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2012年 08月 30日

花が咲いているー熱月・8月(24)

もう二日花が咲いている。
透明なカルピスの小さなペットボトルに、背筋をピンと張り、
頭部に薄紫のピンク色した花が凛として立っている。
根は水に触れ花の頭部は真っ直ぐに空の方へ。
樹もそうだが、こんな小さな花一輪にも天地を繋ぐ懸命な
姿勢がある。
植物は良いなあ。
周囲に媚びず、真っ直ぐに天地に垂直に立つ。

このクレーの花は小さいけれど、葉と茎と花のバランスが
美しい。
すっと立つ姿が凛としているのだ。
クレーが愛したのは、この線の美しさではないのだろうか。

昨日居酒屋ゆかりのふたりが来て、後からお弁当の差し入れが
あった。出汁巻き卵に数種のおかずの入ったお弁当である。
その前の日には、D新聞のO氏からフランスパン3本とぺースト
を頂きなにか飢えた子にお恵みの日々である。
フランスパン3本はさすがに手強ったが昨日何とか平らげる。

 フランスパン輪切りしながらわかっている君が誰よりがんばって
 ることを      
                 (山田航「さようならバグチルドレン」)
                   
お弁当は帰る前に夕食にしてすぐになくなった。

  靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所がスタートライン
                                 (同上)
                        
そうか、・・・
遠くスイスから届いた花の種子も小さなペットボトルに今花咲いて
<靴紐を結ぶ>ように<身を屈め>この場を<スタートライン>に
生きているのだ、とふっと思ったのだ。

 たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく
                                   (同上)

なにかこの小さな花に託してさまざまな想いが篭められて見えてきた。

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで。am11時ーpm7時。
*秋田奈々写真展「呼吸する温度」-9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2012-08-30 12:38 | Comments(0)
2012年 08月 29日

パウル・クレーの花ー熱月・8月(23)

昨年スイス在住の磯田さんが送ってくれたパウル・クレーの花が
咲いた。
お花屋さんのMさんに種子を渡したのだが、昨日瓶に入れて花を
届けてくれた。
小さなアザミのような可憐で凛とした花である。
スイスのベルンにお住まいの磯田さんの手紙では、画家のクレーが
こよなく愛した花という。
昨年小さな種子で送られて来た物が、こうして今小さなピンクの花
を咲かせているのを見るのは不思議な感動である。
本当は何とかという植物名があるのかも知れないが、スイスの人は
この花をクレーの花と読んで、画家を偲んでいるのだろう。
一緒に送られてきた瓶詰のペーストも行者ニンニクで、熊の木彫り
の発祥地といい、不思議と北海道に近いスイスのようである。
このパウル・クレ―の花も似た花が北海道にもあるのではないだ
ろうか。
砂澤ビッキが音威子府の森でこよなく愛した巨樹があったが、その樹
を土地の人はビッキの樹と呼んでいた。
これと同じ事がパウル・クレーの花という言い方にもなっているのだろう。

お花が届く前10年ぶりかしら、長年アーテイストレジデンス事業に携わる
Oさんが訪ねて来る。
少し以前よりふっくらとして、元気そうだった
今札幌市が熱心に進めている国際美術展トリエンナーレ事業の話を聞く。
私は大体以前からこの事業には批判的だったから、遠慮なく意見を言わ
せてもらう。
事業の中心にいて、同様の悩み・疑問を抱いていたらしいOさんも熱心
に話を聞いていた。
事業そのものよりも、本州生まれ育ちのOさんが何故この北の大地に惹か
れ今住んでいるのか、という本質的な問題へと話は入った。
他所にないこの地の魅力を、インフラ的施設・自然環境の相違に矮小化
する事無く、純粋近代の視点からコンテンポラリーな視座を構築すべきだ
と話した。
そしてその場として、「緑の運河エルムゾーン」の話をした。
大規模地下通路や公的美術施設物、あるいは都市目線の郊外の森という
場では、世界になんの魅力も発信出来ないのではないか。
インフラ施設の好条件だけでは、産業経済界のテナント誘致事業と大差
ない話である。
より本質的な場を提示しなければ、真にインターローカルな国際展は
出来ない筈だと話した。
それにはOさん自身が何故ここで生きていこうと思っているのか、を
もっともっと見詰め掘下げて普遍化して欲しいと思ったのだ。

一輪の小さな花にもっともっと学ぶべきである。
遠い欧州のアルプスに咲くこの一輪の花は、国際的云々とか考えて
生きている訳では決して無い。
ただただ与えられた与件の内に花開くのである。
それで良いではないか。
その懸命な花の命が人の心を撃ち、他者の心にも花を咲かせるのだ。
クレーの花やビッキの樹のような、札幌固有のものを何かと問われて
応えが無いようでは何も生まれる筈もない。
流通の物流回路と文化の創造回路は本質的に違うのである。

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで、am11時ーpm7時。
*秋田奈々写真展「呼吸する温度」-9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2012-08-29 12:43 | Comments(0)
2012年 08月 28日

残暑の日々ー熱月・8月(22)

いささか暑さで呆け気味。
一度涼しくなって、その後の暑さはこたえる。
7割以上が水分という体は、温度調節が急展開できない。

3日間札幌滞在を終え帰京した福島泰樹一行を見送って、賀村
順治氏が挨拶に寄る。
びっちりと3日間付き合って、疲れながらも充実した表情だ。
一日目来札してすぐここで朗読会、翌日は中央区民センターで
福島さん講演と賀村氏の作品集合評会そして3日目は菱川先生
のお宅弔問と息付く暇も無い日程である。
暑い時に熱い男が来たものだ。
幸いここの会場の評判は参加者に良かったようで、紹介した賀村氏
も一安心したようだった。
来年もここでという話も出ているという。
ちょうど来た山田航さん、久石ソナさん、宍戸優香利さん、大隈陵子さ
んたちと賀村さんを交えて話す。
新旧歌人、詩人、美術の人と年齢もジャンルもバラバラであり不思議
と話が続く。

年齢もジャンルも生まれ育ちも共通言語はほとんどない6人たが、
しばらく一緒に居たかったのだろうか。
沈黙しつ言葉が無くなっても一緒に居た。
ふっと<会話の底>と思った。
溢れるだけが会話ではない。

 言語を枯らさなきゃ。
 溢れるのは詩ではないんだから。
 津波の来る前に海岸の底が見えたっていうでしょう?
 それに近いものかもしれない。
                     (吉増剛造ー石田尚志対話)

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで。am11時ーpm7時
*秋田奈々写真展「呼吸する温度」-9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2012-08-28 15:56 | Comments(0)
2012年 08月 26日

出会いの旅ー熱月・8月(21)

Y氏の家に一泊して、この日帰京する鈴木余位さんと藤谷康晴
さんの初顔合わせ。
快く、というか熱意をもって鈴木Sんは藤谷さんの大阪個展での
ライブドローイングの映像撮影を快諾する。
8mmフイルムは手持ちで近距離を、16mmフイルムは半固定で
中距離を、完全固定はデジタルカメラで俯瞰した距離をと、かなり
本格的な撮影手順の話をする。
そして、単なる記録というより、作家として映像作品を撮る気持で
お願い致します、と藤谷さんも応えていた。
ちょうど来ていたM・R君が時々悪意はないのだが、話の腰を折っ
て話の流れが途絶える。
いつもの事だが、今回は大事な打ち合わせで時間も無いので少々
いらっとする。
話に関係なく非常に重たい問題を、ぽつりと質問したりする。
その度に話の流れが中断されて白けるのである。
私の彼に付けた仇名は、KY壁男である。
根は純粋で良い男なので、そのうちにこなれるだろう。

それからD新聞のO氏が来たので、藤谷さんのライブドローイングの
映像と鈴木余位さんの吉増剛造展映像、齋藤玄輔展の映像、界川
游行の戸谷成雄展の映像等をみんなにも見せた。
O氏は取材を抜きにお土産持参で訪ねてくれたので、ふたりの紹介
方々テンポラリーの歴史の一端も見てもらったのである。
映像が終る頃ちょうど鈴木さんの帰京の飛行機の時間となる。

今朝Y氏から鈴木さんの宿泊時の写メールが送られてきた。
部屋にテントを張って泊まったという。
それが妙に違和感のない不思議な人達である。
札幌でこうしてまた新たな友人と出会い、良い旅でしたね、
あっ、余位旅というべきか・・。

*「記憶と現在」-8月31日(金)まで。am11時ーpm7時。
*秋田奈々写真展「呼吸する温度」-9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペ-ス札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fasx011-737-5503
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by kakiten | 2012-08-26 13:25 | Comments(4)
2012年 08月 25日

菱川善夫追悼ー熱月・8月(20)

月光の会14人に福島フアンの友人たちが6人ほど集まって20余人
が集まり、故菱川善夫追悼の短歌朗読ライブが始った。
やはり圧巻は福島泰樹の短歌絶叫で、久し振りに聞く熱い語りと
歌の朗読だった。
死者を語りながら、生者に生きる意味を問う独特の歌の説法でも
ある。
聴衆の中にいつの間にか東京にいる筈の鈴木余位さんの姿がある。
この人はいつも不意に姿を現わす。
聞くと音威子府に旅していて、ブログを読み急遽飛んで来たという。
昔福島泰樹のライブを聞いた事があり、どうしても聞きたくなったという。
藤谷康晴さんからも連絡があり、ここでのライブドローイングの映像も
見て、大阪展の撮影に協力したいと語る。
早速藤谷さんにも電話で連絡し、ここで明日会う約束となる。
飄然と現れた鈴木余位さん、田中綾さん、糸田ともよさん、山田航さん、
十年ぶりの高橋愁氏、山内慶さんとライブ終了後もいろんな輪が出来
て熱い夜となる。
「記憶と現在」展に相応しい、声と音と人の邂逅が渦巻く一日だった。

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
*秋田奈々写真展「呼吸する温度」-9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503 
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by kakiten | 2012-08-25 11:55 | Comments(0)
2012年 08月 24日

熱い男が来るー熱月・8月(19)

暑い日に熱い男の来訪を告げられた。
電話と同時に歌集「血と雨の歌」「文藝月光2号」CD短歌絶叫
「哀悼・菱川善夫」短歌絶叫デビユー復刻盤「中原中也」の4点
が送られて来た。
その福島泰樹があと3時間程でここに来る。
2階にかってよく福島泰樹と共演した友川かずきの大作画「夢の
村」を飾る事にする。
その上に菱川先生の「哀悼」のCDジャケットを置いた。
先生の生前の写真で奥様とふたりの写真である。
2階はそれ以外に何も無いので、2階を主たる会場にする積りだ。
坐ればもともと畳の部屋である。
床は吹き抜けだが、それ以外はかっての座の空間が活きている。
非日常のようで実は落ち着く空間なのだ。
人数が多い時には下にも人を詰める。
上下一体の、ここならではの空間となる筈である。

 ワイシャツは波に洗われそこにいた人の姿をしておった

 君たちのことを思っていたのだよ雲湧く窓に盃を揚ぐ

                         (福島泰樹「血と雨の歌」から)

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
 24日午後4時~福島泰樹月光の会。
*秋田奈々写真展ー9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2012-08-24 13:45 | Comments(0)
2012年 08月 23日

過剰なるー熱月・8月(18)

猛暑が続いて、バテる。
この2日間急に熱波が襲ってきた感じで、体が追いつかない。
今日は雨上がりで気温も下がり、体力回復。
快調に自転車を飛ばす。
濡れた路面にタイヤも吸い付くようで、気持が良い。
車道の左端を走るのだが、下水溝が穴を開け一時駐車の車が
居たりと気が抜けない。
特にタクシーが来ると、道傍に寄って来るので怖い時がある。
それでも路面は車道の方が滑らかで走り易い。
旧5号線を越えると、舗道が広く自転車道も整備されているので
一気に速度が上がる。
この道で気を付けないといけないのは、犬の散歩である。
長い鎖で自由に走り周っている時がある。
鎖が危ないのと、犬に懐かれてじゃれてこられる時がある。
最近はそうでもないが、一時はよく犬に絡まれた。
犬フェロモンを発していたのかも知れない。

Mさんがケイタイをスマートフォーンに変えたと見せてくれた。
メールと電話以外の多くの機能が付いていて、まだ充分に使い
こなせていないという。
動画も音質・画像共に良く、検索等の音声認知機能も付いている。
これはもう小さな万能パソコンだ。
打刻もタッチ操作で、起動も早い。
触りだすと次々に画面が変わり、夢中になるようだ。
先日東京のM大院生の中村絵美さんが来て、東京生活の便利
さを感嘆していた。
彼女は八雲の出身で、そこではそこなりに車で2,30分で大体の
用を足せる便利さを感じていたらしいが、東京ではもっと身近に
何でも揃っていて、超便利と話していた。
この便利の最たるものが、スマートフォーンのような気がする。
便利も過剰になると、疑問が生じる。
道具といより操作する機械に逆に支配されているような気がする。
自転車に乗って止む無く舗道を走っていると、怖いのはケイタイ
片手に歩いている人である。
目は手元の小さな盤面に集中しているから、前をほとんど見てい
ないのだ。
車にもカーナビのような便利な装置があって、画面で位置を表示
してくれる。
大変便利で苦労が少ないようだが、これも自らが地形や道を知る
自助努力を機械が肩代わりして、操作で済ませている結果である。
五感の延長で道具を操るのとは違い、五感を超えて機械を操作
し結果をいち早く得るというのは、何かが異なるような気がする。
目でチェックし指先で指示する。
五感が目と指に集約され過ぎるのだ。
自転車と自動車の相違もそこにある。
自転車は道具の範囲で、自動車は機械操作になるからだ。
この差異は今後益々開いてくるような気がする。
それは進歩ともいえるし、一方で五感のさらなる退化とも思われる。
便利も過剰である事は、必ずしも良い事とは思わない。
過剰なる便利は、欲望需要のインフラに短絡する。
だから小さな盤面に声で指令している様子は、どこか気持が悪い。
何とかちゃんにフェースタイムとか言ってるより、本当に会いに行った
方が良いではないか。
だって会う為の道具として、本来在るものでしょ。

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで。am11時-PM7時。
 月曜定休。24日(金)午後4時~福島泰樹月光の会
*秋田奈々写真展ー9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2012-08-23 11:42 | Comments(0)
2012年 08月 21日

福島泰樹が来るー熱月・8月(17)

現代短歌の歌人にして長年先鋭な短歌絶叫コンサートを続けている
福島泰樹が来るという。
何年振りだろうか・・。
菱川善夫先生の葬儀で会って以来となる。
その時は遠くで見かけて挨拶も出来なかった。
山田航さんの処女歌集が出て、それに呼応するように急に友人の賀村
順治さんから電話が来て、今月24日ここで福島さんの菱川善夫追悼
コンサートの依頼がきたのだ。
福島さんの主宰する月光短歌会北海道合宿の一環という。
ちょうど居合わせた山田さんも仕事を休んで参加すると、嬉しそうだった。
急な事だったが、故菱川先生の追悼ともなれば、断わる理由は無い。
これも亡くなった菱川善夫先生の遺志のような気がする。
新旧の気鋭の歌人が初めて顔を会わせる事にもなる。

展示中の「記憶と現在」展は床の展示を一部寄せて、あとはそのままにする。
追悼の場として、素晴らしい背景となる。
石狩河口、パラト街道、界川游行とかって菱川先生も共感してくれた、私が福
島泰樹コンサートを催した石狩への道にも繋がる展示だからである。

今朝早速福島さんから電話が来る。
急な話を詫びつつ、どこか嬉しそうな声だった。
此処は勿論初めてで、古い友とも会えるそんな期待感が声の端々に
感じられた。
私も同様である。
福島さんの未知な故村岸宏昭の作品や処女歌集出したての山田航さん
、そして今はこの世にいない恩師の菱川善夫先生と、生死を超えた魂が
ふっと集まって、「記憶と現在」展の中で邂逅する不思議な時間が始る
ような気がするのである。

*「記憶と現在」展ー8月17日(金)-31日(金)am11時ーpm7時。
 月曜定休。:8月24日(金)午後4時~福島泰樹月光の会。
*秋田奈々写真展ー9月中旬~

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2012-08-21 12:14 | Comments(0)
2012年 08月 19日

さようならバグ・チルドレンー熱月・8月(16)

夏疲れの昨日、山田航さんが来る。
処女歌集「さようならバグ・チルドレン」が出版され、持って来た。
ちょうど来た次回展示予定者の秋田奈々さんと一緒に本を見る。
そこへKさんも来て3人で貪るように出来たての歌集を読む。
しばし声が無い。
やがて、秋田さんが声を発した。”読みやすいわあ!”
それから個々の感想が飛び交った。
出版されてすぐ、増刷が決まったという。
これは売れるわ、そう思った。
短歌という三十一文字の研ぎ澄まされた器に、言葉の旬(しゆん)が
新鮮なのだ。
辛味のあるシャキとした批評性もその中にはあって、情感に溺れず、
詩を引き締めている。
読むと連想が湧き、沈黙が続くのだ。

 みどり色のキャラメル箱にからころと揺られキャラメルになりたいふたり

 めぐりあふ場所としてまだ駅はある海辺をずっと離れないもの

 張りつめる水平線は彼方から彼方へつながれる糸電話
                                    (R134)

 鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る

 昨晩のその場しのぎの言い訳にサランラップがかけられている

                                   (スタートライン)

 置き忘れられたコーラが地下道に底無し沼のやうに聳える
 
 たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく

                               (ペットボトル・ウオーズ)

 空色の壁に囲まれた人はなぜ羽根あるものを飼ひたがるのか

                                 (ランブルフイッシュ)


と、取り上げれば限りが無いが、ここにあるある種平易な日常の言葉が
ふっと生きている日常の亀裂を覗かせ、沈黙を強いるのだ。
しかし、それは決して世界を閉ざす言葉ではない。
ある勇気のような日常性をも湛えているような気がするのである。
私は個人的には次の一首に勇気を頂いた。

 フランスパン輪切りにしながらわかっている君が誰よりもがんばってることを

                                  (秋の誘蛾灯)

それぞれの今という日常を、ひとつの小さな言葉から読む人それぞれが回路
を見つけて思いを廻らす。
この本はそれが可能な優れた言葉の日常ICチップ・詩の集積回路である。
短歌という言葉の武器、定型というものの保つ力を感じさせる。
ツイターのような現代の潮にも乗って、短歌という形式は現代に再生しているの
かも知れないなあ。

*「記憶と現在」展ー8月17日(金)-31日(金)am11時ーpm7時。
 月曜定休。
*秋田奈々写真展ー9月中旬予定。
*山田航歌集「さようなら バグ・チルドレン」(フランス堂・2200円)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2012-08-19 13:42 | Comments(0)
2012年 08月 17日

雲低くー熱月・8月(15)

どんよりと雲低く湿度が少し高い日。
気持も冴えない。

昨日の展示を今朝あらためて見る。
緊張感ある良い展示と思う。
作品の質の高さが、空間の深度を保っている。
たまにこうして収蔵品だけで空間を構成するのは楽しい。
ただ会場の使用者がいない時でもあるので、実は苦しさと裏腹
でもある。
公共・半公共的なこの社会のインフラ装置は、否応無くその
<公>的力を行使してくるからだ。
滅私奉公の<公>は、一見ソフトな顔をして今も存在するような
気がする。
電気・水道・ガス・石油・電話・家賃・食費と、最低限の生活インフラ
の包囲網は隈なく生活の隅々にまで張り巡らされている。
公共・半公共料金という名の半強制力を保つこれらのインフラは、
衣食住に深く関わり官民を問わず時に牙を剥く。
金銭という鎖や手綱が切れると、その関係は共存から対峙へと転じる。
そして孤立したまま閉じた部屋で、孤独死する人もいる。
幸い自分はまだそこまで孤立してはいないが、その際までは何度
も経験しているような気がする。

都会の中心から幾重もの際(きわ)を通り過ぎて来た。
埋没する事無く、エッジの先端でいつも発するなにものかであろう
として来た。
その事だけは今もいえることだ。
際(きわ)とかエッジというものは、けっして追いやられた土俵際の
位相でではない。拮抗するエッジなのだ。
ラデイカルな第一線の位相である。
負け惜しみではない。
中心には埋没せず、世界と向き合おうとしてきた。

何を言いたいのか。
繰り言のように呟いている。
そして夢想している。
海の際、山の際、村の際、川の際、丘の際を、今も歩き続けている
自分を。

*「記憶と現在」展ー8月17日(金)-31日(金)am11時ーpm7時。
 月曜定休。
*秋田奈々写真展ー9月中旬~

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2012-08-17 15:37 | Comments(0)