テンポラリー通信

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2010年 07月 31日

赤子と草原ー森の記憶(21)

唐牛幸史展一週目週末、快晴。
この時期の日照時間の不足記録塗り替え。12年ぶりという。
2階南側回廊の土から勢い良く緑の芽が伸びている。
まるで、たくさんの描線のように窓に向かっている。
これは草原だな、とふと思った。
唐牛さんの生まれた月寒の台地。
かって草原が広がっていたと聞く。
この頃少年唐牛幸史は、一日中草原を走り回りお腹が空いたら草の実を
食べ、小川の水を飲んでいたという。
1960年代生まれの唐牛さんの少年時代である。
僅か40年程前の風景なのだ。
月寒はアイヌ語で(チ・キサ・プ:われわれが・木を擦って・火を出した・ところ)。
チ・キサ・ニ(我ら・擦る・木)は、ハルニレ、エルムの事である。
月寒はハルニレが多く生えていた所でもあったのだろう。
そのハルニレと草原の月寒の記憶を、このインスタレーシヨンは潜めている。
黒土に添えられた赤子の塑像は、唐牛さん自身の出生の投影でもあるだろう。
さらに私的にいえば、月寒とエルムの関係性が、さらなるメッセージとして
送られているのを感じるのである。
この間エルムの声が次々と届く。
札幌・緑の運河エルムゾーンを守れ!
その励ましの声でもあるのかも知れない。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-07-31 12:36 | Comments(0)
2010年 07月 30日

梅雨の合間ー森の記憶(20)

このところ梅雨のような雨模様。
今日ふっと晴れ間が見える。
薄日が射す。
柔らかな弱い陽射しのなか、2階回廊の一角にある黒い土の中から、
薄緑の芽が頭をもたげている。
唐牛さんの仕掛け。
赤子の塑像とともに黒土を敷き詰め、そこに種子を蒔き発芽する。
生誕、再生のインスタレーシヨンである。
喪われてゆくもの、生まれてゆくもの。
その同時存在こそが、生命である。
そんな作家のメッセージが聞こえてくるような気がする。
週末からは天候も回復し、強い陽射しが射しこむだろうから、
芽の成長もさらなる緑の葉へと変わっていく。
2階吹き抜けの竹本英樹さんの写真群とともに、ここはここで
1階の空間とはまた違う独特の空間に変容してゆく。
今、外壁に生い茂る蔦の翳が窓を染めて美しい。
なにかこの家屋空間自体がひとつの花器のようである。
人が活かされ、物が活かされ、生と死が交錯している。
それは作家自身の、<ReーPublic>。
再生の願いそのものと一体化して在るかのようである。

展示も4日間が過ぎて、次第に空間は独特の風情を醸し出してきた。
最終日まで、この空間のみちゆきは、夏の夜空の花火のように
ある頂点まで一散に駆け上がり、散華するに違いない。
そしてその間幻想の山下邸は、ある種強権的な現実と対峙し、
拮抗しつつ、ここに存在し続ける。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」ー8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

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by kakiten | 2010-07-30 12:43 | Comments(0)
2010年 07月 29日

エルムの声・幻想ー森の記憶(19)

旧山下邸前庭に立つ一本の大木。
この樹は藤倉翼さんの撮った写真の大きなひとつのテーマともなっている。
初めてこの旧山下邸を訪れた昨年夏、私もこの樹の存在を意識していた。
古い家屋の内部も勿論素晴らしかったのだが、居間の和室から縁側越しに
見えるこの樹の姿は何故か充分に、借景として意識させられるものだった。
横谷惠ニさん構成全方向のヴィデオ映像で、この家屋の内外を隈なく見る事
も興味深いものがあるのだが、一枚の大型写真が前庭のこの樹も含めて
ただ静謐に撮られているのを見ていると、様々な事が思い浮かび見飽きない。
この写真の主役は、多分木造平屋のこの家とその前に立つこの樹の存在が
大きいのである。
樹の種類にそれ程詳しくない私は、この樹の種類を図鑑で調べてみたいと
いつも思っていた。
山下邸の方に聞いても詳しくは分らず、昔からあったのでという答しか得られ
なかったからだ。
それが唐牛さんの立柱の素材を運んでくれた園芸家の方が思いかけず、
ひょいとその答えを教えてくれたのだ。
この樹はハルニレですよ、という事だった。
その答えを聞いて、瞬間ざわっとするものがあった。
エルムだ!、ここにもエルムが在る。
この間「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」を提唱し、伊藤邸の前庭を
植物園ー清華亭ー北大構内と結ぶ札幌の掛け替えのない風景の文化遺産と
して高層ビル化の破壊から救う運動を呼びかけようとしている時、その主役には
札幌を象徴する原生林エルム(ハルニレ)の存在があったのである。
6月阿部守さんの徹の作品を展示した時も、清華亭の庭のエルムの大木の
傍らに阿部作品を設置しようという動きがあった。
この試みは残念ながら、地産地消を唱える地元美術家群団がネックとなり、
九州の作家の作品は挫折を余儀なくされたのだが、阿部守の柔らかくも強靭な
作品を呼び寄せようとした動機には、清華亭の文化財の建物ではなく、この庭に
立つ一本の巨木の存在があったのである。
米国人ベーマー作庭の優れた和洋折衷の清華亭庭に立つエルムの巨木の
傍に、鉄の阿部作品を置いてみたいという最初の発想があったのだ。
それからエルムの声がずっと届いている。
物言わず同じ場所に立ち続けている巨木たちの点在が、時に人を介して
時に写真を介して、繋がる線の声を届けて来る。
そんな気が今するのである。
先日自宅から持って来た父の青春時代に描いた遠い時代の絵の森までもが、
この巨木のエルムの緑色の頭に見えてくるのだ。


*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)ー10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-07-29 12:39 | Comments(0)
2010年 07月 28日

旧山下邸の人たちー森の記憶(18)

唐牛幸史展初日。
まず訪れてくれたのは、旧山下邸の方々だった。
この家で育ち、この家に嫁いで来たご夫婦である。
昨年の今日、おばあ様が亡くなり、ちょうど一年。
80年近く在ったこの家も処分の対象に今なっている。
一軒の家が無くなる。
それ自体は日常よくある出来事である。
しかしこの家で過ごした家族の固有の記憶は、決してよくある話一般
ではない。
今回の唐牛幸史展「REPUBLIC」のテーマは、この家の記憶である。
しかしその記憶は懐旧の念で構成されたものではない。
唐牛さん自身の固有の記憶がその根幹に据えられ、赤子の塑像が
その象徴ともなっている。
入って右の一角に、石を積み重ねその上に赤子の塑像がある。
その表面には白い雪のような粉が降り注がれ、北の雪の大地から
再生する命そのもののように表現されている。
また一階正面には、廃屋の古材を重ねて柱とし吹き抜けを突き抜ける
4mを超える立柱がある。
その2階天井に近い部分には、同じような赤子の塑像が置かれている。
2階南部分の回廊には土が盛られ種子が蒔かれ、会期中に緑の葉が
開くという。
そしてそこにも左端に赤子の塑像が置かれている。
一軒の古民家の喪失と自らの赤子への思いが、生と死の界(さかい)を超え、
再生を願う祈りのようにして、この一、ニ階を貫く立柱があると思える。
最初に訪れた旧山下邸の遺族のおふたりは、ゆっくりと寛ぎ話しながら
最後に呟くように言った。
”癒しの空間ですよね”
藤倉翼さんの撮影した旧山下邸の写真、竹本英樹さんの撮影した家の内外
、それらはみなこのおふたりのかって生活した家そのものである。
しかしおふたりがこの時呟いたこの言葉には、もう私たちの家という
私的な響きは無かった。
かって住んでいた記憶はこの作品展に立ち会う事で、もう私的範疇を離れ
別次元の純粋抽象として山下邸は存在し、ある種外の目線から寛いで
いたのである。
それが、”癒しですよね”という言葉の内に漲っていたと思う。

この事でふっと思い出すことがあった。
最愛の息子を不意の事故で亡くされたムラギシのお母さまの事である。
追悼展と遺作集の仕事を3年共にした時、聞いた言葉である。
それは、<知らない息子を発見して毎日楽しいわ。>という言葉だった。
私的次元からより広い別の次元で、お母さまは個としての別の息子を
見ていたのである。
息子はもう私的息子ではない、純粋抽象としてある公的な存在にいた。
今回の旧山下邸の遺族の方々の一言は、この時ムラギシのお母さまの
言葉と同様の響きを保って私には聞こえていた。

唐牛さんが会場全体構成をし、3人の写真と映像によって再現された
旧山下邸は、かってここに長くお住いになられた人たちの記憶を
懐旧の閉じた世界から解き放ち、ある新たな次元へとその存在を
転位させていたのだ。
その事が、まさしく今回の主題でもある<REPUBLIC>そのものの具現
であったと、私には思える。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(日)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)ー10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-07-28 12:22 | Comments(2)
2010年 07月 27日

REPUBLIC展ー森の記憶(17)

娘たちが朝早く富良野へ立つ。
トイレ周り、洗面台周りが綺麗になる。
早朝見送って、テンポラリーへ向かう。
曇天、涼しい風の中、快調に自転車を飛ばす。
唐牛展ほぼ展示完成で、最後の大きな藤倉翼作品2点目を設置中だった。
旧山下邸前庭の大木を道横から撮った写真である。
これは季節が秋のようで、もう一枚の冬の建物正面から撮った写真と対になる。
鏡面をマットにした繊細な大型額装なので、設定の位置に非常に神経を使う。
オープンの午前11時まで、まだ展示の最後の追い込みが続く。
途中コンビニで買ったサンドイッチを食べ、今朝はここで朝食。
少し疲れている。
唐牛展全体については、もう少し時間を経てから記すつもりだが、
2階会場と1階会場が吹き抜けで繋がりつつ、それぞれが独立した空間として
機能する会場構成が素晴らしい。
これで空間機能が飛躍的に広がった。
この後使う西田卓司さん、谷口顕一郎さんには嬉しいニュースとなるだろう。
天気が回復して、自然光が燦々と注ぐ時が待ち遠しい。



*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

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by kakiten | 2010-07-27 10:58 | Comments(0)
2010年 07月 26日

いよいよ大詰めー森の記憶(16)

定休日だが、顔を出す。
すでに床も塗り替えが終わり、焦茶色にすっきり。
額縁の焦茶と同色である。
この徹底性が、唐牛幸史さんらしい。
今朝ここを出たらしく、用心の為か元電源が切られていた。
しかしその為か、電話が繋がらない。
ここは光回線区域で、電話も光回線である。
一度電源をオフにした所為か、電話機がご機嫌を損ねて不通。
種々操作しやっと繋がりヤレヤレである。
電気モノは便利だが、一度ご機嫌を損ねると厄介である。
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」の草稿、加筆・訂正案
がメールで送られてくる。
こちらも急ピッチである。
唐牛さんが中央に立てる柱を持って来る。
3人がかりで柱を固定し、吹き抜け中央に立ち上げる。
これで展示の肝(きも)、大黒柱が立ち上がる。
これからいかなる彫刻が施されるのか。
唐牛さんが来る前、昨夜Cギヤラリーでの展示を終えた帯広の伽井丹弥
さん一行が帯広へ帰る前に立ち寄る。
昨夕の舞踏のパフォーマンスは残念ながら見れなかったが、
好評裡に終ったようである。

午後2階吹き抜けに一部焦茶色の床を張る作業が続く。
壁の補強と相まって新たな空間が創られる。
下から突き抜ける柱、その周りを回遊する床。
従来吹き抜けと周囲の分離があったが、これで立体化した上下が
無理なく有機的な空間となって繋がった。
唐牛幸史展のタイトル「REPUBLIC」は、そのままこの空間のReーpublic
でもあるようだ。
今夜から明日にかけて会場展示も大詰め、札幌・緑の運河問題も
含めて、内も外もフル回転である。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

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by kakiten | 2010-07-26 13:21 | Comments(0)
2010年 07月 25日

快晴ー森の記憶(15)

東京から来た娘夫婦を案内して、緑の運河・エルムゾーンを歩く。
大通り西11丁目から、植物園一周、伊藤邸脇、清華亭、北大構内を歩くも、
途中構内食堂は日曜日でどこも休業。
食事場所を探して構内を出て結局北18条近くまで行き、喫茶店に入る。
日曜日、この辺りは休店が多い。
それから、テンポラリーへ。
展示準備中の唐牛さん、最後の仕上げに余念がない。
邪魔しないように一服する。
唐牛展はテンポラリースペース全体を使った、インスタレーシヨンである。
今日は唐牛さんの赤ちゃんの土の塑像が、運び込まれている。
これは旧山下邸の消滅と、新たな再生のモチーフでもあるのだろう。
自ら奥さんの出産に立ち会ったという遠い記憶と、昨年家屋としての一生を
終えた旧山下邸の記憶とが、彼の心の中できっと交錯してあるに違いない。
さらに横谷恵二さんのヴィデオ映像が、運び込まれる。
この映像は、あたかも家の内外を自由に歩いて見ているかのような、
全方向の映像である。
ネットを通して何処からでもアクセスが可能である。
こうして旧山下邸は、藤倉翼、竹本英樹、横谷惠ニさん3人の映像と
それを束ねる唐牛幸史さんの力業によって、視覚的にも記録され、
ドキュメントされる事になる。
後は真中に立つ唐牛さんの彫刻が、会場空間全体を引き締め束ねることに
なるだろう。
今日、明日を経て、テンポラリースペースは札幌のある時代の記憶を再生し
近代の純粋抽象を内含する空間として、ひとつのcontemporary(同時代)
スピリッツ溢れる空間に変容するに相違ない。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-07-25 17:21 | Comments(0)
2010年 07月 24日

雨降るー森の記憶(14)

雨降る朝。
雨音に雑音が消されて、眠りが深く少し寝坊する。
「札幌緑の運河ーエルムゾーンを守る会」の草案を一昨日書き上げ、
関係者に送る。
早速加筆・訂正・疑問の各部分の反応が来る。
これらを総合的に練り直し、完成文までみんなで作っていく。
ふと前から気になっていた父親の遺した絵を探す。
葉書大より大きいくらいの、なにかの余り紙に描いた森の奥に建物のある絵。
大正生れの父の、20代前後だろうか、画家志望の青年の執念が森の緑の
描き込みに感じられる。
しっかり者の祖父の前では、絵描き志望など挫折するしかなく、家業を継ぐ。
他の兄弟姉妹はみな大阪・京都・満州へ事業・就職・結婚と羽ばたく。
そんな失意の時期の風景と思える、森と大きな建物の絵。
今の時期この絵の存在が気になっていたのだ。
今朝家から初めてテンポラリーに持って来る。
作業中の唐牛さんに見せると、これも鏡面のマットにして
額縁に入れましょう、と言った。
遠い時代の一枚の遺された絵が、こうしてここに参加して存在する。
絵は父さんの心の純粋抽象となって、ここで一緒に呼吸する。

先日見えた内村俊介・津野子夫妻から、葉書が届く。
奥さんの撮ったテンポラリーの写真4枚で構成されていた。
私と内村さん、テンポラリー外観、梯子、大野一雄さん展示の4葉である。
帽子を被ったTシャッの変なおじさんが写っている。
相変わらずいい男ね、と言ってくれたのは、あれはやはりお世辞である。

雨が小雨となって、静かな日。
暑さも一段楽。
力を溜め、静かに深く週末。
月曜日唐牛展前日までぎりぎりの会場設営、作品展示作業は続く。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展ー8月24日(火)-9月5日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)
*昆テンポラリー展ー10月12日(火)-24日(日)
*岡部亮彫刻展、佐佐木方斎新作展、野上裕之彫刻展を予定。

 テンポラリースペースー札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-07-24 12:32 | Comments(0)
2010年 07月 23日

同時進行するトニカー森の記憶(13)

会場の壁補強、ペンキ塗りと唐牛さんの会場造りは着々と進む。
昨夜遅く竹本英樹さん撮影の写真50点も完成、搬入。
藤倉翼さんの8×10の大判カメラ撮影の1、8m×1,5m作品とは対照的に、
竹本作品は40cm×50cmの小品である。
被写体も藤倉さんは旧山下邸全景を真正面から撮っているのに比し、
竹本さんの目線は、室内外のデイテールにある。
これら竹本作品が50点1階鴨居の位置から2階吹き抜け壁に展開する。
額装仕上げは藤倉作品と同様焦げ茶の木製額縁に、鏡面のマットである。
これらの重量を支える為、新たに壁を補強し、白ペンキを塗っていく。
今週はその会場造りが続いているのだ。
唐牛さん自身の作品も、今朝ちらりとその姿を表わした。
一階床から吹き抜けを突き抜ける塔のような、木の彫刻である。
この立つ彫刻に、私は旧山下邸への思い、彼の祈りを感じた。
<立てる>、<奉(たてまつ)る>、は古来祈りの形でもあるからだ。
両手を合わせる、合掌の形である。
今月27日は、旧山下邸のオーナー山下トヨさんの祥月命日にあたるという。
山下さんの死後この美しい和洋折衷の民家は封鎖され、やがて処分され
る運命にある。
この民家が保っていた昭和の時間、そして庭に立つ一本の大樹。
これらが保っ空気・風景が、ここテンポラリースペースで再生される。
その為にこの家を記録した写真家の作品と共に、唐牛さんのこの家と
この家の死者の生きた時間を再生する創造空間が創出されるのだ。
タイトルの「REPUBLIC」には、そうした再生への想いが篭められている。

伊藤邸の1万mを超える原始林の面影を残す庭を保存し、伊藤緑地として
再生する「緑の運河ーエルムゾーンを守る会」の発足と同時進行のように
唐牛さんの旧山下邸再生の展示が進行している。
高層ビル化、都市化の埋め立て文明がこの街の風景を破壊していくなか、
如何にそのインフラの嵐に対峙し再生し得るか。
真に文化力としての、文化の根元が今問われているのだ。
かって北大生だったN氏は言う。
”ある日風もないのに突然構内のエルムの大木が倒れていました。
 あれは、地下水脈の切れたことによるものだったのでしょうか”
風もなくエルムを倒してはいけない。
この街は、地から泉として溢れる泉池(メム)の勢いをもうとうに喪ってきた
のかも知れないけれど、今もなお地中深く触手を伸ばし、見えない川、
地下水脈に触れているあの寡黙な緑の頭をした人類の古い友人たちの
、見えない命の水脈まで奪ってはならないのだ。

「札幌の緑の運河ーエルムゾーンを守る会」の現実的行動と、唐牛さん
の旧山下邸を偲ぶ「REPUBLIC」展は、その基奏低音(トニカ)を
ともにしながら、同時進行してゆくのである。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展ー8月24日(火)-9月5日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

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by kakiten | 2010-07-23 13:18 | Comments(2)
2010年 07月 22日

燃えるー森の記憶(12)

昨夜は燃えた。
宇田川洋さんの所に集まる、山水会の方々。
それぞれ初めて会う人たちばかりだったが、人類学者、出版社、マスコミ、
大学の先生その他多種彩々の一癖も二癖もあるおっさんたち(失礼!)で、
大分突っ込まれたりもした。
同行してくれたK氏ふたりがいて、助かる。
彼らは関係職務を超え、市民として参加している。
その事を理解し初対面の我々を理解するのに、少々時間がかかった。
後は一瀉千里。
一気に盛り上がり署名活動の段取りまで話はいった。
後半お酒もまわり話もばらけてきたので、私は先に失礼する。
続いている唐牛さんの展示作業が気になっていたからである。
テンポラリーに帰ると、藤倉翼さんの大きな写真が額縁に設置され
床に置かれていた。
山下邸の道向こうからの全景である。
雪が積り夕暮れの翳と空が青い。
この1m以上ある大きな写真が、1・8m×1・5mの焦げ茶の額縁に
収まっている。
注目すべきは、マットが鏡である事だ。
白い雪に佇む山下邸の全景が青い空気に浮かび、鏡の中に浮いている。
これ自体が夢の中の風景のようであり、かつ繊細である。
見事なふたりのコラボレーシヨンと思う。
鏡に浮かせる写真という発想は、唐牛さんならではのものである。
その結果、藤倉翼さんの骨太な写真はある幻想化を遂げている。
見ていて見飽きない不思議な幻のようである。
まだ床に置き上から眺めているだっけだったが、これが壁に設置され
光を受け外界を映し出し、その中で山下邸の全景が宙に浮かぶように
輝くようにある時を想像すると、鳥肌が立つ思いがした。
さらに同サイズの庭の大木の写真が、今夜完成するという。
2階吹き抜け回廊には、竹本英樹さんの小さいサイズのやはり鏡マットの
額縁に入った作品50点が並ぶという。
大きな藤倉作品2点は、1階正面と左正面壁に飾られるというから
これがもう今回の肝、コアとなる。

札幌の緑の運河、エルムゾーンを守る会の小さな一歩。
その出発の会議と同時に、この夜唐牛展の展示一部を垣間見て、
昨夜は興奮してなかなか眠れなかった。
呼掛けの趣意書を早急に書き上げなければならない。
山下邸を思う気持ち、清華亭を思う気持ち、そこに寄り添うように存在する
ものは、森の記憶・樹の存在である。
多くの点在し、散在し、きれぎれにあるこの森の記憶を、
ゾーンとして点在から線在として、面として再生しなければならない。
そう思い火照る眠れぬ頭の中で、人間の古くからの友人緑の頭をした
人たちが、梢のざわめきのようにいつまでも囁くのである。

燃える夜だった。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展ー8月24日(火)-9月5日(日)
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by kakiten | 2010-07-22 13:35 | Comments(0)