中岡りえ展初日8ミリフイルムによる上映会がある。
中岡さんが日頃持ち歩いている、スーパーシングルエイトという8ミリ撮影機で撮
った作品である。扇千景の”誰にでも写せます”というTVコマーシャルで有名だ
ったので、ある程度の年齢の人は記憶にある機械と思う。
リールを回す映写機なので、カタカタというフイルム音に時間の保水力を感じる。
今のデジタル全盛の風潮に比し、この手間隙かかる手造り音が新鮮だ。
冒頭に4年前札幌で一回だけ会った村岸さんの話を中岡さんがした。
そして、彼女の故郷高知の自宅の傍を流れる川、鏡川で村岸さんが遭難死した
事に触れ、今住んでいるニューヨークと札幌から高知へ向かった時の映像を最後
に上映したいと話す。
8ミリフイルムの上映は無音で映像だけなのだが、この高知への上映の時だけ、
村岸さんの遺作演奏「銭函ー星置」を流して欲しいと言う。
映像作品自体は、中岡さんの目線で風景を切り取るノン編集の、万華鏡のような
作品だが、海辺を歩きその波音をバックに即興で演奏している村岸さんのギター
の音色が、私には切なかった。
そして、聞きながら今まで脈絡なくあった事実が、今ひとつに繋がってくる事に気
付いたのだ。
村岸さんの今や唯一の肉親お兄さんの史隆さんは、ニューヨーク在住である。
さっぽろー高知ーニューヨーク。この3っの都市が、ここでひとつに繋がるのだ。
人の関係とは何なのだろうか。
中岡さんの個展初日、この場に刻まれた記憶が時空を超えるように集っている。
フイルムのカタカタ、カタカタという音が縫うように流れ、その音に巻きつくように
ギターの音色が鳴って、光の交錯する四角いスクリーンが時空の万華鏡のように
揺れていた。
4年前中岡さんは村岸さんに、自分の映像にあわせて即興演奏を頼んだという。
それはその時実現しなかったが、今その記憶が復活し実現している。
人と場が重なり幾つも重なりながら、そっと開いていた。
死者もまた参加するアフンルパルな夜だった。
*中岡りえ展「DNA DIARY 1902-2008」-10月23日(木)-29日(水)
am11時ーpm7時(月曜休廊)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
tel/fax011-737-5503