2017年 03月 10日

「分母」展終了ー湿地帯(18)

ふたりの表現者の「分母」展終了した。
何もなくなった白い空間。
見えない影のように会期中の記憶が埋もれている。
真の批評とは抱擁のような行為・・・と感じる。
抱きつつ抱かれる、そんな展示だった。
最後に出産数ヵ月の赤ちゃんを抱いて美術家のS
さんが来たのも象徴的だった。
出産後初めてのお目見え、十和子ちゃんという赤ち
ゃんの笑顔が光っていた。
正に「分母」だね、と言うと中嶋さん笑っていた。

ひとりの写真表現者の「光景」「色景」シリーズに
始まる表現の深化。
その過程を編集・製本という形で一冊の冊子に作品
化した美術家。
この幸せな批評の形・容(かたち)は、母子という
分母・分子その物のように、抱き抱かれて遇ったと
思える。
写真家は風景を構成する見えない要素を、光・色・
歴史へと分光し。分色し、分析して深化してきた。
風景を自らの身体環境としてそこに根を張るかの
ように表現の植毛を浸透させてきた。
その過程を本という容器が、形・容(かたち)を
添えたテーラー・仕立て行為、そんな二人三脚の開
かれた波長が赤子の笑顔のように甦る。

そして番外編・展示だけの3日間。
最初に東京現代美術館のYさんが来た。
札幌国際芸術祭の関連訪問だが、話は跳んでそれは
主流ではない。
大野一雄石狩河口公演映像や戸谷成雄作品や種々の
資料を感動しつつ接し話した。
2時間以上話し、最後に製本された「分母第二号」を
購入してくれた。
そして昨日最後の訪問者は秋吉台国際芸術村展示から
機札した谷口顕一郎さんと写真家T氏。
緩くゆったり3時間ほど話し込んだ。

時も場も、長さ・広さの量数ではない。
量の利ではなく、料の理なのだ。
作品の無くなった白い空白の小さな空間で再びの充填
する時を静かに見詰めている。

*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬に変更。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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# by kakiten | 2017-03-10 13:33 | Comments(0)
2017年 03月 07日

2日間のライブー湿地帯(17)

間断無く濃い2日間だった。
当初2日間という日程は通常より短い気がした。
しかし実際は濃く芳醇な時に満たされた2日間だった。
一冊の本の内容と制作過程、そのライブの時間といえる
のかも知れない。
そう思えば2日間という時間の尺度が変わるのである。
量数の多さが主体の本の時代に対して、一冊一冊の質量
で今回の本は創られている。
紙・印刷手法一つにも5種類の用紙・印刷で創られた
今回の冊子「分母第二号」。
そしてその一冊に特集されたひとりの表現者と作品。
作家・作品という素材を本という形で包む知的容れ物が
料理と盛る器のように本となって顕れている。
中嶋幸治の製本という作品行為が、ひとりの作家を見詰め、
抱き、提出している。
この本を購入した多くの人は、目の前で素材が調理される
のを見ながら出来あがった料理を戴くような満足感で立ち
会っていたのだろう。
当初今回の2日間という期間や一冊の値段を考え、否定的な
考えも多かったと聞く。
しかしそれは基準が違うのだ。
あるライブ、板前さんの調理料理と考えれば、ある程度の
値段も時間も個人的満足度の内に消えてしまうのだから。
今回作り手も来た人も個の満足の内にいた。
目の前に作家と作品があり、それを包む製本という形の
中嶋さんの作業がある。
来た人ひとりひとりにとっては、2日間とは充分な時間で
あるからだ。

私達は何時の間にか量の利ー<量利>の環境に慣らされている。
本来ひとつづつ素材と向き合い<料理>せねばならないもの
がある。
そんな現代が遠く置き忘れてきたような製本という行為を、
美術家中嶋幸治は敬愛する写真家メタ佐藤の作品を通して
ライブする稀有な展覧会であったと、今言える。

*中嶋幸治「分母第二号販売展・特集メタ佐藤ー包み直される風景
 と呼び水」ー展示のみ延長3月8日午後3時まで。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月上旬~。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-07 14:36 | Comments(0)
2017年 03月 05日

包み・包まれて・・(Ⅱ)ー湿地帯(16)

見に来た人も会場という函本に包まれ、中嶋、メタ佐藤
さんとともに交遊している。
製本造りを見ながら中嶋さんと会話をし、写真を見なが
らメタさんと話をする。
そして出来上がった本をじっくり見ながら、購入したり
する。
一冊3000円だから、決して安価なものではない。
普段なら腰が引ける金額でもある。
特に最近の本事情においてはそういう金額だ。
しかし決してそういう感じではなく、本が手に取られ、
売れていた。
会場に来た人もまた、作家と包み包まれる関係の内に
いる。
売買が掌(たなごころ)を通して掌(てのひら)を
渡っていく。
その過程に金銭も付随してくる。
しかし金銭流通が主体ではない。
掌(たなごころ)から、掌(てのひら)の掌の回路が
主役なのだ。
掌を離れ指先の操作が主体の現代において、この掌の
仕事ー手仕事を通した作品制作・展示が見る人の心に
響いた結果と思う。

以前に来た事のある幼児がもう覚えた梯子ー階段を
奔り周り、最後に生後5ヵ月の赤子を抱いた久野志乃
さんが来て、居合わせた旧友たちと賑やかな挨拶を交
わし、朝から続いた切れ目ない人の渦は終わった。
包む作品と包まれる作品。
その関係は人と人の間にも生まれて、幸せなふたりの
共同作品展はひとまず終了した。
8日まで、展示だけ途切れながら続く。

*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月上旬~予定

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-05 18:10 | Comments(0)
2017年 03月 04日

包み・包まれる展ー湿地帯(15)

一冊の本が出来てゆく。
中嶋さんが一冊ずつ本の背を糸綴じしている。
その本に特集されているメタ佐藤さんの写真作品。
4っのシリーズ代表作が4点北壁に飾られ、正面
壁には本の内容がゲラ風に大きく2枚の紙に写さ
れ貼られている。
そこにふたりの折々のメモが寄せ書きのように
書かれている。
会場南側では中嶋さんが黙々と本の制作を進めて
いて、会場中央に製本された本が積まれている。
制作と同時進行の初日の風景だ。
本の出来映えが素晴らしい。
メタ佐藤さんの作品が包み直され、メタ佐藤さん
の作品が本を包み返している。
製本と中身は包み包まれる美しい関係にある。
製本された本も作品なら、本に抱かれた作品も
作品である。
こんな美しい関係がライブで会場がある。
そんな本との関係を経験する場が今まであっただろうか。
当事者のふたりがそこに居て、来た人は制作現場と
出来上がるものとを同時に立ち会うのだから。
2日間の短いこの時間は非常に濃い豊かな時空間と
なっている。

本という包むもの、作品という包まれるもの。
ここでは包み、包まれる関係が一体となってもう
ひとつの豊かな作品世界を生み出している。
餡と皮のような内・外の関係を、製本という作業を
通して改めて実感させてくれる希少な<行為>展と思う。

*中嶋幸治「分母第二号販売展・特集メタ佐藤ー包み直される風景
 と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)am11時ーpm7時
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月初旬~予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-04 14:16 | Comments(0)
2017年 03月 03日

「分母第二号」販売展作業中ー湿地帯(14)

展示作業が始まった。
メタ佐藤、中嶋幸治さんふたりが来る。
ふたりの間に何時もにないある緊張感が漂っている。
持ち込まれた作業台、パネル、写真等がこれから会場
で組み立てられる。
分母第二号メタ佐藤特集の冊子一冊一冊の制作がこの
日も含めて会期中続く流れ。
一冊の本を廻ってふたりが真剣勝負。
どちらもが分母で冊子という分子を誕生させる。
その濃い時間のプロセスが今展示の主体だ。
その気迫がここへ入って来たふたりの間にぴりぴり
と火花を発している気がした。
今日から3日間この関係性は続く。

ベルリン在住の谷口顕一郎さんが昨日来る。
昨年末台湾滞在制作の作品を秋吉台国際芸術村で発表
する為帰国中という。
4日トークショウ出席、その後札幌へ戻るという。
中嶋・メタ佐藤さんの今回の展示期間にはいない事に
なるが来週帰札時8日まで展示だけは継続をお願いした。
他に東京現代美術館のY氏もこの日来廊予定なので、併
せてお願いしたのだ。
滅多にない遠方の来訪者に見てもらえる良い機会だ。

中嶋・メタ佐藤の今回の展示即売展は、一冊の手作り
製本を分母とするふたりの共同真剣勝負の場である。
その一冊一冊の果実が作品として提供される。
一冊の冊子制作過程のインスタレーションを包含した
作品提示の即売展という趣向と思われる。
いわばその場で調理するものを見ながら出来上がった
ものを食する場でもあるのだ。
その食物がメタ佐藤の写真という素材を料理した一冊
の冊子なのだ。
素材・調理台・食卓すべてを持ち込み、それらから一
品の冊子という料理品が提供される。
短い期間ながら創り続けるふたりの凝縮した濃い時間が
今展示の肝であるだろう。
今正に鋸を引き素材調理台の大工作業からふたりの展示
は始まっている・・・。

*中嶋幸治「分母第二号販売展:特集メタ佐藤ー包み直さ
 れる風景と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)am11時
 ーpm7時。:7,8日展示のみ続行。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月初旬~予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-03-03 14:28 | Comments(0)
2017年 03月 01日

火ノ刺繍ー湿地帯(13)

来月予定の吉増剛造展。
その展示の中心ともなる鈴木余位さんの映像
が送られてきた。
昨年末新宿ピットインでの大友良英とのコラ
ボレーションの記録である。
余位さんの会場同時撮影の映像が大画面に流れ
その中で大友良英が演奏し、吉増剛造が詩朗読と
パフォーマンスを繰り広げる。
まるで不動明王のようだ。
阿修羅とも見える。
映像も含めて吉増さん、炎・火の舞である。
自らの草稿も燃やす鬼気迫る舞台である。
この映像が今回の展示「火ノ刺繍乃道(ルー)」
の中心の火となる。
映像・鈴木余位、花・村上仁美でどのような空間
が創られてゆくのか・・・。
5年続いた3/11以降の総決算ともなる展示と
なるだろう。
特に2回目「ノート君」以降毎回参加してきた
余位さん、4回目の「水機ヲル日」以降3度目と
なる花人村上仁美さん。
吉増さんを芯として、この三人の大きな変化・転換
が展示と共に培われてきた。
昨年6月の東京竹橋の東京国立近代美術館での歴史
的大展覧会を経て、吉増さん自身が大きな転換点に
立ち、自らの詩業の過去・未来を凝縮して今がある。
そして同時に関わった鈴木・村上の人生そのもの、
作品行為自体にも大きな転換点が訪れている。
そんな3人の到達した現在が、正に「火ノ刺繍」
として燃え上がるような気がする。

吉増剛造という巨人の炎と共に、ふたりの根の炎も
また固有の命の炎を燃え上がらせる事だろう。
この新たな萌芽を生むそれぞれの固有の耕土に差異
はない。

*中嶋幸治展「分母第二号販売展:特集メタ佐藤ーその包み直される
 風景と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)am11時ーpm7時
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月初旬~予定。

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# by kakiten | 2017-03-01 14:34 | Comments(0)
2017年 02月 28日

24軒と二四軒ー湿地帯(12)

酒井博史さんがF・Bで書いている。
自宅の日章堂印房のある住所地名の事だ。
西区二十四軒の地名が24軒と表記されていると
その違いを苛立っている。
これは場所に対する想いが言わせる苛立ちだ。
私にも同じ思いで感じた事がある。
四丁目というある界隈性を保った場所の呼び名が、
ある時4丁目プラザと一ショッピングビルの名と
なった時だ。
街を構成する通りと界隈性がこの時消去されたと
感じた。
祖父の時代の停車場通り、父母の時代の駅前通り
それらの通りがショッピングビルへとパックされ
四丁目が只の数字表記4となって通りと界隈性と
いう根を喪失してきたのだ。
四日市と4日市は違う。
20歳と二十歳も違う。
指示する数字は同じだが、<はたち>と聞けば
他の数字にはない想いが籠もるだろう。
土地の地名も同じである。
八軒、十二軒、二十四軒、十軒とは、最初の集落が
出来た時の住民の軒数に由来する地名だ。
数字一つにも人には想いという心の有機的な根がある。
人口が増え、記憶や想いが風化し、数字は只の数字
となってゆくのも時の流れだが、そうした個々の
小さな根のような根毛が無い世界とは空しい世界と
思う。
個々の想いではなく、立派な記念碑や看板があれば良い
という問題ではない。
個々に共有される記憶の根こそが、土地の豊かさを育ん
でいる筈だ。
故郷の郷たる故(ゆえ)である。
酒井さんの自宅周辺からの指摘・ぼやきは、数字デー
ター全盛の量の利に走る時代に、個々の料の理から
発する広い料見なのだ。

24軒があれば、隣は25軒でその前は23軒。。?
そういう数字ではない。
原野にできた新たな集落を記念した数字なのだ。
数字一つにも人は想いの根を張る事がある。
その小さな人の根こそが、故郷を創り故里を創る。
その根が社会構造からも個人からも、空洞化しつつある。

*中嶋幸治展「分母第二号販売展:特集メタ佐藤ーその包み直される
 風景と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)am11時ーpm7時
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月初旬~予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-02-28 14:54 | Comments(0)
2017年 02月 26日

濡れて、凍ってー湿地帯(11)

濡れた雪が糠道となって足を奪う。
翌日濡れた路面が凍って足を滑らす。
しかし顔を刺すような冷気はなくなった。
今は火の消えた朝の室内が屋外より冷えている。
ギャラリーに入りストーブに点火し暖める。
そんな繰り返しで、季節は進んでいる。

F・Bを見ていてふっと目にとまった名前。
以前体調を悪くしていると聞いていたKさん
の名前。
どうしているかなあ、と思い友達申請をする。
するとすぐ返答のメッセージが入った。
ちょうど川とかの事を考えていて想い出して
いた時と言う。
そして入院は斜め向かいの北大病院12階の
病室で下界にテンポラリースペースが見え、
雪掻きしてる姿、路上の紫陽花が咲き出した
様子などを見ていたという。
斜めの通りを川に見立てたりしていたとも
書かれていた。
かって精力的に活躍していた美術家のKさん。
心臓病で長い療養生活を送っていたようだ。
私は腎臓なので、すぐ返事を書いた。
以前心腎一体と、医者から聞いた事がある。
内臓は有機的にそれぞれが深く関わり合って
いる。
体重・水分管理は、心臓との関係によって
コントロールされる。
ドライウエイトと呼ばれるものだ。
知らぬ間に12階の天上から心臓を病む
Kさんに私は見守られていたのだ。
界川暗渠流域をテーマとする’89アートイ
ヴェントの時、東京の美術家保科豊己をサ
ポートし、制作を旧プラハ建物で手伝って
いたKさん。
時の伏流水は長いビットウイーンを経て
湧き上がっていた。
ここで心臓と腎臓が呼び合うように再会した。
サクラ咲く頃、かりん舎のTさんと訪ねたい、と
メッセージの返事は終わっていた。

雪泥が足を奪い、その雪泥が凍(しば)れ、
また融ける。
そんな繰り返しの時の経過に似て、人と人の間
にも雪泥や凍雪の時があるのだろう。
そして福寿草のように黄(喜)の花が雪泥の
間から再会の花を咲かす時もある。
そんなメールの時間だった。

*中嶋幸治展「分母第二号販売展:特集メタ佐藤ーその包み直される
 風景と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)am11時ーpm7時
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月4日ー27日予定

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-02-26 14:39 | Comments(0)
2017年 02月 24日

時の耕土ー湿地帯(10)

20数年ぶりだろうか。
今は岩手県にいる菅沼氏と近年交流が復活し今年
秋個展を開いてくれる事になった。
鎌倉生まれで父上も彫刻家の彼は、一時音威子府
に移住して来た事があった。
その頃画家熊谷榧さんの紹介で知り合った。
1,2年後音威子府を去り、今の岩手県に住まい
を変える。
その後花巻市土澤町のアート@つちざわ、土澤
まちてくギャラリー等の企画主宰に関わり土地
に根差した独自の活動を続けている。
その間彼の作品活動も見る事なく、寂しく想って
いたから思い切って札幌での展示を誘ってみた。
快く快諾を今日戴き、とても嬉しい。
ロクさんの愛称で呼ばれる菅沼緑氏。
鎌倉から厳寒の音威子府、そして岩手県花巻へ。
あの頃の純粋で直向きな切れ長なロクさんの眼差
しを想い出す。

秋田の民芸の三浦正宏さんといい、菅沼さんと
いい長い時を経て、変わらぬ時間もある。
不在というビットウイーンの時間。
それぞれが個々の場で生きていた時間なのだが、
ふっと心の目が合えばたちまち伏流水のように時
の泉が湧き上がる。
逢わなかった時間が蒸発せず、活きて流れている。

冬の間自転車通勤を止めていて地下鉄・街路で感じ
る事は、この中間のビットウイーンの時間が切り捨
てられているように感じる事が多い事だ。
スマホ担いだ飛脚歩行か、ヨタヨタ俯く千鳥足歩行
の二種類に分別される気がする。
中間が除去される気がする
季候も寒暖差が激しく、中間の季節感が薄れている。
一日毎にも寒暖差があり、夏冬も極端になりつつある。
ビットウイーンの豊かさが、自然からも人間社会から
も希薄になりつつある時代に、ロクさんとの再会、彼
の作品を見る時間は、自分が自分らしくほっと息を吐
きそうな気がして、今からとても楽しみなのだ。

+中嶋幸治展「分母第二号販売展:特集メタ佐藤ーその包み直される
 風景と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)
 am11時ーpm7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-02-24 14:16 | Comments(0)
2017年 02月 22日

月裏の男ー湿地帯(9)

裏付け、裏打ちという言葉がある。
真実、本物、という意味で使う。
千葉県から北海道洞爺月浦に移住して約15年。
ガラス作家高臣大介の今を想う。
「冬光」の円盤状のガラス作品と「野傍の泉池」の
ガラス房が照明の光影を映して触れて響く音と共に
壁に浮かんだ今回の展示。
その試みが彼の今の生の証しだった気がしている。
祖母・父母・結婚と親子三代、今月浦に住まい、
作品もまた、志と成熟を保ち始めたからだ。
透明な円盤状のガラス板。
水滴のようなガラス棒の房。
「冬光」「野傍の泉池」と名付けられたふたつの
作品が光を透過し壁に映し出しす光影。
普段見えない表面上の起伏の影をも意識化した
今回の「奏であう」展は、正に生きる場の裏打ち
という言葉の顕れだった気がするのだ。

厳冬の寒気廊。
アラジンの大型ストーブ。
上昇する暖気風。
揺れる冬・光、泉・水。・・・響き。
透明な影という、淵・澱み・波紋。

洞爺・月浦。
ガラス制作を通して、真にこの地に根付きだした作品
と私は感じる。

最終日当夜・月の裏も輝いていたから。


*中嶋幸治展ー「分母第二号販売展:特集メタ佐藤ーその包み直される
 風景と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)。
 am11時ーpm7時。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月4日ー23日。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2017-02-22 14:28 | Comments(0)