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テンポラリー通信

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2008年 04月 10日

ごまスティックの差し入れーランドとしての石狩(17)

過日レトロスペースの館長で、坂ビスケットの坂敬さんから差し入れがあった。
「ごまスティックビスケット」1ボールである。ちょうど個展を終えたMさんがご挨拶
に立寄り、坂さんから私にと託されたのだ。前のスペースを閉じた時、その事を伝
える新聞を見て、わざわざ訪ねて来てくれたのが、初対面だった。それ以来心に
留めて頂き、こうして差し入れも何度か戴いている。懐かしいA字ビスケットやごま
スティックもさることながら、あの独特の雰囲気のレトロスペースは、坂さん個人の
反骨精神を充分に表わしている。かって普通に身近にあった物、かって流行して
いた物。特別に高価なものではなく、手の届く範囲の物たち。蚊帳や湯たんぽ、蚊
取り線香や花札。怪しげな雑誌や活字。それらありとあらゆる生活道具嗜好品の
数々が、所狭しと積むように展示されている。ショーヒンが、即ショーモーヒンモー
ドに切り換えられる、現代の物流回路に対峙する心なくして、この展示品の集積は
ない。いわゆるマニアックな骨董蒐集とは、一線を画している。何気なく在り、何気
なく消え去っていく、何の変哲もない時間を形容としてを、坂さんは留めようとして
いる。間断なく過去に繰り込まれていく現在という時間。その指の間の砂の零れる
ような時間を、”もの”として留めようとしているのだ。それが、レトロスペースである
。このスペースを支え続ける心・精神は、芸術家の視線と同質のものである。例え
ば谷口顕一郎さんが、路面の亀裂、壁の傷痕を凹みの作品に仕上げる視線と同
じように、見捨てられたもの、何の変哲もないものに<かたち>を見る眼線がある
。過去と現在の間(あいだ)に存在する境界(さかい)の形容(かたち)を、留めようと
する眼である。今と過去を分断しない精神である。フラットでライトな薄型の現在を
拒否する精神である。おニユーとオールドを回転ネズミのように繰り返す、駆け足
世界に対する拒否の意志表現なのだ。
頂いた「ごまスティック」をぽりぽり食べながら、2キロ近くものパックの山に感謝
する。原料の小麦粉も値上がりして大変だろうにと思いながら、食べ始めると止
らなくなった。

*常設展ー4月27日まで。:4月は予定作家の都合で常設展示に切り換えます。
*小林麻美展ー5月9日(金)-15日(木)
*岡和田直人展ー5月21日(水)-31日(土)
*斎藤周展ー6月7日(土)-22日)(日)
 以下久野志乃展・細井守展・森万喜子展・新明史子展と予定されています。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-04-10 13:34 | Comments(0)


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