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テンポラリー通信

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2007年 12月 15日

道具と機械ー視線と拠点(10)

自宅の前でマンシヨンの解体が進んでいる。巨大なアームが壁・柱を剥していく。
朝の徒歩コース界川遊歩道にある郵貯会館も解体が進んでいた。こちらはもっ
と巨大な建物なので広い廃墟のようである。工事の塀に遮断されわが愛しの山
奥三角が遮られ”マイラブ”と声をかけるタイミングがない。街路樹の友人は健在
で”わが友よ”と声をかける。毎朝目の前で進む解体を見ていて道具と機械の差
を思った。柄の長いスコップでぶんぶん雪を撥ねるのは腰にきたりと身体が繋が
っている。腕だけの力ではなく腰・足・肩と全身を使う。部分だけではない。しかし
巨大なアームの機械は操作である。腕力の増幅を機械で操作する。人間の腕の
部分の増幅である。五体の身体性はない。足の代わりの自転車も足の機能の増
幅ではあるが身体性を保つている。自動車はやはり操作である。道具と機械の差
はこの身体性の比重において決まる。人間は精神的動物であるから観念もまた
増幅する。五感の身体性を喪った部分の増幅が観念上でも起きる。作家が作品
を創るという事は個の五感五体の全力疾走の結果であるのだがその身体性を逸
脱して観念の増幅に陥る時量数の効果的結果に囚われる現象が起きる。現代文
明の部分的増幅志向に敗北した結果そうなる。早い話が職人さんが減り機械が
代行して量数の効率だけを上昇させているプロセスがそうだ。友人の活字印刷・印
鑑のS君の職業があがったりなのはコンピユーターの普及による結果である。この
機械は早くて手軽で大量に出来、安価である。しかしS君が手で彫る道具の味が
最近また見直されてもいる。活字も然りである。ここには人の身体性手が活きてい
るからだ。機械は結果を優先するからもたもたした人間の身体性などはできる限り
省略して効率を上げる。芸術をファインアートという。アートが技術・職人とすれば
そこを超えるような素晴らしさを称えて言ういわば神業のような賞讃の気持ちがファ
インという形容だと思う。機械力とは一線を画しているのだ。観念が身体性を喪失
して部分増幅に堕落する時量数の効率性が主体に代わる。結果優先の浅ましい
世界が広がる。閉じた立派な量数を目的とする箱に鎮座するような芸術が蔓延る。
量数の結果ばかりを求めて身体性が巨大アームのような部分増幅に侵略され創
造の軸心を喪う事に未自覚である。そこには道具と機械の落差と対峙するコンテ
ンポラリーな創造の基盤となる戦う文化の場は無い。五体五感の汗は手先の操作
に変わる。アートからファインへの虹は消える。
夕刻訃報が届く。菱川善夫先生が亡くなる。今朝5時頃という。’80年代共にいい
仕事をさせて頂いた。また以前の店舗でも深くお力添えを頂いた。現代短歌批評
の第一人者でもありその鋭い批評精神は分野を超え文化の基軸を撃つものだっ
た。ここへ引越してから多忙に紛れ一度はご挨拶に伺いたかった。無念である。

*福井優子キャンドル展「Cold Fire」-12月11日(火)-23日(日)月曜休廊
 am11時ーpm7時:16日午後3時~佐藤歌織ピアノ・オカリナコンサート入場料
 1000円:23日(日)午後7時~酒井博史ギター・唄ライブ入場料1000円
*木村環×藤谷康晴展「乱」-12月25日(火)-30日(日):木村環作品展・公開
  制作25-29日:藤谷康晴ライブドローイング30日午後5時~・木村環の作品
  に直接ドローイングするライブ。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-12-15 13:01 | Comments(0)


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