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テンポラリー通信

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2008年 07月 21日

<立>と<大>-夏の年(sak-pa)(43)

酒井博史さんが、石の印材に<立>と<大>の字を彫る。
私が道立と道大の話を、昨日ブログに書いたのを知り、彫ることにしたと言う。
大地の上に人間が立つ、その形象文字が<立>つ、である。
大地が足下から消えて、<大>の字になる。その過程が、幾つも印影となって
壁に捺印されて貼られた。<立>が足元の一を喪って、<大>の字になり、最
後には転がるように、床近く下の壁に貼られる。彫ることも含めて、展示もひとつ
のインスタレーシヨンになっていた。午後過ぎから小樽の森さんご夫婦と息子の
維吹くんも見えて、段々人が集まりだした。注文の印鑑を石材に彫り、合間を見
て、立と大の字を彫り込み、その試しに捺印した紙が次々に壁に貼られる。
注文を受けた判の試しに捺印された紙も同様である。夕方には壁一面が、捺印
された朱色の判の字で埋まった。印鑑用の漢字は、原形となった象形文字に近
いので、非常にヴィジュアルである。小さな認めのような印鑑も、柔らかな和紙に
印字されると朱肉の赤が、字の保つ形象をより引き立てるのだ。音が基本の文字
と違って、物の形を象徴的に記号化していく過程がよく解るのである。
最後に11月2人展の中嶋幸治、國枝絵美さんも来て、ふたりのなにやら呪文のよ
うなカタカナ6文字の注文を仕上げて、酒井さんのてん刻ライブは終了した。
森維吹くんとも久し振りに友情を確かめ合うようにじゃれて遊んだが、その姿に中嶋
さんが、彼が噂の子供かと笑顔で眺めていた。
閉廊後酒井さんと平岸のかりん舎に向かう。村岸宏昭さん作品集の打ち合わせを
兼ねて、夕食に誘われていたのだ。
初めてお訪ねする坪井圭子さん、高橋淑子さんの拠点かりん舎である。
壁や棚を埋め尽くすような本・資料の数々。その奥に大きな机があり、美味しそうな
料理がこれまた机を埋め尽くすようにあった。
挨拶もそこそこにすぐ食事となる。野菜の量の多さ、煮付けの沁みこんだ味、分厚
いトンカツと、私の眼は食欲となる。満腹となって初めて大きな猫のいる事に気付く
。猫と本と食事。かりん舎の印象はこの3っに尽きる。そして、それらを支えるふたり
の出版への熱い志(こころざし)である。
今日午後、久野志乃展搬入・展示始まる。
こうして展示を手伝いながら作品が並ぶと、配置の決まる度に、ひとりの人間の今
が否応無く存在し、悩み、見詰め、立っている姿が感受される。
その立つ位置、立つの下の一が、時代と個との関わりにおいて在ることに気付く。
いい個展、作家にとって、大切な個展となるだろう。
決して大の字には、安住はしていない。立っているよ、久野志乃さん。

*久野志乃展「物語の終わりに、」-7月22日(火)-8月3日(日)
 am11時ーpm7時・月曜定休・休廊

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-07-21 14:30 | Comments(0)


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