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テンポラリー通信

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2008年 04月 11日

遠く近い声ーランドとしての石狩(18)

ほぼ2階の「な・ン・の」ルーム片付く。本が減っているのに改めて気付く。
床に積んであった時に見えなかったものが、棚に背表紙を見せて並ぶと分かる
のだ。昨年I書房に随分引き取ってもらったから、当然なのだが、こうして一目で
見えるようになると、あれもない、これもないと惜しい気持ちが沸き起こる。
本棚に並び、すっと手を伸ばし必要な時に見る。物として積んである時は、本が
本ではなくなっているのだ。そんな本への虐殺行為を、いつのまにか強いていた
自分を振り返る時だ。想いとは別に、現実の結果がこんな形で現れる。
九州の阿部守さんより電話が来る。今開催中の高臣大介さんとの初のコラボレ
ーシヨン展の話。鉄とガラスのそれぞれの作品に、お互いが手を加えていく。
ガラスに溶鉄を巻き付けると、ガラスが溶けたり割れたりして苦労しましたと、
阿部さんが言う。鉄にガラスを巻き付ける方が、まだ楽だったようだ。
ただふたりが並列して作品を展示するのではなく、本当にがっぷり四つに組んで
ひとつの作品に仕上げていった訳で、見応えある展覧会になっているようだ。
今度はさっぽろでやろうとふたりで話したという。
土から採取した素材を熱で流動化し、形にしていく。その過程はガラスも鉄も同じ
ような工程を辿っていく。その過程でのコラボレーシヨンである。透明な結果と硬く
不透明な結果の両極端の性質を持ったふたつの物質が、創り手の意識において
共有しつつぶつかるのだ。そのコンセプトを、さっぽろではきちっと提案したく思う。
隼人系の風貌を持つ高臣さんが九州に行き、北への憧憬をもつ九州の阿部さん
が石狩に来る。このこと自体がもう、何かが始まっている証である。
秋の個展とは別に、その前に石狩を訪ねたいと阿部さんが言う。そして大野一雄・
吉増剛造展は、凄いなあと評価してくれる。異分野の両巨人を石狩で括れるのは、
今テンポラリースペースしかないですよとも言う。単純に嬉しかった。
見る事から遠い人が、近くに感じてくれる。その心の回路が嬉しい。
ハンブルグの幹さんから、うれしそうなメールが届く。今、ケンちゃんと彩さんと一
緒という。原稿待ってますということだ。
書棚が整って、遠く、近い声が届き始める。本にも、にっこり笑っている奴がいる。
やあひさしぶり、ちゃんと読んで下さいよ、もう一度ね、と語っているようだった。

by kakiten | 2008-04-11 12:31 | Comments(0)


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