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2010年 02月 28日

オホーツクの青と赤ー夢界(ゆめさかい)(1)

網走は白く青かった。
サロマ湖、能代湖、網走湖は水面が見えず結氷したまま。
おっ、流氷の海か!と一瞬思う。
途中通行禁止の案内版があり、止む無く紋別方面から網走へと向かう。
朝6時起きの8時新札幌唐牛幸史さんと待ち合わせで、眠気が襲い
うとうとしていた。
さらに道路事情で遠回りした為少し眠っていた。
目の前に水平線まで広がる白い水面。
海と一瞬間違えたのだ。
網走湖を越え、市内に入る。
肝心の海は暖かさで、流氷は見えない。
煙った海面が鈍い色で広がるばかり。
曇天、暖かし。
思ったよりも小さく見える網走駅前から、佐々木恒雄さんに電話する。
15分程で軽トラックの佐々木さんが見える。
先ずは自宅へという事で、藻琴の佐々木宅へ向かう。
愛妻の愛美さんが迎えてくれる。
しばし歓談の後、高臣展で出会った網走出身のAさん紹介の喫茶店
へ向かう。
実はこの喫茶店は佐々木さん夫妻も馴染みという事で即決。
行こうという事になった。
網走旧市街地の古いビルの2階にあるその名も「番外地カフエ」。
途中新開地の商店街を通り抜ける。
札幌郊外の何処でも見るショップが並んでいる。
ここに網走はない。聞くと以前は丘陵地帯だったそうだ。
今はマックドナルド、ミスタードーナツ、紳士服の青山等が立ち並び
ここらが中心という。
旧市街地は昭和レトロを思わせる、アーケードが舗道を覆い、
歩く事が基本の街並みである。
車主体の社会と歩行の商店街の構造の相違がここにもある。
辿り着いたカフエは、重厚なアールデコ調の懐かしい雰囲気だ。
ゆったりした4人掛けのソフアに座り話が弾んだ。
初めて会う唐牛さんも幼い頃網走・清里町に居たという事で
話はすらすらと佐々木さん達と繋がる。
帰って愛美さんの心尽くしの鍋料理とカニをご馳走になった。
さすがに魚の本場である。
イカも十匹単位で漁師さん仲間から頂くので、愛美さんは当初イカの
目が気になって恐かったという。
冷蔵庫が小さいので、今は冷凍庫の大きいのを買うのが目標という。
そうしないと保たないという。
言葉の通じる異国だと呟くように言った。

翌朝、隣に寝ている唐牛さんのイビキに悩まされた所為か
夜明けとともに目覚める。
陽射しが窓超しに淡く赤い。
外に出ると目の前はオホーツク。
昨夕とは一転して快晴。
知床方面からまだ水平線から出たばかりの朝陽が眩しい。
車道の向こうは海岸で海。家の裏は海岸段丘。北キツネの親子が
朝通っていたという。
丘の上は馬の放牧場になっているという。
日が昇るにつれ、海の色が深くなる。
藍に近い深いブルー。これがオホーックブルーだ。
佐々木さんのダイニングルーム正面に飾られた札幌最後の大作。
あの色である。
最初の漁で捕ったといって送って頂いたオホーツクサーモン。
その時切り捌いた身の色。
それは美しい桃色の赤だった。
佐々木さんが札幌で最後に制作した青と赤の抽象画。
これらはすべて、ここオホーツクの海とそこに生きる魚の命の色だったのだ。
あらためてその色彩の現場に居ることを、この朝感じていた。

*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-02-28 14:29 | Comments(0)
2010年 02月 25日

石狩夢界ー札幌浪漫(12)

珍しく高臣大介さんが、しんみりとブログに書いている。
今回の個展の満足感が漂っている。

  俺は冬が好きで それはやっぱり雪が積っているからだ。
  真っ白な雪はどんな日もキラキラ輝いている。・・・・
  そんな雪を、見ているととてもガラスに似ていると思う。
  ・・・・・
  それこそが俺のいちばん表現したかった事だ。

  ・・今までできなかったことができるようになり、
  その上で自分の足りないとこを認識することが出来る。
  俺にとってそんな素適な展覧会だった。

搬出後の車の中で、ふっと思い返しているような時間だ。
ひとりの人間の生き様と作品の幸せな出会い、融合。
そしてその経験に立ち会う事。
ギヤラリーの保つ一番いい時間である。
ギヤラリーという函が、溢れる時間だ.
中嶋幸治さんのブログREPORTに、その訪問記が記されている。

 やっぱり、水たまりから剥ぎ取ったものは手の平の温度で溶けてしまいそう
 なほどに美しい大介さんのガラスの映像だ。
 独特の曲面が 風景の皮膜となって 光も時空もねじ曲げていた気がする。

 そんな体験ができる装置をつくってしまった大介さんがなんだか神々しくて
 ・・・

この文章は、風の鱗を創る美術家ならではの感性と思える。
千葉と青森から移住してきたこのふたりの、北を見る感性が煌く。
札幌夢界(ゆめさかい)。
明日、札幌を石狩を離れ、オホーツクの海へと向かう。
離れて見える夢界があるだろう。
United Dreams of America。

網走の佐々木恒雄さんに何かお土産と思い、ふっと思考が停止する。
札幌は何でもあるが、佐々木さんが最初の漁で捕って送ってくれた
オホーツクサーモンに匹敵する物はない。
私自身が何を収獲し、何をもって手土産に出来得るのか。
私自身が風になり札幌となって行くしかないのだ。
そう心篭めて思う事にした。
少しでも網走に吹く風と違う風が吹けばいい。
それが石狩・札幌の風の匂いの土産(みたげ)だ。

*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)
 am11時-pm7時:月曜定休・2月26日ー28日休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-02-25 12:54 | Comments(0)
2010年 02月 24日

搬出そして網走へー札幌浪漫(11)

最終日宴会の一夜が明けて搬出日。
気温上がり、道はザクザク。
搬出の大介さん曰く ”春光(はるひかり)だ、これは・・。”
冬光(ふゆひかり)展の終わりに相応しい搬出日となる。
会期中初めて来廊したコトリさんからコメントがあった。
会場で塞いでいた心が癒されたようだ。
小さなお皿とその中に収まる小さな花瓶を購入して頂いた。
その様子が小鳥のようだったので、勝手に付けた仇名である。
その後も見えて、ゆっくりと最終日も見てくれる。
コトリさんに限らず、見に来た人は用のものは用のものとして、
吊られたガラスの断片には、時々の光の溜まった光彩を、
その両方を楽しんでいたのだ。
”来年もこれでいく”と大介さんが言った。
非実用的な、器以外の表現にも自信を得たようである。
洞爺に移住して8年。初年度はスタッフ全員が冬を迎えて去り、
失意の底から冬に立ち向かい、さらにはその後工房の火災焼失
という事故もあった。
そこから再建に取り組み、多額の借金をも抱えながら、売上を伸ばす
という至上命令の生活を背負ってきた。
今回その中で、非実用の表現にも自信を得たのは、
コトリさんを初めとする受け手側の作品に対する真摯で素直な
信頼あっての事である。
見るものは見るものとしてちゃんと受け止めてくれ、
使うものは使うものとして、きちっと受け止めて頂いた。
搬出の最後に売上の精算をしながら、彼の顔は明るかった。
アート、そしてフアインな表現体。
どちらに対してもある程度成し遂げた達成感がこの時あったのだろう。
こうして我々は、気持ちよく次なる再会を約して別れたのだ。

今週は定休日営業の変則事態もあり、次週宍戸優香莉展「むすんで ひ
らいて」まで画廊が空く。
この機会を利用して、念願の網走へと向かう。
昨年2月の沖縄・珊瑚礁ブルーと逆のオホーツク流氷の青を見たいと思う。
去年からオホーツクで頑張る画家佐々木恒雄さんにも会いたいのだ。
石狩からオホーツクへ。
未知の国をまた感じてきたい。

*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・2月25日ー28日休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-9斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-02-24 18:18 | Comments(1)
2010年 02月 23日

高臣大介展最終日ー札幌浪漫(10)

例によって高臣展最終日夜は、歌と踊りとお酒のフイーバー。
アコーデオン弾きのYさんが軽妙な演奏を披露する。
一本足高下駄の大介さん、足を踏み鳴らし踊る。
白い服の女性も踊っている。
私は奥の部屋で騒ぎには加わらず、黙然。
東京から来た建築家のS氏と建築のあり方とか硬派な話をする。
段々話に身を乗り出しS氏の眼が熱を帯びてくる。
途中から大介さんも加わり、今進行中の建築物の壁全面に使うガラス
の話になる。
これは従来のステンドグラスとは違い、透明なガラスで構成される
画期的な仕事である。
S氏の勤務する某設計事務所は、著名な建築家の所だそうで、
この仕事が上手くいくと、S氏自身にも大きな飛躍のチャンスとなる。
勿論ガラス作家として、高臣さん自身も大きなチャンスである。
冬の雪、秋の空気、夏の光、春の緑。
今回展示した透明なうねる盤状の曲線。
光を溜めるガラスの特性は、家の内と外を美しく繋ぐものだ。
色彩はガラスの外にすべてあり、その季節、時間によって
映りこむのである。
光が借景である。
私は持論の豊かな境界論を展開し、酒と唄のフイーバーとはまた違う
議論の熱を発していた。
その熱気に惹かれるように、踊っていた白い服の女性も乱入してきた
ので、その後は話の腰が退けた。
その女性が、アートとはと、口走る度に腹が立ってきたからだ。
宴会を盛り上げるYさんのような芸人をアーテイストという。
職人さんもそうである。
そうした技術者が、時に目的の<用>を超える、ある意味阿呆のような、
何の役にも直接的実用性としてはないものを、心こめて創ることがある。
それをフアインアートという。
そのフアインだけを直線で存在するかのような
勝ち組タワー指向の匂いが、アート、アートの連発にはある。
今回の高臣展にしても、破断したガラス片自体は
何の役にも立たない物である。
用・不用でいえば、不用に属するものだ。
しかしその不用のものが、用を失って輝きを増す場合がある。
その断片の保つ美、光の放つオーロラ。
そこを「冬光(ふゆひかり)」として、光そのものを主役に展示を構成
したのである。
この時用の為の技術は、ある別の地平へと移動する。
この転位にフアインがある。
あっ!純粋に綺麗だなあ。
そんな瞬間を経て、今回の展示があったと思う。
長年彼の個展を見ている私には、それが彼の大きな転位として
感じられたのだ。
従って色を一切使わず、日々の天気の光だけを主役にした今回の
展覧会は見事と思うのだ。
ガラス作家としての技量・技術、つまりは職人芸(アート)を抜きに
このフアインはない。
貧しい技術ならば、自然と対等に渡り合う作品は成立しない。
ただ透き通ればいいというものではないからである。

宴会騒ぎはまだまだ収まらず、夜も深けた。
最後まで一緒に騒ぐ気持ちは失せたまま最終日の夜は終った。

*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリ^スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-02-23 16:24 | Comments(0)
2010年 02月 22日

United Dreams of Americaー札幌浪漫(9)

小春日和のような昨日が明けて、今日は曇天・寒気・寒風。
定休日だが印刷間違いで、今日が高臣大介展最終日。
昨日は一日人が出入りし、さすがに昨夜は疲れて、元気なし。
役所勤めのKくん、Aくんが来て河田雅文さんと話が盛り上がる。
豊平館浪漫。中島公園に移設された本来は時計台と一体のゾーンの
建物だ。明治期の和洋折衷の優れた洋館である。
中島公園は近くの中の島という地名とともに、かっては札幌川という
幻の大河の中洲の呼称でもあると推定される。
古い札幌川、アイヌ語でフシコサッポロペツ。
下が消えて今は東北部に忽然と地中から姿を現す伏古川となる。
その札幌中心部の名残りが中島公園である。
そこに建つ近代の象徴が豊平館ともなれば、この辺りもまた
the republic of dreams in sapporo の夢界ともなる。
こうして札幌の夢界(ゆめさかい)を、ひとつひとつ開いてゆく事で、
さっぽろの<アメリカ>を再生していきたいと思う。

高臣大介展最終日、夜は酒宴と歌のフイーバーとなるだろう。
東京石田尚志さんより豊田市美術館と国立新美術館展示の案内くる。
鈴木余位さんのサッポロ計画、目黒・正木基さんと昨年暮以来
<東京テンポラリーが続いています>とコメントある。
いつの日かこの交流が魂のUnited Dreams of <アメリカ>として
再生する事を、熱く希むのだ。

 小さな灯りを消してはならない
 絵画は燃えるような赤でなければならぬ
 音楽はたえまなく狂気を演奏しなければならぬ
 「アメリカ・・・・・」
 僕は突如白熱する
 僕はせきこみ調子づく
 僕は眼をかがやかし涛のように喋りかける
 だがあたりには誰もいない
 ・・・・・
 
                   (「アメリカ」鮎川信夫)

*高臣大介展「冬光(ふゆひかり)」-2月22日(月)まで。
 am11時ーpm7時
*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503


 
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by kakiten | 2010-02-22 13:08 | Comments(3)
2010年 02月 21日

それぞれの出会いー札幌浪漫(8)

昨日はなんといっても若いふたりの優れた才能の出会いが面白かった。
現代短歌角川賞の山田航さんと
現代詩中原中也賞の文月悠光の初顔合わせ。
5時間位居ただろうか.
次々と訪れるお客さんを相手に、奥で話しこむふたりに嫌な顔ひとつせず
暖かく見守る高臣大介さんも見事だった。
少し遅れて当別の阿部ナナさんも見えて3人で話していた。
ナナさんは文月さんのフアンで、一度ゆっくり会いたいといっていた。
多分山田さんと文月さんふたりだと、会話も時間とともに途絶えがち
となっただろうから、ナナさんが来ていいタイミングだった。
なにを話しているのか、閉廊時間の午後7時頃まで3人が居た。
最後に文月さんがガラスを一点選ぶ。
高校最後の記念にするのだろうか、大ぶりのグラスを選んだ。
タイトルは「燃える男はロック」という大介らしい硬派のグラスである。
記念に文字を彫り込みましょうと、高臣さんが申し出る。
何故か顔が緩んでいる。なんと彫るのか。気になる。
彫るのを終えて、覗き込もうとするが、先ず本人にと言って、こちらには
見せない。
後で見せてもらったが、それは<泣いてもいいよ☆>だった。
辛い時などグラスをかざして、読んでね、という事だった。
文月さんは大事そうに抱えて、嬉しそうに帰っていった。

閉廊近く、写真家の竹本秀樹さんと愛娘の結音(ゆのん)ちゃんが来る。
斎藤紗貴子さんの個展以来である。
僅か4カ月程だが、もうすっかり大きくなっていた。
8歳の成長は早い。
あの時は車椅子の病を克服し初めてに近い外出でもあり、
風船に写真を吊らした斎藤さんの会場で、何度も梯子を上り下りし
その喜びを会場中に発散し、走り回っていたのだ。
その後斎藤さんが死んだと聞き、少女は泣いてくれたのである。
自らの病の回復と対照的な不意の死。
この人生上のふたつの体験は、幼い心にも大きな衝撃だっただろう。
この時芳名録に記した名前と年齢、そして”ありがとう”の言葉。
今回再び書いた名前の字は、4ヵ月前とは違いもっと大きく太い文字
となっていた。
ガラスに楽しそうに触れ、はしゃぐ女の子はもうあの時の苦しさ、
悲しみから遠く、生き生きと楽しそうだった。
会場北角隅の床にさり気なく置かれた不思議なガラスの器がある。
これは大介さんの斎藤さんへの追悼なのだ。
この一隅に斎藤紗貴子さんへの想いがあった。
この隅を印象的に使ったのは、斎藤さんだったからという。
斎藤さんの個展では、そこに沙羅双樹の花が置かれていた。
父上の命日をはさんだ会期にお父さんを追悼したコーナーだった。
今は逆に自らが追悼されていた。
生と死が交錯する時間がそこにはあった。

*高臣大介展「冬光(ふゆひかり)」-2月22日(月)まで。
 am11時ーpm7時
*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-02-21 13:19 | Comments(0)
2010年 02月 20日

アメリカの夢ー札幌浪漫(7)

久し振りに戦後間もない頃書かれた鮎川信夫の詩
「アメリカ」を思い出す。
この長編詩はその後封印されるのだが、超国家主義の支配下に殺された
近代モダニズムの正統な復活の解放とその喜びを、<アメリカ>の夢として
流星のように輝き、一瞬にして消え去った光芒のような詩と思える。
クリストのことを考えていて、ふっと甦ったものである。
多民族国家として、人類の夢がかってアメリカという国の建国にはあった。
いわばUnited Dreams of Americaとでもいうべきものである。
戦後の一時期そうした位相に<アメリカ>はあったのだ。
鮎川の詩はそうした戦後のある位相を端的に顕していた。
政治経済国家としての現実の国家としてではなく、理念としての
<アメリカ>はかつて間違いもなく存在した事を、今改めて問いたい気
がする。
自由と解放の象徴として、そこに人類の夢を見ていた時代を再生する。
その事を、アメリカの夢を日本国内的に試行した現実のアメリカよりも
新しいこの北で再生したい。
そこの位相でならクリストと互角にこの場所で勝負できるのだ。

昨夕NHKFMでムラギシの演奏が2曲流れる。
電波を通して聞くといつもCDで聞いているのとはまた違う感慨がある。
胸が熱くなる。
北海道発の和製ポップスを特集する番組だが、特枠でムラギシが
特集されたのだ。
彼の曲の前に流れた50代のおっさんのフォークソングとの落差には
驚かされる。
22歳の仕事のなんと凛々しい事よ。
馬齢を重ねて、いつまでも甘ったれた初恋ソングを大真面目に唄う
「H橋」なる曲の生温い曲調との温度差はあまりにも歴然としていた。
年齢とは何なのだ。生きる時間の密度である。
まあムラギシと比較する方が間違っているのだ。
本来はそういう番組なのだろう。

一青年の、これもまた流星のように流れ去った若者の夢と、
壮大な人類の夢である<アメリカ>との一瞬の頭の中の交差。
この夢の力の再生こそが、もっとも人間的な文化力である。


*高臣大介展「冬光(ふゆひかり)」-2月22日(月)まで。
 am11時ーpm7時
*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-02-20 11:49 | Comments(0)
2010年 02月 19日

湿雪(しめゆき)降るー札幌浪漫(6)

寒さが戻り、再び白い世界。
今日は湿雪。
悪夢を見て朝早い目覚め。
胃の調子がいまひとつ。

今夕NHKFMで、ムラギシ作曲の演奏放送予定の連絡がある。
どんな構成で特集されるのか。楽しみである。
カフエ・エスキスで中嶋幸治展が始り、
紀伊国屋書店で森本めぐみさん外3人展が始る。
近々文月悠光さんと山田航さんが来廊予定。
死んだ人も生きている人も、みんな元気に活動中。

札幌夢界(ゆめさかい)-月寒草原浪漫、琴似川浪漫、新琴似泥炭浪漫
時計台浪漫、伏古川浪漫、林檎園浪漫、十軒神明宮浪漫・・・。
the republic of dreams in sapporo。
同時多発的に札幌夢界(ゆめさかい)。
湧き上がる。
札幌漂流岸辺の集大成。
歩き初め、歩き深める歩程は、まだまだ続く。

クリストさん、一緒に仕事をしましょうか・・。
主題はこうです。

 「アメリカ・・・」
 もっと荘重に もっと全人類のために
 すべての人々の面前で語りたかった
 反コロンブスはアメリカを発見せず
 反ジェファーソンは独立宣言に署名しない
 われわれのアメリカはまだ発見されていないと

                             (鮎川信夫「アメリカ」ー1947年)

*高臣大介展「冬光(ふゆひかり)」-2月22日(月)まで。
 am11時ーpm7時
*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)

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by kakiten | 2010-02-19 11:49 | Comments(0)
2010年 02月 18日

陽射し緩むー札幌浪漫(5)

陽射しが緩んで柔らかくなる。
高臣大介展会場の緊張感には合わない感じ。
軒下の氷柱も水滴を落として、だらしない。
窓外の風景としては、キーンと寒気の張詰めた方がいい。
外を歩くにはポカポカと陽射しが暖かく気持ちは良いが、ぬかるむ道は嫌だ。
外からの反射光も少なくなり、ガラスの光の破片が貧相である。

文月さんからメール来る。
第15回中原中也賞受賞で、てんやわんやとの事。
史上最年少の女子高生詩人という事で、マスコミ始め注目度が高いから、
仕方がない事だ。
この騒動の後東京の大学へと進み、人生をさらなる地平へと切り開く。
いいタイミングである。

クリスト来札で、昨日講演会があるとの連絡がKさんよりある。
以前クリスト夫妻のサイン入りのポスターを贈っていただいた。
しかし、私はそれ程クリストに興味がある訳ではない。
助成金に頼らず自前でプロジェクトを進める力は評価するが、
梱包アートそのものが、この北の雪大地にどれほどのインパクトを
もち得るかはかねがね疑問に思っているのだ。
世界的に有名というだけで、ありがたくお説を伺うのは嫌なのだ。
勿論それだけではない事もあるのだろうが、もし会う事があれば
この自然の雪の梱包にどう立ち向かうのかを聞いてみたい気もする。
クリストは雪のない場所でしかそのプロジェクトを試みていないからだ。
誘ってくれたKさんの好意は好意として、ありがたいのだが、
札幌に深く生きようとする人間には、多少の意地もある訳で、
まあ頑固な片意地だが、遠慮する。
フロリダ・マイアミ沖の小島を梱包した時の、ピンクの布の断片も
私の手元にある。
何故かクリストのものが集って来る。
どこかで縁が繋がるのかも知れないが、今はいい。
札幌に招くなら招くできちっと対応したいと思う。
どうですか、クリストさん。この美しい雪の梱包に対しあなたなら
どう立ち向かいますか。
仮に雪が無くとも、日本にある借景という庭園の思想をどう思いますか。
そう質問して見たい気はする。
そうでなければ、ただの有名人病の集りである。
今目の前の自らが生きている場の風景をも見ずして、
何が梱包アートなのか。
西洋の自然を征服する対峙の思想からすれば、クリストの梱包は
新鮮であろうが、自然を内側に取り入れる思想の日本では、ごくごく
普通の日常に属する。
風呂敷文化、庭の借景文化、雪見を愛でる文化を
現代は忘れ過ぎである。
女子高校生に集り、有名外人に集る。
そんな札幌は本当に嫌である。
そして、アート、アートと口走る。
みんながみんなとは言わないが、少し偏屈の辛口も必要である。

午後小雪が舞い出した。
再びガラスたちの表情引き締まり、活き活きと光り出した。


*高臣大介展「冬光(ふゆひかり)」-2月22日(火)まで。
 am11時ーpm7時
*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」ー3月2日(火)-14日(日)

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by kakiten | 2010-02-18 13:29 | Comments(3)
2010年 02月 17日

光の破片ー札幌浪漫(4)

時折雲間から薄日が射し光が揺れる。
吊り下げられたガラスの破片のような不定形のものが、光を吸い込み放つ。
子供の頃、空き地の水溜まりの表面に氷が張り、手に取って遊んだ。
そんな氷の薄い板を思い出す。
それらが宙に浮き、きらきらと光と影の交響。
地上の雪に反射した白い光が、ガラスの中に溜まって浮いている。

高臣大介展初日。高足一本歯の下駄を履いて器用に歩く大介。
腰痛に良いとかいう事でこの下駄を愛用している。
背丈が5cm程高くなり、いつもの位置に顔がない。
残りの展示を続けながら一日が暮れる。
歯医者さんが使うような電動工具を駆使し、ガラスの板に穴を空け
テングスで吊る。
会場がほぼ完成したのは、夕刻過ぎ。
仕事を終えた彼女と大介、私の3人で差し入れのビールを飲む。
高臣展としては珍しく、当事者だけの初日。
外の雪の中に置いておいたビールがよく冷えている。
その後橘内さんから先日頂いたどぶろく酒を飲む。
会場の緊張感が緩み、良い時間が流れた。

朝、緊張感の漂う会場にグルミオーの
バッハ無伴奏バイオリンソナタを流す。
昨年今頃の野上裕之展以来である。
冬の雪の朝には、この曲がよく似合う。
透徹した冬の意志を感じるからだ。
札幌漂流者、石狩の孤児。
札幌夢界(さっぽろ・ゆめさかい)
ーthe republic of dreams in sapporoー
小さな意志の破片が、今キラキラと揺れて 冬の底に光っている。

来週後半は流氷の網走へ旅する。
佐々木恒雄さん新居訪問。海一面の青白い氷原を見る。
赤のない世界。
昨年沖縄のあの珊瑚礁ブルーとは、対極の青白い青。
北は北固有の磁場を内に見ること。保つこと。

*高臣大介ガラス展「冬光(ふゆひかり)」-2月16日(火)-22日(月)
 am11時ーpm7時
*宍戸優香莉展「むすんで、ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2010-02-17 12:24 | Comments(0)