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2010年 10月 30日

時間差のある時間ーNovember step(4)

写真が出来た。ニコンとペンタックスで撮った写真。
フイルムなので、時間差がある。
まだ夏の石狩歩き。
帰省中の文月悠光さん、大塚軟膏くん、山田航さん。
海岸で波を見詰めている村上仁美さん。
望来のバス停でそれぞれの待ち姿。
唐牛幸史展の黒い床に寝そべる藤倉翼さん、見守る彼女。
東京から来て3日逗留していった岡部健司くん。
寝そべるgla_glaの高臣大介さん。
次は標本箱に山田航さんの短歌を置き、昆虫をその周りに
虫ピンで真剣に刺している熊谷直樹さん。心配そうに見守る山田さん。
文月さんの詩をパソコンに打ち込み、字の大きさをチェックする
河田雅文さん、森本めぐみさん。
続いて谷口顕一郎さんのクローズイング宴会風景。
会場中央に吊られた作品の周りをご馳走が並んでいる。
にこやかなケンとアヤ。かりん舎のふたりが話し掛けている。
最後は高臣大介のあぐらに、膝枕をして酔いつぶれたケン。
もうひとつの膝には、酒井博史さんが嬉しそうな顔をして同じ膝枕。
大介さんはこの時の記憶がないという。
フイルムなので一本のフイルムに時間差がある。
夏から初秋にかけて、一本のフイルムの中に時間が閉じ込められている。
現像してそれらが一度に開かれるのだ。
熱い時間が走馬灯のように、瞬間甦る。
酔ってぶれた写真にもリアリテイーがある。
フラッシュは焚いていないから、被写体そのものが揺れて写る。
その揺れに時間の雫が滴っている。
デジタルカメラは苦手で使わない。
あれは、別の機械である。
瞬間に定着し、気に入らなければ消去する。
その簡易さが、時を薄くする。
時間の保水力を喪失させる。
一本のフイルムに溜め込まれた時間差が、なんとも私には楽しいから。
8月の記憶がとても新鮮な10月末とは、なんと豊かな時間ではないか。
写真の1ショットは一秒にも満たないのだが、その瞬間の映像は
永遠のように豊かである。
掛け替えのない一瞬の表情、動きがキラキラと輝き定着して、
今日もまだ閉じたカメラの中に日の目を見ることを待って眠っている。
土の中の種子のような、この溜まる時間こそ、アナログカメラの醍醐味なのだ。
時間にも熟成するワインのような時間差が必要だ。

忘れても、いいよ。もう、いいよ。
思い出してくれて、嬉しいよ、と時間が微笑んでいる。

*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)ー14日(日)。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-30 14:46 | Comments(0)
2010年 10月 29日

雪の後ーNovember step(3)

ケンに借りた自転車に、タイヤの空気を入れに行く。
いつもの自転車屋さん。
あれっ、という顔をした。そうなんです。違う自転車です。
うまく空気を入れられないのでお願いする。
手でするのと違って、あっという間にパンパン。
人の自転車は勝手が違うので、気を使う。
ハンドルも前の盗まれた自転車は、横一直線なので、前屈みで
アグレシブな走り方をした。
今回の自転車は、ハンドルが少し曲線なので、腰の落ち着きが良い。
腰の位置が違うと、視座も違う。
椅子に座って運転している感じだ。
タイヤに空気を入れて、快調に走る。
エルムトンネルの上、北大構内の樹が枝を落として荒れている。
先日のドカ雪の為、紅葉した葉に濡れた雪が積りその重さで折れたのだ。
自転車道の脇の歩道が落ちた枝で埋まっている。
陽光が射して、路上の濡れて紅葉した枝が美しく痛ましい。
晩秋と初冬の入り混じる北の風景である。

腰の痛みも軽減して、再びバーバリーに戻る。
ジージリーと書いたら、喜んでメールをくれた人がいた。
そのお方はきっと、バーバリーの裏地を好きな人なのだろう。
格子縞のマフラーの柄である。
本来はミバーバリーはミリタリールックで、ベルトに輪がついているのは
その名残である。
手榴弾をぶら下げたという。
戦闘的なコートなので、腰を曲げて着るのは、なんとも不似合いである。

吉増剛造の「裸のメモ」詳読する。
この膨大な人生の記録。横糸のように絡む多くの人たち。
織姫の手仕事のような、吉増織りの世界である。
交感した人と共に織り成した70年の膨大な長編詩とも思える。
ただ昨年暮の目黒美術館「’文化’資源としての<炭鉱>」展の記載
がないのが気にかかる。
吉増さんは「石狩シーツ」をもって参加し、独自の講座も開いているからだ。
次なる出発に保留したのか、と感じている。
12月札幌訪問の際、その答えがきっと出るだろう。
石狩・みちゆき・吉増剛造は、まだ続くに違いない。
そう直感している。

*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)。
 am11時-pm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-29 14:40 | Comments(0)
2010年 10月 28日

雪のち晴れーNovember step(2)

疲れが出たのか、寒さの所為か、体が固くなっていて、朝重い物を持って
急にくしゃみをしたら、腰がギクリ。
まあいいか、と今年初めてバーバーリーを着てリュックを背負って
出かける。
テンポラリーに着き、先週までの展示の後片付けを点検し、
佐佐木方斎展の看板文字を書く。
吹き抜け回廊部分にカンテラ点灯に使用した蜜蝋蝋燭の融けた蝋が
床に垂れて残っていた。
滑ると危ないので、融けて固まった蝋を削ぎ落とす。
屈むと、腰が引きつる。
まあいいか、と仕事を終えパソコンを開き点検。
ドイツへ帰った谷口顕一郎さんが、帰国後まとめてブログを書いていた。
ケンとアヤの50日間の滞在日記。5キロふたりとも太ったという。
ここを去る時はまだ昆テンポラリー展の最中だったが、みんなで見送った時
さり気ない顔をしていたケンだが、別れてから途中目から汗が出たという。
ほんと最後まで、よく目から汗の出るふたりの滞在だった。
北海道神宮前でのふたりの晴れ姿もブログには載っていて、少しおすまし
のケンと笑顔のアヤが凛々しい。
仕事の上でも、私生活の上でも、今回の滞在50日間は生涯忘れられない
日々となったと思う。
昆テンポラリー展を最後まで見る事は出来なかったが、展示準備中の
心合った共同作業は強く心に残り、忘れられないと記している。
展覧会だから、人に見せる為にするのは当然だが、展示に至る過程もまた
展覧会であるのだ。
現象ー実体ー本質の3段階理論の逆過程が、展覧会の前後のプロセス
にある。
多くの人が見てくれるという現象は、企画した当初の本質へと再度逆回転
してゆく。この往還に真の充実(実体)が潜んでいる。
今回のように多くの人が関わり、共通のテーマを保って展示する場合には
一層その事が重要である。
自分の個展、複数の人間によるテーマ展と続けて性格の異なる展覧会を
経験したケンちゃんの、公私共に充実した感想を読み、腰痛も消えていく
気がするのである。

まあ、錯覚ですけどね。
バーバリーに腰曲げて格好悪いのが現実です。
ジージリーにしょうかな。

*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)
 am11時ーpm7時。月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-28 14:59 | Comments(0)
2010年 10月 27日

銀世界ーNovember step(1)

昆虫を素材とするコンテンポラリー展が終って、
世界は真っ白な銀世界。
初雪である。
秋が短い。
まだ紅葉の残っている壁の蔦に
溶け出した雪の雫が音を立てている。
道は雪の泥濘で、靴が濡れて乾かない。
軒下の雪融け水の音が鳴り止まず、冬の足音は行きつ戻りつ
逡巡して、山の紅葉も戸惑っているようだ。
夏の末・短い秋の終わりとともに、昆虫・昆テンポラリー展が終った。
次週の佐佐木方斎展まで、少しの休息である。
’80年代を熱く駆けた抜けた佐佐木方斎の久方ぶりの今度の新作展は、
世代の新旧を超えた何かを問い掛け、時代の深部を照射する事だろう。
良くも悪しくもそういう生き方をしてきた男である。
November steps、11月この時期に相応しい展覧会と思う。
10代、20代、30代の優れた詩人・歌人・美術家が、昆虫を通して
表現したコンテンポラリー展に続き、彼らが生まれて間もない頃に
海外・道外作家も含めた大規模な現代作家展を企画し、美術批評の雑誌を
自ら編集し、さらに優れて純粋抽象の数々の作品を発表した佐佐木方斎の
新たな展開は、正に同時代としての真価を今に問うものである。
’90年代後半以降いわば冬の時代にいた人間が、今日の天気のように
再び冬を溶かして燦々と太陽の陽光を放ち、November stepsを
見せてくれる事を心から期待するのである。

*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)。
 am11時ーpm7時。月曜定休。
*一原有徳追悼展ー11月16日(火)-27日(土)
*及川恒平ライブ「まだあたたかい悲しみ」-11月23日(祝)午後4時~。
 :予約2500円・当日3000円。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-27 12:46 | Comments(3)
2010年 10月 26日

昆テンポラリー展最終日ー秋のフーガ(20)

昆テンポラリー展最終日。
切れ目なく人が来て、河田さん、山田さん、熊谷さんは昼抜きで
お相手をしていた。
私は談話室で北海道大学出版会のK氏と連れの女性と話し込む。
K氏は彼女を私に紹介したかったらしく、前日に続き二度目の訪問である。
途中で話に加わった河田さん曰く、久し振りに女の子らしい女の子に会った。
私が父の絵を説明した時もすぐに涙ぐんで、感受性豊かな女性であった。
K氏がここへ彼女を連れて来た気持ちも、今回の展示、この空間、そして人
に会わせかったのだろうと想像する。
3時間以上も居ただろうか、その間絶え間なく人が来て、ニューヨークから帰国
したばかりの久野志乃さんが来たのを機会に、ふたりが帰る。
午後7時閉廊時間過ぎて、日曜日休日にも拘わらず店を開けてくれた
宇田川洋さんの店「ゆかり」に向かう。
着くと宇田川さんと千鶴さんがすでに料理とお酒を用意してくれていた。
早速空き腹で乾杯。
後から活字印刷の酒井博史さんも来て、彼の唄も入り
気持ちのいい打ち上げとなった。
お預かりした木野田君公さんの「札幌の昆虫」もほぼ完売して、この昆虫を
主題とする、映像・絵画・造型・詩・短歌のコンテンポラリー展は、さらに次なる
テーマを胎動しつつ無事終了した。
遠くから力作の新作詩を送ってくれブログ上でもエールを送ってくれた東京の
文月悠光さん、連日会場に皆勤してくれ新作秀歌8首を寄せてくれた山田航
さん、自宅からここまでの道程をあたかも昆虫の目線で辿るように記録した
映像の河田雅文さん、昆虫の眼や触角、口を秀逸な部分で造型し壁を
有機的に空間構成した森本めぐみさん、貴重な昆虫標本をこころよくお貸し
頂き、ともに楽しんでくれた木野田君公さん、さらに帰国中の合い間を縫って
絵画を完成させ展示してくれた谷口顕一郎さん。
そしてこれらの作品群を見事な会場構成に仕上げた河田雅文さんの力にも
深く感謝するものだ。
原案を企画し多忙な勤務の合い間必ず顔を出してくれた熊谷直樹さんも
また、この滅多に見られないメンバーの競演に深い満足感を表わしていた。
また会期中に瞬く間に減っていった活字活版印刷のDMを手がけた酒井博史
さんの、優れた手仕事もこの展示に花を添えていたのである。
協力頂いた北海道大学出版会の方々、そして札幌市博物館活動センターの
方と次なるカルチヴェートシリ-ズへの確かな手応えを確認しつつ、この熱い
2週間は、あっという間に終ったのである。

*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)。
 am11時^pm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-26 13:07 | Comments(0)
2010年 10月 24日

吉増剛造の本ー秋のフーガ(19)

詩人の吉増剛造さんの新しい本「木浦通信」が送られてくる。
580頁を超える分厚い一冊である。
6ポという小さな活字でぎっしりと詰まっている。
表紙・扉・グラビアには今年6月亡くなられた大野一雄の”手の舞い”が
墨で跡となり踊っている。
注目すべきは、本の半分以上を占める、吉増剛造自身の「裸のメモ」
ー1939~2010の記録である。
誕生に始まり現在までの詳細な年譜であるが、その構成が半端ではない。
吉増さん自身の生を縦糸として、月日単位で綴られそこに関わった人の
文が入り、自らの折々の詩・文・対話が横糸のように織り込まれている。
さらに重要な一節は10ポの活字で浮き上がるように構成されている。
これはもう年譜というより一遍の詩、自らが手織りした一枚の古織物の
ようだ。
これは吉増さんの死に装束・経帷子ではないのか。
出版された矢立出版の矢立さんのご苦労も並大抵のものではないと、
想像する。
本の校正中に大野一雄さんが104歳で亡くなられ、図らずもこの本は
大野先生の最後の手の舞踏をこの世に遺す本ともなった。
寝たきりの生前の大野一雄が、掌に墨を塗りその手の動きを紙に印した
最後の舞踏の痕跡である。
その事実も含めてこの本は、どこか吉増剛造の死の準備にも思えて
くる。縁起でもないとご本人に怒られそうな気もするが、私にはそんな
気がしてならないのである。
とはいえ、この400頁余りに及ぶ詳細にして精緻な年譜「裸のメモ」は、
吉増剛造の生涯を賭けた織物・詩篇のようにあるのだ。

昆テンポラリー展も今日で最終日。
日曜日の所為もあり、朝から家族連れの車で来る人が多い。
6人それぞれの交友関係が如実で、普段のテリトリーが見える。
この展覧会もまた、人の交友関係が織り成す時間の織物である。
最後にいかなる帷子となって、心に残るか。
今日一日がラスト・ラン。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
  文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)。
 :企画原案・熊谷直樹。
 :企画協力・札幌市博物館活動センター・テンポラリースペース。

 テンポラリースペー札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-24 13:35 | Comments(0)
2010年 10月 23日

チャパツとなった-秋のフーガ(18)

朝少し寝坊して急ぎ足の道。
声をかける青年がいた。
瀬戸くんだった。
瀬戸くんは、昨夜岩見沢からライブを聞きに札幌に来ていたという。
一緒にギヤラリーに入り、先ずは珈琲を淹れる。
ふとみると帽子を取り、ニコニコしている。
うん?、髪が茶色だ。先日染めたという。
似合うねえ、秋色だね、と冷やかす。
本人も満更でもないらしく、いいでしょうと、笑っていた。
休日の熊谷直樹さんも来て、さらに見知らぬお客さんも2人、3人と来て
一気に土曜日の朝は賑やかになる。
昨夜は、ジャズのアルトサックス奏者中西弘行さんが来た。
熊谷さんと高校の同期で優れたジャズプレイヤーである。
某デパートに勤めていて、仕事柄に似ず頭はモヒカン刈りである。
それで客商売を通してしまう強さが彼にはあるのだ。
演奏も熱く激しいフリージャズが得意である。
今は物流業界の再編成で、色々な苦労をしている。
支笏火山の溶凝灰岩・札幌軟石の話をし、それを素材に懇テンポラリーの
話をしたら、大いに関心を示してくれた。
軟石の会場に中西さんが、火のようにサックスを吹いてくれたら
面白いなあとその時ふっと思っていた。
冷え固まった石に、彼のサックスが溶岩を溶かす火のように響くのだ。
昆テンポラリー展の昆虫から、土・石と次なるこの大地を掘り起こす
イメージが広がってゆくのである。

一方相も変わらず「芸術の秋」とかいうパターン化したお題目を、
錦の御旗にした、地下通路アートステージなる恒例の祭りがある。
来週から吹雪の予報も出ているこの北の大地に、人工地下通路に
芸術の秋満載のこの企画は、なんとも主体性がない、
そのアイデンテイテイーの希薄さを、さらに追い討ちを掛けるように
、札幌国際芸術祭なる、アートブローカー的構想が蠢いている。
国際化という名の呼び屋のアートテナント招致構造は、この街の産業経済
構造とまったく同じ箱貸し構造である。
個々の表現者の固有の芽を育てるどころか、芽を摘む結果ともなりかねない。
こういう事業に助成金をつぎ込む愚かな文化政策は、断固としてチェックする
必要があるのである。
大規模地下通路の化粧に、アート菌をばら撒いて、アートでお茶をみたいな
目の臭い消し効果に、真の芸術が育つはずがない。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
 ・文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)
 :企画原案・熊谷直樹。
 :企画協力・札幌市博物館センター・テンポラリースペース。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-23 12:52 | Comments(0)
2010年 10月 22日

白い季節ー秋のフーガ(17)

雪虫が飛び、白鳥が夜空を飛んだ日。
翌日の天気予報にはもう、雪だるまのマークが載っていた。
来週早々初雪が見られるかもしれない。
競馬場の壁の蔦はまだ半分しか赤くなっていないのだが、
冬将軍の到来は、もうその足音が聞こえてきた。
昆テンポラリー展もあと二日。
5人それぞれの領域、現代詩、現代短歌、美術、さらに昆虫学、役所関係、
博物館関係と多士済々の人が訪れてきた。
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」との関連もあり、たかが昆虫、されど
昆虫である。
伊藤組土建の会長宅1万4千平方mの敷地に棲息する昆虫の数は、
どれほどあるのか、木野田さんが手稲星置の自宅庭で観測した数は、500
種というから、伊藤邸庭には恐らく3000種はいるだろうと推測していた。
植物園ー清華亭ー北大構内に連なる緑のゾーンである。
個人邸でもあるから、他の公共的空間よりさらなる自然密度があると
考えられるからだ。
<伊藤邸の昆虫>として、調査・記録をさせて欲しいなあと木野田さんが
呟いていたのを思い出した。
繋がる森のゾーンから、伊藤邸庭へと逃げ込んだ希少種もいるかも
知れない。
もしあの原生林の面影を残す庭が、駐車場や高層ビルになったとしたら、
もう昆虫たちもエルムの大木も消滅して、空に直線、地に新幹線の直線
と物流とその量数を埋めるだけのつまらない世界となる。
昆虫たちの眼からも、人間はその視座を学ばなければならない。
樹という天地に立つ直線は、命の祈り、凛々しい直線・垂直軸である。
その一本一本の樹の集まりが、森という小宇宙を創る。
そこに小さくとも固有の有機的な昆虫たちが、森を耕している。
その微細にして繊細な生き物たちが、森をさらに有機的な宇宙に
育てていく。
高層ビル群の林立する都市に奇跡的に残された虫たちのワンダーランド
、この緑の運河をなんとしても後世に引継ぎ残していくのは、文化の使命
であると、あらためて思い至っているのだ。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
 ・文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)
 :企画原案・熊谷直樹・
 :企画協力・札幌市博物館活動ッセンター・テンポラリースペース。

 テンポラチースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-10-22 12:34 | Comments(0)
2010年 10月 21日

夜の白鳥ー秋のフーガ(16)

釧路のAさんがひょいと来て、久し振りの再会だった。
2年前の春網走へ帰る佐々木恒雄さんの札幌最後の個展に来て、
佐々木さんの傑作を購入してくれた方である。
DMに使われたこの作品に惚れ込んで見に来てくれた。
じっと会場で作品を眺めていた後姿が、印象的であった。
その後同じ釧路から教育大に入学した瀬戸くんからも、Aさんの
話は聞いていて、二度ほどしかお会いしていないのだが、旧知の
ような感じをもつ人である。
道庁の関係のお仕事で、釧路には出向で勤務されていて時々札幌にも
顔を出しているようだ。
Aさんが呼び水のようになって、市役所の文化部、企画部、博物館活動
センターの方々が一気に見えて、会場は人で溢れた。
こんなにも一堂に役所関係の人が同時に居合わせる事も珍しい。
今回の展覧会に惹かれてきた理由はそれぞれであるが、こうして仕事を
離れて個人として来て頂いた事は、とても嬉しかった。
特に札幌市博物館活動センターの学芸員Yさんは、初対面だったが
センターの発行した「さっぽろ時空探検」という小冊子に大いなる啓蒙を
受けていたので、会いたかった人である。
聞くと以前のテンポラリースペースにも一度来ていた事があったようで
そんな話もして初対面の固さはなかった。
Aさんや市役所の人たちが帰った後もしばらく奥の談話室でYさんと
話し込んだ。
博物館活動という一見地味な仕事に大きな志を抱いて取り組む真摯な
姿勢が共感を呼んで、初対面という感じが私にはしなかったのだ。
早速支笏火山ポロヌプリの話をして、今後の展開の協力をお願いした。
閉廊時間も過ぎてしばらく、これから北大の授業に出かけるというYさん
は昼は仕事に勤務し、夜は博士課程の修得に勤しんでいるという。
またの再会を約束して一緒に会場を出た時、急に空を見上げてYさんが
叫んだ。

 あっ、白鳥が飛んでいる!

つられるように夜空を見上げた私には何も見えなかった。
こんなこともあるのね、と小さく呟いたYさんと別れ、帰りの自転車を
漕ぎながら、あれは一体なんだったのだろうかと、思い返していた。
私の眼には見えなかった夜空の白鳥。
あれはきっとYさんの心に跳んだ、幻の白い大きな鳥。
幻のポロヌプリから飛び立った、白い火の鳥だったかも知れない。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
  ・文月悠光8現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)。
 :企画原案・熊谷直樹。
 :企画協力・札幌市博物館活動センター・テンポラリースペース。
*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-10-21 13:28 | Comments(0)
2010年 10月 20日

幻の山ー秋のフーガ(15)

幻のポロヌプリ支笏火山が見えてきて、その溶結凝灰石・札幌軟石を
モチーフに、次なるテーマ<墾>テンポラリー展への展開を、熊谷直樹さん、
河田雅文さん、赤坂真真一郎さんと個別に話している。
今回の、<昆>テンポラリー展を通して開いてきた主題である。
<昆虫>から<土・地>のテーマへと、今回の展覧会は導いてくれた
気がする。
これらは、Cultivateシリーズとして、毎年継続したく思うのだ。
山に例えれば山頂の高みの一点ではなく、その山頂を形成する中腹・裾野
から今という現場を再生すること。
その行為を、文化のcultivate(耕す/養う)行為として位置付ける。
contemporaryの<con>を噛み砕き、con(ともに)の在りようを、
それぞれの表現領域の基底テーマとして設定すること。
その意味で、幻の大山(ポロヌプリ)は、札幌という一地方の大地を形成
した地・土の源のひとつであり、そこを基底として表現による再生・再構築を
意図するものでもあるのだ。
明年までこの企画は、じっくりと暖めたい。そんな思いでいる。

ぱらり、ぽらりと人が見えて、この優れた展覧会はそんなに人の目に
まだ触れてはいない。
しかし展示中の熱い共同作業を経た後の感覚からいえば、何千人、何万人
という動員数の問題は本質的ではなく、関わった当事者の満足度のほうに
針は揺れる。
まだ会期は残っているので、早計といえば早計とも思えるが、負け惜しみで
はなく、真実そう思うのである。
本質的な思考の垂鉛の深さにおいて評価は定めるもので、量数の横軸で
この展覧会の垂鉛の縦軸の質を測るべきではないと考える。
この地に生きる昆虫への主題提起が、幻の大山へと繋がった一事を思えば、
その事実が証明されるのだ。

毎日会場に姿を現して丁寧に作品を説明している河田さん、山田さんを
見ていて、当事者の熱い思いは少しも切れずなお一層燃えているのを
日々感じている。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)山田航(短歌)
  ・文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)。
 :企画原案・熊谷直樹。
 :企画協力・札幌市博物館活動センター・テンポラリースペース。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-10-20 14:45 | Comments(0)