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テンポラリー通信

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2007年 11月 07日

ニユーヨークからの便りー冬の輪舞曲(11)

今日ニューヨークにいる中岡りえさんからハガキが届く。いつもの事だが細かな
文字でびっしりと書かれていて読みづらい。今回は昨日のイギリスから石田尚志
さんから来たメールが頭にあったので我慢して細かな字を読み解く。<ガガーリ
ン飛行士の「地球は青かった。ニコラスロエリッチの絵の青のように」・・・この青
を確かめに。Diabeaconの大きな工場あとを列車に乗ってたずね。Neue(ノイ
エ)Galerieにクリムトを・・。ブルックリンMuseにカビリアンをウイリアムバーグ
にと杉山留美子さんと足を運びました。>と書き出されていた。ちょうどニューヨ
ークで個展をしている杉山さんと会って旧交を暖め楽になった様子が窺われる
。ふたりが2週間ほどの間交わした会話。<経済と人種とヒンコンとニンタイと物
の見方とART・・・について。人種のルツボの中、それぞれの人種のかかえる問
題で唯一共通は?美術は美ではないということでしょうか。ARTはすべてをふく
んだ綜合哲学?>と書かれていた。浅学非才な私にはガガーリンの地球は青か
ったという有名な言葉は知っていたがその後のニコラスロエリッチの絵の青につ
いては知らなかったのでその後に続く探訪の記述はさっぱり分からないのである
。ただ中岡さんが経済的に厳しい生活をニューヨークでおくりながらひたすら美
術の仕事を続けている事は以前から知っている。その生活のなかで<美術は美
ではないということ>と語るその真摯さはやはり信頼するに足るものと私には思
えるのだ。<Artはすべてをふくんだ綜合哲学?>と問い掛ける時そこには生き
る事と分ち難く裏打ちされた彼女の美術への生活姿勢が見られるからである。
ニューヨークで経済と人種とヒンコンとニンタイと並列してArtが語られる事のリ
アルな位相を軽んずることはできない。美術を志す事がある特定の分野の問
題ではなく総合哲学?と自問する謂いがそこにはある。ニューヨークという人種
のルツボのなかでヒンコンとニンタイの渦中にありながら特権的な美術ではなく
そのヒンコンやニンタイと同列の位相でArtを綜合哲学?と自問する姿勢が生き
方として美しいのである。ここにも現代を生きる現場の同時代の呼吸がある。倶
知安の原発とともにあるニホンザリガニの自然。イギリスを日本の近代化の原
点という現場感覚。同じように日本の近代に深く影響したドイツ。そして近代の幕
開けと戦後の日本の価値意識を形成し続けているアメリカ。それぞれの現場か
ら作家の熱い同時代の呼吸が届いてくるようだ。

*谷口顕一郎展「ペインテイングによる」-11月3日(土)ー18日(日)
 am11時ーpm7時(月曜休廊)
*いずみなおこ展「森の記憶」-11月20日(火)-25日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-11-07 13:54 | Comments(0)


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