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2007年 08月 31日

石田尚志さん帰京ー夏の戻り(13)

石田尚志さん、由維子さん夫妻午後帰京する。熱い6日間だった。昨夜は藤谷康
晴さんと4人で飲む。藤谷さんは5月のライブドローイングの作品写真を石田さん
に差し上げていた。石田さんはその感想や提言を語る。月1回のペースでドローイ
ング発表を続けている藤谷さんにとって石田さんとの出会いは様々な影響を感受
している要素が多々ありふたりの近似点と相違点が話しながら交錯していくのが
分かる。次へと繋がる出会いである。翌日の今朝開廊まもなく南聡さんご夫妻が
来る。昨日石田さんの事を連絡したので会いに来たのだ。あいにく石田夫妻はま
だ来ていない。夕方の便で東京に帰るのでお昼には一回顔を出す筈なので会場
の作品を見て頂いた後奥で旧作を見て貰う。「フーガの技法」に始まり世田谷美
術館の回廊の展示作品まで1時間以上足止めをしてお話しをする。最後の作品
の映像が流れる頃石田さん夫妻到着。最後に会えてよかったとほっとする。わざ
わざ訪ねて頂いた南先生ご夫妻に石田さんも喜んで話が20年近くも跳び和や
かな空気が漂う。不思議な縁だ。南先生の奥様は声楽家でもあり来週から東京
で公演と言う。20代の頃椅子の映像を使って音と映像の実験映画をした事があ
ると南先生が思い出したようにぽつりと言い出す。石田さんの「椅子とスクリーン」
の作品を見て昔の記憶を触発されたようだった。いつか南作品と石田さんの共演
もどこかにちらりと頭に浮かんだ。昨夜の藤谷さんとの会話では再来年の冬ふた
りの雪の中でのドローイング合戦が試みとして話された。路上ならぬ雪上ライブ
ドローイングである。スノーリパブリック。固めた雪の壁に映像を流す。その前で
ふたりがドローイングを試みる。音楽は南先生作曲の現代音楽とイメージが膨ら
む。まあ今の所は話ではあるが真冬に石田さんが来た事はないので藤谷さんと
の出会いもありライブドローイングの場としての冬、雪は面白いかも知れない。吹
雪のカーテンに映像もいい。南ご夫妻、石田ご夫妻が程なく順番にここを去り作
品だけが9月9日まで残る。後片付けの細かな打ち合わせを終え石田さんのさっ
ぽろの夏は終った。今年は11月に京都個展、来年はカナダ滞在と言う。カナダ
で作った作品持ってまた来ますと手を振る石田さんと昼下がりのギヤラリーの
外で別れた。

*石田尚志展-9月9日(日)まで。月曜休廊。am11時ーpm7時。
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致sand which」-10月2日(火)-12日(
 金)
*柏倉一統展ー10月16日(火)-21日(日)
*石田善彦追悼展ー23日(火)-28日(日)
*谷口顕一郎展ー11月3日(土)-18日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2007-08-31 16:03 | Comments(0)
2007年 08月 30日

揺れて溢れるー夏の戻り(12)

会場に石田尚志さんがライブドローイングで描いた板が2枚揺れている。下には
木肌に墨の、上にはロープで吊られた白い地に青のペンキの、2枚である。9尺
に1寸1分の板だ。揺れながら溢れた1日前の時間を伝えている。壁には新作「
海の時間」がエンドレスで流れている。2階の上部には鳥の目線、風の眼線のよ
うな映像が絶え間なくこれもエンドレスで疾走している。奥のカフエスペースには
旧作の「フーガの技法」や「部屋/形態」等がDVDで放映されている。ここにい
れば石田尚志のすべてが体感できるのだ。今日1日いて明日には東京へ帰るの
だが展覧会は9月9日まで続く。昨日は小金湯のアイヌ文化資料館に行き留守
だったが今日は奥さんとふたり朝から会場に来る。話していて不思議な偶然に
出会う。村岸宏昭さんの音楽の恩師南聡先生と石田さんはお父さんの関係で
知り合いだったのだ。石田さんのお父上は音楽批評をしていらした方でその関係
で小さい頃から南先生をよく知っていたのだった。一柳慧さんとともによく卓球を
して遊んだそうだ。え~!っということになりすぐ南さんに電話する。昨日夜村岸
さんの追悼実行委員会の集まりでお会いしたばかりだったが場所はここでなか
ったのでまだ石田さんの作品を南さんは見ていない。その後寺山修司の話にな
り優れた寺山論として田中綾さんのワイルドサイド論を教えると田中綾さんの事
も顔は知らないが文名は知っていると言う。へえ~これも偶然といか必然という
か面白かった。皆さんそうそうたる実力をお持ちなので顔は知らなくとも名前で通
るのだなあ。揺れて溢れる。石田尚志の作品のようにここでも時間と空間が揺れ
て溢れている。小1時間くらい話は跳んでわあ~っと過ぎて行った。この空気、こ
れが石田さんとのいつもの時間である。オープニングの対話の時に出来なかった
時間が今日は復活していた。九州阿部守さんからフライヤーが届く。お香典と一
緒で恐縮する。届いたフライヤ-は50部、すべてに通し番号が打ってあり銅版
画が刷られている。一枚一枚がオリジナルである。「石狩河口安易に係われず今
回もリサーチと位置付けます。・・・長く関わることで見えて来るものを信じようと思
います。・・・アプローチの一歩です。」と手紙には書かれてあった。東京も九州も
熱い。気温ではない。心がである。揺れて溢れるさっぽろ。濃い夏の戻り。

*石田尚志展ー9月9日(日)まで。am11時ーpm7時。月曜休廊
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
 :阿部守ー1954年東京生まれ。1980年東京芸大大学院修了。シカゴ、オッ
  クスフォード客員教授。個展ー福岡市美術館(’02、’04)。ロンドン、アイル
  ランド、シカゴ、ドイツ、スウエーデン、オランダ、バングラデイッシュ等。
  テンポラリースペースは1992年、2006年、今年と3回目。

  テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
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by kakiten | 2007-08-30 14:26 | Comments(0)
2007年 08月 29日

石田尚志展オープニングー夏の戻り(11)

石田尚志さんのオープニングは北大院生美学専攻の成田尚吾さんと私と石田さ
んの3人のトークと石田さんのパフォーマンスで始まる予定だった。トークが先か
パフォーマンスが先かは直前まで決めていなかった。人が集まり出し午後7時を
過ぎ会場に入ると正面映像の前にいつの間にかロープで両端を吊った長さ2m7
0cm、幅33cmの板が床から高さ30cmの所でブランコのように揺れていた。吹
き抜けの梁に綱を通していたのである。この板は2階のベンチに使っていた物で
ある。2枚あって1枚は白く塗られもう1枚は木肌のままであった。昼頃パフォー
マンスのドローイングに使うと聞いてはいたがブランコになるとは思ってもいなか
った。ゆるく揺らせながら最初は木肌のほうに墨を垂らしてドローイングが始まる
。墨の上からさらに半紙を重ねる。背後には「フーガの技法」の映像がセットされ
バッハの曲が流れている。その音に合わせるように体と手が揺れドローイングが
為されていく。やがて曲の終わりとともに1枚目の板が完成した。少しの休憩の後
2枚目の板がセットされる。これは表面が白く塗られている。その上に青いペンキ
でドローイングが始まる。石田さんの特色である渦巻き状の曲線が次々と描かれ
ていく。ブランコの板は時に激しく左右に揺れゆるく揺れる。その揺れが筆と重な
り絶妙のリズムを生む。こうして2枚の作品が完成した。背後の壁に映された映像
とともに作家の絶妙な動きが会場を圧していた。その後成田さんが司会をする形
でトークが進められる。成田さんは事前に作家に聞きたい事を箇条書き的に整理
していたようで今眼の前で行われた作家の行為から話を組み立てていく柔軟性が
ない。学生らしく生真面目に作家への質問が続きそれはそれでいいのだがこの場
で今行われた事への共感や感動といった作品論の視点が失われていた。どうして
私と知り合ったかとか以前の展示がどうとか言う前に今、たった今作家が創造した
時間と作品のこの場の意味を自身が現場から発する事を失念している。人が大勢
いて狭い限界ある空間で長板をブランコにしてドローイングしていくという石田さん
の優れた柔軟性に比して頭が固いのだ。途中から私はそこにいる意味を無くし1観
客の姿勢に切り換えた。フレキシビリテイーは年齢ではない。精神の問題だ。トー
ク終了後G美術館のIさんがその点をきつく指摘してマシンガンのように成田さんに
語りかけていた。札幌市文化財課に勤めるKさんが地ビールを差し入れてくれる。
なにはともあれ天才石田尚志の片鱗がキラリと光ったオープニングであった。同席
した藤谷康晴さん、木村環さんはともに作家として大いに刺激を受けたようである。
東京から才能豊かな作家が来ると、はべって寄り添うようなテナント文化人ぽい人
間も中にはいて一喝してみたが気分は良くならなかった。金と権力に寄り添うホスト
文化人とブランドに寄り添うテナント文化人は札幌の何処にでも出没してブローカー
やデベロッパ-の役割を産業経済構造そのままに文化をブンカに解体してしまうの
だ。歴史も文化もないサッポロですがあなた方は違うって顔して擦り寄るのだ。てめ
えは一体何処で生きているんだと言いたい。そんなにサッポロ嫌なら奄美か沖縄か
ドイツか何処でも行きやがれ。そこでもまたここは貧しくてあっちがいいみたいにお
べんちゃらの相手探してブンカのホストかテナント探しにうつつを抜かすのがこうい
う輩のおちなのだ。

*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)am11時ーpm7時
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致 sand which」-10月2日(火)-12日
 (金)
*柏倉一統展ー10月16日(火)-21日(日)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)
*谷口顕一郎展ー11月3日(土)-18日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
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by kakiten | 2007-08-29 12:49 | Comments(2)
2007年 08月 28日

眼を澄ますー夏の戻り(10)

耳を澄ますという。呼吸を深く吸込み静かに吐き止める。耳だけに神経を集中す
る。同じようにして眼を澄ます。石田尚志の最新の映像はそういう経験を与えて
くれる。2台のプロジェクターから2階吹き抜けと1階正面とに映像が絶え間なく流
れている。床に敷かれた紙にどんどんドローイングされた墨の線。それが波のよう
に風の眼線で増幅していく。飛んでいる低い鳥の眼。あるいは風そのものの眼。
絶え間なく渚の上を疾走る。会場は黒いカーテンで遮蔽され電球の僅かな光と
映像の点滅だけの世界となった。人は眼だけになる。抽象的な線のドローイング
が生物のように自在に動いている。そのフットワークは軽やかで風なのだ。「海の
映画」と題された1階正面に映し出される作品では室内の壁に描かれた青が溢れ
実際の波とシンクロナイズされ流れだす。溢れる、飛ぶが主題のように壁が消え
波が立ち上がり倒れこむ。めくるように次の波の映像が方形の枠の中から顕わ
れてまた倒れこむ。まだすべてを見ている訳ではないので昨夜までの会場のワ
ンシーンを記しているに過ぎない。目が慣れてくると壁にドローイングの絵が飾ら
れているのに気付く。これもまだ展示途中である。初日の朝、石田さん来廊前の
記載なので今日1日これから会場が完成していくだろう。今晩のライブパフォー
マンスまで、空間はまだ90パーセントの内にある。

*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)am11時ーpm7時
 :28日午後7時~石田尚志ライブパフォーマンスandトーク。
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by kakiten | 2007-08-28 10:32 | Comments(0)
2007年 08月 27日

佐々木恒雄展最終日・石田尚志来廊ー夏の戻り(9)

夕方近く東京から映像作家の石田尚志さん来る。初めて足を踏み入れるここの
空間である。眼がすでに自分の空間をなぞっている。”いい空間ですね”と言う。
吉増剛造さん、小山内裕二さん、祢津さんと既に情報としてはそれぞれから聞い
ているのだがやはり実際に見た感じは別であると言う。佐々木さん最終日で人が
次々と訪れて2階吹き抜けのベンチに座ったり回廊を歩いたりと上も下も人が鈴
なりである。午後7時の閉廊後撤去に入るのでそれまで食事をしてこようという事
で例によって何時もの焼き鳥やに向かう。手伝いに来てくれた道教育大の学生ふ
たりも一緒に誘う。ひとりはなんと昨年の村岸宏昭展で岩見沢から来てゆっくりと
見てくれた人だった。お忘れでしょうけれどと切り出されて思い出したのだ。故人の
話から始まり石田さんのカナダの話と話題が飛び交い時間が過ぎた。頃合いをみ
て会場に戻ると作品撤収も最後の段階になっていて5,6人の友人が残り手伝っ
ていた。最後まで佐々木恒雄さんはいい友人に囲まれている。一週間全力疾走で
したと心地よい疲れを顔に滲ませながら佐々木さんが言う。作品も思ったより多く
売れかつ網走から札幌に来た時間のすべてが刻まれた200点近い作品を全部
展示できた事の満足感がそこには漂っている。会期中ずーっと流れていた友人と
の会話録音。この音こそが彼の耕したさっぽろの土、時間そのものであったのだろ
う。その耕された時間の耕土のなかから作品という実りがあったのだ。彼もまた耕
作者のひとりである。既成の場に甘んずる事なく場そのものから空間を造っていく
。村岸さんをはじめ若い彼らの真摯な場と空間に向き合う姿勢に深く共通するコン
テンポラリーな意思に私は心強い友情を感じていたのだ。礼儀正しく時間延長のお
礼の気持ちですと挨拶され何もそんなと照れながらも姿勢を正して受け止めてい
る自分がいた。今日は昼から石田さんの会場造りが始まる。映像の作家だけに光
の遮断と展示のバランスに神経を使う。1日はかかりそうだ。下手すると翌日まで
続きそうと言う。ここでも1から場を造っていく耕作者の時間がまず始まるのだ。

*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)am11時ーpm7時:オープニング
 =石田尚志トークとパフォーマンスと新作上映。28日午後7時スタート。
  略歴ー1972年東京生まれ。現代美術(映像)作家。抽象的な線を描きそれら
  をコマ撮りしてつなげるドローイング・アニメーシヨンで知られる。代表作に「部
  屋/形態」(’99)「フーガの技法」(’01)「vol2 絵馬・絵巻」(’03)など。
  香港国際映画祭、トロント国際映画最、ウオーカー・アート・センター(アメリカ)
  などの美術館、国内では世田谷美術館(’03)横浜美術館、横須賀美術館(’
  07)などがある。さっぽろではテンポラリースペースで3回目。
  「実験映画の一角を既に占められていて、独自の世界を築き上げたあなたは
   なお飛躍して最先端のパイオニアになって欲しい。」(草間彌生ー美術家)
  詩人吉増剛造、チェンバリスト中野振一郎などとのジャンルを越えたライブ
  セッシヨンにも積極的に関り領域を自在に横断しながらの表現活動を展開中。
  平成19年度五島記念文化賞美術新人賞。

   テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
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by kakiten | 2007-08-27 12:55 | Comments(0)
2007年 08月 26日

湿度高く・・・-夏の戻り(8)

来年のトップを飾る森満喜子さんが来る。後藤和子さんの個展の折見えてここで
自らも個展をする事を決断した小樽の人である。後藤さんとは対照的に青ではな
く暖色の太陽系の色彩の人と感じている。でも大体冬に展覧会をする事が多いと
言う。後藤さんは夏に鮮烈な青を展示し森さんは冬にきっと鮮烈な赤か黄を展示
するのだろう。それぞれが好む色彩と対峙するような季節を選ぶところが面白い。
会場予約の話をしていると斎藤周さんが来る。ゆっくりと佐々木展を見ていく。森
さんが帰り、斎藤さんも厚田のアートキヤンプに向かうと帰る。まもなく後藤和子
さんが来る。7月個展時の写真ファイルと作品を頂く。ゆっくりお礼をと思うが北大
院生の成田尚吾さんが来て来札する石田尚志さんの次回の展示とトークの打ち
合わせでそちらに気を取られて失礼した。成田さんはこのところ村岸展、Psalm
の野幌案内と立て続けにこの場と関りが増え水戸芸術館まで来た時の勢いが少
し鈍っている。何かちょうど転機だろうかこのところ彼のブログも一頃の生彩がな
い。はっきり言葉にならない篭った口調でなにかこちらの出方を窺って話すように
感じる。優秀な人だけに早く転機を乗り越えて欲しいと思う。四捨五入すれば来札
する石田尚志さんと同じ世代である。石田さんの熱い行動力とさっぽろへの思い
に比して透明感がないのだ。夭折のように早死にした村岸さんもその短い22年の
生涯の晩年1年から半年は濃かったと思う。その一番濃い時間を彼の個展という
形で1ヶ月近くともに呼吸したのだ。短い生涯ゆえに時間が濃くかつ透明なのだ。
彼が多彩に活動していた事も事実だが本当は最後の1年から半年に凝縮してい
たのだと思う。優れた人生にはその透明な凝縮力がある。長生きとか短い生とか
には関係ないのだ。22歳という若さと劇的な遭難死という状況的なドラマ性に眼
を奪われ彼が最後の一番凝縮した半年を均して見る人が多い。私は一緒にその
半年を一番身近に過ごしたひとりとしてその事実を誇りにも喜びにも思っている。
石田尚志さんがたった1度のその出会いを胸に今日来札する。海外も含め公的
スペースでの発表が多い石田さんがこんな辺鄙な私的ギヤラリーまで足を伸ば
すのは熱いさっぽろがあるからである。作家を刺激し鼓舞する何かが村岸さんを
初めとしてここできちっと生きている何かがあるからなのだ。胸に濁りの悩める20
代もいいけれど、いい濁り酒にはやはりどこか透明な味があるものだ。佐々木恒
雄さんも今日が最終日。昨日も人が渦巻いていた。闘う日常の透明な23歳であ
る。網走から出て札幌在住の立派な一区切りとなった個展である。若くいい友人
たちが今日もきっと溢れるだろう。
昨夜の琴似でのPsalmの演奏白熱したと聞く。迷いなく演奏に集中したなと直感
する。いいスタートになった事を感じる。このまま彼女たちはエネルーギー全開で
日本列島を縦断するだろう。天草の懐かしい不知火の海まで。

*佐々木恒雄展「crickers」-26日(日)午後7時まで。
*石田尚志展ー28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(火)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致 sand which」-10月2日(火)-12日
 (日)
*柏倉一統他展「10,8乗」ー10月16日(火)-21日(日)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)

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by kakiten | 2007-08-26 11:18 | Comments(0)
2007年 08月 25日

風立つ日ー夏の戻り(7)

Psalmの3人が挨拶に来てくれる。札幌琴似コンカリーニョで北海道最終公演の
前日である。テンポラリースペースでは演奏だけだったが琴似では映画「もんしえ
ん」も上映される。ニ風谷ー帯広ー夕張ー札幌。この間江別からモエレ沼ー石狩
と巡る時間もとっての今日であった。私は私のルートでご案内したかったのだが
残念ながら出来ず撮り溜めた写真を用意して彼女らに見せてあげた。ここでの
コンサートの打ち上げでは充分に話が出来ず種々の要因もあってぶっきらぼうに
接しいささか後悔していたのでわざわざ最後にまた尋ねて来てくれた事へのお詫
びと感謝の気持ちも多々あったのだ。タルコフスキーの映像にあるような高い壁
だけが残った夕張の廃墟。迎賓館鹿の谷倶楽部。その反対側の谷のランドフイル
(ゴミ処理場)。そして石狩河口のハマナスの野。夕陽。夕張から石狩への美しい
風景にピッタリと貼り付くように、実はランドフイルがある。その現代の腐海を同時
に見て欲しかった。本来の自然の風景と同時に産業遺構物の近代、ゴミ処理場の
現代が都市の高慢な蜃気楼の繁栄とともに時間の垂直抗のように在るのを見て
欲しかったのだ。天草の美しい不知火の海から始まる映画「もんしえん」の旅の
北からのスタートに相応しい出発点を基軸としてしっかりと設定しなければならな
い。航路の針路がふれないように羅針盤をここでセットする事が大事である。感受
性の優れた3人のナウシカは最後にその確認の為にわざわざ時間を割いて訪れ
てくれたのだと思う。25絃筝を自在に弾き鳴らす中川かりんさん。彼女の演奏は
それ自体が船であり飛翔する羽のようである。この飛行する音に乗って玉井夕海
さんの声が跳んでいくのだ。まるでナウシカとナウシカを乗せて飛ぶ飛行機のよう
に。マネージャー役に徹するいしまるあきこさんはその母船のようだ。この優れた
3人が全国を旅する2ヶ月のスタートに北を選んだ真の理由はこれからの旅の中
で何度も検証されていくだろう。その為に私が出来得る最善の事をしなければな
らない。”あンるる”という古いアイヌ語から始まった旅である。かりんさんから彼女
の音のような自由で奔放で素直な線の絵を貰った。この絵をバックにソロを聞きた
いと言うと先ず玉井夕海さんが大賛成をして盛り上がった。この3人はそれぞれが
ナウシカである。きっとこの旅の終わりにはそういうそれぞれの時間が拡がってい
くだろう。いつもの焼き鳥やで元気で暖かくキラキラした夜が続いた。佐々木恒
雄さんもすっかりびっくりで、パワーですねと今朝呟いていた。

*佐々木恒雄展「crickers」-26日(日)まで。am11時ーpm7時
*石田尚志展ー28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致 sand which」-10月2日(火)-12日
 (金)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)

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by kakiten | 2007-08-25 13:42 | Comments(0)
2007年 08月 24日

人途切れずー夏の戻り(6)

2階でブログを打っていると下で声がした。開廊と同時に人が来て作家は連日で
疲れたのか昼過ぎても顔を出さない。何人かが見ていったが待ち草臥れて帰っ
た後だった。私を呼ぶ声がする。降りていくと何年ぶりだろうか今は仙台に住む
美術家の椎名勇仁さんだった。ハワイのキラウエア火山で作品焼成を試みるパ
フォーマンスの映像とその焼成した作品を展示した個展を札幌在住時代にテン
ポラリーでしている。溶岩の流れる間際まで行き粘土の作品をマグマの熱で焼く
という危険なぎりぎりの行為を伴なうアブナイ作業である。そして危ない作家でも
ある。最初の出会いもアブナイ場面で始まった。私は当時円山北町で花器店も
していて多忙だった。そこへ椎名さんがふらりと来て机で伝票の記載に忙殺され
ていた私の前に立ち展覧会をさせろというような事をぶっきらぼうに話しかけたの
だ。私もまたぶっきらぼうに今仕事で忙しいので何とかと言った。その態度が勘
に触ったのか”お前だけが忙しいんでないんだよ”とか言って殺気立つのが机の
急ぎの伝票をつけながら感じていた。くるなと思う間もなく鉄拳が飛んできた。私
は感で咄嗟に身をかわし反動でひっくり返った。6月に亡くなった女房が声をあげ
たまたま居た友人が椎名さんの背後から羽交い絞めにする。それが最初の出会
いだった。多分自尊心強くぎりぎりの危ない精神のままギヤラリーのお願いに来
るという状況で彼の誇り高い自尊心を私は傷つけたのだろう。ただ私は感じるもの
があった。真っ直ぐ向かってきた事にである。そのまま帰って悪口を言って周るよ
り彼の純粋なストレートさを感じていたのである。翌日菓子折りを持ってお詫びに
訪れてくれた時はもうわだかまりは何もなく個展の日程を話しあっていた。あの時
奥さんの声が一番響きましたよ。あれで行動が鈍ってしまったと椎名さんが思い
出すように言った。もう5,6年も前の話だが晩年疎遠だった妻に何か供養ができ
たようでその一言に感謝した。椎名さんと一緒に来た長崎県でギヤラリーを立ち
上げている鈴木順子さんは作家でもあり自らそのギヤラリーでビデオとインスタ
レーシヨンの個展を終えたたばかりと言う。大学は山形でかって帯広のデメーテ
ルのアートイヴェントで来道したと言う。茨城出身で現在は長崎と穏やかな顔をし
ているが行動的な女性である。作家を続けつつ有田焼の古い工房をギヤラリー
にして場の創出にもかかわるという彼女もまた耕作者としての同時代意識を保っ
ている人と思う。長崎まで行ってしまうアクテイブな精神に感心する。今回はプラハ
プロジェクトの大橋さんの呼掛けで石狩望来浜でのアートキヤンプに参加する為
札幌に来たと言う。そんなふたりと昼から飲みだした。心地よい風が吹き、佐々木
さんの日常の音が流れ何か傍で人がいて屈託なく話をしているようで楽だった。そ
の内に佐々木さんも来て話が弾む。さらに切れ目なく人が入る。会場の梯子を使
い裏から階段で下りてくるので我々の話している場所も通り道となる。多い時は20
人位の人がたむろしてぞろぞろ会場を周遊していた。それが閉廊の時間まで続い
た。椎名さんたちは結局最後までいてほろ酔いのまま帰った。佐々木さんと話す時
間もない、人途切れずの1日だった。

*佐々木恒雄展「crickers」-26日(日)まで。am11時ーpm7時。
*石田尚志展ー28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致 sand which」-10月2日(火)-12日
 (金)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)

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by kakiten | 2007-08-24 12:17 | Comments(0)
2007年 08月 23日

23歳の日常ー夏の戻り(5)

佐々木恒雄の個展会場にはいつも会話が流れている。車の中、部屋での会話、
歩きながらのやりとり、街の音と共に録音された日常が屈託のない話し声として
会場空間に音の縁取りをしている。作品数は200余点。ここ何ヶ月かの友人との
会話がその中をとりとめもなく流れていく。交差点の信号音や宣伝の声、救急車
のサイレンの響き。そんな街の音をバックにして会話が続いていく。どこかで誰も
が何気なく喋っている本当にどこでもあるような話題。なにかふっと自分もその会
話のなかにいたような気さえする。都会の一人暮らし。気ままな友人との会話。こ
こにはきっと網走から出て来た23歳の青年の屈託のない自由な時間が息づい
ている。都会で仕事をしている時の時間ではない。ひとりの気ままな会話の時。そ
の音の縁取りのなかを描き溜めた作品群がゆったりとたむろしている。展示という
ある種の非日常性を彼は可能な限り排し作品展示の空間に自らの日常を再生し
ようとしている。今回の展示の隠されたもうひとつのテーマはこの日常性の回復、
再生にある。普段何気なく過ぎ去っていく時間。しかしその掛替えのない日常。自
分がいちばん自分らしく他者と触れている時間。そしてそこから生まれた遠い過
去、湧いて消え去る現在の時。それらを留める絵画という結晶の光。泉のように
過去から沁み出す時空。交叉する現在。まるごと今である事。作品だけに収斂さ
れず空気ごと今の自分を綿菓子のように差し出すこと。多少気張って言えば空間
ごと作品を見せる環境を創っているのだ。既成の非日常を前提とした空間処理を
嫌い自らの何の変哲もない日常空間を導入すること。それは一歩間違えば日常
に堕し、ベタベタの空間ともなる危険性をもつのだが決してそうはならないきりっと
した精神性がこの展示にはある。ではきりっとした精神性とは何か。それは日常そ
のものに甘えず、非日常そのものにも依存しない誠実で逞しい生活、生き方から
発しているものだ。それは見に来る人たちの質にも顕著で暖かく誠実なのである。
普段の仕事の無理のない延長で作品に接しその描かれた非日常にタッチしている
からだ。何時の頃からだろうか、美術は見る人間の日常性を否定するように特権
的に存在しようとしてきたのである。佐々木恒雄の展示世界にはその特権的時間
との対峙、否定が実はさり気なく演出されてあるのだ。場から作っていく事。彼も
また現代の耕作者のひとりである。私はその姿勢にコンテンポラリーな作家の同
時代な誠実さを見て共感を覚えるのだ。

*佐々木恒雄展「crickers」-26日(日)まで。am11時ーpm7時
*石田尚志展ー28日(火)ー9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致 sand which」-10月2日(火)-12日
 (日)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2007-08-23 12:09 | Comments(0)
2007年 08月 22日

佐々木恒雄展初日ー夏の戻り(4)

佐々木さんの作品を見て誰かが昭和を感じると言った。そう言われて見れば輪郭
の太い描線、茶褐色の色彩にふっと’60年代の「平凡パンチ」の表紙とかを思い
出させるものがある。網走から札幌へ出てすぐに勤めた会社がデザインの仕事で
そこでチラシやらフライヤーやら様々なポップなデザイン技術を叩き込まれたと言
う。そうした商業デザインの世界の底流に’60年代の主流が骨格のように流れて
いてそこを彼は吸収していったのかも知れない。オホーツクの流氷漂う海の明確
な輪郭の風土とどこか惹きあうものがあるのだろう。1984年生れの佐々木さん
がまだこの世に存在しない時代の’60年代を潜ませている事に文化の普遍性を
思った。夕刻初日なのでふたりで外に机と椅子を出し涼みながらビールを飲もう
と提案する。じゃあビールを買ってくると彼が近くのコンビニに出かけている時電話
が鳴り帯広の梅田正則さんと伽井丹弥さんが今札幌なのでこれから行って良い
かと告げる。待つこと暫しふたりが来て4人で飲みだした。初対面の佐々木さんを
紹介し今帯広美術館で「十勝の新時代X」で個展をしている梅田さんのカタログを
頂き話が弾む。十勝と網走なにか全然風土の違うふたりの話が面白かった。初日
午前中から佐々木さんの職場関係の人たちが”お~ぉ佐々木頑張ってるなあ”と
いう感じで訪れ作品をゆったりと見てくれ買い上げてくれたりして佐々木さんの人
柄だなあと感心した。今朝は近代美術館のK氏が別の用事で訪れしっかり評価
してくれた。こうしていい感じで既知、未知の人たちが佐々木さんの作品に触れて
いく。作品世界を通して新たな出会いが生まれていく。毎日がひょっこりオープニ
ングですよと言うと嬉しそうに笑っていた。昨夜は展示に徹夜した佐々木さんが眼
をもうトロ~ンとしてきたので午後11時頃お開きとなった。例によって近くの焼き鳥
屋でたくさん食べ飲んだ。帯広のふたりが気を利かせて奢ってくれる。感謝です。

*佐々木恒雄展「crickers」-26日(日)まで。am11時ーpm7時。
*石田尚志展ー28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利長史・河合利昭展「産土不一致 sand which」ー10月2日(火)-12日
 (日)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)
  テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
  tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2007-08-22 12:26 | Comments(2)