2017年 03月 24日

心の踵(かかと)ー湿地帯(26)

それぞれ旅立ちの3人が集まった。
今日朝ベルリンに帰国の谷口顕一郎さん、4月1日
九州大学入学で旅立つ野崎翼君、そして札幌で新た
な作品活動を展開している瀬川葉子さんの3人だ。
世代も作品領域も違う3人が何故か共通する心がある。
凹み彫刻谷口さんの作品の折りの考え方、雑紙を美し
い曼荼羅作品に仕立てる瀬川さん、そして折り紙を
巧緻な造形作品にする野崎君。
この野崎君の才能に最初に注目したのは谷口さんで、
優秀な若者がいるよ、と私に告げたのだ。
その野崎君を瀬川さんに紹介し作品を見て仰天した
瀬川さん。
その昨年の展示を野崎君が見に行き、3人の接点が
生まれた。
さらに谷口さんは以前ここで展示した瀬川さんの作品
に触発されその作品を購入し、自らの彫刻の素材とし
て新たな彫刻を創ったのだ。
その作品を見た瀬川さんが感激しそれを購入すると
いう交感過程もあったのだ。
九州・ドイツへと旅立つ谷口、野崎君に瀬川さんを
加えて、ささやかな見送りの夕を昨日午後開いた。
それぞれ誰が言うのでもなく、各自作品を持ち寄り、
鑑賞しながら、会話が弾んだ。
そしてそれぞれの生活の根の話、その中で創作する
心の踵(かかと)のような生の歩み。
そこに性別もそれぞれの生活の相違も年齢も超えた
キラキラした汗のようなものが溢れ、波打っていた。
これから九州大学へ進学する野崎君も、育児・家事
を抱える瀬川さんも、異国で作品活動を続ける谷口
さんもすべて有りの儘語り、苦労は苦労とし、なお
かつ共通する創る喜びを伸び伸びと発語し嬉しそう
だった。

別れの前の束の間の小さな宴。
ゆったりと3人の心の踵(かかと)・美しい軸足が
走っていた。

*追悼八木保次・伸子「札幌の彩(いろ)」ー4月4日ー16日
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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# by kakiten | 2017-03-24 15:00 | Comments(0)
2017年 03月 23日

踵(かかと)を問う時ー湿地帯(25)

朝から流れる国会中継を見ながら、証人喚問の人物に
トランプ米大統領となにか似た匂いを感じていた。
アメリカ イズ ファーストと瑞穂の国というふたり
の理念的なものの言い方にもある共通性を感じる。
原発を開発し他国に売り込んだアメリカ。
その原発を安全神話で普及させ海外輸出までし、今日
の東芝の危機を招き、同時に瑞穂の森を山を海を汚染
している日本。
そんな国の理念的美化と現実とが思想的に対峙する事
なく共存している点だ。
踵(かかと)と爪先がバラバラのような、踵の理念的
美化、空洞化が浮き足だって見える。
United States of America
合衆国と訳された<合衆>とは、移民の国を顕す
<united>であり、<of>の筈だ。
そして多くの移民・民族の一つの民族に偏らない共通
の夢としてアメリカンドリーム(自由・平等・博愛)
の精神がある筈だ。
その人類の夢でもある人種・民族を超えた国・世界造
りが、一国国家主義へと<united>も<of>
も変質しつつある。
<瑞穂の国>も恵まれた美しい自然の山野、川海を顕す
理念の筈だが、今放射能汚染で喪失しつつある福島の
原発事故状況を考えれば、今までの原発推進と今に至っ
てなお再稼働を進める状況を見れば、ここでも理念は
瑞穂の国とは逆の方向に偏りつつある。
目先の爪先の視線と軸の踵(かかと)の拠点がずれた
まま浮き足立っているのだ。
このズレを強引に卷引するものは、非常に権力的な志向
を伴うと思われる。
この臭いの拡がりは、蟻の1穴のように日常にも感じる。
爪先立って前へと転倒を免れようとし、さらに浮き足
立つ爪先・目先に奔る現実が見えてくる。

*追悼・八木保次・伸子「サッポロの彩(いろ)」ー4月4日
 ー16日
*吉増剛造展ー「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月予定

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-23 19:13 | Comments(0)
2017年 03月 21日

<爪先・踵>考ー湿地帯(24)

ほぼ同時に送られてきた3人のDVD、本内容予告、詩集
を見ながら、共通する今を思っていた。
小林重予さんのDVD「心の庭で 言の葉を囁く」は、
自然・生物・人に接する柔らかで愛に満ちた基本姿勢が
深く感じられる内容である。
彼女の造形作品とはまたひと味違う二人の優れた散文朗読
者によって、彼女の肉声が伝わってくるようだ。
冬眠する熊の話や甘栗が好物の祖母の話などは、特にユー
モアに満ちていながら現代社会を鋭く撃つ。
朗読される11編全ての話にそうした現実社会への彼女の
立ち位置が踵のように確かなのだ。

吉増剛造さんの新刊「火ノ刺繍」(響文社刊)は、副題に
2008-2016と表示されている。
しかしその大半は2011年を基点とした3・11以降の
対話15回・詩・論・エッセイそして吉原洋一氏による
2011年2月ー2012年2月までの吉増剛造を各地で
撮った写真で構成されている。
2011年12月から始まった「石狩河口/坐る ふたたび」
展を基本底流とする「怪物君」に至る現在までの吉増剛造の
精力的な軌跡が網羅されている。
3・11以降を今生きる詩人のラデイカルな精神の踵(かかと
)を刻むような本となるだろう。

桑名正和さんこと白島真の詩集「死水晶」(七月堂刊)は、
1974年から2016年まで書き記した詩を一冊に纏め
人生の軌跡そのもののような詩集である。
特に長文の歌人福島泰樹の後書きが、桑名さんとの交流を
通して福島自身の短歌絶叫活動とも重なりある時代とその
高揚が脈打つように躍動し熱く書かれていて印象的だ。
東京で生まれ長じて札幌で会社を興し今は岐阜に住む彼の
心の踵(かかと)そのもののような詩集である。

3人3様の心の踵。
それは時代を生きる心の爪先が、精神の踵(かかと)を構築
し時代の地に足を根差す果敢なる記録のように思える。
踵(かかと)は根であり拠点であって、爪先は視線でもある。
3人の視線と拠点が、交流した人・時代・社会を通して今と
いう時代を深く照射し歩いている。

*八木保次・伸子追悼「サッポロの彩(いろ)」ー4月4日ー16日
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月予定

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# by kakiten | 2017-03-21 15:14 | Comments(0)
2017年 03月 19日

3っの軸足ー湿地帯(23)

相次いで3人の今、軸足のように感じる、本予告、DVD
、詩集が送られて来た。
一つは小林重予さんの絵画とその前で語られる童話のよう
な物語朗読の映像。
もうひとつは8月発刊予定の吉増剛造さんの「火ノ刺繍」
の予告内容フライヤー。
そして今は岐阜市に住む盟友桑名正和さんの17歳から書
きためた全詩篇を収めた詩集。
それぞれが今を生きる踵(かかと)の時間を顕している。
小林さんのDVDは、ふたりの元女子アナが交互に小林
さんの絵画の前で文を朗読し聞かせるというイヴェント
の収録画像だ。
自然・生物に対する小林さんの基本的立ち位置が、紙芝居
でも見るように絶妙のふたりの語りで綴られている。
この語りを音だけで聞いていても、心地よい。
吉増さんの本「火ノ刺繍」は、3・11以降の自らの生の
原点を問うた2011年一年間の記録写真・対話・詩等を
収めたものである。
この本のタイトルともなる展示はすでにテンポラリーで
延びつつも5月に予定されている。
この6年間の集大成とも言える展示であり、本と思う。
桑名さんの詩集は17歳から折々に書き続けた詩の集大成
詩集である。
齢60歳を過ぎて人生を総括するかのように、生きてきた
全時間の軸足を見据えている。

三者三様の生への踵(かかと)の視線が、深く心に響く。
自然・時代・人生と過去現在に渡るそれぞれのラデイカルな
交震が深い深度を保って伝わって来る。

*八木保次・伸子追悼「サッポロの彩(いろ)」ー4月4日ー16日
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月予定

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# by kakiten | 2017-03-19 14:31 | Comments(0)
2017年 03月 15日

春めいて・・・-湿地帯(22)

青空が続いて雪融けが進んでいる。
ニューヨークを始め季節外れの大雪の処もあるという。
でも大きくは間違いなく春へと季節は進む。

岩手の菅沼ロクさんの便り。
萬鉄五郎美術館で吉増剛造さんに会ったという。
写真が添付されていた。
写真私に送って、と伝言し風のように去っていった
とロクさんが書いている。
今年春・秋の展示予定の巨匠ふたり。
なにかほのぼのとするふたり出会いの便りだ。

時と場所を超えて人と人が繋がる。
春のこれから咲く花、和らぐ樹、草もまた、冬を
越えて繋がる徴(しるし)なのだろう。
♪この道は~、と、ぽっと、ホッと時の花が咲く
ような時間が良い。
ゆっくりだが確かな開かれる時間が良い。
伏流水のような見えない時間も含めてその時が良い。
封印ではなく、蕾の固い抱擁。
ある光とともに開く。
それは、封印の為の封印ではない。
閉じつつも開く為にある時。
そんな美しい季節がまたやって来る。

人間は封印に多くの時間を掛け知恵と技術を使い
もするが、自然が静かにゆっくり唄っている事も
知っている。

 この道はいつか来た道
 ああ、そうだよ
 あかしやの花が咲いてる

*八木保次・伸子展「春の色」ー4月予定
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬~

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# by kakiten | 2017-03-15 15:08 | Comments(0)
2017年 03月 13日

小さな森の時間ー湿地帯(21)

帰国中の谷口顕一郎、翌日東京へ出張の高臣大介、
仕事休みの中嶋幸治、そして山田航さんと4人が
揃い居酒屋楽屋に集合した。
時に弄(いじ)られながら、良い時間だった。
それぞれが私と最初に会った時の印象などを酒の
つまみに、話しが始まる。
赤面するようで同時に最初に会った相手の印象も
想い出していた。
変わらぬ場所が保つ時空間が加わり、束の間の5
人の会話がキラキラと流れていた。
先日の岡部、中川氏に続く同じ楽屋での会話。
3世代の新旧友人達との交流は深い勇気を与えて
くれる。
居酒屋は小さな森のようだった。
人間はそうした森を保つべきだ。
心と場所に変わらぬ時空を。
帰宅して巨大カプセルで覆うチェルノブイリの原発
事故地の記録TVを見た。
そして次に放映された森の熊の親子のTV画像を見
ながら、大きな変化と小さな変化そして変わらぬ時空
の調和を思った。
操作された環境と操作されない自然。
時空間の恐ろしい差異を思う。
人間の最新の科学技術・知恵で造った放射能遮蔽カプ
セルは僅か百年余で風化するという、
放射能汚染源はその先何万年も消去しない。
熊の親子の成長を取り巻く森の変化の自然さには、変わ
らぬ生命と環境自然の調和がある。

小さな小さな街の地下の居酒屋にも人間の創った小さな
森があった。
そしてかってその森は、故里という森・山・野・海だっ
た気がする。

円山北町のりっちゃん、イサカさんの居酒屋  
ありがとう・・・。

*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬~予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-13 14:58 | Comments(0)
2017年 03月 12日

山田航のモノローグ紀行ー湿地帯(20)

隔週で道新に連載されている山田航の短歌と
エッセイ「モノローグ紀行」が百回を迎えた。
札幌を主に色んな場所を廻りその場から一首
の短歌を創り場所の時空を文に記す。
道ひとつ、坂一つ、建物一つにも時間と歴史
が潜んでいる。
過去の時空が現代に甦り、今を撃つ。
札幌のような歴史の浅い筈の都市にも、この
百年の凝縮した近代の光源がある。
若い世代に属する山田航の目は、そんな地と
人間の根のような結びつきを鋭く掘り返し表現
してきた。
新しい筈の物が直ぐに古くなり、様々な処でスク
ラップアンドビルドが進む時代に、彼の継続する
作業は非常に貴重な仕事と思う。
カルチャーの原義「耕地」そのもののこの連載
は、同時にラデイカルな近代への問いかけであり、
今を撃つ先鋭な楔(くさび)のような批評でも
あると思われる。
<住>も<業>も<道>もすべてをパック化する
都市化が進むこの街で、場の時空は希薄化し人も
建物も道もまた希薄になる。
そして生まれた薄い時空間は、<移る>速さが
支配的になり、根を喪った難民構造に浮遊する。
それは札幌だけの事情ではない。
3・11以降に露呈したこの構造は、他の都市・
町・村にも及んでいる現実なのだ。

6年目を迎えた3・11フクシマの特集番組で
かっての福島産のお国自慢が披瀝されていた。
農産物・銘酒そして首都圏への大供給電力。
都市を支えるエネルギー源・電気の産地として
誇らかにその存在が語られていた。
銘酒・優れた農作物・お米・果実を育んだ産地。
その産地としての風土は、大都市圏に送る電気
を産む原子力発電所放射能汚染により深い傷
を負ったのだ。
産地という根が空洞化する危機を都市化という
怪物が地域まで包含して進んでいる象徴と思う。

山田航の百回を迎えた仕事の意味は、そうした現代
に立ち向かう蟻の1穴として評価されるべきだ。

*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬~

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# by kakiten | 2017-03-12 18:20 | Comments(0)
2017年 03月 11日

抱擁構造ー湿地帯(19)

無心な赤子をこの間二度見せて戴いた。
昨年末鯖江市から里帰りの森本めぐみさん
「百年の予定」展で。
そして先週終わった「分母」展で最後に訪れた
久野志乃さんの赤子。
何故か、私にはこのふたつの展覧会と二組の母子
の印象が、重なって感じるのである。
抱き抱かれ、包み包まれた抱擁構造である。
出産間もない森本めぐみさんが、生まれてきた
わが子に思いを馳せ「百年の予定」とした個展。
そこには自分の人生に連なる我が子の時間が加わ
って、命繋がる時への祈りがある。
「百年の予定」とは指示表出の百ではなく、自己
表出の祈りから溢れた百なのだ。
そしてメタ佐藤さんの写真作品、その大きな転機・
変化を一冊の手作り本に包み製本した中嶋幸治さん
の「分母第二号販売展」展もまた、包みつつ包まれ
る作品を通した抱擁構造にあった。
母子の抱擁構造が母・子の心と身体の相互関係から
抱き、抱かれる関係であるように、作品という創造
の子もまた抱き抱かれる抱擁構造を保っている。
この時通底し共通するものは、人の心身から発する
全身・全力行為と思える事だ。
自・他の関係性が指示表出に拠る事が多い現代社会。
心身を基底にした美しい全身行為が薄れつつある。

人は本来、<抱き 抱かれ・包み 包まれ>る抱擁
構造を、水に、光に、風に、人に、森羅万象に身体
を保って逢い対してきた。
その本来の姿をもう一度見つめ直し回復させなけれ
ばならない時代と思う。


*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬~

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-11 13:37 | Comments(0)
2017年 03月 10日

「分母」展終了ー湿地帯(18)

ふたりの表現者の「分母」展終了した。
何もなくなった白い空間。
見えない影のように会期中の記憶が埋もれている。
真の批評とは抱擁のような行為・・・と感じる。
抱きつつ抱かれる、そんな展示だった。
最後に出産数ヵ月の赤ちゃんを抱いて美術家のS
さんが来たのも象徴的だった。
出産後初めてのお目見え、十和子ちゃんという赤ち
ゃんの笑顔が光っていた。
正に「分母」だね、と言うと中嶋さん笑っていた。

ひとりの写真表現者の「光景」「色景」シリーズに
始まる表現の深化。
その過程を編集・製本という形で一冊の冊子に作品
化した美術家。
この幸せな批評の形・容(かたち)は、母子という
分母・分子その物のように、抱き抱かれて遇ったと
思える。
写真家は風景を構成する見えない要素を、光・色・
歴史へと分光し。分色し、分析して深化してきた。
風景を自らの身体環境としてそこに根を張るかの
ように表現の植毛を浸透させてきた。
その過程を本という容器が、形・容(かたち)を
添えたテーラー・仕立て行為、そんな二人三脚の開
かれた波長が赤子の笑顔のように甦る。

そして番外編・展示だけの3日間。
最初に東京現代美術館のYさんが来た。
札幌国際芸術祭の関連訪問だが、話は跳んでそれは
主流ではない。
大野一雄石狩河口公演映像や戸谷成雄作品や種々の
資料を感動しつつ接し話した。
2時間以上話し、最後に製本された「分母第二号」を
購入してくれた。
そして昨日最後の訪問者は秋吉台国際芸術村展示から
機札した谷口顕一郎さんと写真家T氏。
緩くゆったり3時間ほど話し込んだ。

時も場も、長さ・広さの量数ではない。
量の利ではなく、料の理なのだ。
作品の無くなった白い空白の小さな空間で再びの充填
する時を静かに見詰めている。

*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬に変更。

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# by kakiten | 2017-03-10 13:33 | Comments(0)
2017年 03月 07日

2日間のライブー湿地帯(17)

間断無く濃い2日間だった。
当初2日間という日程は通常より短い気がした。
しかし実際は濃く芳醇な時に満たされた2日間だった。
一冊の本の内容と制作過程、そのライブの時間といえる
のかも知れない。
そう思えば2日間という時間の尺度が変わるのである。
量数の多さが主体の本の時代に対して、一冊一冊の質量
で今回の本は創られている。
紙・印刷手法一つにも5種類の用紙・印刷で創られた
今回の冊子「分母第二号」。
そしてその一冊に特集されたひとりの表現者と作品。
作家・作品という素材を本という形で包む知的容れ物が
料理と盛る器のように本となって顕れている。
中嶋幸治の製本という作品行為が、ひとりの作家を見詰め、
抱き、提出している。
この本を購入した多くの人は、目の前で素材が調理される
のを見ながら出来あがった料理を戴くような満足感で立ち
会っていたのだろう。
当初今回の2日間という期間や一冊の値段を考え、否定的な
考えも多かったと聞く。
しかしそれは基準が違うのだ。
あるライブ、板前さんの調理料理と考えれば、ある程度の
値段も時間も個人的満足度の内に消えてしまうのだから。
今回作り手も来た人も個の満足の内にいた。
目の前に作家と作品があり、それを包む製本という形の
中嶋さんの作業がある。
来た人ひとりひとりにとっては、2日間とは充分な時間で
あるからだ。

私達は何時の間にか量の利ー<量利>の環境に慣らされている。
本来ひとつづつ素材と向き合い<料理>せねばならないもの
がある。
そんな現代が遠く置き忘れてきたような製本という行為を、
美術家中嶋幸治は敬愛する写真家メタ佐藤の作品を通して
ライブする稀有な展覧会であったと、今言える。

*中嶋幸治「分母第二号販売展・特集メタ佐藤ー包み直される風景
 と呼び水」ー展示のみ延長3月8日午後3時まで。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月上旬~。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-07 14:36 | Comments(0)