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2009年 06月 30日

濃い風の日ー朱夏(1)

写真家のメタ佐藤さんが来て、初めて見る中嶋幸治展に感心しきり。
メタさんとは二度目の出会いだが、今インドネシアに出かけている、アキタヒデキ
展の時にここに来ている。
メタという名前を付けていることがきっかけで、すらすらと話は進み、
二度目の今回はさらに深く話し込んだ。
いつか、ちゃんとした形で彼の作品を見てみたい。
友情の証だろうか、テンポラリーのTシャッを購入してくれた。
メタさんが帰って間もなく、帯広の伽井丹弥さんと梅田マサノリさんが来る。
中嶋さんの個展と及川恒平さんのライブを聞く為である。
珍しいよと言って、梅田さんがなにやら大事そうに包んだ物を差し出す。
南極の氷という。溶けると3億年前かの封印された空気が、プチプチ音を立て
弾けだすという。及川さんのライブの時に飲み物に入れて出そうと話す。
程なく東京M美術館の正木基さんが外人を連れて来た。
秋に予定している企画展の協力者という。ジャステイン・ジェステイーさんは、
日本語ペラペラで、戦後日本美術を政治運動との関わりで研究しているらしい。
優れたキューレーターである正木さんが、目をつけるだけあって、美術の狭い
範疇に収まらない目線がここにも感じられた。
空港に向かうまで1,2時間も居ただろうか、ここでも濃く話が飛び交う。
中嶋さんの作品を見る正木さんの視線は丁寧で、きちっと見ている事を感じた。
現在日本のキューレーターの五本の指に入るような人に見てもらえ、
中嶋さんは幸せと思う。
夕方正木さん達が帰京した後、及川さんがリハーサルに到着する。
唄う場とマイク等をセットした後、声を出す。
奥の談話室で聞いていた中嶋さんとちょうど来ていた美翠さんが、腕を思わず
擦っている。鳥肌が立ったのだ。声が澄み、名曲「地下書店」が廊内に響いた。
この夜の及川恒平は、多分今まで一番寛ぎ、個を語り、友人の死を語り、
絶品の公演だったと思う。
演劇を目指した青年時代の思い出を淡々と述べ、別役実や死んだ友人の話を
交えて自らの立ち位置を確認するかのように、唄と語りが声となって響いたのだ。
その声は一段と澄み、その唄は聞く者の心のデテールに触れていった。
中嶋さんの風の鱗と題された、封筒の形をした作品群と、及川さんの声の風は
互いに触れあい、澱みなく時と空間を染め上げていった。
中嶋さんの封筒の内側に、及川さんの声が吹き込まれ膨らんで、次第に深くな
る黄昏の空気に沁み込んでいった。
そう、それは滅多に訪れる事のない稀有な時空だった。
前のスペースの呪縛を離れ、ここを定点と前回語った及川さんの構えは
もう消えていた。
この場所で出会った中嶋幸治さんの作品と及川恒平の声がもう、
巧まずして融合している。
ライブ終了後、作品に触れしばし帰るのを惜しむかのような聞き手の姿に
その事が顕われていた。
2年前にさっぽろに津軽から来た青年の作品と、40年以上前に釧路を離れた
歌い手の声とが不思議な邂逅を果していた。
耳を澄まし、目を澄ます、澄んだ時間だった。
風が濃く吹き、それを包む時のふくらみに酔う夜もあるのだ。

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
 am11時ーpm7時
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-30 11:08 | Comments(0)
2009年 06月 27日

どうせ私は~-風のRondo(22)

一昨日布団を干して出かけた。
今年初の夏日。熱く人もまばらで今日は早く帰り、
布団を部屋に入れふかふかで寝れると思っていたが、
閉廊間近に長々とおしゃべりする美術好きが来て、帰りが遅くなる。
途中お腹が空きラーメン屋で冷やし中華を食べていて、ふっと思い出した。
やばい、布団を入れなきゃ~。
少し冷えていたが、まずはいい感じで熟睡できた。
昨夜は頭が冴えて、寝不足気味で、自転車で走っていても昨日の鼻歌はでない。
今日の鼻歌は、「ポリバケツ」。
♪どうせ、あたしは、生ゴミ女~
鼻歌ひとつにも、微妙に体調が出る。

昨日は年長者の訪問が多い。
帯広のHさん、建築家のKさん、江別のGさん。元役者のHさん。
特に建築家のKさんは1年ぶりで、変わらず辛口の世情批評で世の中を
一刀両断する。千歳出身で東大建築科を出て世界中を放浪し、アパルトヘイト
ノン運動や、多くの運動に参加し活動した人である。
純粋一徹で、時に大久保彦左衛門のようなご意見番の風格がある。
綜合文化誌時空体を目ざし、ともに本を創った事もある。
最近は辛口に偏り、かってのような運動体を起すことも少ない。
多くの美術運動、美術作品にも眼が肥えているので、
その批評は寸鉄人を射すものがある。
多くを語らなかったが、中嶋さんの作品には好意的と見受けた。
江別のGさんは、自らが作家でもあるので、手法的な部分でも熱心に見ていた。
帯広のHさんは、美術好きで中嶋さんを高く評価していて前回に続く2度目の
来廊である。駅から真っ直ぐここに開廊前に来た。
元役者のHさんは、天井桟敷出身で山田勇男の名作「海の床屋」の主役を
演じている。今は清掃道具の会社をしているが、飄々としてきちっと物を見る
目を失わず、時に適確な批評眼を示す。
今回も吹き抜けに上り、中嶋作品を見落とさず、言葉にしてくれる。
4人が4様に濃く存在感をもって作品を見てくれた。
今日明日と週末は、及川さんのライブも会場であり、さらに多くの優れた人が
中嶋幸治の作品を受け止めて発語してくれる事だろう。
そういえば、東京M美術館のM氏も明日来廊する予定だ。
M氏の批評は本物で、この人に見てもらえるだけでもラッキーと思う。
今日本でも数少ない本物のキューレーターなのだ。
吉増剛造さんに渡す原稿も今日中に書き上げなければいけない。
M氏は来週吉増さんと打ち合わせで会うということなので、
M氏に原稿を中継して吉増さんに手渡してもらう積り。
原稿を包む封筒は、中嶋さんが創ってくれるという。
いいね。
今日もいい天気が続く。

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 予約2500円・当日3000円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-27 12:08 | Comments(2)
2009年 06月 26日

ハミガキブロッグー風のRondo(21)

唐牛幸史さんから、作品ファイルが届く。
’89年頃からの20年分である。ほとんどが未見だ。
いっぺんに彼の来し方が、塊(かたまり)となって現在にある。
札幌ー金沢ー京都ーメキシコ。恋人ー子供ー家族。
めくるめく時間が、作品とともに一度にくる。
そして、何よりも今がある。
刻々の積み重ねが時間の大河となって、どっと流れている。
ただただ、眺めていた。
スケールの大きな作品群である。
そして、私の知る唐牛さんのナイーブな触感、手が見える。
大きく動き、大きく傷ついたんだろうなあと思う。
いい時に再会した。

唐牛さんが訪ねてくれた時のブログを読んだ東京のM氏が、興奮して
あちこちに引用して転送している。
彼もまた唐牛さんに川俣正のテトラ326以来会っていないのだ。
その時間の長さと、今の時間の濃い短さがM氏を感動させている。
他に送るメールを慌てて私にも転送し、その事がかえって生(なま)にその心を
伝えてくれた。
「ハミガキブログ」を読めと書いてある。
これはたまに私のブログを開くと、どかっと量があってヘキヘキしたというので
私が、毎日歯を磨くように書いていると答えた事を揶揄したものである。
日記ですから、毎日歯を磨くように書きます。
それを纏めて一ヶ月歯を磨けと言われても困りますよ。
そんなやりとりから、M氏はハミガキブログと名付けたのだ。

唐牛さんの20年分の作品集も、今一度に見ている訳だが、そこには感動がある。
Mさん、日常の一刻一刻の積み重ねの土の中から、現在という花の時間の咲く
のです。ハミガキブログも勘弁して下さい。

朝自転車を飛ばしながら、鼻歌を歌っていて、ふっと気付くと、
ハミガキ~ブロック、イエ~イエー!と口ずさんでいた。

ハミガキブロック、イエ~!

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円:予約2500円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-26 11:44 | Comments(0)
2009年 06月 25日

Tシャッを着るー風のRondo(20)

真夏日になる。今日が一番暑いという予報。
昨日から半袖・Tシャッ。
首周り、腕周りがすっとして楽。
K氏特製のテンポラリースペースのオリジナルTシャッに初めて袖を通す。
まだ鏡で確認していないが、お~っと、言われてしげしげ。
満更似合わないわけでもなさそう・・。
一点青いのが売れる。
沖縄帰りの短パン、日焼けした黒田晃弘さんである。
チQさんと会ってきた話などを伺う。
経済に絡まる生活の話になり、絵描きとして食っていくことの困難を話す。
特技に焼き芋の技術があると言う。皮から蜜が溢れる逸品だ。他の人には真似
出来ないと自慢した。
それでいったらとけしかける。ハニーポテト。蜜芋。そして似顔絵描き。
巷(ちまた)を行商して歩く。美味しくて、絵も美しく、今日はハニポテしようと
受けるぜ。
夕方早番で仕事を終えて来た中嶋幸治さんの彼女絵美さんにその話をしたら、
絶対食べてみたいわと、目が真剣になった。
黒ちゃん、決まりだぜ。似顔絵とハニポテ。
暖簾の旗には、漢字で「蜜芋」だね。
今<蜜月>の彼には、ハニポテです。それで生活を生き生き、活き活きですね。
家ではマイハニー、外ではハニポテ。いいじゃんか。

同じ初めての沖縄でもそれぞれの視角がある。
豊平ヨシオさんには会わなかったようで、軽自動車をレンタカーで借りて島を
周り、長老や町の人と交流したと言う。
私はただ一点、18年ぶりのひとりに会いに行った。
その人の深い<哀>の沖縄に触れた2日間だった。
8月もただそれだけを確かめに行く。
避寒の時ではなく、夏真っ只中に南の島でもう一度立ち会う。
ひとりの人の軸心に深く触れる事が、私の沖縄である。
豊平さん、待っててね。
中嶋幸治さんの、夜の風と朝の風を表わすオレンジと灰色の封筒の交差が、
もうふたつの海を越えて、豊平さんへと心を包んでいるかに思えた。
そして昨日着たTシャッの色彩が、まさにオレンジと黒の交叉する色柄である
ことに、今気付いたのである。
心を包む身体、身体を包むシャッ。人は包んで何かを保つのだ。
そして、内なるのを外へとそっと差し出す。
生きる行為として。

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日):絵画展・24弦琴演奏最終日。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-25 10:42 | Comments(0)
2009年 06月 24日

遠い声・近い声ー風のRondo(19)

十数年ぶりの内村俊介さんの訪問に始まり、濃い粒々の時間が続いた。
本来彫刻家であるが、今は豆本造りをしている岡部亮さんは、彫刻魂を
刺激されたのか、じっくりと中嶋展を見ていった。
その目線の視角はやはり彫刻をする人のそれと思えた。
造型として封筒形の一点一点を見ていたからである。
私は先ず封筒という存在の意味から作品を見ていく志向がある。
つまり間接的な存在が保つ<間>の意味である。
切り口がそうなる。
しかし、彫刻家は造型された形から見る。
当然といえば当然だが、しばらく彫刻から遠ざかっている亮さんの目が
その彫刻家の目になっているのを感じて嬉しかったのだ。
それからも濃い時間を共有する人たちが続いた。
合間を見て2階で原稿を書いていると。おーい、ナカモリ!と声がした。
工藤正廣氏だった。連れて来たぞという。
見ると懐かしい顔があった。ポーランド文学を研究している井上暁子さんだった。
もう何年ぶりだろうか。北大から東大へ行き、ドイツ、ポーランドへ留学した才媛で
ある。前のスペースでは何度か顔を合わせ話していたが、ここは初めてである。
工藤氏の教え子でもあり、今回久し振りの札幌出張で連れてきてくれたのだった。
ゆっくり会場と建物を見て、落ち着くわと言ってくれた。
前のスペースとは比べ様もないのだが、今していることも含めてすべてを理解して
くれたようで嬉しかった。
閉廊時間後、初日だよねといいながら、中嶋さんとビールで乾杯した。
すると電話が鳴り、ケンですと声が届く。
ドイツのケンちゃんこと谷口顕一郎さんだった。
中嶋さんの初日ですからという。
オランダのブリュッセルで大きな仕事にかかるという。
遠距離電話にもかかわらず、中嶋さん、後から来た國枝さんと替わり、
長い会話が続いた。
遠く、近く、いい声が届きいい初日だった。

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日)
 
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-24 11:45 | Comments(0)
2009年 06月 23日

中嶋幸治展始まるー風のRondo(18)

強風の一日が明け、夏の陽射しが戻ってきた。
中嶋幸治展始まる。
封筒に造型された色、形が、壁より少し宙に浮いて、
その影と光が美しい。
間(あいだ)の宙(そら)が、空間を創って潔い。
入ってすぐ右手の奥まった空間には、故郷弘前の白岩の土が盛られ、
上からは梅の苗木が9本、逆に吊られている。
土の中にスピーカーが仕込まれ、小さく音が流れている。
中嶋さんの演奏だそうだ。
入って会場正面には、オレンジと黒の封筒が交互に横一列に展示され、
風の澱みのように見える。
青森から最初に札幌に来た2年前の春、風が粒々してオレンジ色に感じたとい
中嶋さんの言葉を思い出した。
津軽海峡を経た土地の違い。その界(さかい)の新鮮な感覚がこの展示に
篭められている。
そこへふらりと最初のお客さんが来る。
なんと、内村俊介さんだった。’89年「アートイヴェント界川游行」の際、
当時ケーブルテレビジョンにいた彼は、4時間のドキュメントを撮影してくれた人
である。現在は別のTV局に移ったが、もう何年も会っていなかった。
ここには勿論初めてである。
中嶋さんを紹介した後、話は’89年まで遡り、現在に至ることで熱を帯びた。
不思議だなあ、中嶋幸治展の最初の訪問者が、内村さんとは・・。
これがほんとの風の便りである。
20年は消え、その長さを一瞬にして現在の時間にした。
間(あいだ)は、豊かな風の吹く時間となった。
時を繋ぐ、風の磁場である。
昨日の休みの間受け取ったメールを開くと、
目黒のM氏から、熱いメッセージが入っていた。
一昨日の唐牛幸史さんの訪問を喜ぶメッセージだった。
ここでも時が、過去から今へと吹いている。
風の磁場である。便りである。
中嶋幸治展初日、いろんな風が吹く。

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
 am11時ーpm7時・月曜定休・休廊
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円予約2500円
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日)
 12日(日)午後6時~24弦琴ライブ:入場料1500円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-23 12:42 | Comments(0)
2009年 06月 21日

再会・訪問・帰郷ー風のRondo(17)

昼近くひとりの青年が来る。
九州・福岡の彫刻家阿部守さんの教え子という。
モエレ沼公園を見、その後寄ったと言う。
阿部さんにここにも寄るようにと言われていたらしく、
帰る前に立ち寄ったのだ。
イサムノグチの話、モエレ沼の地形、境界の事とか話した。
そこへひょこっとスキンヘッドの体格のいい男が、顔を出す。
唐牛です、と言う。あっ、唐牛幸史さんだ。
川俣正のテトラハウウスの時、20歳そこそこだった彼とは
ほんと何年ぶりだろう。
現在は京都にいて、最近体調を崩し入院もしていたと言う。
それからテトラハウス以降のいろんな話を、止めどもなくふたりで話した。
彼もまた人生上の転機に今いる。
家族とも別れ、両親も病中にあり、今問われている。
お互い何もなくなり、志(こころざし)の真だけが、かりんとうのように立って
いる。そんな気がして話が幾重にも交錯した。
阿部守さんの学生は、帰郷の飛行機の時間が来て、残念そうに帰る。
程なく滅多に見えないレトロスペースの坂一敬さんが来る。
お土産に出来たての坂ビスケットを差し入れてくれる。
連れの女性はKさんといって、今月末故郷の阿寒町に引越し30年余住んだ
札幌を離れるそうだ。
その前に一度テンポラリーに寄りたくて、坂さんが連れて来たという。
さらにしばらくして、横浜の大野慶人さんの届け物を持って、生徒の高橋さんと
對馬さんが見える。
届け物は、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンの大野一雄へのオマージュとなる
CD2枚だった。
唐牛さんをみんなに紹介し、それぞれを紹介した後、話は跳びに跳び、みんな
が自分の状況を話し、阿寒に行こうとか、Kさんの夢のメロン栽培の話やら、
結局閉廊近くまで話は続いた。
しかし何よりもこうして、ほんとに久し振りに唐牛さんと会い、今の時間を共有でき
た事が嬉しかった。
振り返える過去はなく、今に、これからへと、人と人が繋がったからである。
唐牛さんもまた、今日という原点をテトラハウスの時から今に繋いだと思うからだ。
それぞれの個的状況がその個別性を超え、今に繋ぎ明日へとリンクしていた。
わいわいと雑多で、しかし明るくいい時間だった。
遠い過去、遠くへ立つ、遠くから来る。
それぞれの時間と場が交錯して、交点となり開いていた。
チQさん、昨日は一日中みんなの心の”まちぐゎー(市場)”でしたよ。
そして、大野一雄へのアントニーのCDは心沁みる名盤です。
最終日の今日、会場に流し、聞いています。

*チQ沖縄からのポストカード展「まちぐゎー69」-6月21日(日)まで。
 am11時-pm7時
*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-21 13:31 | Comments(0)
2009年 06月 19日

ゴーヤのアーケイドー風のRondo(16)

ビルの谷間の打ち捨てられた庭に、花屋敷の夢を見ていたら、沖縄・コザの
チQさんから電話がくる。
今いる銀天市場のアーケードを取り壊し、ゴーヤの棚で覆うという話だった。
暮らしと仕事が一体になっている市場の人たちと話していると言う。
そこに住み生業(なりわい)として生活がある。その場に根ざして暮らしがある。
だから、何処にでもあるようなアーケードではなく、沖縄らしい植物で覆われた
藤棚ならぬゴーヤ棚を造り、アーケードに代える。
もともとその一帯にあった稲田も再生し、バケツに稲を植え並べるともいう。
市街地化で消去されたかっての風景を復元はできないが、
小さな再生をしようとする話だった。
場所も状況も違うのだが、そこで生きる個人の、小さく僅かな行為だが
その場の志に満ちた視線は昨日のKさんと共通するものがあるようで嬉しかった。
市場の人も、役場の人も、きちんとその場を楽しく夢を抱いて生きようとしている。
ショウルームのような、何処にでもあって、無個性なアーケードなどより
はるかにゴーヤの棚の方が楽しい。ニガウリの夢である。
そこの市場の食堂でゴーヤチャンプルでも食べたらと
札幌にはない風景がもう浮かんでくるのだ。
ショップではなく、そこに住み、生活をし、生業を営む住む目線が、
暖かく感じられるのだ。
人間も植物も同じ生き物として、ともにあって、物売り至上主義のショップでは
ない生き方も見えるからである。
個が生き生き、活き活きとしてこなければ、人は<生活>という言葉に負けて
ばかりになる。
チQさんの今回のポストカード展名「まつぐゎー」とは沖縄の言葉で「市場」と
いう意味である。まさにゴーヤもあり、マグロもあって市場に並んだ新鮮な野菜
、魚のような作品もある。
札幌時代に見られなかった縦に立つ画面構成、強烈な赤。
これらは今生きている今の場との関わりから生まれているものと思う。
たくさんのいい刺激を受け止めて、彼の生活もまた、
生き生き、活き活きと<生活>している所為と思えるのだ。

*チQ沖縄からのポストカード展「まちぐゎー69」-6月21日(日)まで。
 am11時-pm7時
*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-19 12:33 | Comments(0)
2009年 06月 18日

花屋敷の夢ー風のRondo(15)

役所勤めのK氏が来る。オオウバユリの話をした。
時計台の敷地に咲かせたいという。
他に旧偕楽園跡地、永山武四郎邸と近代を代表する数少なくなった洋館
に札幌固有種の山野草を咲かせたいというのが、彼の夢だ。
大通り花壇と同じじゃないかという反論もあるようだが、あくまで自然の再生を
彼は考えている。ビルの谷間にある洋館建築。そこに山野草の花が咲き乱れる
のは、自然の花壇化といわれれば、それはそうかも知れない。
しかし、その相反する風景こそ、人間が創る文化なのだ。
バーチャルリアリテイーである。虚が実を撃つ。
役所の仕事をしながら、個としてちょっとだけはみ出す。
そんなファインな心が私は好きだ。
文化財を管理し清潔に保ち、つつがなく職務をこなす。
しかしそこに夢として、本来の土が、大地が、森が、夢見られる。
それは花壇の綺麗さとは違うものである。
先人が謳った寮歌の一節。

 牧場の若草陽炎燃えて、森には桂の新緑萌し、
 雲ゆく雲雀に延齢草の、 真白の花影さゆらぎて立つ

そんな喪われた風景を都市の洋館の僅かな敷地に夢見る。
その夢自体がバーチアルである。
しかし、それゆえにこそ、現実を撃つリアリテイーも生む。
正反対の状況が磁場となり、深い裂け目のリアリテイーを幻視させるからだ。
文化財として区分けされ、管理され、分別されるだけではない
境界(さかい)が生まれるからである。
かって泉池があり、鮭の孵化場でもあった旧偕楽園。
清華邸として保存されたかっての洋館サロン。
その敷地を花屋敷として再生するのも夢だと言う。
この日横浜の大野慶人さんから、人づてに便りがあった。
父上の大野一雄さんが石狩河口で踊り、子息の慶人さんにはいつかさっぽろ
で踊っていただきたいと思っていた。
故郡司正勝さんの慶人さんに遺された遺作公演を、いつかさっぽろで実現したい
と思っていた。さっぽろ薄野生まれの郡司先生と、北原白秋の歌曲「この道」を
愛する慶人さんの為に、相応しい場所を考えていた。
ああ、花屋敷がいいなとK氏に話した。
石狩の海と繋がるさっぽろの場が見えてきたからだ。
K氏の職務をちょっと超える夢が、私の夢とリンクしてくる。
ただの花壇なら、こうした心のオーバーフェンスは生まれない。
ファイン役人K氏と話し続けて、お酒を重ねて夜が深けた。

*チQ沖縄からのポストカード展「まちぐゎー69」-6月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

 
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by kakiten | 2009-06-18 12:59 | Comments(2)
2009年 06月 17日

声の綿毛ー風のRondo(14)

「雪国の華」などというふやけた花の便りなどより、日々の山野草の開花の便り
の方が、はるかに美しく心和む。
大体「雪国」とは、花の見えない冬の年(sakーpa)を指すのである。
雪のない国へのへつらい、おもねり、売り込み以外の何物でもない。
いっそコマーシャルな「白い恋人」とか、地球温暖化反対ツアー「雪国をあなた
に」とか、「サッポロの星」上海上陸とか、市長のカラオケ付きでブンカ、ブンカ
したらいい。
こうしたさっぽろを、さっぽろとして自立させる事なく、雪国一般にエセ普遍化し、
日本の最北端などと見下ろし、オホーツクと日本海と太平洋と津軽海峡と背骨
の山岳地帯と、さらに個別な地域性の相違を粗雑に捨象して、一体何が文化
で美術・芸術なのだ。
一輪の花の保つ地域性、環境性の固有な美しさに比し、ここには何も伝わるもの
がない。自然ではなく、人間社会の環境を第一義に考えるのであれば、雪国の華
などというタイトルは意味を成さない。
コンテンポラリーアートを標榜しながら、実態は自然環境を売り物にした土産物売
りである事が容易にこの命名から知れるのだ。
古臭いフジヤマ・ゲイシャ手法である。
まだしもTVで最近よくも見る「ケンミンショー」の方が余程進んでいる。
ここには少なくともそこに生きる人の顔が見えるからである。
東北一般とか、九州一般とか粗雑な区分けがないからだ。
隣の県民すら知らないその地方独特の食べ物があり、食べ方がある。
その違いが新鮮で、魅力的なのだ。
未知のお国が、日本の中にたくさんある。異国とはそうした新鮮な発見である。
政治上の区分けとは違う位相にある。
そうした地域・風土の個別性、さらには人間の個々の個別性に根ざすのが文化・
芸術の王道だろう。
その上で、同時代という普遍性を如何に表現の高みに於いて結晶し得るかが
コンテンポラリーアートに架された大きな課題である。
個から類へ。その視軸を抜きに、やたら公的な世間を意識した迎合の視線には
貧しい<私>と<公>の癒着しか感じられないのだ。

曇り空が続く中、白いポプラの綿毛が大量に飛んでいる。
もう、ひとつの季節が過ぎようとしている。
若葉・青葉の新緑は、次なる繁殖の時へと動いているのだ。
この風景をいつか別れの時に見ている。
本州から来た初めて来た親戚は、この綿毛の舞う風景に驚いていた。
死者の魂が舞っているようだと言った。
綿毛一つ舞っても、個人的な思いがある。
その事実を、掛け替えのない事として、人は生きている。
その個別性が心の普遍性として、いつか個別に届くのを信じること。
そうしてきっと、みんな生きている。
今展示の沖縄からのポストカード展、来週から始まる青森から来た青年の封筒展。
遠くから声は、いつも個別な心の綿毛に包まれて、届くのだ。
チQさん、中嶋幸治さん、そっと耳を澄まして声を聞きます。

*チQ沖縄からのポストカード展「まちぐゎー69」-6月9日(火)-21日(日)
 am11時ーpm7時
*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*中川かりん展「かりん」-7月7日(火)-12日(日):絵画とライブ演奏
 7日午後6時~かりんクロージングライブ・入場料1500円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2009-06-17 13:17 | Comments(0)