2007年 09月 22日
山内慶さんが昨日汗をかきながら段ボールひと箱石田善彦さんの訳本を持って 来る。札幌の出版社柏櫓舎さん所蔵の本である。来月23日から予定している一 周忌追悼展の展示の為のものである。早川書房、創元社、新潮社等からも好意 的に訳本の提供があり全訳本とまでいかなくとも8割位は集まりそうな観がある。 昨年10月自宅で孤独死した石田さんの業績をできるだけ正確に伝える展覧会で ありたい。ミステリーの翻訳が多いが晩年文庫化を切望していたのが草思社とい う出版社から発行されたバリー・ロペスの「極北の夢」という訳本である。この本は ミステリーものではなく北極の大地を動物、氷、エスキモーと重層的にとらえた学 術的にも優れた著書で二段組390頁の大冊である。石田さんはこの本をもっと多 くの人に読んで貰いたく講談社学術文庫か岩波文庫になる事を望んでいたのだ。 また柏櫓舎で出版されたデイヴィッド・ムラ著の「僕はアメリカ人のはずだった」も 二段組360頁の大冊でこれもミステリーではなくアメリカ三世の詩人ムラの優れ た日本滞在の小説である。生業としての翻訳の外に志しとしての仕事がありその 両方が翻訳家石田善彦の仕事である。青年期の音楽への深い傾倒もまた見逃 せない仕事であるがその「新譜ジャーナル」誌の創刊、ローリングストーンジャパ ン誌の創刊、「ヤングギター」誌の執筆等の資料は散逸して不明なのが残念であ る。私は生前石田さんからその資料を見せて頂きしばらく手元に預かっていたの だがお返ししてそのままになってしまった。かえすがえすも残念な事だった。どこ まで展覧会として彼の業績を示す事ができるか分からないがさっぽろに生まれさ っぽろに死んだ彼の全国区の業績を称え、記録してあげたいと思うのだ。円山北 町と北大界隈のふたつのテンポラリースペースをともに過ごした友人である彼の 晩年の孤独は何であったかを今ふっと噛み締めるように思う。あと2日となった阿 部守展を見に美術家の斎藤周さんが来る。こんな鉄の作品は見たことが無いと 言う。彼もまたゆっくりと撫でるようにして作品を見て色んな話をしていった。来し 方の事、今後の事、ある人と嬉しい出会いがあった事。眼は作品から離れず作 品以外の私的な事が口からは語られる。心が楽なのだ。そういう作品である。門 馬ギヤラリーの大井恵子さんが信楽焼の作家とともに来てくれる。大井さんの所 に1年間この作品を置けないかと話す。あの藻岩山の山麓に近い自然の中で呼 吸させて見たいと思っていたからだ。大井さんもこの作品は気に入ってくれたよう だった。阿部守さんがなんと言うか了解とれればさっぽろに1年間置きたいものだ 。閉廊時間近く彫刻家の岡部亮さんが来てくれる。昨夜電話したのだ。若い優れ た彫刻家である彼に是非見て欲しかったからだ。彼もまた丁寧に作品を見ている。 何度も触り継ぎ目も見ている。作家の眼線である。この熱心な眼が次なる岡部亮 展へと繋がればいいと思う。また近いうちにと言って帰ったのは珍しい事だった。 おみやげに頂いた札幌ぽっぽまんじゅは暖かかった。そう云えばお子さんもでき たてで麦という名を付けたそうだ。岡部家は名前一字が好きなのだろうか。卓・新・ 亮に続いている。ただ麦という名は土に近いなあ。 *阿部守展ー明日23日(日)まで。 *中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-25日(火)-30日(日) *毛利史長・河合利昭展「産土不一致sand which!?」-10月2日(火)ー 12日(金) *柏倉一統展ー10月16日(火)-21日(日) *石田善彦追悼展ー10月23日(日)-28日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2007-09-22 14:08
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