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テンポラリー通信

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2009年 01月 13日

及川恒平の夕そして沖縄ーmata-pa(冬の年)(9)

定休日の月曜日。午後3時から及川恒平さんのコンサートがある。
糸田ともよ歌集から名付けられた「冬の鏡」と題するソロライブだった。
祭日で多くの人は見えなかったが、心濃いコンサートとなる。
すでに沖縄へ立ったチQさん、4月網走へ立つ佐々木恒雄さん。
ふたりの絵の中で及川さんの唄声が響く。
離れようとする時見えるものもあり、、離れたから見えるものもある。
そのふたつの心の在り様が、このライブ会場を交叉していた。
釧路で育った及川さんは、東京の大学時代すでに’60年代フォークソングの旗手
としてスターの座にあった。
その後考える所あって10年間歌を止める。テニスのインストラクターをしていたと
いう。そして復活の第一作が「みどりの蝉」というCDである。
このCDのなかに「冬のロボット」という名曲がある。この歌のなかで繰り返される
歌詞が、この時期の及川恒平の心境を象徴していると思う。

 「ウマレタコロノコトヲオシエテ」

 おそいかな・・・・
 ・・・・あえるかな・・・

冬のロボットの<冬>とは北の謂いであり、ロボットとは商業主義のど真ん中で
歌を唄っていた本人の象徴でもあるだろう。そのロボットが呟くのである。
<ウマレタコロノコトヲオシエテ>
ここに離れて初めて気付く場、北への思いがある。
この<場・ランド>への探求、自己のアイデンテイーへの追求が、その後の及川
さんの声の表現の基軸となっている。
さっぽろ在住の歌人糸田ともよの歌集「水の列車」との出会いは、その中で生ま
れたものだ。この歌集をソングとして自立させる為にここ3、4年の間、ひたすら
彼は唄い創り続けてきた。そして、昨年7月とうとうさっぽろで自主録音を行い、さ
らに今日から3日間、冬の空気の中で同じさっぽろで録音を進めるのだ。
その前日となった昨日のライブは、最後の録音前のステップするような時だった。
冬の日の午後から夕刻へ、その唄声は低く、高く、白い空気の中に響いた。
終わりに近く、急に及川さんは、場所を変えましょうと言って2階の吹き抜けに上っ
た。2階正面のベンチに腰掛け、あの「みどりの蝉」収録の「冬のロボット」「引潮」
「さみだれ川」と立て続けに唄った。その時私は、及川さんが今この場で再生の時
を確認しているのだなあと思っていた。復活第一作の名曲の数々が明日の最後の
録音を前にして、ホップしステップするように空間に降り注がれていた。
離れて見えるものもあり、離れようとする時見えてくるものもある。
網走の故郷へ帰る時、沖縄へ向かう時、そしてもっと長い年月を経て、北を見詰
めている時。この時間の交叉が会場で深く交錯しながら、3人3様の重なる時を
生んでいたと思う。
<ウマレタコロノコトヲオシエテ>
都市の密室の増殖に細切れに分散化した心の身体を、自ら再生するラデイカル
な行為として3人の表現行為が、そこに在った。
フォークソングというジャンルの問題では括れない、固有の及川恒平の声の表現
行為が、ふたりの絵画空間に声として、唄(ソング)として空間を満たしていたのだ
。稀なる夕刻の中で、オホーツクの木田金次郎のように生きる事を決意した佐々木
恒雄さんは、初めて聞く及川さんの声にただただ、心に沁みたぜと私に呟いた。

今日午後沖縄のチQさんから電話ある。
昨日美術家豊平ヨシオさんに会ったと言う。その話を電話で語りながら、もう声が
震えている。作品庫、喫茶店、食事と5時間位話したと言う。涙声に近い。
作品に感動し、人に感動し、その出会いを設定してくれた私に感謝し、もう言葉に
ならない感じだ。3月会うのを心から待っていると豊平さんの伝言が伝えられた。
’91年に会って以来の再会をこんなにも心待ちされる幸せを、チQさんの言葉の
端々に感じて、今もまだ心に深く溜まっているものがある。
ちょうど及川さんのライブの時間、遠く沖縄でもここの接点が熱く燃えていたのだ。
明日チQさんは西表島に仕事を求めて旅立つと言う。
新たな生活、旅立ち。人と作品の出会い。その言葉にならない話声を聞きながら
俺も、ただただ心に沁みたぜ。・・・チQさん!

*佐々木恒雄×チQふたり展「ランド!ホップする時」-1月18日(日)まで。
*高臣大介ガラス展「gala_glaCANDLEshow」-1月27日(火)-2月8日(日
 ) オープニングイヴェント:あらひろこカンテレライブー27日午後7時半~
 入場料1000円
*佐藤義光花個展「別世界」-2月10日(火)-15日(日)
*野上裕之彫刻展ー2月17日(火)-22日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-01-13 12:10 | Comments(0)


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