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2016年 10月 30日

最終日ー土曜の夜の夢(17)

曇り日、壁の蔦の紅葉が進む。
朝うっすらと一片の雪片が飛んでいた。
夕方には降り積もるかな・・・。
札幌生まれの札幌育ち橘内さんには相応しい最終日。
夏の末・秋の、冬の年への架け橋のようだ。
そして彼を支え大阪で帰りを待つ奥さんのなつさんへ
の架橋の時間でもある。
あっという間の3週間だ。
13年ぶりの里帰り展で、大野先生を触発させてくれ
た事もあり、何点かが札幌に残れば嬉しい。
生命の灯りの共有、浮世絵の和蝋燭とキャンドルの
競演の絵画が私は惹かれている。
共感してくれた初めての訪問者の、もう一度の訪問
に期待している。

3歳の男の子と五歳の女の子を連れた橘内さんの
同級生が訪れた。
子供等はすぐに慣れ梯子を登り、2階回廊を走り回り
裏の階段を駆け下りはしゃぎ廻っている。
まるで絵画に描き込まれた浮世絵の人物の魂の様だ。
陰影も細密に描写された現代の日常風景を背景に、
自由に跳びまわる浮世絵の曽我簫白や北斎漫画の
人物たちは、平面的描写ながら、活き活きと身体性
を保っている。
子供達はその自由な身体性を受け継いでいる。
近現代とはある意味、描き割りのインフラの時代な
のかも知れない。
庶民は本来は自由にその新奇性を飲食し、楽しんで
子供のように闊歩するのが本質かも知れない。
大上段に振り構え肩を怒らし、近代だ、伝統だと線
引きするのは思考の身体の自由を喪失しつつある大人
の硬直性が成せる現代の不幸かも知れない。
子供達が楽しんで駆け回る姿を見ながら、そんな事を
思っていた。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*Hopi&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時(最終日午後5時まで)
 :お話会「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」午後2時~/午後5時~

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-30 13:29 | Comments(0)
2016年 10月 29日

大野一雄の映像を見せるー土曜の夜の夢(16)

明日の搬出に向けて京都より橘内光則さん再度来廊。
留守中の報告した後私が一番惹かれたキャンドルの
灯りに和蝋燭の灯を掲げる和の奇人の絵の感想を話す。
その話の流れで、大野一雄の石狩公演の映像を
見せる事になる。
途中説明しながら、見せる立場の私の方が画面に
魅入ってしまっていた。
河口という野外公演だったので、自然のハプニン
グがあり室内舞台のように段取り通りには行かない。
風や波の影響で、綱が流木に引っかかり引っ張って
も動かない。
足元が砂地に取られ転びそうにもなる。
しかしその予定外の動きすら少しの違和感もなく
大野一雄の舞踏になっている。
4回の衣装替え、砂礫地、仮設板張り舞台、河中と
2時間近く踊り、最後には河中よりずぶ濡れの衣装
のままアンコールで「エストレリータ」と「ラ・パ
ロマ」を披露し、観客を労ってくれる。
そして観客に感謝の挨拶。
それらひとつひとつを説明しながら、大野先生の心
が沁み入るように感じられ、昨日のように甦るのだ。
<命の源泉に戻って・・・>と挨拶で語ったように、
大野一雄は夕陽の沈み輝くあの仮設舞台に、生命の
炎を全身で表現しきった気がする。
大野一雄の生涯を懸けた生命の原風景が大河石狩川
の水、空、風とともに今も甦り、生きている。

日本のふたつの近代を生きた大野一雄の生命の舞踏を
あなたが絵画の日常風景に挿入した曽我簫白に感じる
のです、と大野一雄の映像をともに見ている橘内さん
にも伝えたかったが、声にはならなかった。
その事が何処まで伝わったかは、橘内光則の描く今後
の絵画を見なければ解らない。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
*Hopi&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm7時:11月3日(水)午後2時^/午後5時~
 お話会「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-29 16:19 | Comments(0)
2016年 10月 28日

橘内光則展あと二日ー土曜の夜の夢(15)

京都から13年ぶり、里帰りの橘内光則「土曜の夜の夢」展
も残りあと二日。
やはり作品が実物と共に在る時間は貴重だった。
特に彼の絵画は、写真のように超リアルな描写が特色である。
しかし本物の作品は、写真ではなく油彩であり、色彩による
背景の陰影、挿入された浮世絵風の人物のリアルな日常背景
との対比が面白く、画面は昼夜変幻し呼吸していた。
細密に描かれたトーストやワイン、ショートケーキなどの食卓
日常風景が描き割りの背景のように沈んで、平面的な浮世絵風
の人物が自在に画面を自由に跋扈していた。
アクションはこの前近代の江戸時代以来の人物達が主役なのだ。
言わば近・現代日本を表象する日常風景の中を楽しそうに食し、
動き廻っている。
3・3平方メートルだ、1・8リットルだと言いながら、心身
は一坪、一升の尺寸の身体が楽しそうに飽食している。
イデオロギーで日常を捉えず、基本的に身体の飲食で日常に採
り入れ楽しんで過ごしている。
一升の基準を1・8リットルと記載して過ごす現代日常と同じ
感覚なのだ。
スパン、スケール等といいながら、身は尺度・寸法が死んでは
いない。
細密に描かれた背景は細密であればあるほど、描き割りの日常
風景となり、一見古い浮世絵風人物は自在に其処を跳躍する。

もしその背景が先端の突き出た黒い靴に両脚にぴったりの黒い
ズボンかストッキングを履いた男女が速歩で歩く風景に飛脚か
鳶職人が楽しそうに伴走する画面を描いたら、面白いだろうな
あと想像する。
バックは都市の通勤風景か地下鉄乗り換えホームなどが良い。
そうした辛みも加わる可能性も将来あるのかも知れない。

小さなアメリカ大陸のように、色んな国から人が移住してきた
北海道で生まれた橘内光則は、近・現代そのものを背景(基底)
として、さらなる近代以前の妖精たちを自由自在に跳躍させて
現在を深化させて欲しいと思う。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*HOPI&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時(最終日午後5時まで)
 お話会「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」ー11月3日午後2時~/
 午後5時~一日2回。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-28 14:35 | Comments(0)
2016年 10月 27日

身の程ー土曜の夜の夢(14)

スーパーで買い物をして量があり、ビニール袋を買う。
毎度の事だが薄い膜の様な袋はなかなか口を開かない。
静電気だろうか、持ち手と開口部がくっいたままだ。
焦って苛々して叩いたり、振ったり、指の爪を立てた
りしたが開かない。
ぶつぶつなにか口走っていたのか、隣にいた中年の
婦人が手を伸ばして、あっさりと開けてくれた。
ひゃあ~天才!と小さく叫んだ。
婦人は笑って去っていった。

身の周りという言葉がある。
そしてもうひとつ、身の程知らずという言葉もある。
そしてそこに男性性と女性性を感じる事もある。
今日も朝出掛けに部屋を見渡し、忘れ物の点検をしな
がら自分の身の周りの乱雑さを感じていた。
まあ、居心地が良いので問題はないけど、綺麗ではない。
綺麗ではないのがあまり進行すると、これは不快になる。
ビニール袋の静電気と同じだ。
男の無精は静電気かな・・・。
身の周りとは、身体に直接関わる環境だ。
そして身の程知らずとは、自分の身の環境を忘れて行動し
時に暴走する事でもある。
身(体)とは、簡単のようでなかなか意味が深いと感じる。
自分自身に拘わる事は意外と何も知らないでいる。
そして身の程知らずの野望や妄想に走り、身の周りの世話
は、色んな人の世話になっている場合がある。
敢えて言えば、身の周りとは幼い時母親の世話になり
成人してからは奥さんの世話になっていたりする。
身の程知らずは男の性(さが)でもあるのだろうか。
身・身体性とは、内臓が生命を維持して昼夜働いている
生命の原体そのものであり、その限界を越え体外に跳躍
するのも人の宿命なのかも知れない。
五臓六腑の最後に顕れる第六の内臓脳細胞。
五臓六腑・五体五感をファインする第六感・第六体・
第六臓を得るのもまた人間の宿命である。
同じ人間として、女性はより身体性を保ち、男性はより
非身体性に傾き勝ちである。
その男女のバランスが、人間として非常に貴重で重要な
バランスであると感じる。

現代社会は身体性を電気エネルギーに代換えし巨きな力を
得ている現状がある。
身の周りの世話はインフラとなり、その多くは電気エネ
ルギーに拠るものとなっている。
しかし電気エネルギーがいつも人の為に在る訳ではない。
時に落雷のように、時に静電気のように、人の意のまま
にいつも存在する訳ではない。
大地震やスーパー台風、大津波などの自然災害が起きれば、
まず最初に電気系統の被害が災害を増幅させるだろう。
家の中から都市の根本構造に至るまで、通信も交通も照明
も途絶えるからだ。
地上の電車、地下鉄、地下街、高層ビルのエレヴェター
すべてが暗闇となり作動しなくなる。

身体に即した身の周りには、差し伸べられるもう一方の身
の手があった。
電気エネルギーにはその身体がない。
電気も本来自然エネルギーという野生の現象なのだ。
操作しているつもりの傲慢さが、野生の本性を顕す時もある。
電気だけではない。
すべてに自然への畏怖を忘れて、本来人間自身が内臓身体と
いう身体自然を保っている事実も正視しなくなっている。
身の程知らず・・此処に極まる、・・・。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*Hopi&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時(最終日午後5時まで)
 :11月3日(木・祭日)午後2時~/午後5時~2会開催
  お話会「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-27 13:51 | Comments(0)
2016年 10月 26日

あいちからのエールー土曜の夜の夢(13)

岡部昌生氏から送られてきた「あいちトリエンナーレ」
の分厚い図録を見ていると、岡部氏と共に映像作家石田
尚志、大木裕之の名前もあった。
愛知県の様々な場所で展示が展開されている。
そこへ弁護士で画廊主でもあるK氏が来る。
橘内展をじっくり見て、その後話をする。
彼は作家でもあり多才な人物だ。
あいちトリエンアーレも見てきたという。
そして偶然石田尚志の展示前で、石田さんのインタビュ
ー映像を見て、その中で熱くテンポラリースペースに
ついて語っている場面があって吃驚したと語る。
石田さんは新旧テンポラリーで3度の個展、さらに最近
6年5回の吉増剛造展オープニングにほとんど来ている
から、こことは縁の深い作家である。
大木裕之さんともイメージフォーラムの先輩後輩の
仲で、最近では片腕の鈴木余位さん、教え子の成清
祐太君もその流れを汲む若い作家たちである。
そうした一連の人のコアとしてこの場を高く評価し
た事を話したらしい。
人伝てには聞いてはいたが、直接見聞した人から
話を聞くのは初めてだった。
少し面映ゆい気もしたが、素直に嬉しかった。

石田尚志が昨年横浜美術館で優れた大個展を開き、続いて
沖縄美術館でも個展が開かれ、次は北海道でと前からそれ
となく語っていたのを思い出す。
いろいろ考えてはいるが、まだ場所の決定打はない。
茨(いばら)・戸(ト)ーパラト。
あのゾーンだなあ。
と、イメージはある。
吉増剛造・川俣正・石田尚志で構成したい。
札幌ランドの入口・出口、パラト。
大野一雄が踊り、吉増剛造が石狩シーツを広げ、夕張川を
遡上し女坑夫さんと出会う。さらに三笠・炭坑町で生ま
れた川俣正の濃い炭住回路のインスタレーションが加わる。
それに石田尚志の映像がどう加わるか・・・。
イメージは壮大だが、具体的には多大な困難が立ちはだ
かっている。

K氏と話しながら一瞬そんな最近の思いが頭を横切って
いた。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*HOPI&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時(最終日午後5時まで。)
 :11月3日(水・祝日)お話会「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」
 午後2時~/午後5時~ 2回開催。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-26 14:25 | Comments(0)
2016年 10月 25日

20年目の飛礫ー土曜の夜の夢(12)

あいちトリエンナーレ2016に出展していた
岡部昌生氏から厚い2通のレターパックが届く。
今月15日から11月13日まで名古屋で展示
される岡部昌生+鯉江良二「ヒロシマの礫」の
資料と案内状だった。
鯉江さんは喉の手術で今は声が出ないと聞いていた。
港千尋さんと岡部氏との3人の鼎談には出席無理と
思っていたが、一転本人から出席との連絡があった
との喜びの手紙が一通。
そしてその後送られてきたもう一通のレターパック
には、鼎談の模様が躍るような文字で綴られていた。

 鯉江良二さんとの素晴らしいトークショーが実現
 できて、嬉しかった。・・・・
 港さんの、鯉江さんの身体を案じながらも、これから
 の事を問う質問に。「造りつづけること」という筆談
 の文字が、映像画面に投影される瞬間、感銘深く、鯉江
 さんの人柄を伝えきって、感動的でした。

「ヒロシマの礫」は1995年秋旧テンポラリースペース
で「ヒロシマその後岡部昌生+鯉江良二」#032として
展示された。
その際広島で採土したヒロシマ被爆の土と札幌・常滑の
土をそれぞれ混ぜ合わせ、それに日常の廃棄物電気コード
乾電池、釘、ヒューズ、コイル等を混ぜ拳大に再焼成し、
円環状に展示した。
非人間的な原爆の火に対峙する、人間の火の復権という
のがテーマだった。
311・フクシマを経て20年の時を経てそれが甦る。
手術後療養中の鯉江さんも大きな勇気を貰って参戦した
のだろう。
その喜びが岡部氏の文章からも伝わってくる。

被爆した土をそれぞれの土地の土と混ぜ、具のように
日常生活の廃棄物を入れて、みんなでお握りのように
握った。
それを夕張では野焼きし、札幌では陶芸の窯で焼き、
常滑では鯉江さんの窯で焼いた。
400個ほどあったそれらの飛礫(つぶて)は、今散逸
して60個ほどしか残っていない。
それらをかき集め展示し、傷つき老いた鯉江良二が参戦
し、筆談で語り続ける。
なにか胸の熱くなる風景である。
鯉江さんの故郷愛知県で、最高のエールとなったと思う。
古田織部賞で舞踏の大野一雄、写真界のアラーキに次いで
陶芸から授賞した卓越した鯉江良二の一貫した主張が
「チェルノブイリシリーズ」等の作品群に籠められた
反原発・ノーモアヒロシマの姿勢である。
人間の火を求めて、焼き物を通してその火を守り主張し続け
てきた稀有な作家である。
私が仕事を通して初めて出会った以来、何度も札幌に招請し
岡部氏を初めとする多くの展示を心懸けてきた。
「川に還る」「界川遊行」「ルフト626」等、心に刻まれる
歴史に残るイヴェントだった。

私がこれまで繋いできた3っのギャラリー。
その最初の展示の2っは、いつも鯉江良二の展示から始まった。
私には原点のような人である。
今回の無言の熱い復活、その舞台を造った岡部氏に深く感謝
の気持ちだ。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*HOPI&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時:11月3日午後2時~/午後5時~
 一日2回お話会「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503



 
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by kakiten | 2016-10-25 16:58 | Comments(0)
2016年 10月 23日

週末の訪問者ー土曜の夜の夢(11)

開廊して間もなく銀色のVWが駐まり、M夫人が来る。
橘内展搬入時に来て以来だ。
改めて展示を見に来たという。
会場で写真を撮りながら作品全体が気に入ったようだ。
正面の大きな2点組が特に惹かれるという。
私は大野一雄を想い起こさせるキャンドルの灯りと
競演する和蝋燭の奇人の絵画が好きだ。
74歳で欧州で初デビューした頃の大野先生の舞踏
を彷彿とさせる。
そう話すとM夫人も心惹かれたようだ。
5万円なら安いし、札幌に残したい一点だと伝える。
写真家で書も嗜みフラワーアレンジもする多才な彼女
は、優れて意欲的な熟年の奥様である。
お土産に蛸飯のお握りを頂いた。
感謝だ。

M夫人が帰って間もなく、福井から帰省中のM・Mさん
が赤ちゃんを抱いて訪れる。
年末・年始に予定の個展の打ち合わせもあって、初の里
帰りに寄ってくれたのだ。
妊娠中、出産後に拘わらずここでの「それぞれの山田航
<水に沈む羊>展」にも出品してくれた。
赤ちゃんはまだ生後3ヵ月程で、前抱きされ睡っている。
なにか見ていて、お腹の中の延長のようで母子一体感を
感じる。
おんぶとは違う前抱きの抱き方である。
橘内作品はDMにも使われたトーストに布袋さんの絵が
気に入ったようで、特に3点目の満腹したような布袋さん
が良いと言う。
妊娠中のお腹が大きかった所為だろうか・・と勝手に思う。
その内赤ちゃんが目を醒まし、こちらを見る。
うん?と顔を寄せると、最初は訝っていたがやがてニコニコ
と顔を崩す。
最後には口を開けて笑う。
おまえ、歯が無いじゃないか・・とからかうとまた口を開けて
笑う。
知らない人にこんなに笑うのは初めて・・とMさんに言われて
気分が良くなった。

Mさんが帰って間もなく、詩人のFさんが来る。
明日大手の某書店で彼女の初エッセイー本のキャンペーンが
あり、帰省中なのだ。
Fさんの処女詩集、第二詩集はともにMさんの絵が表紙装丁に
使われていた。
それもあり、しばらくMさんはFさんの来るのを待っていたが
少しの時間差で会えなかった。
Fさんは高校2年の第一詩集で全国区の賞を授賞し、今や東京
で詩人としてバリバリ活躍中の第一線だ。
橘内展ではMさんと同じくトーストの絵が好きだという。
この辺は世代なのだろうか・・。
そして今回出版されたエッセイ集をサインして寄贈してくれた。
これで第一、第二詩集のMさんとFさんのサイン入りとこの
3冊目とすべて揃った事になる。
嬉しいな・・・。
途中から映像の成清祐太君も来て、話が弾んだ。

週末の土曜日は、3人の優れたそれぞれの立場の女性が訪れて
ずしんと重みの掛かる時間だった。
男の軽さを実感する気がした。
軽さというか、言葉を発する場所の何センチかの相違が胸の辺り
で上下する感じだ。
ケン&アヤ、キッツ&ナッツ・・・。
やはり草の根の男女を思っていた。
そんな自分自身の未熟さを、今更ながら実感した週末だ。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*HOPI&カチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時:火曜日は搬入・展示日。
 ;11月3日(木)午後2時~/午後5時~お話会2回開催
 「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」各回1000円。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-23 13:19 | Comments(0)
2016年 10月 20日

踵と奥歯ー土曜の夜の夢(10)

歯応えのある物が好きで、朝食のパンも
フランスパンが常食である。
お菓子類も最近べっこう飴を見つけ舐めている。
しかし舐めるのは最初の方だけで、途中からガリ
ガリと嚼む。
それで最近奥歯が欠けて治療となった。
上の奥歯ばかり被害が出る。
下の歯列はほぼ問題ない。
左右の奥歯を治療していると、この奥歯の役割を
実感として感じる。
食物を噛み締め、磨りつぶし、舌で味わい、胃に送る。
前歯の裂く砕く役割の後に、味わう旨味を生むのは
奥歯だ。
これは足で言うと踵の様に思える。
爪先が前歯なら、踵は奥歯だ。
踏み締め、踏み固める。

なにかで頑張る時も、自然と奥歯は固く噛み締められる。
緩く心地良い時は、奥歯も緩くなる。
怖い、可愛いでいえば、怖い時は奥歯も固く噛み締め
られるだろう。
歯応えのない可愛い時ばかりが続くと、きっと脳もゆる
ゆるになるような気がする、

奥歯で噛み締め、踵をしっかり地に着けて口中・足元の
身体性から世界と向き会いたい。
身体の内なる内臓言語が教えてくれる自戒である。

歯の浮くような、浮き足だった生き方をするな・・・と。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*Hopi・カチーナドール展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時(最終日午後5時まで)
 :11月3日午後2時~/午後5時~お話会。
 「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-20 13:24 | Comments(0)
2016年 10月 19日

深い流れー土曜の夜の夢(9)

今年6月ー8月東京国立近代美術館での吉増剛造展
「現代の眼」に「根の精神(こころ)ー怪物君への道」
を書いた。
その中でふたつの近代というのが大きなテーマだった。
明治維新の文明開化という欧米化・西洋化の流れ、そして
昭和米国占領下の近代化の波。
そうした近代化と対峙し拮抗する精神の系譜として、大野
一雄と吉本隆明の存在を吉増作品の流れの中で位置付けよう
と試みた。
字数制限もあり、文章的には不燃焼なものだったが、大きな
方向性としては悔いはない。

このふたつの近代というテーマが脳裏にあった所為か、今回
の橘内光則展にも同じ流れを感じている。
フライヤーにも使われたトーストと目玉焼き・ソーセージ等
の背景に布袋さんのような浮世絵上の人物が現れる3点セ
ットの絵画。
そしてキャンドルの灯りに和蝋燭・蓮の燭台を翳す和の奇人
の絵画。
このふたつの絵の背後にあるトーストとワインに、戦後近代
アメリカと明治近代ヨーロッパを感じたからである。
そこに挿入された浮世絵の平面的な人物。
欧米近代日本の向こうにあった近代以前の人の姿が、クスリ
と笑いと共に併存しているのだ。
欧州的な物、米国的な物、それらを日常として生活に採り入
れた庶民の日常。
そうした逞しさ、ユーモアが、非日常の国家的近代化とは
どこか一線を画して描かれている。
背景のトーストやワインの方が日常現実であり、浮世絵
風の人物の方が遠い過去であるはずだが、どこかでそれ
が入れ替わって、日常現実が書き割りの舞台装置でしか
無いようにも見えて、それが心にクスリと笑わせる素と
もなっている。
江戸城が皇居となり、江戸が東京となった近現代とは、
そんな書き割りの背景と似た時代でもあるからだろう。

そして来月から始まる「HOPI・カチーナ展」もまた深い
縁を感じる。
東京・吉増展で基調低音のように響いていたのは、1994年
書かれた長編詩「石狩シーツ」である。
その詩中に何度も印象的に繰り返される言葉の一つが<カチー
ナ・ドール>なのだ。

 皺、皺、皺、皺、ーカチーナ・ドール、皺、皺、皺、皺、

 片袖の皺、皺、皺、・・・しュツ
 ishikariの香・・・
 (苦シクテ、アサマデ、カチーナ・ドールノ傍ニ、睡ムル)

そのカチーナ・ドールが昨年来縁あって今年も来る。
東京のオフイス・テンの企画である。
私がこの人形と出合ったのは、1994年頃吉増さんから石狩
滞在中に頂いたのが最初である。
この時期吉増さんはブラジル2年の滞在を切り上げ、詩を書く
事すら断念しようかという苦悩の時期であった。
そこで石狩河口近くに数ヶ月滞在し書き上げたのが長編詩
「石狩シーツ」である。
これが今年の東京展でも大きな底流となっていた。

hopi族の精霊人形カチーナ・ドールはそれぞれが意味を
保っている。
因みに私の頂いたカチーナ・ドールは、病から身を守る精霊
と聞いた。

近代以前の浮世絵の人物達も、どこか精霊のような姿をしている。
八百万の神ではないが、近代以前にはこうした神々が自然への畏怖
と同時に生活の隅々に棲んでいたと思う。
現代はその畏怖が消え、心地よいモンスターのみが跋扈している。
”カワイィ~”に偏重し、前提となる”コワ~イ”が脆弱になっている。
怖いがあってこそ可愛いが生まれ、生きるのだ。
自然とはそういうものである。

橘内光則の描く日常と浮世絵の妖精達がこの後どういう生き延び
方を見せるかは解らない。
しかし日常を反転させる力を保つ彼らを受け入れた以上、可愛い
存在だけでは終わりはしない筈である。
精霊達は怖さがあって生まれた神々でもあるからだ。

カチーナ・ドール展の始まりと共に終わる橘内光則展。
次なる予告のようにこの深い流れは続いている。

*橘内光則展「土曜の夜の夢「ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*Hopiーカチーナ展ー11月2日(水)ー6日(日)
 am11時ーpm6時(最終日午後5時まで)
 :11月3日お話会ー午後2時~/午後5時~。
  「平和の民ホピ族と精霊カチーナ」:会費1000円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
予告のように
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by kakiten | 2016-10-19 14:20 | Comments(0)
2016年 10月 18日

ふたりの波頭ー土曜の夜の夢(8)

休廊日、歯の治療に行く。
その時先生に約束した網走・佐々木恒雄の絵を持参する。
早速診療台の前方壁に飾る。
この位置には自分自身のこの場所での経験があった。

診療時後方に台が倒れ仰向けになる。
そして目を瞑り治療が始まる。
口中にドリルの回る音が響き、洗浄の水が流れる。
目を瞑っていると、体はその音の響き、水の流れる感触で
一杯になる。
先生の指示に従い口を開けたり閉じたり、その間も目は
閉じているから、口中の皮膚感覚のみで世界の気配を感じ
ているのだ。
診療が終わり、台が立ち上がり背中が起きる。
その前方に暗い夜空の満月に一艘の舟の人影、その前画面
全体に広がる海の小波が現れる。
それまで仰向けに横たわっていた位置。
そうだ、この絵の海の位置なのだ。
先生の手が繰り出す治療器具は、漁師の棹とエンジンの音。
口中を照らす照明は、月の光か・・。

佐々木恒雄と同じ網走生まれのS先生も、この絵を気に入
ってくれたようだ・
治療を終えた患者さんが目を開いて起き上がり、きっと何人
かがこの絵を体験したかのように言うだろう。
綺麗な海ですね・・。
S先生も故郷の海を想い診療しながら時に目をやり和むだろう。

是非この位置で飾って下さい。
そして今期の漁を終えたら、佐々木恒雄にも見て貰い、
最終的な判断をお願いします。
そんな言葉を交わして治療は終わった。

治療中自分は海になっていたなあ・・。
きっと海で働く五体五感の感覚は、全身皮膚で感受する
音・水・光の坩堝の中なのだろう。
私はきっと、波頭が歯頭の口内感覚の中にいた。
そこでS先生は名漁師で船頭だった。

 ガソリンはタンク内部にさざなみをつくり僕らは海を知らない

山田航のこの一首が網走の海を甦らせ、ふたりの心の海を
繋いだ気がする。
故郷を去り都会で歯科医を営む人と、故郷に帰り漁をし
海に生きる人。
ふたりの故郷がふたりの職場で、心の小波で繋がった。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-10-18 13:41 | Comments(0)