昨日歯医者に行った話を書いたら、すぐ電話がきた。N君からで、”僕も奥歯が
痛んでその歯医者さん教えて欲しい”という事だった。N君の家から遠くもないの
で、詳しく場所を教える。ブログに打ち込んですぐだったので、少し吃驚だ。
佐佐木方斎展の期間中は、やはりどこか気が張っていたのだろう、終ると溜まっ
ているものがあった。佐佐木さんの白く塗り込められた油絵の内に蠢いていた何
かのように、篭るものがあったのかもしれない。ただ佐佐木さん本人は、到って躁
状態だったから、充分に解放されたと思う。それはそれでいいのだが、私には口惜
しい想いが残っていた。口惜しいというか、腹立たしいというか、無視された怒りの
ような、内に、くぐもるものである。忘却に素早く、新奇にも素早い現在とは、なんな
のだ、という思いである。この薄型ヘッド野郎と、どこかで、ごろつく自分がいたのだ
。展覧会の挾間で、その澱のようなものが溜まっている。
’80年代の熱い「精神のラインダンス」(菱川善夫)は、’90年代の拡散とともに、
パブリックワークのブラックホールに呑み込まれ、佐佐木方斎なぞ見向きもしない
のだ。世間一般との公共ラインダンスにうつつを抜かし、時の保水力を喪った現在
を思うのだ。公共美術(パブリックアート)だの、出張滞在(レジデンス)だの、うわっ
らだけの流行概念を追いかけ、笑顔でエルメス、そんな事はアルマーニみたいな、
ヒステリー起こしてバーバリー状態になる。もう書いているだけで疲れる。
’80年代の遺産を食い潰し、美味しいとこ取りで現在もぬくぬくと世俗の誉に乗っか
って、道外、海外の作家招請の基礎を造り、かつ2ヵ月に一冊の時代を記録する雑
誌を編集発行し、作品集及びアートドキュメントの冊子を、きちっと発刊した同志の
復活に、今何故そっぽ向くのか?何故過去の人扱いをするのか?
表層の今に溺れて、今を砂のように蹴り続けるサラサラ頭に本当の蹴りを、と思う
のだ。挾間の日の疲れは、時に澱のような怒りの不燃物となっていた。
どうりで、奥歯も痛むはずだぜ。
*小林麻美展「風景がわたしをみている気がする」-5月9日(金)-15日(木)
am11時ーpm7時
*岡和田直人展ー5月21日(水)-30日(金)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目北大斜め通り西向
tel/fax011-737-5503