沖縄在住の美術家豊平ヨシオさんと会ったのは、’92年11月の末の事である。
札幌個展で初来札した時だった。数日間も滞在しただろうか。
それ以来一度もお会いする機会がないまま今日まで過ぎた。
この間何人かの友人が沖縄を訪れ、その度に私は豊平さんを紹介した。
帰ってきた友人たちの話の中で、豊平さんはいつもさっぽろを、北海道をこよなく
懐かしがり、熱く語った事が伝えられたのだ。
沖縄に生まれ、東京芸大を出て、再び沖縄で現代美術の作家として生き抜いて
いるこの孤高の美術家が、北で何を感じ、どうしてここまで熱い友情を抱いてい
るのか。その友情の確認の為にも、一度は沖縄を訪れなければならないと私は
感じていた。昨日のチQさんからの電話は、その思いをさらに深く推し進めるもの
であった。
昨年7月夜咽ぶようなお電話を豊平さんから頂いたとき、思わず来年2月伺います
と返事をしたのだが、それは札幌録音後の及川恒平さんのライブの真最中の時で
もあった。今回チQさんが豊平さんと会っていた時もまた、及川さんのライブの時
である。北へと熱い思いが濃くなっている時間に、期せずして同じ波長が北と南
から発せられていたのだ。この偶然の符合は何なのだろうか。
沖縄米軍基地の倉庫の床材、古いテント地等を素材とした豊平さんの作品は、
南島の豊かな色彩、光とは正反対の濃く凝縮した玄(くろ)の作品である。
溢れるような色彩を過剰なまでに叩きつけるようなチQさんの作品世界が、その
根底において凝縮する玄(くろ)を、もし獲得することがあるなら、正に沖縄の玄
(くろ)のような豊平ヨシオさんとの出会いは、あるカルチャーショックに匹敵した
と思われる。そのような出会いこそが、チQさんの求めた南島への旅の原点と
なると思われるのだ。豊平ヨシオの抱える現代沖縄の濃い玄(くろ)は、沖縄が
歴史的にも現在抱え込む真摯な闇の玄(くろ)である。
翻って北の島北海道もまた同じ現代の位相の玄(くろ)を孕んでいる。
その固有の玄(くろ)を、チQさんが作家として如何に身体化し得るか、表現のコ
アとして獲得し得るか。そこに今回の旅立ちの意味もある。
私は来月の沖縄への旅を通して、その北と南の玄(くろ)をしっかりとわが身に
見詰めたく思う。殖民地都市札幌の北の玄(くろ)を抱え、沖縄のさらに深い玄(く
ろ)と出会う為に。
*佐々木恒雄×チQふたり展「ランド!ホップする時」-1月18日(日)まで。
am11時ーpm7時
*高臣大介ガラス展「gla_glaCANDLEsshow」
1月27日(火)-2月8日(日):初日イヴェント・あらひろこカンテレライブ
午後7時半~入場料1000円
*佐藤義光花個展「別世界」-2月10日(火)-15日(日)
*野上裕之彫刻展ー2月17日(火)-22日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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