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2013年 09月 29日

緑の亀裂ー逍遥・長月(23)

沖縄の与那覇幹夫さんから留守録がある。
小熊秀雄賞に続き、小野十三郎賞を受賞したという。
北の旭川の賞に続き南の大阪の賞と南北に跨る快挙だ。
授賞式で旭川からわざわざ札幌まで尋ねて来てくれた時
は、まだ春だったかしら。
沖縄といえば、豊平ヨシオさんの青い亀裂の作品を思い出す。
たった一度の訪問だったが、是非見てほしいという言葉に惹か
れて訪ねたのだ。
丘の上のプレハブのようなアトリエには、青い沖縄の海と空の
ような画面に縦に亀裂の入った作品が百点以上壁一面に並んで
いた。
あの時の強烈な印象は、初めて見る沖縄の海と空の色とともに
忘れる事は無い。
美しい南の青い島に深く刻まれた目に見えない亀裂。
それが壁一面に飾られた全ての作品ひとつひとつの亀裂に宿って
いたと思える。
豊平さんが鮮烈な青を感じさせる作家であるならば、与那覇さん
の作品には赤を感じる。
沖縄では昔、色は赤・青・白・黒の4原色だったという。
これは日本の古代にも通じて、青春・朱夏・白秋・玄冬の四季
を表す色とも重なる。
その意味で沖縄という日本のひとつの源流のような場所に、文化
の基底とも思える原色を保ったふたりの表現者が存在する事に
稀なる喜びを感じるのだった。

与那覇さんは今体調を崩している豊平さんに年末前には会いに
行くと話していた。
赤と青のふたりが会って、どんな沖縄が見えるのだろう。
出来ればその席に一緒に立会いたい気がしてしようがない。
そしてその時私はきっと、札幌の緑の亀裂を抱いてふたりの席に
立っているに違いない。

*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー10月6日(日)まで。
 am11時-pm7時:月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1期10月8日(火)-13日(日)コレクシヨン展
 2期10月15日(火)-27日(日)新作自由群展

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-09-29 13:35 | Comments(0)
2013年 09月 28日

札幌の屋根ー逍遥・長月(22)

今日も気持ちの良い秋晴れの空が広がる。
気温も昨日より暖かく風が柔らかい。

先日陳情書を持って初めて市役所の17階を訪れた時、窓いっ
ぱいに南西部の山並みの広がっているのが見えた。
空と地の境目が、稜線の輪郭でくっきりと浮かび上がっていた。
近くのTV塔が妙に貧弱に見えて、遠くの山並みの稜線が美し
かった。
あの都心のど真ん中で、あんなにも空を横切る稜線が見えるの
がとても新鮮に感じたのだ。
そうだよなあ、南西部に連なる山岳地帯から流れた多くの川が
伏流水となり泉となって、この札幌の扇状地を造っている。
そして東北部の石狩の海へと流れてゆく。
南から西へと連なる山脈群は、札幌の屋根のようなものだ。
この屋根の下に街があり、その街の屋根の下に人が住む。
そして街の向こうにある自然の屋根のような山脈を、あの高層
ビルの上階に立たなければ見えなくなっている現実に、ふっと
この時気づいたのだった。

時計台を足元に見下ろす最初の高層ビルが、この市役所のビルで
ある。
それから時計台は日本三大がっかり風景の一つとなる。
屋根の見えない高層ビル群がこの後市街地再開発事業によって続々
と冬季オリンピックまでに建設されていく事になる。
そして地下鉄の開通と同時に地下通路の拡充が始まり、今はチカホ
なる愛称まで付加して、さらなる大規模地下通路を完成させた。
それに伴い駅前通の街路樹も交換され、根の浅いオオバボタイジュ
に切り替えられている。
先哲山田修三さんが春楡の茂る札幌と讃えた風景は、この時消えた
のである。

 大通りの大木はだいたいこの木であったが、最近は駅前通りも
 チキサニの並木になった。このごろは、隠居して東京暮らしで
 あるが、ときどき戻って来て、こも聖樹の並木が育ってきた姿
 を見て、ああ、いいな、と思うのだった。
 もっともっと、春楡の茂る街にしてほしい。

   (「春楡の茂る札幌」-1986年刊「アイヌ語地名を歩く」
     所収)

山脈が大地の屋根なら、街の屋根は建物のそれであるだろう。
さらにその下に住む人間にとってもうひとつの屋根とは、木々の梢が
空と地を繋ぐ屋根なのかも知れない。
この両方の屋根を喪失して、地下街・チカホがあり高層ビル群がある。
この現実を今は亡き山田修三さんが見たら、なんと言うだろう。
そして、<ときどき戻って来て><ああ、いいな、><もっともっと>
とは決して口にはしないだろう。

  堪えがたく
  よろこびとさびしさとおそろしさとに跪く
  いのる言葉を知らず
  ただわれは空を仰いでいのる
  空は水色  
  秋は喨喨と空に鳴る

*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー10月6日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-9斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-09-28 13:24 | Comments(0)
2013年 09月 27日

秋晴れの日ー逍遥・長月(21)

冷涼な空気に光が溢れている。
久しぶりの青空、秋晴れが広がる。

 秋は喨喨と空に鳴り
 空は水色、鳥が飛び
 魂いななき
 清浄の水こころに流れ
 ・・・・

高村光太郎が「秋の祈」で冒頭に記した詩行である。
そして最終行は

 いのる言葉を知らず
 ただわれは空を仰いでいのる
 空は水色
 秋は喨喨と空に鳴る

この詩をふっと思い出させるような今日の空だ。

 かって札幌は、エルムの都と呼ばれていました。札幌は豊平川水系の
 扇状地に明治以降出来上がった街で、泉端からは泉が湧き出て小川を
 形成し、多くのエルム(春楡)が自生しておりました。かって街中に
 残っていた大木が時にチャチャニレ(年老いたニレ)とも愛称され、
 北一条通りの名物であったこともありました。エルムは高水位の地形
 を好んで自生し、春楡がアイヌ語では、チ・キサ・ニ(我ら・こする・木)
 といわれ、本州の檜(火の木)に対応する生活文化を支えた大切な樹
 であったといいます。

 現在、そのエルムの森は次第に姿を消し、わずかに公共的な敷地にしか
 その姿を見ることが出来なくなりました。その森の面影を今に残す一帯
 が、植物園の森であります。ここは原生林の姿をそのまま囲いめぐらし
 て植物園とした、先人の英知が活かされた場所であります。
 さらにここは、北方の北5条通りを挟み伊藤邸のある広大な往時の面影
 を残す庭へと続き、JRの高架線を越え、札幌市指定文化財の清華亭庭
 のエルムの大木へと繋がります。清華亭はさらに北海道大学の広大な構
 内の森へと続き、この緑の運河ともいうべき森と泉のゾーンは、札幌の
 原風景としてかけがえのない<風景の文化遺産>のゾーンを形成してお
 ります。

          (「緑の運河エルムゾーンを守る会」趣意書から)

何故かこの文面が高村光太郎の「秋の祈」と、ふっと呼応して思い出され
たのである。
秋の水色には、森・泉・空がよく似合う。
エルムの梢にも、秋は喨喨と空に鳴る。

*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー10月6日(日)まで。
 am11時ーpm7時;月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1期「コレクシヨン展」10月8日(火)-13日(日)
 2期「新作自由群」展10月15日(火)-27日(日)

 テンポラリースペ-ス札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-09-27 16:41 | Comments(0)
2013年 09月 26日

駅とは?ー逍遥・長月(20)

朝、宇田川洋氏と市役所庁舎で待ち合わせ陳情書を提出する。
「緑の運河エルムゾーンを守る会」代表の宇田川氏は、珍しく
背広姿である。
17階にある受付場所で、淡々と若い職員の応対がある。
多くの陳情者が色んな案件を携えて訪れる所なのだろう。
極めて事務的な応対である。
後日あらためて連絡がある事でこの日は終了した。

昨夜のニュースでさらにまたJR北海道の手抜きが報道された。
かっての民営化のひずみが、ここのところ一挙に噴出している。
採算重視に偏り、本来の鉄道の公共性が一企業の利益追求の流れ
に堕して、道都中心のJR産業へと変質している所為である。
その象徴がJRタワーに代表されるテナント商法だ。
これは駅本来の保つ停車場機能よりもショップを主体にした賃貸
業化で、そこに本来の公共的な輸送事業よりも道都特権化を消費
を中心に据えた利益追求構造が透けて見えるのである。
JR北海道という一企業の圧倒的な寡占事業に呼応するように行政
も駅前通りを大規模な地下道化を推進し、さらにはその目くらまし
のように多くのパブリックアートが設置される。
送付されてきたJRタワーの資料によれば、今年2月現在で52点
のオリジナルアート作品が配置されているという。
さらに東地下コンコースに壁面のアートボックスを設けて公募作品
を展示している。
この地下通路に隣接する札幌エスタビルの11階には、美術展示場
としてプラニスホールがあり、「アートプラネッツ展」「織姫たちの
スイーツ・アート展」などが「駅直結の文化発信拠点」と謳って華々
しく開かれた。
正に天も地もアートで花盛りのJRタワー界隈なのだ。
このJR北海道の札幌一極集中化は、衣食にアートを加えて豪華に
亜流東京的にショップ化し、駅は集客の場と化して本来の輸送乗り
継ぎの停車場機能は埋もれてきているのである。
これらの動向に政治も行政も財界も文化も呼応するかのように、この
大規模地下通路に連動して500m美術館が設けられ様々な形でアー
ト関連の催しが続けられている。
明年の国際芸術祭関連事業もまたその中に入っている。
地下通路そのものをすべて否定する気は毛頭ないが、ここに文化が
育つかといえば、それはやはり否定的足らざるを得ない。
インフラとして否定はしないが、文化を生む土壌とは思わない。
何故ならそこには屋根が無い、空が無い、森が無い、歴史も無い。
タワー系高層ビルもまた同様である。
かって駅は駅であり、商店街はその駅に続く駅前通にあった。
その代表が札幌では駅前にかってあった百貨店五番館である。
この赤レンガの建物で親しまれたデパートは、戦後の黒澤明の映画
「白痴」の冒頭シーンにも登場した。
後年「影武者」の撮影で再び札幌を訪れた黒澤は呟いたという。
「もうこれは札幌ではない。」
この建物は後に五番館西武となり、今はただの空き地、駐車場と化し
て何も残っていない。
この事実は、駅前通の地下化と駅のJRタワー化と無縁ではない。
本来の駅が消え、その結果として地上の駅前通りが消えた象徴なのだ。

どんな小さな駅にも、その駅本来固有の匂いや風景がある。
東京の山の手線でさえ、各駅に固有の風景がある。
そうした多様性を喪失して、上っ面の亜東京化ばかりを追いかけエセ中央
化し、衣・食の欲望とアートばかりが踊っている。
駅が駅本来のものを失えば、輸送事故多発もまた必然となる。
それは何もJR北海道だけの事ではない。
芸術・文化の現実もまた然りであるのだ。

アートって何さ?
地下街アート?ビル壁アート?ネイルアートだね・・?

*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー10月6日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1期コレクシヨン展・2期新作「自由群」展
 1期10月8日(火)-13日(日)・2期10月15日(火)-
 27日(日)。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-09-26 15:50 | Comments(0)
2013年 09月 25日

秋雨に濡れてー逍遥・長月(19)

雨本降りの予報だったが、小雨だったので自転車で走る。
途中から細かく濃く雨が降ってくる。
引き返そうかとも思ったが、え~いこのままと突っ走る。
画廊に到着する頃には、袖を通してズボンを通して雨が
染み込んで冷える。
走り自体は通りに人も少なく、タイヤが路面に吸い付いて
快調だったが、帽子も袖もズボンも濡れて寒い。
久しぶりにストーブを点け珈琲を沸かし暖まる。
Kさんからfaxが入っていて、「文学界」9月号購入した
が山田航氏のエッセイが見当たらないとの問い合わせ
だつた。
え~?と思い本を出し良く見ると今月号は10月号だ。
文芸春秋社90周年の文字の9が目立って、今月9月と
重なり9月号と勘違いして記載したのかもしれない。
今月号とは10月号が正しい。
その旨返事をする。
その後瀬戸君と山田さんも来て、その話をする。
みんな今月号とは9月号と思っていたと笑う。

次回佐佐木方斎展まで今展示中の一原有徳と佐佐木方斎の
作品を一部入れ替え整理する。
「格子群」の小品7点を新たに加え、2階回廊部分に展示
して「余剰群」「自由群」の3シリーズを纏めて見えるよう
にした。
1階部分は「美術ノート」全10巻全部と「格子群」の大判
10点に一原有徳の鏡面ステンレス3点セットはそのままで
熱版「スパナ」を南壁に展示する。
サブタイトルは「小樽・札幌」として、コンセプトを明確にした。
この後来月に佐佐木方斎の新作「自由群」が展示されれば、
流れがひとつ大きく浮かびあがってくる。
1980年代からのひとつの軌跡が見えてくる事だろう。
札幌の風土から生まれた純粋抽象の軌跡でもある。
そして今月中に緑の運河エルムゾーンを守る会の署名を添えて
札幌市へ陳情書の提出をしなければならない。
どこまでこの運動が効果があるのか分からないが、今まで
主張し実践してきた事はとにかくとことん徹底してやるしか
ないのだ。
金も無く名も無く力も無く、無い無い尽くしではあるけれど
札幌への愛だけは深く保っている。


*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー9月27日(金)
 -10月6日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1期「コレクシヨン展」2期「自由群新作展」
 -10月8日(月)-13日(日)1期ー15日(火)-27日(日)2期。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2013-09-25 13:04 | Comments(0)
2013年 09月 24日

うすら寒い日ー逍遥・長月(18)

今から4年前の今頃の新聞切り抜きを読むと、サッポロを
アートの街にという活字が躍っている。
その前後に駅前通地下芸術広場構想JR札幌ー大通整備計画
が華々しく掲載されている。
これらのキャンペーンは3月12日の地下歩行空間完成日に
最高潮を迎える筈であった。
しかし皮肉な事にこの地下通路オープン日前日に東日本大震
災3・11が起きるのである。
この地下通路をJR駅との連携で新たな駅前通りとして位置
づける新都心産業構造が窺える構想の中心にアートが据えられ
、その背後にはJRの資本的商業的野望の構造が透けて見える。
この地下大規模通路の駅前通を背骨にして枝のようにその周囲
にビル群が連なり、アートも飾られる。
500m美術館にビルの上のプラニス美術館、さらには現代美
術研究所(CAI)という重鎮ギヤラリーやその他の画廊群が
連なって衣・食とともにアートがこの界隈を形成している。
3・11以降もこの基本的な構造の流れは変わらず、来年には
国際芸術祭も予定通り計画されてやはりこの地下通路を主たる
場としてプレの企画が次々と為されている。
しかしながらこのところのJRの90を越える点検ミスの発覚
や事故の多発状況が全国区のニュースになるなどして、本来の
輸送事業の本質が問われる事態が生じている。
私鉄の少ない北海道で、旧国鉄のJR一社寡占状況の驕りが
ここへきて出ていると思わざるを得ない。
さらには道都意識に象徴される地方軽視の札幌一極集中の悪しき
中央化である。
札幌駅前だけをいくらアートで飾りたてても、それは本来の札幌
自体も見えなくし、ただの道庁所在地の北海道版霞ヶ関になるだ
けなのだ。
駅とはもっと鉄路の交叉も含めてそれだけで美しいものだった筈
である。
機能性の保つ美、それ自体が駅・鉄路・列車の姿にあった筈であ
る。
何かが本末転倒して狂っている。


*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー9月27日(金)-
 10月「6日(日)am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2013-09-24 14:28 | Comments(0)
2013年 09月 21日

動き出すー逍遥・長月(17)

伊藤邸敷地保存運動の陳情の動きが加速する。
情報に拠れば。保全地区と開発する地区を分離し
高さ90mの高層マンシヨンを建設可能にする案
が浮上しているようだ。
全面保存の為に早急に陳情書を提出して意思を明
らかにしなければならない。
1・4haの広さに半分が90mもの高層マンシヨン
が建てば、その高さの分だけ地下の水脈が絶たれ、
保全とは名ばかりのものとなる危険性がある。
エルムの大木も自生していく事が困難となるだろう。
生きた地形こそがかけがえの無い自然遺産であり、
二度と戻らぬ風景の文化なのだ。
大倉山の頂上から墓石のようなビル群の間を縫うように
はっきりと見える、緑の線。
それが大通りから植物園を経て、伊藤邸ー偕楽園緑地
ー清華亭ー北大構内と繋がる緑の運河エルムゾーンで
ある。
かって小樽運河の保存運動の時にも同じような全面保存
か部分保存か埋め立てかの論争があった。
結果的には全面保存は敗れて、部分保存となる訳だが、
この人工の運河とは本質的に違う闘いが、このエルムゾ
ーンにはある。
それは植生という生きた自然の保護が前提となるからで
ある。
このゾーンのエルム(春楡)に代表される植物は、生きた
生物であり、さらに多くの昆虫もまた生息しているに違い
ないからである。
先住人の遺跡跡、メムと呼ばれた源泉の痕跡、鮭の遡上し
た源流の面影を今に遺す生命の総合的な場所なのだ。
そうした希少なゾーンが札幌駅前から僅か数百mの処に
今も残されていてそこを断絶するかのような高層ビルを
建ててそれが本当に札幌という都市の為に真に必要なもの
かどうか、他人事ではなく熟慮して欲しいのである。
さらにこのゾーンには近代の洋館をはじめ優れた建築物も
多く残され札幌の歴史と風土が体験できる貴重な道程とも
なっている。
もういい加減に経済至上主義のエセ文化思想とは決別しな
ければいけない時が来ている。

*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー9月27日(金)
-10 月6日(日)am11時ーpm7時:月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1部コレクシヨン展・2部新作「自由群」展
 10月8日(火)-27日(日)

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by kakiten | 2013-09-21 16:30 | Comments(0)
2013年 09月 20日

熊の巣窟ー逍遥・長月(16)

パソコンのご機嫌が悪くて、”ようこそ!の表示の後なにも
映らない。
従って何もアクセス出来ず、あちこちキーを叩いて、ひょい
と表示が回復したりして苛苛する。
パソコンを提供してくれた梶田清尚氏に連絡する。
2日間連続して診てくれる。
設定を色々変えて2日目何とか落ち着く。
この間一日目は直らず、夜山里氏のアトリエにみんなで熊の
木彫りのコレクシヨンを見に行った。
アトリエは以前訪ねた時とは打って変わって物凄い量の木彫
りの熊が整理されて埋まっている。
ひとつずつタグ付けされて通し番号が貼られている。
一緒に行った熊好きの若林和美さんが思わず大きな声を上げる。
机の引き出しにも小さい熊が沢山収納されていて、しばらくは
みんなそのコレクシヨンに目を奪われ声も無い。
その後それぞれの気にいった熊を手にとって独白のように語り
続けていたのだ。
今集まったメンバーの名前を思い出すと、何故か村・熊・河・山
・林・森と熊を囲む自然のような苗字である。
そんな苗字の人間が、<山里>アトリエに集合した。
みんな熊さんの遠い縁者だったのかも知れない。

日本人の苗字には自然を表わす一字入っている率が多い。
そして熊という文字も意外と周囲にはいるようである。
それだけ熊は日本人の周りに普通にいた動物だったのだろう。
その熊を木彫りにして、明治のある時期以降大量に彫られて
道産土産として一時期流通する訳だが、今は機械化しパターン
化して次第に飽きられ廃れようとしている。
それを初期のものから系統的に整理し蒐集して、場所・作者・時
代を調べ一冊の資料集として纏めつつある山里稔氏の努力は正に
平成の柳宗悦のような無名の民芸に光を当てる優れた仕事である。
こうした地元の隠れた文化をカルチヴェートする地道な作業こそ
インターローカルな真に国際性を保つ仕事である。
自らの作品創作活動を一時棚上げして、この2年半熊の木彫りの
収集と調査に徹底した集中力は、尊敬に値する事と思う。
この北の地でなければ為し得なかった熊の彫刻に籠められ先人の
匠(たくみ)の技は、大地の息吹、自然の荒々しさ、そして優美
さを時にどんな芸術作品よりも雄弁に語りかけてくれるのだ。
浮ついた国際性を謳う前に足元にある文化の位相をきちっと見据
えてこそ、何事かが始まる。

石狩河口の大野一雄の鮭・「石狩の鼻曲がり」、そこから芽生えた
カムチャッカへの熊の舞踏への熱い想い。
そして岡崎文吉の治水思想の再発見。
それらに繋がる緑の運河エルムゾーンの再生と、根幹において深く
通底する本質的な事象がある方向性を指差して語りかけてくるよう
な気がする。
山里さん、立派な良い仕事です。
ありがとう。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2013-09-20 13:16 | Comments(0)
2013年 09月 18日

秋の風吹くー逍遥・長月(15)

半袖だと寒い気がする。
あの夏は何処へ行ったのか。
風が少し強く、向かい風に自転車の速度が落ちる。
見えない川の上、風が流れる。
やがてこの風に乗って蜻蛉が舞う日が来る。

札幌国際芸術祭2014プレイヴェント第二弾「札幌の未来へ
向けたヴィジヨンを聴こう」と題したチラシが送られて来る。
坂本龍一グストデイレクターを迎えての3部構成である。
坂本龍一に合わせて、音楽コンサートが主体に日程が組まれて
いるが、本命は初日の第二部シンポジュムにあるだろう。
しかしその前後に札響の演奏会がふたつ入っているから、これ
は坂本龍一へのオモテナシとも受け取れる。
翌日は坂本龍一のソロコンサートとなっていて、会場はともに
札幌コンサートホール・キタラなのだ。
音響設備が自慢のこの大ホールで、著名な音楽家を迎えて国際
芸術祭のプレが行われる訳だが、なにやら肝心の札幌よりも客人
の方に目が向いているような、オモテナシ感を感じてしまうのだ。
国際芸術祭とは、海外を含めて外からのアスリートならぬ多くの
芸術家を招き展示を競い合う祭りなのだろうが、五輪とは違うも
のがあるとすれば、それは勝ち負けではなくテーマの深度という
場が保つ理念と哲学だろうと思う。
札幌という都市が保つ固有の磁場を真に提示出来得るか。
極めてローカルでありながら、それが国際性を保つインターロー
カルであり得るか。
余程本質的な深部の普遍性・俯瞰力を保つ主題の深化がなけれ
ば、結果は勝負の伴わないアートオリンピックのようなオモテナ
シ祭りになるだけと思われる。
「都市と自然」という基本コンセプトは、正に3・11以降の大
きな人類的な普遍的命題でもある。
この自然と都市というふたつの相反する相克と闘いながら人類の
歴史は刻まれ、その一番近い時間をこの北海道は背負って生きて
いるのである。
自然というものが如何に人の生活を破壊するか。
都市化というものが如何に自然を破壊するか。
このふたつの間には、多くの先人の知恵が苦労が詰まっている。
そこをきりっと見通してこの主題を深化させないなら、真に札幌的
と呼びうるテーマとはならず、町おこし的なアート見本市に終わる
だろう。
楽天的都市観や楽天的自然観からは何も本質的な問題は見えて
こないという、深い洞察の視座こそが今必要なのだ。

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by kakiten | 2013-09-18 14:24 | Comments(0)
2013年 09月 17日

雨のエルムー逍遥・長月(14)

休廊日の昨日、雨降る中エルムゾーンを歩く。
中嶋幸治さんを案内する。
彼は、エルムゾーンの行程図を作りたいと、この日の為に
仕事を休んだのだ。
従って多少の雨、多少の事で止める訳にはいかない。
傘を差して大通りから歩き出す。
濡れて緑が濃い。
路面も黒く沈んで光が吸われている。
光の反射がない分路面が土化していて、風景が新鮮に見える。
夏の雨の中を歩いたのは初めてで、風景の表情が今までと違う。
良い道程は良い作品と同じで、何度もまた別の発見がある。
いつも途中で休憩する峠の茶屋のような、大野池傍のカフエは
この日祭日で休業だった。
休まず北18条の第二農場モデルバーンまで一気に歩く。
その内部もゆっくりと見て、保存されているエルムの鐘を鳴らす。
ここは初めて入った中嶋さんがひどく驚き喜んでいる様子だ。
そこを出て北大構内に別れを告げ、空腹になったので地下鉄駅
界隈をうろつくも、どこも目当ての店は休店だ。
結局一軒見つけてやっと昼食にありつく。
そこでこの日の歩行の総括を四方山話的にして、別れた。
休みの日という事もあり、身体が休日モードになっているのか、
足が重く体が重かった。
それでも通しでコースを歩いて、中嶋さんが充分に満足していた
ようなのが嬉しかった。
彼も部分的にはほとんど知っている地域だろうが、こうしてひと
つのコンセプトのもとで通して歩くと見え方が違うのである。
伊藤邸の位置が非常に大事なものと、理解されたと思う。

風景の有機的な連続性をトータルに感じる事は、ある種の俯瞰の
ように風景を見る事である。
部分的に詳しい事と俯瞰して物事を見る事は必ずしも同じではない。
人と人の付き合いもまた、そういう所があるような気がする。
一昨日の十勝の客人米山将冶さんの訪問もそうであるような気が
する。
部分的親しさではなく、俯瞰して遠くから見ていた人の信頼感が
基底にあったように感じるからだ。
同世代・同郷とか学校の同期・同窓とかではない、信頼である。
勿論それらもひとつの契機にはなるが、それだけで人は繋がるもの
ではない。
人との繋がりにも、俯瞰する視座のようなものが存すると思える。
同時代という発想は、きっとそこら辺にある。
エルムゾーンの風景もまた、そうした位相に在るのだろう。


 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2013-09-17 14:34 | Comments(0)