓の周りを囲み、屋根の向こうの銀杏の木が見え、円山が見えた。
冬は氷柱が下がり、枯れた蔦がその周りにあった。美しい窓だった。
都心のビル街を抜け、この窓の風景と対面した時は嬉しかった。
ビルの中では風景を見ることがなかった。雨も雪も見えず、濡れた傘を持った人
が来て初めてそれと解かるのだ。そんな空間から抜け、この窓を通してさっぽろ
の原風景を感じた。山と樹と空と雪と氷柱と生い茂る蔦、そこに生息する毛虫の
旺盛な食欲すら美しく感じた。その毛虫がいずれ蝶になり飛んでいく事を思った。
蔦は毛虫に葉を食べられても、その後再び葉を繁らせた。秋には赤く紅葉し実を
結んだ。日々の光は一様ではなく、毎日が小さなドラマを保っていた。
この窓から私は多くのことを学んだ。風、川、木、空、季節、その変化を。
空気中を風が流れるように、地を水が流れる。その自然な流れを学んだ。
その天地にさっぽろがあり、イシカリへと広がる世界があった。小さなしかし確実
な存在、ゾーンとしての国を思った。私が生きている天地、ランドである。
それは、国家とは違いもっと等身大の広がりを保つものだ。
都市が人工の極みへと、非等身大の大きさを競うように拡大し膨張し続けた中で
喪ってきた何かでもある。
街の変遷と共に生きてきた私の人生で、初めて触れた日常としての自然があった
。あの窓は私にとって、そうしたさっぽろの自然の風景を日々告知しもたらしてくれ
た、神の窓だった。
その窓を今、花の壁を見ながら想い出している。
房々と様々な花、草が美しい匂いを放っている。
入ってくるなり、匂いが違うと人が言う。今までにないねえと言う。
今まではどんな匂いがしたのかしらん。女性たちが敏感である。
今朝も多くの女性たちが来て、写真を撮っていた。
デジカメのシャッターを押してくれと言うので、押した。
お腹が出て写っていると文句を言われた。そんなこと知るかよ。
カメラと自分のお腹に聞いてくれ。そうは言わなかったが、そう思った。
美しいものに女性たちは貪欲である。美は女性の権力志向そのものではないのか
。<秘すれば花なり、秘さざれば花ならず。>
花を美と置き換え、無邪気な俗たる女性たちに贈りたい言葉である。

*佐藤義光花個展「別世界」-2月15日(日)まで。最終日午後5時終了。
*野上裕之彫刻展「i」-2月17日(火)-22日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-02-13 12:34 | Comments(0)


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