テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ

<   2007年 07月 ( 29 )   > この月の画像一覧


2007年 07月 31日

姫たちの夏ー夏の旗(51)

さすがに疲れたのかここ1ヶ月休まなかったので昨日1日ぼんやりTVと昼寝して
過ごす。参院選挙の報道を見ていた。どこも同じような顔の候補者が出て勝った
負けたの経緯を報じている。姫と呼ばれる女性候補の話題が多い。変わり目の激
変期の予兆のように女性が出てくる。ワイルドサイド。秩序の乱れる時自然に女性
性の世界が現出する。<女性性は社会性と対抗する概念なので、どんな社会に
も帰属しえない、要するにwild sideの性質をもつ。>(「where?-wild side
への帰還の問題」-田中綾)。引っ越して住民票を届けなければ投票用紙の交
付も無いその事にすら無関心でいた人間が突如として社会意識に目覚め人に
社会の改革やら何やらを訴え立候補する。それをまた人数稼ぎの思惑で応援し
推薦する。志も何もあったもんではない。皮肉な事にそんな候補が当選し仕事人
らしいいかにもベテランそうな人間が落選している。東京の姫の候補者の話である
。この女性候補は不在者投票にマスコミを引き連れ堂々と投票所に向かいそこで
拒否され初めて気付くのだ。そしてそれからの言い訳が母親をひとりで仕送りし生
活を支えたとか同じ姫議員の先輩の間違いは誰にでもあるという慰めに涙すると
かこれら理不尽な情の論理でとにかくも自らの過ちを乗り切ってしまうのだ。これ
も女性の論理である。一方虎退治とかいって凛々しくも居あい抜きで縫い包みの
虎を一刀両断して切り捨ててしまう寸劇の通りこちらもベテランの仕事師の政治
家に勝った姫候補もいた。これも女性ならではの凛々しさである。こちらの姫はむ
しろ王子に近い。宝塚のショーのようである。女性は凛々しく、ワイルドサイドに主
役となっていく。男は益々女々しく女の腐ったようになる。志の乏しい時代なのだ。
そしてこの女性のワイルドサイドな混沌と無秩序こそが正当な時代の荒地である
事から眼を背けてはいけないと思う。虚しい能書きを垂れるのを聞くよりも余程こ
ちらの方がスリリングなのだ。だからといってホスト紛いになろうとは思わない。
where?とワンカップ一杯の海を見詰めて自問する。

*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 am11時ーpm7時:1~6日展示準備で休廊(会場造りをしています。)
 :併催遺作コンサート10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り西6)
 :追悼ライブ6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)
  7日(火)午後7時~於カフエエスキス(北1西23)
*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~予約2500円
 当日3000円
*Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円
*佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)-26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「散土不一致ーsand which」10月1日(火)ー12日(
  金)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)
 
   テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
   tel/fax011-737-5503 Email:temporary@marble.ocn.ne.jp
[PR]

by kakiten | 2007-07-31 12:52 | Comments(0)
2007年 07月 29日

荒ぶる弁天の夜ー夏の旗(50)

最初は2階の吹き抜けの梁に蹲りやがて徐々に動き出した。昨夜の栄田佳子
さんのパフォーマンスである。下では福井岳郎さんが小さく音を叩いている。や
がて梁を駆け回る栄田さんの動きが段々と激しくなりそれとともに音もまた大き
くなってきた。私は昨年この家をみんなで改造していた時の石膏ボードと土壁の
間に挟まれて死んでいた大きな白い鼠を思い出していた。福鼠、大黒鼠という名
で呼ばれるあの七福神の大黒様の担ぐ大きな袋に乗っている鼠である。その鼠
のように栄田さんが梁を走り回る。樫見菜々子さんの展示の時使われた白い梯
子を伝ってやがて栄田さんが下に降りてきた。会場に立てかけられた作品を手
にとり自由に動かし踊りながら移動する。作品の位置構成が栄田さんの動きとと
もにどんどん変化していく。このパフォーマンスとともに岳郎さんの楽器は次々と
変りケーナ、太鼓と数種類の楽器が繰り出される。踊りのような動きは益々激しさ
を増しとうとう作品の縁を音に合わせて叩き出した。白い鼠はもういつかしら優雅
な弁天さまのようになって手と足の動きが軽やかに速度を増している。1時間近く
も踊ったろうか。作品は床にバラバラに散乱し磨かれた銅版の鏡のように光った
1枚だけが元の位置に在った。銅版画というかちっとした硬い質感と腐蝕による
版の上での侵食がさらにこのパフォーマンスによって秩序の破壊と混乱の修羅
場のように会場に放り出されたのだ。生身の人間の行為が舞踏という形で。ある
優雅さのうちに秩序と反対の渦中へと導き、ワイルドゾーンが出現する。弁天さ
まのような優雅な動きが実は会場のこの2週間かけて醸成してきたある秩序のよ
うな固まりを破壊し、混乱と無秩序を創りだしたのである。これはもう優れて女性
にしかできない行為である。この時点で楽器を演奏する岳郎さんもひたすら栄田
さんの動きを撮影していた石川さんも七福神のひとりとなって会場はその船のよ
うになっていた。私はあの白い大きな福鼠、大黒鼠が活き活きと再生し再びかっ
ての土壁の間を走り回っているような幻想に陥っていた。新建材や石膏ボードと
いう近代の毒に立ち竦み悶絶死したであろうかっての家の主の復活、再生の時
間が彼女の踊りにはあったように思える。そしてまた石川亨信さんのある破壊へ
の願望、ひとつの殻からの脱却がそのまま栄田さんの行為によって実現されたか
に思えるのだ。<卵の中の格闘>はここでもまた形を変えてあった。今週嵯峨、
酒井、栄田と3っのSによる作品と音、行為のコラボレーシヨンによって石川さんの
潜在的なある破壊、その否定的媒介の願いは最後に優れて女性であることのワイ
ルドな行為によって完遂されたかに見える。石川亨信という作家がこの会場を選び
ここで展示する行為の内に密かに時限爆弾のように仕掛けていたのはこの破壊し
再生するという願望ではなかったろうか。展示自体のインスタレーシヨン性にもそ
の意思が読み取れるのである。陽光の燦々と入光する時間への拘り。壁に初めか
ら固定しない床に直に置く展示形態。それらはすべて場の可変性に賭ける作家の
想いの顕われであったろう。場に不確定な要素を多く設定しその偶然の可変性に
作品を委ねる。その願いは最後に白い鼠の弁天さまによって完遂されたのだった


*石川亨信展「each pulse,each tempo」-29日まで。
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 :1~6日会場展示準備で休廊。
 併催:遺作コンサート10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り西6)
 追悼ライブ6日(月)午後7時~於ライブハウス[LOG」(北14西3):7日(火)午
 後7時~於カフエエスキス(北1西23)
[PR]

by kakiten | 2007-07-29 12:01 | Comments(0)
2007年 07月 28日

雨そして曇天ー夏の旗(49)

昨日ここへ来る前にコンチネンタルギヤラリーの下沢敏也・川上力三・阿部典英
展を見て来た。川上さんは花器店時代に京焼き花器としてよく扱っていた作家で
あった。今回下沢さんの紹介でさっぽろは初の展示である。いけばなの花器とは
違って造形の作品が主で最近の黒泥のものと旧作の花器でよくみた肌合いのも
のと両方展示されていた。どちらかというとストイックな下沢、川上に対し阿部さ
んの派手さが目立つ作品と3人で展示した事はバランス的には会場構成上良か
ったのかも知れない。個別の作品では下沢さんの野幌の土を使った作品がよか
った。裸になったなあと感じた。この次はソロで見たいと思う。テンポラリーに着い
てまもなくモエレ沼公園の帰りという下沢、川上両氏がここを訪ねてくれる。私が
いた時はモエレ沼公園に行っていたと言う。川上さんとは初対面で花器制作時
代の話とか最近の滋賀県陶芸の森の鳥居を模したモニユメントの話とかをする
。共通の京都の知り合いとかもいてあまり初対面という感じはしなかったようだ
。三岸美術館にお勤めのAさんが来る。1992年の戸谷成雄展を見たと言う。し
ばしその頃の資料を見せて喜ばれる。同じ美術館のいる穂積利明さんの事を
聞く。辛口の批評を書き信頼できる美術評論家である。まだゆっくりとお会いした
事はないが最近体調がよくないと聞いていた。夕刻3度目の写真撮影に前澤良
彰さんが来る。陽光が作品に斜めに差し込むショットを撮る為今回が3度目の
挑戦なのだ。撮影に時間がかかりそうなので留守を頼みちょうど来ていた酒井
さんの車で時計台ギヤラリーの菱川和子展へと向かう。車が渋滞して着いた時
はもうシャッターが下りていた。女房の位牌を頼みに仏壇屋さんに寄ってさらに
時間がとられた。なかなか纏めて時間が取れず一度に用事を済まそうとすると
無理がある。今日は久し振りに雨。自転車を置いて歩く。途中土砂降りでズボン
が濡れる。ここへ着く頃止む。今夜は福井岳郎さんと栄田佳子さんのライブがあ
る。石川亨信展最後のイヴェント。岳郎さんのチャランゴとケーナそして唄。演劇
の栄田さんがそれにどう絡むのだろう、作品空間の変容が楽しみである。

*石川亨信展「each pulse、each tempo」-29日(日)pm7時まで。
 :福井岳郎ライブwith栄田佳子ー28日午後6時~投げ銭公演
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 1~6日展示準備で休廊
 :併催8月10日(金)遺作コンサート午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り
  西6):8月6日(月)追悼ライブ午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)
  7日(火)午後7時~於カフエエスキス(北1西23)
*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~予約2500円
  当日3000円
*Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円
*佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)ー26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)-30日(日)

 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
 tel/fax011-737-5503
[PR]

by kakiten | 2007-07-28 11:49 | Comments(0)
2007年 07月 27日

卵を割ろうとする格闘ー夏の旗(48)

道教育大の南聡さんが北海道新聞7月25日夕刊コラムに村岸宏昭さんの事を
「卵の中の格闘」と題して書いている。来月の1周忌を目途に村岸宏昭の記録展
を実現するべく今年1月から毎月月例会を開いてきたがそのリーダー的存在で
故人の音楽上の恩師として会議を主導してくれた方である。遺された楽譜を手が
かりに遺作として再生し公開録音の形で8月10日ザ・ルーテルホールで演奏さ
れCD化する予定なのだ。<その楽譜は作曲者の生前に一度も実際の音楽とし
て鳴ったことがない。今、遺作の初演という任がある。・・どこまで作曲者の創造
的意志を正確に掴むことができるのであろうか?>22歳で急死した<作曲を志
していた札幌の若い友人>の為に南さんが心魂傾けて音を再生しようとしている
。楽譜には死者という遠い他者との架橋がある。そして師の立場でありながらも
南さんは故人を<札幌の若い友人>と呼んでいる。師弟を超えて音楽を通して
繋がった深い信頼関係があるからだ。<彼の仕事は、ほとんどこの二,三年のう
ちの出来事であり、楽譜に関しては、まさに時を疾走していった姿がある。楽譜に
はまだ、彼が求めたい音と得た技術とが作る断層による、勝手いかぬもどかしさ
がみてとれる。>求めようとした音と技術の断層、それは今生と死の断層そのも
ののようにあり、残された人間と死者の断層でもある。その断層を超えて何故人
は何事かをしようとするのか。それは死者が生きて志した事への共感と友情に
拠るものだ。南さんが故人を敢えて<札幌の若い友人>とよぶ根拠はその音楽
への眼差しの共有にこそあるのだと思う。<それゆえのためらいを感じながら、
卵を割ろうと格闘する卵の中のヒナの様なそれらを、村岸宏昭の音として耳で確
かめたいと思った。>遺された楽譜、遺された文章、遺された美術の行為、それ
らを我々もまた眼で耳で生と死の殻を割ろうと格闘している。それは昨日書いた
イベントの役割担当などとは一線を画すものだ。故人が何をしようとしたかを問う
ことは畢竟自らの生の現場を問うことなのだ。そして南さんの<ためらいを感じ
ながら>という言葉の保つ死者への敬意の奥床しさを非常に美しいものとして感
受しつつも、私たちもまた死者とともに今眼と耳を通した再生を確かめようと格闘
しているのだ。卵を割ろうとする格闘はもう、ひとり村岸宏昭だけのものではない。

*石川亨信展「each pulse、each tempo」-29日(日)まで。
 :28日(土)午後6時~福井岳郎ライブwith栄田佳子
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 :1~6日展示準備で休廊
 :併催遺作コンサートー10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り西
  6):追悼ライブ6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3) 7日(
  火)午後7時~於カフエエスキス(北1西23)
[PR]

by kakiten | 2007-07-27 12:29 | Comments(0)
2007年 07月 26日

森のように泉のようにー夏の旗(47)

森のように泉のように深い蓄積があること。グリーンという名の緑や排水路のよう
な川、即絨毯のように敷かれ、即流れることなく磨かれる時間を保つ世界であ
ること。それはなにも自然だけに求める事ではない。人間の社会もまたそうある
のが本当である。即入店し即出店する。出入りが均等なスペースという空間から
真の街は生まれない。出入り口という均等な穴がぽっかり口をあけ地下にも地上
にも同じ顔が並ぶ。本当の入り口がない。新鮮な世界の転換がない。出店経済
の産業構造はグローバリゼーシヨンという魔物となって街を侵食しその侵食を発
展と錯覚し新しい進歩と錯覚させている。いつの頃からかどこも同じ駅前風景が
拡がり回転寿司みたいなエスカレーターとエレベーターが支配する地に足の無い
街になってきた。この政治経済産業構造に対峙すべき文化構造すら出店文化ー
テナント文化に侵食されている。東京、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ベルリンその
他諸々。確かにこれらの都市には吸引力がある。行くのはいい。でも肝心の自分
の場はどこにある?行きっ放しで戻れずに未練たらしく帰っても帰りきれず自らが
その都市のテナントみたいになってそこを売り物にしている。かっての洋行帰りが
海外に行ったことのみを売り物にしてアメションなどと揶揄された本質は今も大し
て変らない。このテナント文化にもうひとつ加わってきたのがホスト文化である。
資本という金満に纏わりつく公的私的文化である。まるでススキノのお祭りみたい
に盛り上げて文化ミーハーをかき集めイヴェントと称する。カリスマなんとかに群
がる美容室みたいな美を履き違えた美のコンテストごっこから何が生まれるのか
。結果は知れている。土に風に空気に沁み込む事の静かな確実にして深い時間
をどこやらの名水やどこやらの空気の缶詰で代替し自ら生きる場の退廃に対峙
しない輩に何が出来得るのか。答えは知れているのだ。昨年11月に催されたそ
の手のカタログ冊子が贈られてきた。そしてなんと協力者実行委員の名簿にイベ
ント担当として村岸宏昭さんの名が掲載されている。6、7月個展の準備と作品作
成でびっしりと時間を費やし8月旅先の四国で事故死した彼が何故イベント担当
なのだ。そんな時間も暇も無かった筈である。彼の遺されたブログを読んでもそ
の記述は出てこない。死という額縁を特権化し死者の個としての志をまるで無視
してお飾りのように載せる鈍感さこそ”イベント”と化した”担当”という名称なのだ。
ひとりの人間の個としての深い時間をないがしろにして安直な名称を冠らせるな
と言いたい。

*石川亨信展「each pulse,each tempo」ー29日(日)まで。
 :28日(土)午後6時~福井岳郎ライブwith栄田佳子(劇団千年王国)
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 1~6日は展示作業で休廊
 併催:遺作コンサート10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り西6)
 :追悼ライブ6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)
  7日(火)午後7時~カフエエスキス(北1西23)
*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~
  予約2500円当日3000円
*Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円
*佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)-26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」9月25日(火)-30日(日)

  テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
  tel/fax011-737-5503
[PR]

by kakiten | 2007-07-26 14:31 | Comments(1)
2007年 07月 25日

馬頭琴と喉笛ー夏の旗(46)

昨夜は嵯峨治彦さんの馬頭琴と喉笛の演奏があった。夕闇が迫りつつあるなか
頃合いを計るように沈黙が続き演奏が静かに始まる。嵯峨さんはフアンが多い
のだろう、会場に着いてすぐ”サガチャン、サガチャン”と気安く呼ぶ甲高い声の
女性が二人連れで来て何かうんざりしていたのだ。彼女たちは別に演奏を聞く
為に来たのではなくたまたま嵯峨さんを見かけてついて来たらしく演奏開始時に
はもう居なかった。演奏が始まり深く濃く目を瞑っているとモンゴルの風と渺々と
広がる青い草原のゲルの中にいるようだった。1時間余りを吹き抜けの上に下の
床に腰を下ろした人たちがゆらゆらと体で音を受け止めながら彼の音を抱くように
聞いていた。楽器と人間の喉それ以外の増幅装置は何も無くそれだけで充分空
間は満たされていた。終演後帰り際の立ち話で嵯峨さんが”前のスペースも音が
よく響いたけどここもいいですね”と言った。パオかゲルで聞くようなものでやはり
ホールやコンサート会場でなくこういう形が一番自然ですよね、と言ったら頷いて
くれた。伽藍にある仏像彫刻をガラス張りのケースに入れ美術館の照明の下で
みるある種の異和感と同じで夕闇の薄明のなか車座でみんなが囲むようにして
楽器そのものから発する音色と喉から発する声を聞くのが一番自然なのだ。石
川さんの沈んだ色彩の銅版画が音を通してある広がりを保って存在したかのよ
うである。馬頭琴の音と嵯峨さんの喉声と夕暮れの光とが作品の色彩を刻々と
変化させ色と音と声が黄昏の道行きを果たしていたのだ。小細工のいらない時間
だった。またひとつこの空間が深さを保ったような気がする。今夜は酒井博史さん
が唄う。昔石川さんがお盆の読経に酒井家を訪ねひねた小僧の印象だった酒井
さんが今回どんな印象を与えるのか、初めて彼の唄声を聞く石川さんの反応が
楽しみである。

*石川亨信展「each pulse、each tempo」-29日(日)まで。
 :25日午後7時~酒井博史ライブ
 :28日午後6時~福井岳郎ライブ・栄田佳子共演
  (投げ銭による公演です)
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)ー12日(日)
 :1-6日は展示作業で休廊
 :併催ー遺作コンサート8月10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り
  西6)追悼ライブ8月6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)
  7日(火)午後7時~於カフエエスキス(北1西23)
*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~
  予約2500円当日3000円
*Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円
*佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)-26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
 tel/fax011-737-5503 

 
[PR]

by kakiten | 2007-07-25 11:29 | Comments(0)
2007年 07月 24日

いろいろ重なる日ー夏の旗(45)

旧どらーるの坂本公雄さんとお互いヤモメ同士の話やら西高校、早稲田大学の
昔話をして妙に盛り上がった。奥さんの坂本順子さんは美術家でかって前のス
ペースに最初の頃よく来ていてそれと坂本氏が旦那だということはしばらく一致
しなかった時期があった。そんな事も時間の経過とともに消えて昨日は純粋に
旧友として話していた。傍で聞いていた石川さんが後でなにかふたりとも高校生
みたいな顔していたよと笑って言った。坂本さんが帰った後道新のHさんの村岸
追悼展の取材がある。音楽の南聡先生はじめお母さんの村岸玲子さんと数人が
集まる。遺作コンサートの細かな段取りについてルーテルホール側と打ち合わせ
た結果を基に報告がある。合間を縫って取材の写真撮影がある。その間劇団千
年王国の栄田佳子さんのパフォーマンスが石川さんの個展会場で始まり低い小
さな声で打ち合わせが進む。新聞社の取材とイヴェントが重なってしまったのだ。
しかし特に支障も無く同時に進んだ。ただ結局私は栄田さんのパフォーマンスは
見れずに終る。終了後石川さんと栄田さんの顔を見てその満ち足りた表情に安
心する。喉笛・馬頭琴の嵯峨治彦さんも会場にいて今日の演奏の下見もしたよう
だ。久し振りなので挨拶し等々力さんのことなど尋ねる。みんなが帰った後石川、
栄田さんと近くの焼き鳥やに行く。会期が始まって初めて石川さんと飲む。10年
来の付き合いという栄田さんに石川さんが自分の個展会場を提供しほんとに好き
なように彼女に演じさせたのだ。石川亨信39歳、何かが始まっている。何かを託
そうとしている。何かを任せようとしている。9月初の海外個展に向けて今肩の力
を抜き身軽になろうとしている。そんな風に私は感じていた。ニューヨークよりも
今この時間がとても大きいと思っていた。今週土曜日に福井岳郎さんと栄田さん
のコラボレーシヨンが予定されていて再び栄田さんの出番がある。石川さんの
期待と気持ちが詰まっているのだ。そんな話しをしていいお酒だった。今日が本
当のオープニングだねと石川さんの顔を見て言ったら彼は顔をくしゃくしゃにして
笑った。今夜は奢ります、オープニングですから・・と言う。ふたりと別れ自転車を
走らせ帰った。夜風が酔った頬に心地よかった。

*石川亨信展「each pulse、each tempo」-29日(日)まで。
 :24日(火)午後6時~嵯峨治彦ライブ・喉笛、馬頭琴
 :25日(水)午後7時~酒井博史ライブ(急遽決定。酒井家は石川さんの檀家)
 :28日(土)午後6時~福井岳郎・栄田佳子ライブ
 (すべて投げ銭興行です)
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 :8月1日~6日展示作業で休廊
 :併催10日(金)午後6時~遺作コンサート於ザ・ルーテルホール(大通り西6)
 :6日(月)午後7時~追悼ライブ於ライブハウス「LOG」(北14西3)
 :7日(火)午後7時~追悼ライブ於カフエエスキス(北1西23)

  テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
  tel/fax011-737-5503
[PR]

by kakiten | 2007-07-24 12:07 | Comments(0)
2007年 07月 23日

らイさツの打楽ー夏の旗(44)

石塚俊明のドラムソロ「風の闇ーらイさツの打楽」を流す。なにかこの曲が一番
会場に合うようだ。頭脳警察のドラマーとして通称トシと呼ばれ日本ロックシーン
の草分け的存在であった石塚俊明さんのさっぽろで録音したソロのCDである。
1992年2月26日にヤマハのスタジオで午後1時から10時間かけて録音された
。私と学研グリム社の賀村順治今は滋賀県にいる桑名正和の3人で企画し実行
した。前の年秋に大野一雄の石狩河口公演「石狩・道行き・大野一雄」を終えた
ばかりでもありその舞台となった石狩河口近くの来札(らイさツ)の地名をタイトル
につけたのも懐かしい思い出である。トシはその映像を賀村宅で見て涙を浮かべ
て”すっごいなあ”と呟いていたのが今も鮮明に思い出す。石狩弁天町の僧侶で
もある石川さんの個展にぴったりかなあと思い流してみたのだ。「む」に始まり「
輪楽Ⅱ」で終る8楽章からなるこの曲はトシのソロ演奏としては白眉でこれ以上
はないと某東京の音楽プロデューサーが言ったと聞いた。全集を出す時は別巻
で収録したいと云う。市街地に埋もれた暗渠の川、界(さかい)川を舞台に繰り広
げたアートイヴェント’89界川游行インさっぽろで試み再度実行され成功したの
がこの一枚のCDである。短歌絶叫の福島泰樹のバックでドラムを叩き友川かず
きの唄と共演しとソロの演奏の機会が少なかったトシを是非ソロでとろうというの
が我々のその時の希いだったのだ。装丁デザインは今イタリアのヴェネツイアビ
エンナーレ日本館代表で出品している岡部昌生の手によるものだ。知津狩浜近
くの牛馬頭観音の石碑から音一文字を擦りだし(フロッタージュ)したものをデザ
インしている。夕陽の純粋赤が光三原則で翳が緑に見えそのイメージで音の文
字が緑と赤に浮き上がっている。優れて美しい出来だった。ヒロシマの社会的意
味に重きを置く今の仕事の事はさて置きこの頃の彼はまだ別のフットワークが健
在だった気がする。岡部にとって今さっぽろとは、石狩とは、何なんなのだろう?
今は昔の話である。午後元ギヤラリーどらあるの坂本公雄さん来る。石川さん
の宗派の檀家と言う。奥さんの坂本順子さんの葬儀を勤めたのが石川さんと聞
き吃驚。そのうち石川さんも来て話が弾んだ。縁とは不思議なものである。


*石川亨信展「each pulse,each tempo」-29日(日)まで。
 23日(月)午後6時~栄田佳子(劇団千年王国)パフォーマンス
 24日(火)午後6時~嵯峨治彦(喉笛・馬頭琴)ライブ
 28日(土)午後6時~福井岳郎(チャランゴ。ケーナ)with栄田佳子
 以上投げ銭ライブ
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
 tel/fax011-737-5503
[PR]

by kakiten | 2007-07-23 13:54 | Comments(0)
2007年 07月 22日

曇天・北18条ー夏の旗(43)

蒸し暑く風もない日。昨夜からやたら喉に乾きを覚え冷たいものを飲み食べて胃
をこわす。冷やしうどんに掻き氷アイスバーに牛乳。暖めたものが何もない。そし
て今朝は集中力に欠ける。洗いもの、洗濯とドジばかりで水びたし。夜は村岸さん
の撮影した写真を整理している夢を見ていた。人、木、川と項目別に分離していた
。昨日お母さんが届けてくれた写真だった。一枚々めくるのと一度にみれるのと、
夢の中で分けていた。いや、あれは夢の中ではなく寝ながら考えていたのかも知
れない。佐々木恒雄さんが来る。8月個展のフライヤーが出来る。「crickers」一
緒にきた彼女の提案と言う。最初の仮題「2」よりいいねと話す。よりアクテイブで
踏み込みがある。彼女は舞踏をしているという。2より身体性がどうりであると思っ
たと言うと笑っていた。それから大野一雄の話やらして話しが弾んだ。村岸さんの
展覧会のフライヤーも佐々木さんのデザインによるものである。網走出身でネット
カフエで働きやがてまたニューヨークでの個展を目指している彼には骨の太さが
ある。ホームページに見る作品群にもその骨太さが見て取れる。期待の新人と私
は思っているのだ。ふたりと話していて昨日からのもやもやした疲れが少し飛んだ
。日が射し風が少し出てくる。明日は休廊せず劇団千年王国の栄田佳子さんのパ
フォーマンスと夕刻村岸宏昭の記録展の取材がある。疲れが少し溜まっているか
なあ。

 =8、9月予定=

*石川亨信展「each pulse、each tempo」-29日(日)まで。am11時ーpm
 7時:23日(月)午後6時~栄田佳子パフォーマンス:24日(火)午後6時~嵯峨
 治彦馬頭琴・喉笛・28日(土)午後6時~福井岳郎・栄田佳子投げ銭ライブ
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 併催:遺作コンサート8月10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り西
 6):追悼ライブ8月6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)7日
 (火)午後7時~於カフェエスキス(北1西23)
*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~
 予約2500円当日 3000円
*Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円
*佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)-26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)-30日(日)
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8
 tel/fax011ー737-5503
[PR]

by kakiten | 2007-07-22 12:59 | Comments(0)
2007年 07月 21日

曇天・南平岸ー夏の旗(42)

曇天、風の平岸の丘。繰り上げ49日の法要でひとり、お坊さんを迎える。風強く
蝋燭が灯らない。念入りな読経の後初盆の日程打ち合わせして別れる。急にア
イス珈琲が飲みたくなり墓地を出て喫茶店を探しながら歩く。石山軟石の林檎倉
庫を改造した沢田珈琲店を思い出して一駅歩いた。お袋が入院していた幌南病
院の傍にあった。平成10年の秋の頃病院にいった帰りよく寄ったのだ。昨年の
お盆にはひとりお参りして平岸霊園から円山表参道まで暑い中歩いた。その日
村岸さんが四国の川で遭難死してみんな大騒ぎしてテンポラリーに集まってい
た。何も知らず精進川沿いの川の道を歩いていた。後でその歩いた道は村岸さ
ん、野上さん、酒井さんと3人で秋歩く予定の道だったと聞いた。今日は地下を
電車で北18条駅に向かう。追悼の丘から世界はどんどん生者の盛んな世界へ
と近づく。薄野ー大通りー札幌駅。地下を走りながら空気の違いを感じていた。
お坊さんを迎える為早めに墓地にいたので墓地にいた時間が長かった性もある。
死者の丘から生者の街へ空気の波長が違う。遠い時間初めての葬式、焼き場は
平岸霊園だった。祖父と父の時だ。婚約した彼女の急逝した時も平岸だった。焼
き場の高い煙突から煙が昇った。焼いている時間。待っている時間。丘の上にさ
らに高く煙突が聳えていた。今その焼き場は無くプールになっている。墓地だけが
残り地名も平岸霊園から南平岸となった。でも丘の静かな時間とそこから下る街
への道程の過程は変らない。空に上る煙もなくそれを見上げる時間も消失したけ
れど丘の死者の静けさは変らない。さっぽろ嵐が丘。私はヒースクリーフにはなれ
ない。何故か不意にそんな思いが突き上げてくる。

*石川亨信展「each pulse、each tempo」-29日(日)まで。am11時ーpm
 7時。
*村岸宏昭展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)1~6日展示作
 業中。併催:遺作コンサート10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通西
 6)追悼ライブ6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)7日午後7
 時~於カフェエスキス(北1西23)
*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~
  予約2500円当日 3000円
*Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円
*佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)-26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)-30日(日)
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8
 tel/fax011-737-5503
[PR]

by kakiten | 2007-07-21 15:12 | Comments(0)