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2010年 09月 30日

高い空・沈む心ー谷口顕一郎展(12)

今日で9月も終る。
真夏の暑さに始まり、冷たく澄んだ秋晴れの終わり。
この1ヵ月の気温差は激しい。
人の来訪切れ目なく、しかし何故か平坦な印象だ。
先日訪ねたばかりの某店のマダム、旧知の谷口さんの友人。
顔見知り程度の人、名前だけで顔を知らなかった人。
様々な人が代わる代わるに来る。
その時語り合うのだが、残るなにかがない日。
川に例えれば、さらさらと流れ、澱みのない流れ。
作品に話が及び、濃くなる事がなかった所為だろうか。
それぞれの近況と現状を日常的に繋ぐ事が、主たる話だったから。
それが悪いという訳ではないのだが、自分自身も含めて重い時と
心の軽い時がある。
人の数でも時間の長さでもない、句読点のような時間が無い時もある。
最後に、最近亡くなられたお母さんの話を、深く重く話す人が来て、
昨日のさらさらした時間は、最後に句読点のように重く沈んだのだ。
しかしこれも谷口展とは関わり無く、胸の想いを吐露されたものだ。

空は高く澄んでいるが、心は何故か低く沈む今朝。


*谷口顕一郎展「凹みスタデイ#19」-10月3日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-30 11:24 | Comments(1)
2010年 09月 29日

雨の日ー谷口顕一郎展(11)

雨が外の音を消してくれる。
雨音だけの静かな日。
風も加わって、時折り激しく雨音が吹きつける。
そんな中、美術評論の長老吉田豪介さんが訪ねて来る。
ズボンが濡れている。
中へ招き入れ、熱い珈琲を淹れて出す。
ドイツ滞在中の谷口さんを、文化庁に推薦してくれた恩人である。
谷口さんがいそいそと会場で自分の作品説明に余念がない。
その後満足そうな笑顔の吉田豪介さんに奥で、砂澤ビッキの昔話を伺った。
私がビッキのキメンシリーズが好きだというと、眼を輝かし
その時代の色んな話をしてくれた。
夕方家族で食事の約束があるという谷口さんが、少し早めに帰った後、
広島での展示を終えたガラス作家の洞爺の高臣大介さんが来る。
入れ違いを残念がる高臣さんだったが、作品はゆっくりと見ていた。
ちょうど来た日章堂の酒井博史さんと久し振りに会って、最終日に
もう一度ここで会おうと約束していた。
最終日酒井君と大介さんとの久方ぶりのヂュエットが聞ける気がする。
多分ケンと彩さんからは、中島みゆき「糸」のリクエストが
あるに違いない。
最終週の日曜日に向けて、谷口展のカウントダウンが始ってきた。
昨日彼と話した言葉、”まだやっと一週間、濃い日が続くなあ、”だった。
ともに十数年前の場所から経験してきた時間が、濃くコンデンスされて
この一週間に集約されてきた。
そんな気がするのである。
作品もまたそんな時間を凝縮するように、深化し存在している。
谷口顕一郎の札幌時代を良く知る知人・友人たちが、その変化を
彼の人生そのものと同じように立ち会っているのだ。
その感覚こそは、百の言葉にも勝る実の批評である。
他の場にはない故郷ならではの、彼の故郷の声なき声、
無言の批評なのだ。
その事を他の誰よりも一番深く感じているのは、本人であると思う。
故郷は甘えるところではない。
優しく包んでもくれるが、誤魔化しは効かない場所である。
良くも悪くもあるがままの今の自分と向き合う場所である。
作品以外の直接性は、山の裾野のように深く重い。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ#19」-10月3日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材に」-10月12日(火)ー24日(日)
 :谷口顕一郎・森本めぐみ・河田雅文・文月悠光・山田航。
  綜合素材提供:木野田君公氏「札幌の昆虫」著者。
  企画:熊谷直樹。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-29 13:05 | Comments(0)
2010年 09月 28日

そして、次の日ー谷口顕一郎展(10)

ライブ翌日は定休日だったが、谷口さんの希望もあり開ける。
再来週から始る「昆テンポラリー展」に出品する絵画を描くという。
午後歯医者さんに出かけた後会場に戻り、昨夜の熱いライブの話を
ふたりでした。まだまだ余韻が残っていた。
狭い会場に6人の楽器を持った勇士が燃えた。
そしてれを囲む聴衆の、特に目立った熊谷直樹氏の掛け声、合いの手。
この絶妙な間合いに、演奏者も聞き手もさらに乗ったのだ。

♪いいんで、ないか~い!

この掛け声は、タイミングと勢いがないと、ただの野次のように
野暮な声となる。
さらに音楽を良く聞く耳、そしてなによりも演奏と演奏者に対する
深い愛がないと駄目である。
この見事な声を発した熊谷氏が、実は当日サックスを演奏した
中西弘行氏ともどもムラギシと同じK高校の出身と後で知った。
これも不思議な縁である。
そんな後日談を谷口さんと話していると、ドラム奏者でライブの構成、
メンバー編成すべてを企画した有山睦さんがふらりと来る。
昨夜は機材の片づけ、車と飲めなくてゆっくり話も出来なかったので、
寄ってみたら電気が点いていたので嬉しくて寄ったという。
それから有山さん持参のビールを飲み、しばし昨夜の話が続いた。
演奏中も興奮し、涙が出そうになり、終ってから声も出なかったという。
今日はゆっくり谷口さんの作品を見て、本人の話を聞きたかった。
そう語る彼の表情には、この日の為に新たなバンドを結成し、
難曲の数々を見事にこなした熱い満足感と余韻が漂っていた。
普段定休日と知りながら、もしやと遠くここまで足を伸ばして来た心に、
彼の冷めやらぬ昨夜の熱気が続いているのを感じた。
紡ぐ言葉はもうその余韻の、言の葉でしかない。
百の理論、評論よりも互いの仕事の質が、最大の批評である。
音楽家は演奏で響き伝え、美術家は造型作品でその震えを見せる。
だからこのふたりにもう言葉は要らない。
会場の作品の間をグラス片手に歩きながら、立ち止り同じ方向を見て
語り合うふたりの後姿の肩に、小さな酔いどれ天使が飛んでいた。
日曜日のライブの後の月曜日。
いい余韻がまだ濃く漂って、日が暮れた。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ#19」-9月21日(火)ー10月3日(日)
 am11時ーpn7時。
*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材に」-10月12日(火)-24日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
 
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by kakiten | 2010-09-28 12:52 | Comments(0)
2010年 09月 27日

五臓六腑に沁みわたるー谷口顕一郎展(9)

昨夜の6人による演奏は、期待に違わず素晴らしい演奏だった。
まずベルリンで谷口顕・彩さんが愛唱していた中島みゆきの「糸」、
ムラギシの遺作「撓む指は羽根」の二曲が入る構成だけでもう、
涙腺が緩む段取りはあったのかもしれない。
しかし、最初の曲目演奏からその予兆があった。
第一部最初の曲は、秋吉敏子の「Long yellow road」。
第一部は谷口作品を象徴する色、黄色がテーマである。
それと同時にふたりがサハリンを経由して、トナカイの村とシベリア鉄道
を経て欧州へ渡った道程をも象徴している。
半年かけてドイツに渡ったふたりの道行きを思い、この曲を選んだと聞いた。
その他はY・M・Oほか黄色に因んだ曲が続く。
2部は古館賢治・今村しずかさん交互のヂュオでベースとドラムも加わる。
古館さんは前のスペース以来4年ぶり、ここは初めての演奏でその技術の
深化には驚くべきものがある。
オリジナル曲「船出」に、沖縄から来て最後の札幌の夜を過ごすさとまんくん
の目が赤く潤んでいた。
さらに2部の最後に今村静香さんが唄った中島みゆきの「糸」では、もう
聞いていた谷口さんが声なく号泣する。
後で聞くと、さとまんくんも泣き出していたようだ。
それぞれの恋の思いが堪らず湧き溢れた瞬間である。
3部に入り、ムラギシ曲「撓む指は羽根」を6人がフルに歌い上げるように
ジャズ演奏をした時、私もまた不覚にも目頭が熱くなるのを抑える事が
できなかった。
演奏前、藤谷康晴さんが会場に来た。
谷口展を見る為であるが、彼はムラギシ最後の個展の直前にここで
展示した作家でもある。
ふたりが展示を入れ替わる時、互いに片手を上げ、”バトンタッチ、ハイタッチ”
と声を上げ手を合わせた事が、私には忘れられない記憶としてある。
そこからムラギシ最後の個展が始り、個展の2週間後に遭難死するのである。
その死の直前に遭難した高知で出会っていたのが、沖縄のさとまんくんである。
そのふたりが偶然とはいえ、この日会場にいた。
さらに私に大学入学直前のムラギシを紹介したのは谷口さんである。
その谷口展会場でムラギシの遺作が初めて生演奏される日、
死の前一番身近にいたふたりが来ていた。
そんな偶然も含めて、この曲の演奏はきらきらと光に満ちて深い音で
会場を満たしていたのだ。
ムラギシの遺稿集を出版したかりん舎の坪井さんが、演奏会終了後
演奏者全員に遺稿集を寄贈すると言い残し帰る。
ムラギシ死後未知の青年の為に原稿を集め、優れて後世に残る本を
編集出版した坪井さん、高橋さんの目も赤く潤んでこの日の演奏の
素晴らしさを伝えていた。
またこうした集りに初めて来た宇田川洋さんは、今夜は興奮して
眠れそうにないとはじけるような笑顔を見せていた。
普段寡黙で、学究肌の宇田川さんが初めて見せた表情である。
音もまた五臓六腑に沁み入るのだ。
五感の一感が音声を捉えるにしても、その優れた響きは他の四感に
も及び、第六感をも震わす。
銘酒の一滴のような音だった。
6人の優れた演奏者全員にあらためて敬意と感謝を捧げたい。
そして会場の狭さにもかかわらず、最後まで耳を傾け盛り上げてくれた
聞き手の皆さんにも深く感謝したい。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ#19」-9月21日(火)-10月3日(日)
 am11時ーpm7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-27 18:16 | Comments(0)
2010年 09月 26日

ひとつの結晶のようにー谷口顕一郎展(8)

谷口展が始って、サッカーゲームのように人の出会いの球が周る。
新旧縁ある人が交叉する。
作品空間が球のように、人と人の間を繋ぎ、送られ、また転位する。
それはジャンルではない。
何かに触れて、何かが動くのだ。
そこに直接の作品批評がある訳ではない。
谷口顕一郎さんや私が生きてきた時間の重なる処に人がいて、
人にはその人の生きてきた大切な時間があり、それが逢う事で
解(ほど)け、開く。
だからジャンルではない。人それぞれの領域が、展覧会に来る事で
開かれ、語られ、交錯するのである。
多分ジャンルの枝葉の根の処で、再会し触れている。
当然同じ美術の友人もいるのだが、それぞれの現在は一様ではない。
谷口さん個人なら否定的な場を選んで再起の個展を東京で考える人も
いる。しかし、そこが問題になる事はない。そこが前面に出る事はない。
10年ぶりの再会には、互いの現在は大きく相違している。
その相違を超えて会う土壌がある。
旧友と一言では済まされない何かがある。
ジャンルだけに相違がある訳ではない。
人はみな違うのである。
その違いが違いとして、同じではないけれど理解出来得る土壌を
友情というと思う。
古仲間、悪友、さらにはもっと縁遠い知人たち。
生きている場も仕事も違い、年齢も立場も違うのだが、何か触れてくる。
そうした今回の個展を核とする交流・交錯のひとつの結晶が今夜ある。
今回新たに結成されたジャズグループ「shape of yellow」のライブ
である。
ギター・ヴォーカル・古館賢治、今村しずか。SAX須田裕之、中西弘行。
ベース・本間洋佑。ドラム・有山睦の6人が揃う。
この日の為に結成されたこのグループはまだ一度しか一緒に演奏を
していないと聞く。
先日某ライブハウスで実際にその演奏を聞いたK氏は、涙が出て
止まらなかったと言った。
特にムラギシの遺作「撓む指は羽根」の演奏は絶品であったという。
このグループは一部の人が重なりながらも、本来は別のグループである。
ジャンルもフォークとモダンジャズと違う。
それが今回新たに集結したのは、この場と谷口顕一郎への友情の
所為である。
曲目もそうした意志から構成されている。
この決して広くはない空間に6人の演奏者と聞き手が作品を囲み集れば、
もうその後の展開は見えてくる。
渦である。
この渦はさまざまな個々の相違を超えて、音としてこの場に結晶する何か
と思うのだ。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯9」-9月21日(火)-10月3日(日)
 am11時ーom7時;月曜定休・休廊。

 テンポライリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-26 12:25 | Comments(0)
2010年 09月 25日

ベーマー会会合ー谷口顕一郎展(7)

明治のお雇外国人ルイス・ベーマーの功績を発掘し、その研究誌を
発行しているベーマー会の会合が、宇田川洋さんの居酒屋であると
連絡を受けたので、閉廊後で出かけた。
以前お会いした上野昌美さんとベーマー会会長の加茂稔さん、副会長
のKさんが迎えてくれる。
3人は同じ大学の同窓という事だが、余市出身の加茂さんが余市の
リンゴのルーツがベーマーの尽力によるものと知り、ベーマー会を結成
したという。
さらにビールのホップや醸造用のブドウ、リンゴの苗木の輸入と
知られざるルイス・ベーマーの功績を発掘し、日本の近代における
若き外国人と若き日本人の夢の軌跡を再発見し記録しようという会
である。
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」を立ち上げた際、このゾーン
に残る清華亭の庭、道庁前庭に関わった造園家ベーマーの存在が縁
となって、この会の存在を知ったのである。
この日の昼過ぎ利尻島出身の田原洋朗さんが谷口展を見に来た。
そして久し振りに彼と同郷の友人の西村秀樹さんの話をしたばかり
だった。
若くして亡くなった西村さんは、札幌ビールの生みの親村橋久成を
再発見しその生涯を「夢のサムライ」という一冊の本にした人である。
しかしその村橋久成をしても、このベーマーの存在を抜きに彼の仕事
は為し得なかったのだ。
若き薩摩の人村橋久成と若き米国人ベーマーの出会いがなければ、
今日のサッポロビールもなかった。
さらにベーマーの功績は、青森や長野のリンゴの栽培、品種改良に
、余市のリンゴにも及ぶのである。
造園家としても優れた手腕を発揮し札幌の豊平館庭、清華亭庭も
ベーマーの手によるものである。
私は西村秀樹の著書により村橋久成を知り、さらに今回エルムゾーン
にある清華亭からルイス・ベーマー会の存在を知った。
西村さんの友人であった田原さんが久し振りに来て、しばらくはこの話
に花が咲いたのである。
そんな流れの中で出席したベーマー会会合は、実に楽しいものだった。
20世紀少年のようなおじさんたちは、いろんな所に話が飛び火していく。
同じ場所で会合をしていた黒曜石自然公園のグループとも合流し
話は多方面に跳んだ。
黒曜石もまた、歴史上大きな軌跡を刻んだ存在である。
この貴石の貴重な天然産地を保存し、アピールする会の集まりが
ちょうど同じ宇田川さんの居酒屋で開かれていたのだ。
その会長の木村さんとも口角泡を飛ばして話しこむ。
話が多岐に渡りまとめる事も出来ないが、熱い渦のような一夜であった。
とりあえず覚えている事は、次号のべーマー会会誌に寄稿を頼まれた
事だけは今覚えている。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯19」-9月21日(火)-10月3日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-25 13:20 | Comments(0)
2010年 09月 24日

三日目のことー谷口顕一郎展(6)

昨日は谷口顕一郎さんも含めて、次回の「昆テンポラリー展」の
打ち合わせをする。
木野田君公さんの著書「札幌の昆虫」を素材に、我々の生きている場を
昆虫の目線から再構成する展覧会である。
これは昆虫の標本展ではない。
羽や顔を大きく引き伸ばしたり、その形態を画家が独自に描いたりして
この地の風土に生きる生命を主題とする美術展でもある。
札幌を含めた石狩という土の世界、そこに昆虫の存在は
絶大なるものがある。
植物もまた昆虫を仲介にして生きている。
土そのものもまた、虫の存在を抜きに活性化はない。
勿論の事だが、その有機的な循環の世界に人間もまた生きている。
植物と同じように、昆虫にもここでしか見られない種がある。
その自然の有機的な世界から、もう一度自分たちの生きている世界を
昆虫を通して再発見し、昆虫の姿を通して表現しようとする展覧会である。
参加作家は谷口顕一郎、森本めぐみ、河田雅文、山田航、文月悠光を
予定している。
作品素材は、木野田君公さんの豊富な昆虫コレクシヨンから資料を
提供して頂く。
北大出版局から発行された木野田さんの「札幌の昆虫」という本。
この本から作家が想いを膨らませ、そこからそれぞれが惹かれた
昆虫のさらなる資料を木野田さんに提供頂き、独自に進化した美しい
形態をそれぞれの作家が表現するという試みである。
さらに木野田さんの個人的に撮影された昆虫の拡大写真を使って
会場のデイテールを構成する。
この辺の会場構成もみんなで創りあげてゆく予定である。
フライヤーの制作は活字印刷を手がける日章堂の酒井博史さんに
来て頂き相談した。
昆虫の羽の拡大写真の一部を印鑑状にしてシンボルマークに
する事が決まる。
植物とはまた異なる昆虫のアクテイブな躍動感、そのキラリとした
優美な動的形象は、単体の虫という概念を超えた生き物の美しさ
に満ちている。
デイテールに神宿る、である。
そうした微小の世界の集積に我々人間の生きている世界がある。
そしてこの土の中の世界を破壊するのも我々人間である。
土の裾野からもう一度この世界を再構成するカルチベートな試み。
思い上がったカルチャー頂点を根っ子から見詰め直す。
そこにconーtemporaryな真の視座の構築がある。
con(ともに・・)と、昆虫の昆を重ね、土の中からの視座・形態化が
今回の昆テンポラリー展の主題となる。
それぞれがそれぞれに好きな昆虫を選んで、わいわいとこの空間
が昆虫マンダラの空間に変容すればいい。
昆虫好きの人も嫌いな人も、紛れもなく我々はその大地の上に
生きているのだ。
虫のいない大地なんて、貧しく殺伐たる荒野ではないのか。
もし虫がいなくなれば、そこはレーチェル・カーソルが警告した
「沈黙の春」の世界、鳥も鳴かず花も咲かない世界となるのだ。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯19」-9月21日(火)-10月3日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月12日(火)
 -24日(日)
*佐佐木方斎新作展「逆絵画」ー11月2日(火)ー14日(日)
*及川恒平ライブ「まだあたたかい悲しみ」-11月23日(祝日)
 pm6時~:当日3000円・予約2500円。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-24 12:02 | Comments(0)
2010年 09月 23日

二日目の事ー谷口顕一郎展(5)

映像作家の大木裕之さんが風のように訪れ、去っていく。
帰京時間が迫り、あっという間の訪問。
谷口さんもちょうどいない時で、ほんとうにあっという間。
慌しく飛行機の時間を気にして去って行った。
岩見沢でのアートイヴェント出展の帰路だった。
昨日はマイミクの沖縄の人、サトマン君が来る。
初めての対面。大きな人と想像していたが、実際は横に大きな
好青年だった。ちょうど来ていた岩見沢の大学1年生瀬戸くんと並ぶと
同じ音楽青年のふたりは、兄弟のように見えた。
縦横に大きな音楽を愛するふたりである。
サトマン君を囲み、お酒が入る。
初対面という感じがしないのは、ミクシイやブログでお互いの動向を
知っているからである。
瀬戸くんを紹介すると、すぐにサトマン君は、あっ、あのジャズの人と
反応した。
サトマン君こと吉浜聡さんは、恋人に会いに北海道まで今回来たという。
勝負だね、と冷やかすと真面目な顔で俯いていた。

サトマン君が帰った閉廊後、都心の地下画廊で個展をしている
山本雄基展を見に、谷口夫妻瀬戸くんとともに出かける。
おり良く作家も在廊中でゆっくり作品を見た後歓談する。
色彩の純粋結晶のような山本作品は、なかなかの力作揃いである。
地下二階の閉塞した強い壁面に負けない色彩を放っている。
これは作品に凝縮した力があるからと思う。
小品も魅力的な色彩の雫を宿している。
コンクリート打ちっ放しのような、荒々しい剥き出しの灰色の壁面は、
ビルの地下二階という環境とともに、空間自体がオーナーのH氏の
作品そのもののように自己主張がある。
テンポラリーの地上に面した一軒家の位置とは対極にある構造だ。
山本作品の色彩の凝縮力は、逆にこうした空間で活きる性質も
保っているのかも知れない。
鉱石の性質である。
ギヤラリーの在り方としては、私の方向性とは逆であるが、
作品そのものは、少しもその価値を減ずる事はない。
色彩を埋め込む力の濃い作家である。
この地下画廊の埋め込まれた空間に、その部分で呼応している。
ただこの後に展開されるものは、凝縮の後の拡散・広がりである。
溜め込まれた光は、開き放たれる。
トランスの函が、次なる課題と思う。
谷口さんも作品の質こそ違え、大いに触発されるものを感じたようだった。
また会うことを約束して地下画廊を出る。
ビルを出て中通りの空気を吸うと、こんな街中の空気さえほっと美味しく
感じるのは、ビル嫌いの私の好みの所為だろうか。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯19」-9月21日(火)ー10月3日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-09-23 12:23 | Comments(0)
2010年 09月 22日

福寿草の母ー谷口顕一郎展(4)

特別にオープニングパーテイを謳った訳ではないが、
夕方から人が集まる。
谷口さんと彩さんの人徳というものであろう。
会場中央に吊られた作品を囲むように、車座になって宴会が始る。
私は奥の部屋で、佐佐木方斎さん、まるちゃん、谷口さんの父上と話す。
谷口さんの父上とこうして酒を酌み交わし話すのは初めてである。
お酒が回るにつれ谷口父上の舌は滑らかになる。
顕一郎の事は何でも聞いて下さい、私しかもう知らない事が沢山ある。
ランボーだった高校時代、まるちゃんの顔を見てこう言い出した。
まるちゃんの通うO短期大学は女子校で、家にも近くそこを覗きに行った
事などと話し出した。
私は大方のランボー時代を本人から聞いて知っていたので、
その事を思い出し笑いが止まらなかった。
こうした話はもう母上も亡くなったので、私しか知らないと念を押す。
そのうち今回の作品の事で、私が床の焦茶、作品の黄、壁の白の絶妙な
適合は、彼の北体験・春の福寿草と土の色ではないかと話すと、谷口さん
は大いに感心してくれた。
そしてふと思い出しように、亡くなった顕一郎さんの母上が一番好きだった
花が福寿草だとぽつりと呟く。
しかし、と話を繋ぎあの作品の形は花ではない。昆虫ですよ、と言う。
私は顕ちゃんのお母さんが福寿草を好きだった事は初耳で、その偶然に
不思議な感動を覚えていた。
北の大地の記憶とともに彼の母の記憶も入っていたのだ。
ひとつの色彩の選択にも個人的な理由がある。
そんな厳粛な気持ちがした。
さらにあの凹みの形象をずばりと昆虫だと喝破した父上の指摘にも
説得力がある。
花のたおやかな形象ではなく、昆虫の動的で暴力的な躍動性が
彼の選ぶ傷痕・凹みの形象には確かにあるのだ。
ランボー・昆虫の攻撃性、そして母上が愛した福寿草の黄。
これが谷口顕一郎の両側面である。
さすが父子である。
息子の本質的な基底部を見抜いている。
最後まで息子の至らなさを詫び、末永くよろしくという姿勢を崩さず
頭を下げる父上であった。
まだまだ一人前ではないという父の視線に、何よりも深い父親の愛情を
私は感じていた。そして同時にオランダの国の文化事業に異国人である
彼が登用された此れほどの実績を現実にしながらも、なお手綱を緩めない
親としての誇りと揺るぎない愛情の存在を、そこに感じてもいたのだ。
オランダ司法省関連の新ビル落成と博物館の完成の時には、一緒に
オランダまで彼の作品を見に行きましょうか、と父上と話した。
息子の作品の2年後の晴れ舞台。
ささやかな札幌からの応援団として、私も父上と一緒にそこに立ち会えれ
ばいいと思っていた。
父上が帰られた後も宴会は続き、二次会は宇田川洋さんの居酒屋で終る。
ここはここでKさんの涙が印象的な優れて作品論に関わる遣り取りがある。
いい作品は、いつもこうした波及する人の心の襞が素晴らしい。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯19」-9月21日(火)-10月3日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-09-22 12:03 | Comments(0)
2010年 09月 21日

展示完了・初日ー谷口顕一郎展(3)

展示が完了し、谷口展初日始る。
オランダ・ロッテルダムの遺跡採掘現場から採取した凹みを
トレースし、黄色のプラステイック素材で造型した作品が、やはり
圧巻である。
この会場中央に吊られた作品に、文化財課のK氏が注目した。
考古学的視線ではなく、発掘物を現代に再生する美術行為に、
ある共感を覚えたようだった。
実際に仕事上発掘現場に行って、例えば土中から鉄分を吸い取る葦が
枯れて遺跡物のうえに倒れ、その鉄分の影響で遺跡物の上に草の形
として遺されていたりする。それを見て面白いなあと思っても、考古学的に
さほど重要ではないから、その形は現場では見捨てられている。
発掘現場でその形に面白いなあと思う自分と現場にある違和感をもって
いたが、こうして谷口作品を見ていると、その形の面白さが考古学とは別
次元で再生され、美術作品として自立しているのがとても嬉しく共感できた
という。
もともと谷口顕一郎が作品に仕上げる亀裂・傷痕も、その凹みの有名性
に着目してその形を選び取る訳ではない。
あくまでその形象の美しさに惹かれて、採取するのである。
K氏が発掘現場で感じた葦の形の面白さも、そうした純粋形象への関心で
あったと思う。
その歴史的、あるいは考古学上の発見とは違う位相で形象の美を見る
視角に、今回のオランダでの遺跡現場から立ち上げた作品が強くK氏の
心を捉えたようである。
オランダでは司法省の新しいビルと博物館のそれぞれの中央ホールに
この作品の4倍のものが飾られるプロジェクトが、現在進行している訳で
その事実も痛くK氏の心を打ったようである。

札幌でも出来ないのか?

期せずしてK氏と私は同じ事を考えていた。
新たな展開の予感が早速今回の展示で告げられているようである。

*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯19」-9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-21 16:48 | Comments(0)