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2015年 12月 31日

大晦日ー土(24)

いよいよ大詰め大晦日。
今年最後の日、色んな懐かしい人や差し入れがある。
ロシア文学者の工藤正広氏が何年ぶりだろう、手打
ちの蕎麦を持参してくれる。
他に西村計雄美術館の磯崎さんが羊蹄のお蕎麦を通院
で留守中に戴く。
また恒例のおせち料理を北村さんが届けてくれた。
尾道から帰郷の野上裕之さんが3才の朝登君を連れて
やってきた。
もうすっかり大きくなった朝登君は昨年の記憶がある
のかすぐ梯子を登り、奥の階段を往復する。
名前の通りの登る男の子だ。
さらに流れている吉増さんの映像を倣って、ぼっこ
で画面を打つ。
映像の手の動きを真似しているのだ。
壁の界川の地図を見て川の線をなぞる。
手の男だなあ。
父に似て職人肌だ。
将来野上君と同じように彫刻家になるかも知れない。
そして尾道土産の珍味を頂いた。
また敬愛するKさんご夫妻からは、郵送で掃除機や
布巾や石鹸と多種類の食料をお送り頂いた。
優れた小型の掃除機はすぐに威力を発揮し、隅々まで
清潔にして大晦日を送る事ができた。

年を越す前夜の準備が何時の間にか、みんなのお陰で
整いだす。
その他にも多くの人たちに支えられ、今年も生きた。
本当に有難う、感謝。
明くる年をまた前を見詰め共に会いましょう。
今年一年、本当に有難う御座いました。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 :参加作家 鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)。
 :フライヤー制作 中嶋幸治・酒井博史
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展「みつめあう」-1月26日(火)-2月7日(日)
 前期1月26日~31日・後期2月1日~7日。後期はインスタレーション。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel..fax011-737-5503
 
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by kakiten | 2015-12-31 14:56 | Comments(0)
2015年 12月 30日

手で触る世界観ー土(23)

吉増剛造の吉本隆明を語る声を会場に流しながら、
ふたりの手が触れる世界観を思っていた。
近代日本のモダニズムの流れと日本ナショナリズムの
本道の地下茎とが、触れる光と水のように根と梢のよ
うに、日本という一本の木の中で出会っている。
ふたりには根と梢の触手という世界に触れる回路がある。
その事への信頼こそが共通のランドとしての日本なの
かも知れない。

近年話題になるアニメの登場人物に扮装するコスプレ
文化。
ハローウインや10年ぶりに公開されるスターウオーズ
の映画で同じように登場人物に扮装する現象がある。
憧れるものへの同化願望とも思えるコスプレ文化現象。
これを見ていて、ふっと国家が本気でそうしたコスプレ
を推進した時代を思った。
鹿鳴館である。
西洋化、近代化に邁進した明治のコスプレ化。
その表層的モダニズムは、真には根を下ろさずもう一度
鎖国のような国粋主義の波に呑まれてゆく。
そして敗戦。
今度は占領国アメリカ文化が押し寄せてくる。
そして政治理念民主主義とともにより大衆的でヤングな
アメリカ風俗としても現象化する。
その流れに最近のコスプレ化現象もある気がするのだ。
晩年吉本隆明がファッション雑誌のモデルをして話題を
呼んだ事がある。
吉本はそうした風俗現象の次元まで、意識の改革の現場を
見詰めていた気がする。
現象から実体を通底し本質への回路を探っていた気がする。
日本の文化の本質を探究し構築し続けた思想詩人の日常
現実への飽くなき回帰。
その象徴が吉増が気づいた吉本の手の動き。
講演の合間の待ち時間で、無心に機械道具を弄る吉本の、
世界に触れるような手の動き。
ゼロ戦飛行機制作に関わった父の子である吉増の技術者の
血。下町の船大工職人であった吉本隆明の生家。
日本の手の文化の系譜がふたりの回路となって、思想とし
て開いている。

吉増さんの吉本追悼の録音を聞きながら、革めてそんな
思いを感じていた。
モダニズムの扮装・コスプレ化が真に根付く、
思想の手の握手。
根付く・・・輸入された明治のポプラの樹のように
というドラマだ。

+吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 :参加作家 鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 ;フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展「みつめあう。」ー1月26日(火)-2月7日(日)
 前後期2週間。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-12-30 14:20 | Comments(0)
2015年 12月 27日

冬の遺書ー土(22)

1950年から51年にかけて26歳から27歳の
吉本隆明が書いた「日時計篇」528篇を写経のよ
うに、吉増自身の言葉を借りれば筆耕して「怪物君」
の草稿は下書きされている。
その吉本の詩行に、言葉を添え色を付け、言葉を発し、
その過程を自らgozocineとして記録した草稿
が現在700葉弱となる。
吉本隆明の日時計篇162篇目の「冬の遺書」を
朗読し解説した音声が届いていた。
吉本隆明が亡くなって追悼の集まりで録音された
ものだ。
敗戦し復興途上にあった日本が戦後最初に経験する
高度成長期朝鮮動乱による経済特需の年が1950年
である。
現在に繋がる経済先行のバブルへの流れが生まれた
年といってもいい年である。
その時代の岐路で青年吉本隆明は戦中戦後の思想の闇
の中で「冬の遺書」を書いている。
その中の詩行に食い入るように読み解く吉増剛造の
朗読と解析。
そこに戦後モダニズムの天才の時代の基層部に迫る
本当の詩人の姿が浮き上がってくる。

 はるか下のペーブメント

という吉本の詩行に注目し解析し朗読する吉増剛造。
かって朝鮮動乱から始まった高度成長時代に建設される
ハイウエーと呼び、スカイウエーと持て囃された高速道路
時代の到来。
その時代の寵児のように、疾走する詩人と持て囃された
吉増剛造が天空を走るハイウエーではなく、<はるか下の
ペーブメント>という吉本隆明の垂直な地下への思想に
感応している。
手元に日時計篇がないので、吉増さんの朗読を聴きながら
の引用で不充分となるが、

 暗い冬が吊り篭のようにぶら下げた建築物
 
という出だしの詩行は、まるで地下基盤杭打ち偽装の時代を
予兆するかのようだ。
そして、

 こしらえられた影にある暗いひとつの遺書を見よ
 ・・・・・
 愚かな父の遺した遺書は はるか下のペーブメントの上にある

と、戦後高度成長時代の足下に潜む日本近代の亀裂の思想底流を
<父>に象徴し詩行に刻んでいる。
吉増自身の言葉に添えば<一文字一文字米粒を拾うように>
吉本の言葉を読み込み解析している。
今吉増が試みている「怪物君」草稿は、そうした日本近代の
地下底流・伏流水とショートカットされた表川・新川との血ま
みれの闘いの記録なのだ。
この録音を流しながら会場に居ると、その静かな熱い闘いの呼吸
が、血肉に染入って在るように草稿が見えてくる。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 ;参加作家 ぅ鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 :フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 ;会場構成 河田雅文
+高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週間

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2015-12-27 15:31 | Comments(0)
2015年 12月 25日

交感・剛造ー土(21)

前回の吉増剛造展「水旗ヲル日・・・」では、草稿の数々が
台の上、透明なファイル、額装、アクリル板等で展示された。
そしてその草稿の描かれる色彩の筆の過程が、GOZOCINE
で詩とも呟きともとれる独白とともに上映された。
吉本隆明の「日時計篇」を書き写した草稿に思いを重ね独白を
続け絵筆を自在に揮う吉増剛造。
その生々しい絵筆が生み出す色彩と語りは、吉本的にいえば
正に<自己表出>そのものの姿だった。
日本の近代化が西洋への<指示表出>で始まったとするなら
鹿鳴館から現代のゴスプレ仮装に至るまで、自己表出の基層
は、今もまだ固い土着の闇に沈んでいる。
仮装で始まった日本の近代化、そのモダニズムは形を変え
戦後高度成長期の上昇気流の中、ある意味で疾走する詩人
吉増剛造の出現もその波長の中で注目を集めたともいえる。
その対極の構図にいた吉本隆明の戦後第一次高度成長期
朝鮮動乱のあった1950年代の初期詩篇を、今2年以上かけて
戦後モダニズムの先端にいた吉増剛造が写経のように書き写し
一行一行に語りかけ赴くまま絵筆を揮っている。
その生々しい記録を自らがカメラ片手に撮影し、その通し番号の
付箋の貼り付けた草稿が会場に展示されたのである。
都度都度撮影され送られてきたDVD映像は、合計7枚に及ぶ。
そしてその会期最後の映像では、孤独なモノローグの語りが一変
して「水機ヲル日・・・」展に関わった札幌の友人達の名前に呼び
かけて終わるのだった。
この孤独な吉本隆明と向き合う自己表出の個の世界から、遠い
展示の世界に関わった友たちへ、最新の草稿を通して呼びかけ。
これが今年の「怪物君 歌垣」の序章ともなっている。

そして前回に続き中嶋幸治さんが。それに応えるように今回の
フライヤーを制作した。
その思いは紙片に記しフライヤーに同封された。

 ・・・これまでのテンポラリースペースにおける吉増剛造展を
 踏まえて、詩の草稿の筆跡と色彩を平面状の升目から雲の
 様に立ち上がらせようと試みた。そこには、言葉から羽化する
 「怪物君」の甘美な姿を想像していたのかもしれない。
 ・・・・
 この案内状は「怪物君 歌垣」という題字を基点に、歌の根源
 へ立ち返るとともに詩の現在進行形を立ち上がらせることを
 製作者同士の対話と想像によって目指し、さらに呼応するよう
 にして、木版印刷、活版印刷、凸版印刷、ゴム版印刷、オフセ
 ット印刷、といった新旧の印刷技術を用いて制作した。

今回直接名を連ね作品を発表した鈴木余位氏には、展示草稿
以前の草稿を映像化依頼している。
村上仁美さんには直接今回の草稿を折りたたまれた絵の具滲む
生々しい状態で送られ、”秘すれば花なり”を示唆した。
山田航さんには、今展示に名を連ねタイトルに歌垣と題した事で
無言の内に自作の詩で歌での制作参加を促した。
それぞれが全力でこれに応え、前回の最後のヴィデオの呼びか
けに応えたのである。
国家的ゴスプレから始まった日本の近代化・モダニズムが、今
吉増剛造の孤独な自己表出の世界で、吉本隆明とこの地の友人
たちとの小さな対幻想の輪の中で少しだけ報われようとしている。

拙い、小さな会場からの報告です・・・。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月10日まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 参加作家 鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 会場構成 河田雅文

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503





 
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by kakiten | 2015-12-25 13:53 | Comments(0)
2015年 12月 24日

柔らかい風が届くー土(20)

ロジャー・アックリングの本が英国から届く。

「BETWEEN THE LINESー The work
 and teaching of Roger Ackling」
と題された270頁に及ぶ紺の布張りの重厚な一冊だ。
久し振りに本を手にしたという感じのする古典的な
懐かしい感じさえする装丁本だ。
造本の堅牢さ、装丁の布の深い紺色、手に程好い
大きさ・重さ。
深い海を渡る柔らかい風のような本だ。
英語は堪能ではないので、書かれてる内容は直ぐには
分からない。
私へのメイボン尚子さんのインタビューは英文となり
「Morai」という題名で、ロジャー自身の望来へ
の文とともに86頁から93頁まで掲載されていた。
作品写真も多数載せられていて、中に見覚えのある石狩・
望来制作の作品も何点かあった。
13年前に滞在制作した作品と滞在の記録本とレクチャー
ヴィデオ。
これらが全て揃っていれば、私達の手で独自にロジャー 
イン 望来としてこの地でロジャー・アックリングを
追悼できただろうと思うと残念である。
英国本は英国本として見知らぬ望来に一章を割いている
のだから。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 ;参加作家 鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 :フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週間

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-12-24 17:19 | Comments(0)
2015年 12月 23日

草稿という赤子ー土(19)

我々はひょっとするとひとつの出産に立ち会って
いるのかも知れない。
村上仁美さんが披いた吉増さんの草稿。
あえて五つか六つと事前に連絡あった折り畳まれ
たスカーフ包みの草稿の束。
それは白い紙にさらに一個ずつ包まれた絵の具滴る
ような六つの草稿の塊だった。
六つを敢えて五つか六つと表現した事と作品草稿の
生々しさに、咄嗟に浮かんだ言葉が五臓六腑だった。
その閉じられた魂を村上仁美さんが見事に取り出し
展示に加えた現在、私達は吉本隆明と吉増剛造の
孤独な戦後根の世界の苦闘に生々しく今立ち会って
いる気がする。
吉本隆明という戦後思想の太い骨に血肉が生え出た
できたての胎児のような、か弱い根の子だ。
参加した我々は、全員産科医のような立会人なのか
もしれない。
今展示を見ながらそう思える。

来年6月東京・竹橋の国立東京近代美術館で吉増剛造展
が予定されている。
この場とは比較にならない規模の場所である。
そして内容もこれまでの吉増剛造のすべてが展示される
大規模なものとなるのだろう。
しかし今回の「怪物君 歌垣」の内容は、吉増剛造の眼
(まなこ)として存在する事も間違いない事実だ。
日本の近代の深い処で、日本のモダニズムとナショナリズ
ムの根が、吉本隆明と吉増剛造というふたりの根の葛藤とし
て吉増剛造は見えない闘いを続けてきた。
そのひとつの結果が今回の展示である。
この生まれたばかりの胎児は、来年6月どう成長した手足
を見せるだろうか。
今回立会人のひとりである鈴木余位氏が、再び映像で参加
する事が予定されている。
この場で5年連続したまなこ(眼)が、瞳となって
如何なる眼差しを発するのか。

そう思える・・・。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月15日(火)-1月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 :参加作家 鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週間。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2015-12-23 14:18 | Comments(0)
2015年 12月 22日

脈拍するー土(18)

帰京前吉増剛造さんが来る。
酒井博史、中嶋幸治、山田航3君も集まって
今回の仕事を労われた。
オープニングの夜とはまた違う関係者だけ
のあつまり。
吉増さん持参のワインとつまみを肴に乾杯。
オープニングの夜人の勢いで倒れた村上さん
のコウゾの作品は立て掛けられたままだった。
本人は仕事でまだ顔を出せないでいる。
今日も残念だが来ていない。
吉増さんが何度も呟いた。
このワインは少し残して置こう、村上さんにね・・。
今回の中嶋さん、酒井さん制作のフライヤー、
山田さんの長歌朗読、鈴木余位さんの映像構成
村上仁美さんのコウゾの木皮の作品とすべて
嬉しかった様だ。
一作日のオープニングのガラスへの頭突きは記憶
に無いと言う。
頭の打撲もたんこぶか青丹でもと思ったが、何も
無いという。
ラディカル剛造健在なり。
安心した。

翌日村上さん休みの日、作品の再構成が始まる。
コウゾの皮の間に吉増さんの草稿が5枚内皮のように
顕れる。
また吹き抜けの天井から電球の周りに吊り下げられた
コウゾの皮の周りにも原稿を包んでいた絵の具の染み出た
薄紙が皮膚のように浮き出て吊られた。
会場の風景が変わる。
空間がより脈拍するかのようになる。
そして初めて生々しい吉増剛造の草稿は包まれ折りたた
まれた閉塞・遮蔽状況から解放されたのだ。

オープニングの熱気の中で木の皮一枚の薄さに抗して
微妙なバランスで立っていたコウゾの皮の作品。
それが別の力で甦ったのだ。
そして吉増さんの生々しい草稿も初めて全貌を晒し、
息を吐いている。
吉増さんに見せたかった。
本人の望んだものも、きっとこの姿だったのだろう。
その期待に応えるのに、最初の作品形態が崩れる出来事と
作者の心の受容する気迫とが整う時間があったのだ。
折りたたまれた六個の草稿は今本当の内臓・筋膜のように
コウゾの樹皮に浮き出ている。
詩人の五臓六腑が脈拍を打ち出したようである。

今回の展示はこれでひとつの結果を生んだ。
吉増剛造の吉本隆明への孤独な写経のような仕事。
その日本近代の根への渾身全霊のアプローチが「怪物君」
と名付けられた現在六百余葉に達する草稿である。
テンポラリースペースで5年に渡り発表されたこの仕事を
より若い世代を含めた友人たちが芽として葉として枝として
参加し一つの結果を開いたのだ。
そしてそれは同時に戦後思想の大きな骨格吉本隆明と戦後
モダニズムの筋肉吉増剛造が戦後近代の根の世界から新たな
秘した花として、ひと時顕在化した瞬間でもあるのかも知れない。

+吉増剛造展「怪物君 歌垣」-12月15日(火)-1月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 :参加作家 鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 ;フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週間

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-12-22 15:47 | Comments(0)
2015年 12月 20日

透骨/頭骨ラディカル剛造ー土(17)

土曜日夕方吉増剛造さん来廊。
すでに人が集まり本人の到着を待っていた。
会場入り口に座し村上さんのコウゾの皮の作品
壁一面に流れる鈴木余位さんの映像をじっと見渡
している。
本人を迎えた会場はそのままオープニング会場と
なり、次々と人が集まってくる。
吉増さんの恒例の差し入れシャンパンが開かれ
みんなに配られて乾杯だ。
余位さんの壁いっぱい上下左右に動く画面に語りか
けるように吉増さんのトークは続いた。
さらに吉増さんのトーク指名が参加者に向けられる。
今回の映像が流れる真ん前で指名された参加者が語る。
今回のフライヤーを制作デザインした酒井博史・中嶋
幸治の両君もその製作意図を熱く苦労話を交えて語った。
久し振りに来た登山家の中川潤氏は、大画面映像の前
にどかっと胡坐をかき、それだけで場の絵になっている。
それから床に座って話すのが自然になる。
これがこの古民家の保つ自然な尺度・間合いなのだろう。
上下左右に揺れる映像も壁いっぱいに広がっているので
座した方がより体感できるようだ。
そしてその前で山田航さんの長歌朗読があった。
この日の為に創作された自作詩長歌。
事前に録音し設定された本人の朗読する声が2階吹き抜け
から流れ出す。
と同時にその声と唱和して本人が声を出す。
朗読の二重奏だ。
「流星のハイウェーイ」と題された長歌は、ハイウェー!
の連呼が印象的だ。
今彼が住むマンション前に壁のようにそそり立つ高速道路
の高架壁。
そんなハイウエ-の日常現実と、”ハイウェーイ”ともて
はやされたふたつの時代の差異。
そこから生じる憧れと現在とがこの長歌のトニカとなって
、それはそのまま吉増剛造への山田航の屈折した怪物君へ
の情念と思えるものだった。
この日様々な人がこの「怪物君 歌垣」の中で今を語った。
そしてそれはみんな今現在の自分を基底に根を晒し、皮を
晒したように思う。
展示に名を連ねた山田航が一番ありのままに、時代と吉増
さんへの思いの今を声で絶叫するように顕したかと思う。
時に”疾走する詩人”とハイウエーの時代に呼ばれた吉増
さんには、この声はどう響いたのだろうか。

宴も後半お開きとなって吉増さんがヨロヨロと帰路へ向かう。
仕事で顔を出せない村上仁美さんへの未練を語りつつ、出口
のガラス戸に手をかけながら、頭は横に吊られた高臣大介
の常設のガラス作品3房の透明な「あふれでる」に激しく
頭突・強打した。
ガラスは割れて落下し音を立てる。
吉増さんはそのまま外へ去って行った。
何人かが凍った雪道の転倒を心配し後を追い、タクシーまで
送る。
ラディカルなり、吉増剛造頭骨!
疾走するなり、吉増剛造透骨!
ガラス破壊せり。

やはり凄いオープニングだった。

+吉増剛造展「怪物君 歌垣」-12月15日(火)-1月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休:正月3ヵ日休廊。
 :参加作家 鈴木余位(映像):村上仁美(花):山田航(長歌)
 :フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 :会場構成 河田雅文 
*高臣大介ガラス展ー1月下旬前期後期2週間

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fac011-737-5503
 
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by kakiten | 2015-12-20 15:16 | Comments(0)
2015年 12月 18日

根の目・ランドー土(16)

吉増剛造の昨年の自写制作映像を見ていると、
今回の3人の作家を選び参加させた「怪物君 歌垣」
の自然な意図が見えてくる気がする。
根の心・目だなあ。
吉本隆明の初期詩篇を3年に渡り写経のように書き
写し、そこに絵の具を塗りながらその過程を撮影し
独白のように言葉を紡ぎ重ねる。
戦後対照的な生き方をしてきたふたりの詩人。
その二人が今日本の近代の地下の世界、根の世界で
出会っている。
吉増剛造の触手が根毛のように吉本隆明という水の根
に触っている。
この場所で五回の展示を重ね、今その宇宙は映像の鈴木
余位・花の村上仁美・歌の山田航・美術家の中嶋幸治
・活字職人の酒井博史・粋人河田雅文にも地上の芽、
光の根毛のように触れている。
未完の草稿「怪物君」という根の宇宙は、人という地中の
根を銀河系のように顕しだしたのだ。
かって忠実な天皇国家主義だった青年吉本隆明は、その自責
を徹底した思想検証として戦後の出発を始める。
高村光太郎論を初めとして共同幻想論に至る活動は、時に思想
詩人として全学連の指導的カリスマとしても存在したのだ。
一方吉増剛造は、若くして「黄金詩篇」を携え疾走する詩人
として高度成長期の華やかな上昇気流とともにデビューっする。
日本近代の挫折と上昇の背景の相違、そしてモダニズムの系譜
と日本の根を抱え込もうとした思想詩人の差異。
そんな対照的な立ち位置のふたりが今近代の地の底の根の世界で
共有する土と水の根の感性を根毛のようにして、触れている。
その吉増剛造の内臓表現が映像となり草稿怪物君となって顕われ
、さらに人の根となって今回の展示ともなったと思う。
吉増剛造の自耕するランド。
そのランドという地上地中が、今回の「怪物君 歌垣」という展示
なのだと感じる。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-12月15日(火)-1月10日8日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 :鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 :フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-12-18 13:56 | Comments(0)
2015年 12月 17日

展示完成・初日夕ー土(15)

初日モニター設置最後の調整が終わる頃人が
集まってくる。
吉増さんは週末来札予定だが、主役不在でも
初日は初日。
作品の周りを熱心に見守る人と、奥の談話室で
すでに呑み始めているグループ。
そこへ酒井さんが出来立てのフライヤーを持って
到着。
中嶋幸治さんの力作デザインだ。
酒井さんの印刷技術をもってしても、相当難産だ
ったと聞いている。
5回目の今年難度はさらに増したようだ。
細い糸で朱色に引かれた原稿の桝目の上に彩雲の
ようにかかる色彩。
まるで吉増さんの草稿の一部のようだが、これは
中嶋さんのイメージ制作。
その上に吉増さんの「怪物君 歌垣」の活字凸版
文字が被さっている。
この文字は酒井さんが全体重をかけて、上から印字し
その窪みが裏へと抜けている。
原稿用紙の桝目の垣から彩の雲が立ち上がるイメージ
のようだ。
正に今回の折りたたまれた草稿を包む紙の上に滲み出
た絵の具の色を想起させる6個の作品のイメージに
符合する色彩のコンセプトだ。

鈴木余位さんの吉増草稿を撮影構成した映像。
村上仁美さんのコウゾウの皮で構成した作品。
山田航さんの自作詩朗読で披露される歌。
これらとともにあらゆる印刷技術を駆使して作られた
フライヤーもまた中嶋・酒井両君の作品である。
吉増剛造という星を廻る惑星のように小宇宙が生まれ
周り出している。
初日に自然と集まった人たちは、星雲のようだ。

一度消えかけた雪が、今日再び降り積もりだす。
明日から冬本番が始まるだろう。
寒気と白い雪の煌きと翳の中で、「怪物君 歌垣」は
如何なる光で冬の季節の桝目から溢れ出るのだろうか。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-12月15日(火)-1月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 :鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 ;フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 :会場構成 河田雅文
*高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週間

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel.fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-12-17 16:45 | Comments(0)