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テンポラリー通信

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2007年 08月 21日

現代の腐海ー夏の戻り(3)

ナウシカの旅がニ風谷から始まるのであればそれには夕張という現代の腐海を
見なければならない。地域ごと捨てられた鹿島、大夕張、千年町、錦町,栄町は
間もなく水の底に沈みダムとなる。そしてかって徒歩で越えた二股峠の札幌側の
源流域は美しい泉が消えランドフイル(最終ゴミ処理場)になってゴミが埋め尽く
す丘となった。この鹿の谷と呼ばれる地域の夕張側に今は鹿鳴館倶楽部と名付
けられた迎賓館が残っている。昭和天皇も泊まったという豪華な和洋折衷の邸宅
である。平成の現代はその反対側がゴミ処理場なのだ。昭和の時代の石炭産業
の華としてこの建物はありこのふたつが一番古い街道の二股峠を挟んで存在す
る事に極めてラデイカルな同時代の問題がある。これこそが現代の腐海である。
同時に谷の両側を見詰めなければいけない。またかって美しい泉があった今の
ランドフイルの場所は同時に下流の阿野呂川と名付けられた”あンルル”むこうは
海という意味のアイヌ語の古語が語る古代の海を連想させる源流域場所でもある
のだ。夕張が有数のアンモナイトの化石の産地である事からもその事は想定され
るのだ。石炭から石油への転換によって見捨てられた地域は巨大ダムとなり水に
沈む。古い峠、水の湧く源流域はゴミに沈む。これが現代の腐海である。ナウシカ
の旅は此処から始まり川を下り江別の石狩川との合流地点で再びゴミ処理場と出
会う。そして旧石狩川の痕跡に沿って進むと出会うモエレ沼もまたゴミ処理場の上
に建設された公園であるのだ。さらに石狩の河口まで行けばそこにある北石狩衛
生センターという名のランドフイルにまた出会うだろう。ここはかって美しいハマナス
(アイヌ語でまゥ=呼気、風)の原生林の丘だった所である。現代のナウシカの旅は
実はランドフイルの旅でもあるのだ。玉井夕海さんたちが南の美しい海天草の不知
火の海からスタートした時その海の対岸には水俣の海がピッタリと貼り付いていた
のである。ここにも現代の腐海がある。私はその事を彼女たちの旅の始まりに是非
見て意識して欲しかった。付け焼刃の中途半端な旅のスタートを切って欲しくはな
かった。今日から佐々木恒雄展始まる。今朝10時まで展示にかかる。旧作は2階
吹き抜け上部に新作は下に並ぶ。圧巻である。下からは梯子で上がるように設定
する。これから一週間じっくりと付き合う事となる。

*佐々木恒雄展「crickers」-26日(日)まで。am11時ーpm7時
*石田尚志展ー28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致ーsand which」-10月2日ー12日(金)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通入り口
  tel/fax011-737-5503
 

by kakiten | 2007-08-21 12:13 | Comments(0)


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