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2009年 12月 31日

帰省した人ーthe republic of dreams(26)

ハンブルグからの人が帰った後何人かが見えた。
森本さんの友人と思える。
そのうちにかりんとうさんこと、今田智子さんが来る。
今年京都大学に入学し、文月悠光さんの縁で知り合った学生さんだ。
帰省中という。
哲学専攻で優秀な人である。
しばし離れた後の京都ー札幌について語り合う。
森本さんとはまだ会ってはいないが、ともにマイミクで互いに興味を
抱いているようである。
森本作品は文月さんの詩集装丁画で見知ってはいるものの、生の作品は
今回初めてなので、会場を二度に渡りじっくりと見ていた。
そうこうしていると、赤いジャケットのいい男がのっそりと入ってきた。
野上裕之さんだ。
尾道から帰省して今着いたという。
右腕の手術をして退院したばかりで、腕を白い包帯で吊っている。
長年彫刻や力仕事でいつのまにか腕を酷使していたらしい。
軟骨を切除したという。
鞄から広島の銘酒賀茂鶴を取り出す。
お土産という。
じゃあ飲もうかという事で、今田さんが帰ったのを機にふたりで飲みだした。
いいつまみがあるといってさらに鞄から牡蠣のオイル漬けを取り出す。
これがまたぴったりで抜群にお酒に合う。
いやあ~こいつは、”ナカモリカキテンだ”などと私が駄洒落を飛ばす。
札幌に着いてまっすぐここを訪ねてくれた野上さんの気持ちが嬉しく、
お酒も美味くどんどん話が進んだ。
職場の船大工の仕事、社長の職人らしい一徹な性格の事、彫刻を
仕事しながらも続けていく事、一年に一度は小さくともいいから
ここに作品を送り展示したい気持ちのこと。
いろんな事を話し合った。
来年秋ベルリンの谷口顕一郎さんが一時帰国しここで個展を開く。
その後岡部亮さんの彫刻展、その後がいいねとか提案した。
そういえば夏には唐牛幸史さんの山下邸の記憶展もある。
いい感じで力ある作家の展示が続きそうな気がする。
その事は遠く尾道で生きる野上さんへの励ましと、故郷への思いとも
繋がるようである。
気持ち良くいつの間にかお酒は一本空になっていた。
いい年の暮だった。
今日は森本さんもバイトより復帰し、第二期の制作仕上げに入る。
今田さん、野上さんも作家に会いに来るという。
大晦日いよいよ本番。みなさま、いいお年を!

*森本めぐみ展「くものお」-1月5日(火)ー13日(水)am11時ーpm7時
 月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-9斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-12-31 12:45 | Comments(0)
2009年 12月 30日

あと一日ーthe reublic of dreams(25)

今年もいよいよ押し迫ってあと一日となる。
今日最初の訪問者は、ドイツ在住の美術家女性とその方の夫君と父上の3人。
現在ハンブルグ在住の美術家綿引展子さんからの紹介。
旦那さんが札幌出身でその父上も一緒に来たという。
父上は、会場に流れていたニーナシモンをいち早く耳に留め、懐かしいという。
聞くと先輩世代の人だが、奇しくも高校も大学も同じだった。
美術家の女性をそっちのけにして、しばしジャズ談義。
新宿のジャズ喫茶、東中野、吉祥寺と話がぽんぽん飛び交った。
父上はY新聞社の記者をしていたそうで、話の回転が速い。
さすが元新聞記者である。
もう少し話したかったが時間がきて名残惜しそうに帰る。
ドイツのケンちゃん、ミキちゃん、綿引さんの話をもう少し美術家の方に
聞きたかったが、これも止むを得ない。
人と人はひょんな事で出会う。このタイミングが絶妙である。
予測は出来ないのだ。そして、広がる。過去にも未来にも。
もし今朝たまたまニーナシモンを流してていなければ、こういう話にも
ならなかっただろう。

今年一年まだちょっと早いけれど、本当に色んな人のお世話になった。
その友情、友愛に深く心打たれる一年だった。
初めての沖縄、ムラギシの本の出版、目黒美術館での熱い再会、出会い。
ここに象徴される新旧の邂逅を忘れる事はない。
さらにフレッシュな森本めぐみさんの年を跨ぐエネルギッシュな制作と、
素晴らしい年越しとなる。
関って頂いたすべての方々に心よりの感謝を申し上げたい。
この場所に生きて3年。
1,2,3。ホップ、ステップ、ジャンプの3年であった。
何かが抜けて、今本当に自分が自分らしくなってきた感がする。
多くを喪い、多くの方にも迷惑をかけた。
そして多くのものをも同時に得た。
私はさらに純粋に私らしく、さらに錆を落として
ひたすらに垂直にここを生き抜く。
そう意識する年の瀬だ。

さっぽろ、マイラブ。

*森本めぐみ展「くものお」-1月13日(水)まで。am11時ーpm7時。
 月曜定休:12月31日ー1月4日正月休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-12-30 13:19 | Comments(0)
2009年 12月 29日

風雨強く晴れーthe republic of dreams(24)

休廊日の昨日は風雨強く荒れ気味。
今朝は快晴。光燦々と会場を満たす。
一昨日は年明けライブの打ち合わせで、有山睦さんと今村しずかさんが来る。
恵庭でのおせち料理詰め合わせのバイトを終えた森本めぐみさんも
駆けつける。森本さんと2人は初顔合わせ。
先に来たふたりは森本展をゆっくりと見ていたが、今村さんはちょっと度肝を
抜かれたようである。
しかし吹き抜け2階に上がり、そこで演奏という提案に次第に乗ってきた。
火のような赤のおかっぱ。フオーク系の旋律の美しいギター演奏。
このふたりは火と水のような関係かも知れない。
しかし水もまた炎である。
ともにある転換期を迎え、真正面から向き合い火と水の炎を散らす。
そんな感じがする。
奥の部屋でしばしビールを飲んだ後、焼き鳥屋へ行く。
この頃にはもう3人とも打ち解けて、特に今回のライブを企画した有山さん
がご機嫌だった。
ムラギシの音楽をフューチャーし、2度にわたり演奏した自信と併せて今村
さんの曲も自分のジャズに取り入れた実績があるからである。
ジャンルの違うふたつの音楽を自らのジャズバンドで演奏した自負心は、
有山さんを変えている。
今回はさらに美術の作品会場で、ふたりの個性がぶつかり合うのだ。
その事を純粋に楽しみにしている有山さんがいる。
私も同じなのだが、私と有山さんはいわばふたりの仕掛け人である。
今村さんの音楽的才能を高く評価する有山さんと、森本さんの美術的才能
を高く評価する私とが、ともにふたりの為の場を設定したのである。
年明けからふたつの才能は会場で、ともに進行中の音と絵画の作品の中で
水と火の炎の火花を散らす事となる。
足下真下に火のような赤が広がる会場で、今村さんの音は如何なる音を
発するのか。
今から1月10日のライブが楽しみである。
31日には年末のバイトを終えて、森本さんも最後の仕上にかかる。
火・水のふたりが揃い、有山という風が吹き、この場という地があって
ふたりの表現者に火・水・風・地の根源的要素が揃い、
バシュラールのいう「物質的想像力」、その想像力の源泉が今を掻き立たせて
いるのかもしれない。

*森本めぐみ展「くものお」-1月13日(水)まで。
 am11時ーpm7時・月曜定休:12月31日ー1月4日正月休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-12-29 12:58 | Comments(0)
2009年 12月 27日

ふたりの石狩ーthe republic of dreams(23)

東京の演出家にして役者の沼田康弘さんから電話来る。
今月目黒美術館で会って以来だ。
弟さんが亡くなられ、今夕張という。
唐牛さんの父上に続き、一日に2回目の訃報だ。
お悔やみを述べ、目黒での話を暫し。
チQさんがそのうちに見え、一緒にかりん舎の忘年会に向かう。
着くともう既に多勢の人がいる。
奥に石狩在住の中川潤さんと大島龍さんがいた。
軽く挨拶する。
大島龍とは彼の個展以来である。
時計台近くの某画廊での個展を少し批判気味に以前書いた。
その事を意識しているのか、いつものおおらかな笑顔がない。
先日訪ねて来てくれた歌人の山田航さんも来ている。
勤務先がかりん舎に近いそうだ。
たくさんのご馳走があり、わき目も振らず一心にぱくつく。
お酒はなんでもありで、とりわけ大島龍が持参したというアイルランドの銘酒
ウイスキーがある。ピートの薫りが鼻に残る、ウイスキーの地酒ともいうべき
銘酒である。円山北町時代によく飲んだ。
酔いもまわり、おなかも満たされた頃、大島龍と中川さんが口論している。
石狩に比べれば札幌なんぞは南国だと言った事から、ふたりの口論が
始ったようだ。
ともに札幌中心部の生まれで、今は石狩市に住む。
石狩海岸部の吹雪や寒気の強烈さを、内陸の都会である札幌と比較し
その差を言いたかったのだろうが、そういう本人自身が札幌生まれである事
を忘れている。
石狩文化人となった人間には、都会は都会でしかなく、物を買ったり売ったり
する場でしかない、
そんな風にあっさりと分類して、今住む場に安住していいのか。
石狩市も札幌市もともに石狩の国ではないか。
気候の厳しさだけを特権的にあげつらい、都会を見下すことはない。
どちらも今生きている現実である。
アイヌ文化探求者であり実践者でもある中川さんにとってはその区別・差別・
分類が気に入らなかったのだろう。
往路と還路あるいは往相・還相という言葉がある。
このふたつの往還軸こそが大切で、一方に行きっ放しの位相に本質は
立ち顕われない。
この往還相は縦軸、垂直軸に属すると思う。
横軸の移動にはなんの生産性もない。比較に流れるのである。
”×”の交錯する交点が、”>”か”<”の片側の相対性になるだけだ。
都市と辺境の>か、<の比較性の陥穽に落ち込むだけだ。
石狩海岸部がそんなにいいのなら、黙ってそこで生きろ。
都会は温室だなどと相対性の不毛に曝すな。
まあ酔っ払いのたわ言といえばそれまでだが、同じ札幌中心部で生まれ育ち、
今はともに海岸部の石狩で暮らすふたりの意識の微妙なズレが面白かった。
ふと隣を見るといつもは饒舌なチQさんが、随分とおとなしい。
今年1月沖縄へ移住した彼にこの口論はどう写っていたのだろうか。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)
 am11時ーpm7時・月曜定休:12月31日ー1月4日正月休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-12-27 12:06 | Comments(0)
2009年 12月 26日

断絶と出立ーthe republic of dreams(22)

記憶という土壌には、様々な過去という種子が眠っている。
それはブンベツされ、整理され得るだけに留まるものではない。
時として思わぬ芽を吹き出すものだ。
今朝夢現のなかで、不意に目覚めるものがあった。

 断絶を知りてしまいしわたくしにもはやしゅったつは告げられている

                                  (岸上大作「しゅぅたつ」)

<断絶>と<出立>。
この相反する語義の奥深くに眠っていた何かである。
過去はともすれば分類され、ブンベツされ、収納されてある。
現在という時間はそこを揺り起こし、目覚めさせ今のものとする。
ブンベツと断絶の違いを明らかにする。
断絶はその時点で、磁場へと転位するのだ。
<しゅったつ>の契機を孕むのだ。

朝早く思いがけず京都にいるはずの唐牛幸史さんが訪れる。
札幌のお父上が先日亡くなられたと言う。
それで札幌に急遽帰郷したという。
お悔やみを述べた後、今月目黒美術館以来なのでしばし「”文化”資源
としての<炭鉱>展」の話をする。
東京2日目唐牛さんと別れてからの事、川俣正の展示のこと、話は尽きない。
また偶然昨日再放送されたNHKの奥井理の追悼番組に唐牛さんが出ていた
事もあり、18歳で事故死した奥井理さんと出会いの事も聞いた。
ここでも生と死の<断絶>と<しゅったつ)が、話題となった。
生と死とはある意味、究極の断絶である。
そこからどう、人は<しゅったつ>していくか。
奥井さんのご両親あるいは村岸さんの母上。
ともに死の断絶から出立を意識化していく過程がある。
そこには悲しみという深い淵を経て、その坩堝から這い上がるさらに深い
愛がある。
愛こそが出立へと繋がる真の契機となる。
深く愛するからこそ、その深みにおいて、さらに深く開くものがある。
それがきっと<しゅったつ>なのだ。
村岸さんのお母さんが、一周忌の追悼展が終った時お礼ですと言って、
ここのトイレを掃除してくれたことを話すと、唐牛さんの顔が柔らかい笑顔で
崩れた。なによりですねえと微笑んだ。
死によって閉じた心が、自分の知らない息子を多く知る事で、
より俯瞰した個としてある類的存在に出会っていたからだ。
もう私だけの子ではない。死と向き合って知った今の<断絶>から
新たな地平の<出立>の磁場に今いる。
父上を亡くしたばかりの唐牛さんにとって、この断絶は正に今新たなる出立
でもあるのだ。
死は生に対し限り無く遠く、そして濃い生の磁場として顕われる。
そこを繋ぐ磁極は、故人へのあるいは遠く離れたものへの深い愛だ。

生きる事は、時に断絶の連続である。
しかしそれは、決してブンベツではないことだけは確かなのだ。
過去という芽もまた、現在という土壌にそうして立ち顕われる。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)
 am11時ーpm7時・月曜定休:12月31日ー1月4日まで正月休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-9斜め通り西向
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by kakiten | 2009-12-26 15:54 | Comments(0)
2009年 12月 25日

記憶という土壌ーthe republidc of dreams(21)

記憶の土壌には、過去という名の種子が眠っている。
こいつが時々、なんかの温度加減で芽を吹きだす。
すっかり東京目黒行き以来、この土の温度が上がったのか
タマビと赤に触発されて、遠い記憶の奥底の悔恨のよな痛みに似た
芽が吹き出していた、
ここ北の場末の画廊には、ジングルベルの騒音も届かないのだが、
時は間違いなくひっそりと、年の末に向かって流れている。
真っ白な雪が積り、世界は冬で静かである。
晩年のジョンルイス演奏のバッハ、平均律を流し一日が暮れた。
クリスマスイブとかで、訪ねくる人もまばら。
ダスキンの平川勝洋さんが今年最後のモップ交換に来る。
エビスビール半ダースとつまみの差し入れ。
モップ代より高価である。
森本めぐみ展を見て、演劇空間のようでいいという。
吹き抜け上部からしか見渡せないのが面白いともいう。
半透明なビニールの壁を透かして赤い色が滲んでいる。
何があるか、その好奇心で想像させるのがいい。
そして梯子を登り、あっと見渡す。
この展開が劇的で、演劇的だ。
縦構造のこの空間を活かす展示と感想を漏らす。
さすが、元天上桟敷の役者だけある。
湊谷夢吉、山田勇男たちの映像に出演していた頃の平川勝洋の顔に
なっていた。
陽射しが雪に揺れて、白いビニールの壁に拡散し、柔らかな光が
会場を包んでいる。
真っ赤なおかっぱの少女と赤い楕円の花が、会場をそこだけ
赤い暴力のように埋めている。
お米さんは、爆弾アラレ。
潜在エネルギーが凄い。
かりんとうさんやらコンペイ糖さんやら、アラレさんやら
女性パワー全開のような歳末だ。
負けずに頑張ろうぜ。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)。
 am11時ーpm7時:月曜定休・12月31日ー1月4日まで正月休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2009-12-25 12:56 | Comments(0)
2009年 12月 24日

燃える花ーthe republic of dreams(20)

現在(いま)とは何か。
過去に収監され、漂流するものではない。
また未来に収奪され、漂泊するものでもない。
緩く円を描いて、過去と未来の時間の双曲線が交わるところ。
その交点に燃えている焔の時間が、現在(いま)だ。
森本めぐみ展の強烈な展開を眼にしながらそう思う。
3m近い画布正面上部に、作家の化身のような少女が、
真っ赤なまあるい花々の上に、これも真っ赤なおかっぱ頭で
舟を一艘両手に持って、浮かぶように描かれている。
中心から下一面は大きな楕円の10を超える大小の花が描かれ、
その中心は黒である。
画布の中を、これも真っ赤なつなぎを着た作家が動き、描いている。
今年の夏、初めて会った時のあの小学高学年生のような少女は今、
強烈なオーラを放ちながら、制作に集中しているのだ。
才能が彼女を大きく巨大なエネルギーの塊に変え、絵画の化身と化している。
この燃えるような赤に、私の遠い記憶の焔が甦る。

男ばかりの木賃宿のような久我山の下宿。
そこをある冬の日訪れた真っ赤なブレザーを着た少女。
タマビに入学して上京し、恋しい男を初めて訪問した時の服の赤である。
まだ脛かじりの貧乏学生の男には、この少女の燃えるような赤を
真正面から受け止める器量はまだ、不足していたのだ。
男ばかりの小汚い下宿に、あの燃えるような赤は不意の嵐のようであった。
遠い鮮烈な記憶が、ふっとこの森本めぐみさんの絵を見ていて、
思い出されるのだった。
赤とは何か。
赤とは燃える現在(いま)の謂だ。
蝋燭の燃える芯の謂だ。
冷たく固まった過去の時間と、
浮遊する未来の酸素が結合して、火が点る。
一瞬、一瞬燃焼しつつ消えてゆく時の交点。
現在(いま)という濃密な時。
過去という固形の時、未来という漂う時。
そのふたつの時の要素を合体して、今が燃えている。
私には今回の個展のモリモト時間が、そのように感じられるのである。

思わず個人的な思いに火が点き、遠い記憶の底の焔の赤が甦ったのだ。
東京杉並の久我山。モノクロームな風景に眠る鮮烈な赤の記憶である。
クリスマスイブの今日、作家はフインランドから帰国した恋人の下へ
明日からのバイトとともにここからしばらく姿を消すという。
不透明なビニールのテントに囲繞された空間から、吹き抜上部に吹き上がる
赤い少女と真っ赤な花の存在は、しばらく私の磁極を狂わせつつ悩ませる
事だろう。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)
 am11時ーpm7時・月曜定休:12月31日ー1月4日まで正月休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2009-12-24 12:54 | Comments(0)
2009年 12月 23日

冬至過ぎるーthe republic of dreams(19)

久し振りに冬至のかぼちゃをご馳走になる。
マイミクのKさんの差し入れ。
ついでに御節料理も回して頂くようにお願い。
最近こうした家庭料理に餓えているようだ。
昔祖父が健在の頃、家は本家だったので、従兄弟もみんな集まり、
楽しかった。大きなお重が5段くらいあり、煮しめ、うま煮、黒豆、ナマス、
数の子等がいっぱい入っていた。
正月中はこれを食べ、最後は飽きてカレーライスが欲しかったりした。
しかし大晦日の夜は豪華で人も多くいて豊かな気持ちだった事を覚えている。
当たり前のように食べていたものが、人も食べ物も失われて、恋しくなる時も
ある。
後悔はないが、得るものと同じくらい喪ってきたものもあるのだ。

ビニールの不透明な部屋の中に、大きな真っ赤な絵が出現してきた。
森本さんが描き続けている。
26日からバイトが始り中断するだろうが、年明け以降には完成するだろう。
鈴木悠哉さんといい、森本さんといい、ここはトランスルームと化している。
作家の何万ボルトかの充電するエネルギーが、何ワットかに変電され展示
へと展開してゆく。
年末から年明けにかけては、こうした展覧会がここ何年か続いている。
尾道へ移住した彫刻家の野上裕之さんの個展の時もそうだった。
昨年は、沖縄へ移住したチQさんと網走へ移住した佐々木恒雄さんの
ふたり展も新年そうそうだったが、ふたりの転換期の年越しだった。
その佐々木さんが正月早々網走から札幌へ来るという連絡がある。
オホーツク海の漁師業一年目を終え、久し振りのさっぽろ。
どう体型も変わっただろうか。
沖縄から帰省中のチQさんとも、一年振りの再会となる。
来年2月流氷の頃、是非一度オホーツクを訪ねたいと思っている。
まだ一度も流氷を見たことがない。
今年見た2月の沖縄の青。
来年は北の青をこの目でしっかりと刻み込みたい。
青を通した南北の強い相違、その間に広がる深い磁場を経験したいから。

さっぽろでさっぽろを深く生きる。そして繋がる。
マイラブ、そして友よ、世界は深く広い。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)。
 am11時ーpm7時:12月31日ー1月4日正月休・月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2009-12-23 12:02 | Comments(0)
2009年 12月 22日

白い世界に燃えるーthe republic of dreams(18)

一気に根雪。路面から黒が消えた。
有山睦さんからメールが届く。
先週の土曜日モエレ沼公園ガラスのピラミッド内で、
ムラギシ曲「撓む指は羽根」を演奏したという。
3年前モエレ沼スノースケープで「シャコンヌ注釈のための練習曲」を
演奏し、その事を覚えている人たちが暖かく歓迎してくれたという。
音楽を通して未知の人と人が繋がった日。
そういえば沖縄からチQさんが不意に帰札し、かりん舎が来て
山田航さんが来ていた日でもある。
その同じ時間帯、モエレ沼公園ガラスのピラミッド内に、
ムラギシの曲が響いていたのだ。
偶然といえば偶然である。
現象(なりゆき)・実体(みちゆき)・本質(さだめ)かな。
有山さんたちが演奏したムラギシ曲「撓む指は羽根」という題名にも
触発されるものがある。
今展示中の森本めぐみ展の展開が第二期に入り、二晩会場で制作を
続行中だが、このキーワードは5っ目の部屋、五本の指という事だ。
指は五本揃って、掴む、握る、放つ。
<撓む指は羽根>とは、その事ではないのか。
撓(たわむ)指が、主題のように立ち現れてくる。

有山さんの推薦で今村しずかさんのギターソロ演奏の提案がある。
クロバーという3人グループのひとりで、ギター演奏と作曲の人だ。
ソロ演奏は初めてというが、張り切っているとの事。
有山さんの高い評価と強い推薦は、この会場という場と作家へのオマージュが
篭められていると思える。

お蚕さんの繭(まゆ)のように、会場中央にすっぽりと不透明なビニールの
部屋が今朝出現していた。
中の目張りは赤いビニールテープで閉じられ、吹き抜け上部からしかその内部
を見渡す事が出来ない。
中に大きな画布があり、ここで絵を描き上げるという。
白い雪の中で篭り、燃える森本めぐみがいる。
今朝は快晴、玄白の世界。
森本めぐみ展、思わぬライブ展開の2週目突入である。
作家は空間をトランスにして、過去という来し方、まだ来ぬ未来を、今という
一点に凝縮するように熱く創り増殖しつつ、燃える年越しとなる事だろう。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)
 am11時ーpm7時:12月31日ー1月4日正月休・月曜定休。

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by kakiten | 2009-12-22 12:33 | Comments(0)
2009年 12月 20日

不意の来訪者たちーthe republic of dreams(17)

歌人の山田航さんが来る。
過日道新に彼の「わが短歌の原風景 札幌」が掲載され、何度かこのブログに
引用して会いたかった方である。

 ああ闇はここにしかないコンビニのペットボトルの棚の隙間に (松木秀)

を引用して硬質な都市論を展開し、感銘を与えた。

 たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく

 走ろうとすれば地球が回りだしスタートラインが逃げてゆくんだ (山田航)

若いコンビニ世代の鬱屈を抱え込みながらも、<文化の発信地は常に東京で
あり、北海道は都心部をもたない巨大な郊外としてでんとそこに置かれている
ように思えるのだ。・・・近代以降に整備された人工都市・札幌にはとりわけ
顕著な「空洞」傾向がある。>(同上新聞掲載文)
この現在をしっかりと見据え、その「空洞」をあたかも目隠しし、眼の臭い消しに
奔走するかの如きアート風潮に怒りを持っていた私には、この若い歌人の闘う
姿勢に大いに共感し、会いたいと思っていたのだ。
挨拶もそこそこに、話は続いた。
不意に電話が鳴り、今フエリーで北海道に着いたという沖縄ー佐世保から
帰郷中のチQさんから連絡が来る。
真っ直ぐここにくるという。
小1時間もしてチQさんが来た。さらにそうこうしている時にかりん舎の坪井さん
、高橋さんが来る。
チQさんとの1年ぶりの再会に歓談が続く。
山田さんはゆっくりと森本展を見ている。
なんだかんだと閉廊時間近くまで結局山田、チQ3人で話し込んだ。
山田さんが帰った後、ふっとチQさんと顔を見合わせ、おい、ムラギシが
来ていたんじゃないかと話した。
山田さんとムラギシは同年齢で、ムラギシ本を熱心に話の合間に読んでいた
からである。彼の遺した曲のCDを流しながら、時間がいつの間にか過ぎていた。
本の出版をしたかりん舎のふたりが見え、チQさんが不意に来て、同年の山田
さんが訪ねて来る。そして話の渦中のへりには常にムラギシがいたのだ。
これらはみんな計ったようなピンポイントの偶然である。
祖母と父の具合が悪いという事で、急遽一時帰郷したチQさんの、北上陸と同時
の訪問は思わぬ展開で多くの波紋を広げたのだ。
みんなそれぞれに会いたかった人たちである。
チQさんも山田さんのことは、私のブログを通して知り会いたかった人という。
これら熱い時間に包まれて、森本さんの眼光が段々濃くなっている。
とうとう岩見沢のアトリエからここに作品を持ち込み、ここで仕上げるという。
それぞれに熱く濃い時が加速してゆく年末である。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)
 am11時ーpm7時。12月31日ー1月4日まで正月休み。月曜定休。

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by kakiten | 2009-12-20 12:14 | Comments(0)