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2013年 07月 31日

星沈み、風立ちぬー道程・文月(22)

今夕杉山留美子さんのお別れ会がある。
晩年はあまり会うこともなく、最後の個展の印象が強い。
3・11以降物凄く悩んで作品をすべて描き変えたと話していた。
その真摯で一途ななにかが画面に深く沈んでいたような気がする。
素晴らしい最後の個展だった。

作品の色彩は青や緑の暗い印象が多いけれど、本人自身は本当は
深紅の赤の人だったと私は思う。
何時だったか、南西の山の方にみんなで行った時真っ赤に実った
ナナカマドの実が枝ごと道の向こうに落ちていた事がある。
それを見て杉山さんが走ってその実を採りに行った。
その時のセーターは真っ赤な色で、ナナカマドの実と枝を持って
こちらに戻って来た時に撮った写真が今も残っている。
走っているので輪郭はぶれて、ナナカマドの赤と杉山さんのセーター
の赤が、滲んで一体化して写っていた。
あの時たわわに実った赤い実を求めに走った杉山さんの心象が、服の
赤とナナカマドの赤とシンクロして今も思い出すのである
真は、深紅に燃える赤ぼ人だったと今も思う。
いろんなご苦労があって、その真っ赤に燃える部分は滅多に見せなか
ったと思うけれど、心の深いところで深紅に燃える赤の人だったと
私は思う。
この写真は引き伸ばして本人にも差し上げたが、ぼけてるじゃないと
笑っていた記憶しか残っていない。

岩手県土澤から便りが届く。
吉増剛造さんから、399葉目のカラーコピーが入っている。
花巻市萬鉄五郎美術館での小樽に続く瀧口修造展出席の旅と思われる。
自身の個展の11月、師走、1月へ向けての想いが別紙に綴られていた。

  貴意により、惑星たち、枝別れの梢たちの生成が十一月or師走
  or次の一月にむけて、川たちも流れはじめることとなり・・・・
  (選ばれて、輝く火星or木星となり・・・)

そうか、輝く火星か・・・。
杉山留美子さんは赤い星となって沈み、吉増さんは今風立つ星雲である。

岩手から届いた手紙とお別れの日が同じ日なのも、不思議な縁だなあ。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-07-31 13:48 | Comments(0)
2013年 07月 30日

日曜午後の会話-道程・文月(21)

ほとんど告知もしなかったけど、日曜日午後2時半から
テンポラリースペースを会場にして、山田航さんと私の
対話があった。東京のトルタバトン企画主催である。
タイトルは「札幌戦後文化史を見てきた男」という恐ろ
しいもので、山田さんがインタビューをするという形の
対話集会である。
トルタバトンという芸術総合誌の主催なので文字化される
前提でお引き受けしたのだが、公開でインタビューという
事になり、気恥ずかしさもあるのであまり宣伝もせずその日
が来た。
聴衆は20代から50代まで各世代の方がいて偏りがない。
ブックスボックスの田原氏が一番最初に顔を出してくれた。
久しぶりに会えて嬉しかった。
定刻2時半から対話が始まり、幼少年期の札幌から現在に至
るまでなんだか半分以上裸にされたようで、気がつけば終わ
っていた。
2時間近くなにを喋ったかあまり記憶も無いけれど、いつも話
している事を時間を追ってトータルに話したようで、後で聞い
ていた人の感想で線が繋がったと言われた。
山田航さんのような20代の後半の人と対で話すと、対話という
より自らの経験を問われるようになる。
それがいい意味での緊張感を生んで、あっという間に2時間近く
が過ぎた。

私のような人間の貧しい生き方が、どこまで聞いた人の心を捉え
たかは分からないけれど、登山をした後のような疲労感があった。
充実感とも違うし、達成感でもなく、きりっとした緊張感である。
私などを選びインタビューしてくれた東京・トルタスのメンバー
と山田氏には感謝の気持ちがある。

いずれ文字化された時は、恥ずかしくて読む気にはならないかも
知れない。
そうならない事を祈るのみだ。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-07-30 14:07 | Comments(0)
2013年 07月 27日

電光石火のFAX-道程・文月(20)

稲妻のようにFAXが届く。
今朝7時の発信だ。
昨日のテンポラリー通信への吉増さんの応答である。

 昨夕、・・ブログ拝読、ー流石・・・と息を呑むようでした。 
 ひろげられた一葉と一葉の ひまに、ギヤラリーの地面がみえる
 ようでした。
 -・・・・三葉の・・or二葉の、・・orときには一葉の・・
 掘りだして(巣づくり)をしていただき、できれば一緒に題名を
 それに付し、価格も付して・・・ー
 こうして流星化して行くことが、あらたに立って来ましたですね。

一葉、二葉、三葉と掘り出して小宇宙を創り、それに一緒に題名を付し
オリジナルは残して新たなテイクⅡを制作し展示という案である。
今朝で400葉完成という大草稿の塊りを、小さな宇宙あるいは源流の
一滴へと蕾のように凝縮する再編集の仕事だ。
この海のような銀河のような「’古石狩河口から書きはじめて」の
大草稿を、テンポラリーゾーンで小惑星化する試みである。
大石狩川が空に映って銀河となったという古アイヌ神話ではないけれど
、この大草稿はある意味で吉増剛造の銀河であり、海である。
その全貌は死ぬまで増殖し続けて、全体を捉える事は困難である。
出来得る事は、テンポラリー水系、テンポラリー星系で源流域・誕生域
を生む事である。
どんな大河にも、どんな星座にも源という誕生の場というものがある。
この<ミナモト>は、ミナトでもありミヤコでもある<ミ>という実・身
を孕んでいる。
思えばこれは新たな出発・出会いである。
暗渠となった見えない川を繋いでその流域を再生しようとしたイヴェント
1989年「界川遊行」でともに出会い、そこから1991年の石狩河口
大野一雄公演で白熱し、1994年の名作「石狩シーツ」誕生に至る点に
現在の大草稿の源(ミナモト)の一点が在るからだ
光・星の再生する場、海・大河の再生する場。

次回タイトル提案は「ノート君Ⅱ-流星たち」。
流星は同時に小さな枝の梢の先のような川の源・源流でもあるのだろう。

あと半年、精進して頑張らなくちゃ~なあ。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
   
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by kakiten | 2013-07-27 13:36 | Comments(0)
2013年 07月 26日

3葉の複写葉ー道程・文月(19)

吉増剛造さんより、直近の草稿のカラーコピーが送られて来る。
389、390、391の3葉である。
先日まで河田さんのところで展示していた340葉近い大草稿の
大束は東京日本近代文学館へすでに戻されたが、その展示時点
からすでに50葉の草稿が書き加えられている事になる。
この増殖し続ける草稿の隕石を、大箱に収めて展示する事への
抵抗がある、と本人は感じているようだ。
一葉、一葉が次第に、星雲から独立したひとつの星のように輝き
だしたのかもしれない。
そこで吉増さんの提案があり、私が3、40葉選び出しそれを壁
に展示するという案である。
そこで験しに今回のコピー送付という事となった。
送られてきた3葉を床に散らばしてみる。
細かな文字がびっしりと書かれた一葉、大胆な絵文字のような図
の一葉、ひらかな一字とも図案とも見える図と細かな文字の組合
わさった一葉の3葉が、黒い床に不思議なコントラストを見せて
いる。
草稿の大束が保つ隕石のような存在感とはまた違う、一葉、一葉
の彩が感じられる。
銀河から太陽系へ。
太陽系から個々の星の世界へ。
大石狩川から伏古川へ、伏古川から琴似川へ、琴似川から界川へ
と水源・光源の源へと一葉の世界へ遡上してゆくような気がした。
年末まで多分500葉に及ぶであろうこの大草稿の塊りを、今まで
のように塊りまるごと展示するのではなく、銀河系から小宇宙を
創るように、分離して構成し展示する事もおかしくはないなあと
思えてきたのだ。
大草稿の銀河系のような大束とそこから分離した太陽系のような世
界を、今度の展示では考えてみる価値があるようだ。
この増殖する隕石のような大草稿は、日々毎日書かれている吉増さ
んのいわば草稿のハミガキでもあり、その積み重ねはエンドレスの
永遠の営為と思われる。
従って全体の終結を考えず、過程の中での宇宙を構成する事でしか
今年末の展示は措定されないと思える。
問題はどう小宇宙を生むかだ。
川の分岐・合流のように水源である枝の小宇宙へ。
年末までの課題である。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時;月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-07-26 16:18 | Comments(0)
2013年 07月 25日

春楡の街ー道程・文月(18)

 木の葉が落ちて、、雪の降る札幌の情緒も好きだが、春、夏、
 秋と、街の春楡の梢に葉の茂る札幌は何ともいえなく好きだ。
 春楡は別名赤だも、札幌の人が英語でエルムと呼んでいる樹。
 北大生が「エルムの梢」と歌うあの樹である。
 地質にあっているのか、札幌には特に多く、それが街のしっと
 りとした風格を作っているのであった。
 ・・・・
 元来地下水位の高いところを好む木だそうで、札幌扇状地の
 終わりのところ、つまり大通りから北にはいたるところにメム
 (泉池)があり、その周辺に特に群生していたという。
 ・・・・アイヌ語の名はチキサニ。単語に分解するとチ・キサ・
 ニ(我ら・こする・木)となる。古くは春楡の木片をこすって
 火を作ったところから出た名だという。・・・ 
 大通りの大木はだいたいこの木であったが、最近は駅前通りも
 チキサニの並木になった。
 ・・・ときどき戻って来て、この聖樹の並木がそだってきた姿を
 見て、ああ、札幌はいいな、と思うのだった。
 もっともっと、春楡の茂る札幌にしてほしい。

  1985年「春楡の茂る札幌」山田秀三ー北海道新聞社刊

札幌をこよなく愛したアイヌ語地名研究の碩学山田秀三さんの28年
前に残された文である。
何度か引用させて頂いているが、「緑の運河エルムゾーン」を思う
時にいつも定点のように思い出す文なのだ。
最後に<最近は駅前通りもチキサニの並木になった><ああ、札幌は
いいな、と思うのだった>と書かれているが、最近はその反対の様相
となって、駅前通りの春楡の並木は大規模地下通路建設の所為もあり
別の樹木に切り替えられているのだ。
地下水位の高さが地下通路拡大で損なわれていったからである。
植樹された並木ではなく自然の大木が、清華亭の庭に立つ春楡であり、
植物園ー伊藤邸庭ー北大構内と続く森にある。
これがメムと呼ばれた泉池を水源とする高水位の地下水脈を土壌とし
て川と森を形成し、春楡が茂っている。
まるで皇居の中に残る古い武蔵野のように、旧帝国大学系の広大な敷地
には緑の運河のようにこのエルムゾーンが残され、さらに1万4千㎡の
伊藤邸敷地の庭に清華亭・偕楽園緑地跡が繋がってあるのだ。
これらのゾーンは泉池(メム)で繋がる川の道でもある。
その水脈を90mの高さの高層ビルで遮断する事は、このゾーンの春楡
の古木の命を絶つ事を意味する。
さらなる水位の低下が予想されるからである。
都市化の荒波の中辛うじて生きている春楡の巨木群は、根を地上に見せ
ることなく深く深く水脈に触れて生きている。
駅前通りの植樹された並木の街路樹とは違う自然の巨樹である。
それを守ろうとせずして、どう私達は札幌を愛した山田秀三さんに顔を
向けることが出来ようか。
街路樹の春楡が育つ姿を見て、あんなにも喜んでくれた碩学の先達者に
対して申し訳が無いないではないのか。
アートボックスやスイーツ・アートとか、アートというカタカナばかり
が箱物の中にひとり歩きして、肝心の風土に根ざした文化がカルチャー
ボックスの植樹・並木と化している。
それらはある時期が過ぎれば掘り返され埋められる花壇の花のように、
一時期の美観の為にしか存在しない。
来年の国際美術展のテーマは「都市と自然」だそうだが、ここに本当の
自然は措定されているのだろうか。
この札幌をこよなく愛した優れた先達の<ああ、札幌はいいな。>という
心からの気持ちにどう今応え得るのか。
そう問いかけたいのである。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時;月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2013-07-25 15:33 | Comments(0)
2013年 07月 23日

エルムゾーンと札幌駅前ー道程・文月(17)

スペインの写真家ヴィッキーさんを案内した5月以来久しぶり
に緑の運河エルムゾーンを歩く。
今回はご一緒したKさんの都合もあって大通り公園イサムノグチ
のブラックマントラから植物園ー伊藤邸ー偕楽園緑地跡ー清華亭
までだった。
5月に比べ何といっても緑が深い。
植物園と伊藤邸の間、北5条通りの上空を梢が手を繋ぐかのよう
に大樹が繁っている。
伊藤邸の高層ビル化計画を調査している札幌市の調査期限も7月
で終わるはずだが、その結果はどうなるのだろうか。
伊藤緑地としてこの貴重な空間が保全される事を心から祈るものだ。
90mか60mのビル高層制限ですむ問題ではない。
このゾーンに自生する植生も昆虫も地形も湧く泉も、もう二度と戻
らない札幌の原風景・財産である。
伊藤邸を横切り、JR高架線下をくぐって偕楽園跡地へ入る。
そこで水の神さま井頭竜神の祠を見て、清華亭に進む。
そこで庭奥の春楡・エルムの大木の下へ行く。
ここも梢が繁りさらに一層樹が大きく見える。
巨樹を見上げて、Kさんが大きくため息をつく。
こんなに大きいのに、根が見えないという。
水脈に近いところに立つエルムは、この少し小高い丘の位置で
より深く地に根を張って立っているから、根は地表には顕れていな
いのだろう。
深山に立つ桂の樹の場合は、根が老人の手の甲の血管のように太く
浮きあがって地表に出ている。

この日はここまでで札幌駅へと引き返した。

駅前南口から地下歩行空間を通りながら、先日送られて来た資料を
思い出していた。
「The Art and JRTOWER」である。
あまり知らなかったが、この駅前空間には52点のアート作品が配
置されているという。
さらにアートボックスという縦1・3m、横2・3m、奥行き60cm
の壁面スペースが常備されて公募入選作品を展示している。
そして東側エスタビル内にはプラニスホールが展示会場として「織姫
たちのスーイツ・アート」展などを毎年企画し展示している。
この駅ビルから大規模地下歩行空間に繋がって様々なパブリックアー
トの展示が広がっている。
札幌駅前通まちづくり株式会社が主催して、パブリックアートリサー
チセンター通称PARCとして、多くのアーテイストがワークショッ
プや展示を試みている。
さらにこの地下歩行空間の東ゾーンには500m美術館が常設され
ここでも多くのアーティストが陳列している。
札幌駅前から地下歩行空間は、明年予定されている札幌国際芸術展
もあってアート満開の様相を呈している。
人は易きに流れるものである。
多くの美術家がこのビルと地下歩行空間主体の都心空間に参集して、
場末の私の方などには益々人が来なくなってきた。
郊外で豪邸でもない小さな民家を抜いた吹き抜けの光溢れる画廊に、
私は私なりの誇りと愛着を保っているが、今年は使用者が激減して真
に厳しいものがある。
JRもアートにうつつを抜かすよりも、本来の輸送事業にもう少し集
中してはどうかと思う。
伊藤邸高層ビル化の動きも、この鉄道事業新幹線の誘致と不可分のもの
とも考えられ、物流のインフラ事業増殖はそれはそれととして、本来の
文化・芸術の根幹は、もっと別次元に在る事を忘れてはいないだろうか。
札幌駅から僅か数百mのところに広がる「緑の運河エルムゾーン」を守
らずして、如何なる札幌が在るのか。
物流の消費基地だけが札幌ではない。
アートとは何か?
限りなく目の臭い消しのような、都市空間に備えられ配置された美の
インフラなのか。

エルムゾーンを歩き、駅前歩行空間を歩いて、なんとも悔しい思いが
沸き起こっていた。
PARC(パブリックアート リサーチ センター)の第一回テーマ
は、<BIOTOPE>で、

<生物の生息空間を示す言葉で生態系や生物空間、生物がすみやすいよう
 環境を改変することを意味します。>

それならなおさら地下歩行空間ではなく、目の前の緑の運河エルムゾーンが
主題でしょう!!。

 <今回は環境の見立てとして人工芝のうえに作家たちの作品をランダムに
  展示し、ひとつの世界をつむぎだします。>ー。

<人工芝>とは生物ではなく、人間に都合良い改変でしょう。
言わずもがなの、これが本音の見立てのアート文化である。
腹立つなあ・・・、



*常設収蔵品展ー7月25日(木)-8月11日(日)am11時ーpm7時
 月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。am12時ーpm8時:月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1場西1丁目2番地大沢ビル4F
 tel09076401351
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by kakiten | 2013-07-23 13:47 | Comments(0)
2013年 07月 21日

街っ子ー道程・文月(16)

都心にあるCaballeroへ、SさんとTさんを少し
早めにここを閉じて、案内する。
初めて行く人は、場所が分からず迷うからだ。
Sさんの車で行ったのだが、一方通行が多く随分と遠回り
をする。
土曜日の参議院選挙最終日で、街は選挙カーやら人で混ん
でいる。
ようやく駐車場に車を入れ、大沢ビルへ向かう。
”ZO”展会場は4階で、先客がひとり。
河田雅文さんの宝箱のような収集品が、さらに少し増えて
いた。
瀧口修造の著作や村上さん提供の瀧口限定版資料等である。
SさんもTさんもゆっくりと会場を廻って見ている。
程なく扉が開いて美術館のF氏が顔を出した。
私の所へ寄ったそうだが、もう閉じていてここと中りをつけ
て来たという。
今展示中の「シャガール展」の案内状を手渡してくれる。
前回は帯広の作家ふたりと一緒に来て今回は二度目の”ZO”
展でF氏もすっかり寛いで空間に馴染んでいる。
シュールレアリズムのデュシャンを主とする個人的資料に、
吉増剛造のGOZOCINEや大草稿等が混在して、瀧口修造
へのオマージュとなっているこの河田さんの個人的宝箱のよう
な部屋は妙に落ち着くのだ。
個人の蒐集品を中心とする展示だから、ひとりの作家の作品展
示空間とは違う世界ではある。
瀧口修造やシュールレアリズムに興味がなければこの部屋の
閉じた世界は息苦しいものとなるだろう。

TさんとF氏が先に帰って、私はSさんと7階の喫茶室に行く。
テラスの席に出て、すぐ目の前にライトアップされたTV塔を
見上げる。
初めて来たSさんが小さく声を上げ驚いている。
こんな所があったんだ~!
テラスから下を見下ろしビルの裏町の仲通を見ている。
TV塔のある北の方角は大通り公園で視界が開かれているから、
ずっと先のJRタワーまで望めるのだ。
ビルの谷間の向こうに広がる空間がある事で、解放感がある。
さらに7階が最上階なので上を遮るものも無い。
中のレトロな喫茶店のソファとオーデイオのある喫茶室も好き
だが、今のような暑い時期には外のテラスの漂う裏町風情が私
は好きだ。
つくづく自分は、街っ子なんだなあと思う。
時の熟成しノスタルジックで、珈琲が飲め静かに話が出来る空間。
街が近すぎも速過ぎもせず、緩やかに街であること。
そんな場所にひどく落ち着いてしまう自分がいるのだ。

そんな街の一角は、ありそうで今はなかなか見当たらないのである。
しばらくこのビル近くに来たら、必ずこの喫茶室には寄りそうな
自分がいる。
夜電話が来てこの話をしたら、またあそこに行ったの、余程気に入
ったのね、と笑われた。

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm8時:月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
 09076401305
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by kakiten | 2013-07-21 14:32 | Comments(0)
2013年 07月 20日

張確(ハリウス)-道程・文月(15)

織りの作家加藤裕子さんのアトリエは張確にある。
この張確という地名はアイヌ語からきている。
これでハリウスと読む。
原義は、ハル・ウス(食料・群生する)の意である。
かって二風谷の萱野茂さんを訪ねた時、新しい家を建てた
ばかりで喜んで小さな儀式の話をしてくれた。
新築の家に食料を天に向かって投げ上げ、<ハル・ラン、ラン>
と言って祈るのだという。
ハルは食料でランは降る。
食べ物が不自由しませんように、というお祈りだそうだ。
その<ハル:食料>が<ウス:群生する>処として張確が
ある。
この近くの山には、同じようにハルという名がついた春香山
という山がある。
夏も冬も素晴らしい山系が連なる山で、確かに多くの山菜・
キノコが群生している処だ。
自然に添って生きた先住民アイヌの人たちが遺した地名には、
その場所が保つ活き活きとした地形や特色が表現されている。

この春香山の麓で今年2回目のアートイヴェントが企画され
ている。
その名も「ハルカヤマ藝術要塞2013」。
総勢70名程の大展示である。
前回よりも増えているようだ。
その参加者のひとりが昨日見える。
以前から思っていたので、遠慮なく疑問を問うた。
「藝術要塞・・ってなにか不自然に思いませんか」
その応えは、そんな言葉の問題など誰も考えて参加していない
よ、だった。
個々がしたい事を自然の中でやるだけ、因みに自分は作品が
風化し汚れボロボロになる過程を見せるのだ、と言う。
70人が自然の中で、したいことをする。
それはそれで、イイネとしか言いようが無いのだが、20世紀
少年の秘密基地でもあるかのように見えて、もう少し大人の視点
で二度目ともなれば、理念が存在しても良いのではないだろうか。
折角優れて先住者が付けた美しい地名の遺されたゾーンである。
しかも後志と石狩の国境に位置する非常にデリケートな場所でも
ある。
現代のハル・ウスは、コンビニやスーパーが代替して供給地が
物流のネット内に位置してある。
しかし本当は、この地名のように場と深く関わって食料(ハル)は
在るのだ。
この家にたくさん食べ物が集まりますように・・と祈る言葉:ハル
ラン、ランに、日本語の原型のような美しい響きを聞いていた私に
は言葉などどうでもよくて、好きな事を自然の中で発散するだけと
もとれる父っちゃん坊や的藝術要塞には、今ひとつ心からの応援を
感じる事ができないのだった。

昨日記した加藤裕子さんのように、たったひとりでコンビニ幟を織
り直し、素材そのものを再生するラデイカルな仕事の方が余程本質
的な行為・芸術家の志事と思えるのである。
タイトルの言葉だって、大事な作品の一部・理念ではないのか。

 コンビニ幟に 愛は残っているか

ハルカヤマ藝術要塞2013ー山を遊ぶ、アートで遊ぶ。

70名近くの少年少女よ、
ハル(食料)は足りて、遊びでウス(群生する)という事ですか。

  ハルウスに 食料は残っているか
  ハル、ランラン!

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm8時:月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
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by kakiten | 2013-07-20 13:33 | Comments(0)
2013年 07月 19日

幟調子ー道程・文月(14)

小樽と札幌のちょうど境・張確(ハリウス)に住む加藤裕子
さんの個展を見にANNEX画廊に行く。
朝早めに出て山坂の道を途中自転車降りて上る。
オリンピックの為開発された山の中腹に延びる道路である。
伏見稲荷の連なる朱の鳥居とその下に続く参詣石段を分断し
西の大倉山ジャンプ場と南部のアイスアリーナ・スケート場
を連結した冬季五輪の輸送路である。
この下ではさらに円山墓地を分断して環状線が走っている。
墓地を切り裂き神社を切り裂く、誠に神も仏も恐れぬ物流
優先の道路なのだ。
本来の山裾の路は、伏見稲荷の石段の始まりに伸びている。
その路は裾野の清流沿いに伸びていて、ここから今も湧く
湧き水を私は珈琲に淹れている。
小さな川が毛細血管のように山裾にあって、そのひとつが
今回訪ねた画廊の奥に小さな谷として沈んでいる。
その沢の地形に沿って細長く奥に延びた空間が、今回訪ねた
画廊である。
奥へ通じる真っ直ぐな画廊の左側は曇りガラスの窓が続き、
外光が白く光っている。
そこにコンビニの宣伝用の幟布をほぐして、ハンカチのよう
に織り上げた美しい布が貼られている。
右の壁には手提げ袋のような赤や緑、橙色の豪華な感じの
織物が並んでいた。
この細長い空間を突き抜けると、そこに外へと開かれたテラ
スがある。
そしてそこには本物の4、5本の幟がはためいていた。
展示してあった美しい色彩の織物たちは、ウーロン茶の幟で
あり、サイダーの幟であり、おにぎりの幟であったのだ。
何百本も使用済みの幟を集めて、解き解してスカーフやら
袋物やさまざまな用品に再生しているのだ。
谷上の山の斜面、原始林の繁る青空に向かって幟が旗めいて
いる。
飲料水やおにぎりや街の生活に身近な商品の幟である。
それが、その大元(おおもと)の原始林と水の源流の枝沢の
奥に翻(ひるがえ)って新たな生命の形象を象っている。
その発想の逆転の素晴しさと作品の出来栄えの美しさにすっ
かり心が開放された。
コンビニとはconvenience:便利、便宜からきた言葉だ。
冒頭に記した神社を分断し、墓地を分断した五輪道路と同じ
ように<便利・便宜>の優先して生まれたチエーンショップ
である。
その宣伝用の旗・幟の布地を使って、手造りの美しい物品を
創る。
消費を煽り、時間が過ぎれば廃棄される商品広告の幟。
その消耗品としての布地をこんなにも見事に美しく再生する
事とこの場が保つ幟同質の利便性優先の道路造成によって
拓かれた画廊の位置がこれも見事にリンクして、この作品を
際立たせているのである。
さらにはこの幟の製造元が、地元を代表するコンビニのセコ
マである事も象徴的だ。
牛乳も水も地元産を謳う企業であるからだ。
この画廊の下に広がる小さな谷は、界川の源流の枝沢のひとつ
であり、山斜面のさらに上には不動の滝が祀られ春には美しい
シラネアオイが咲き乱れ、またかっては狐を飼育し養狐場とし
て毛皮の襟巻きを造っていたゾーンでもある。
そうした地形を無視し五輪会場の輸送路として強引に切り開か
れた冬季五輪以降は車社会の到来もあって、今や高級住宅地と
なっている。
しかしながらこの個展会場となった場所には、可能な限りその
素の地形に沿って空間が設計されている。
本来の沢・谷・斜面・原始林が残されている。
幟を解(ほぐ)し、その素の布地を使って織り直すという極め
てラデイカルなこの行為は、正にこの場が保っている破壊から
再生への烽火のような美しい幟(のぼり)ともなっていると思
える。
  
 「コンビニ幟に 愛は残っているか」ー加藤裕子展
 7月21日午後5時まで。
 札幌市中央区旭ヶ丘2丁目ギヤラリー門馬ANNEX

あなたの作品自体が、愛ですよ・・・。
幟(のぼり)調子の、旗めく加藤さん・・・。

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm8時・月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
 tel09076401305
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by kakiten | 2013-07-19 14:49 | Comments(0)
2013年 07月 18日

鬼窪の野ー道程・文月(13)

かって表参道の第一鳥居前に鬼窪邸という美しい洋館が建っ
ていた。
建築家田上義也の名建築のひとつで、美しい藤棚のある大き
な庭もあった。
バブルの頃この邸宅は壊され、今はタワーマンシヨンが聳え
ている。
土地を購入した不動産業は当時の拓銀系の不動産会社だった
が、親会社の拓銀の倒産とともに倒産し2年近くそこは空き
地のままとなっていた。
半年ほど経った春だったろうか、たまたまその前を通った私
は、その場の変貌に目を剥いた。
剥き出しの赤土だった空き地が一面お花畑に変わっていた
からである。
2階建ての洋館の在った場所は、辛うじてその面影が土痕に
残ってはいたが、周りの庭であった部分は一面の花が咲き乱
れている。

都市の仲通・裏町をひとつの文化ゾーンとして考えながら、
ふっとこの更地の後に出現したお花畑を思い出していたのだ。
裏町に根付く小さな個の趣味・嗜好が野の花の一輪のように
在る。
街路自体は計画され計測された公的な舗装道路である。
そこに時の熟成と人の営為が裏町を育て、あの野の花のよう
に咲き出すものがある。
それは公的なものではなく、極めて私的で小さな野の一輪の
花のようなものだ。
その一輪がいつの間にか群生して、お花畑を創る。
小樽の瀧口修造展で再現されていた瀧口青年の夢の店ローズ
セラビーとは、裏町に咲いた一輪の文化の花でもあったよう
に思うのである。
都市化というある種の更地化を経て、そこに趣味嗜好の個的
種子が育ってくる。
この極めて個人的な小さな種子が、時を経てお花畑となる
ように一面に広がって時代を創る場合もある。
意図的に植えられた花壇文化とは一線を画すものである。
都市化と同様の意図的に道路を彩るカラーデザイン・花壇で
は元々ない、自然に生まれた極めて小さな綿毛・種子がその
素にはあるからだ。
鬼窪邸の更地の痕に咲いたお花畑のようにである。

言いたい事は、最初から時代を代表するものなどないという
思いである。
最初は極めて個的な裏町に根付く趣味・嗜好のように一輪の
野の花のように立ち顕れる。
そしてその個的なものを許容できる空間が、本当の都市空間
であり、豊かな土壌の野なのだという思いである。
小さな個、狭い裏通りから、真に時代を代表するお花畑・森が
生まれ得るかもしれない。
しかししてそれは結果論であり、萌芽・繊毛・綿毛の最初の場
は、無名な野のような時代という土壌なのだ。
最初から囲われ特権化した花壇のような空間から本物の花・文化
は咲き乱れはしない。

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm7時:月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
 tel09076401305
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by kakiten | 2013-07-18 13:07 | Comments(0)