2007年 05月 16日
4月末に出版された早川禎治さんの「アイヌモシリ紀行」は松浦武四郎の「東西 蝦夷日誌」をベースに現在の道を歩いた記録である。150年近く前の北海道と 現在のそれと、武四郎の歩いた道と同じ道を2年ほどかけて実際に歩く、早川さ んならではの仕事だ。以前出版された「手稲山紀行ー傷ついた自然の側から」 は百名山ブームの最中北海道の百名山などという便乗本も出ている時期に一 名山百行とでも云うべき本で手稲山を1年間かけて徹底的に歩いた記された優 れて啓発に満ちた名著である。一つの山から見えてくるさっぽろの文化的位相は 恐ろしい程現代文明を撃つ位置を保つていた。私にとって座右の書のひとつであ る。その早川さんが満を持したように松浦武四郎の北海道を歩く。この本につい て簡単に論評をする事はしない。ゆっくり味わって噛み締めたい。そう思うのだ。 しかし今の時点で共感し本質的にインスパイヤーされた部分を取り出してみる。 その第一の部分はゴミの記述である。長万部までの海浜のゴミの量については 次のように記されている。「それは惨状といっていいとおもう。・・・全体がゴミ箱と いってもいいすぎでないとおもう。」さらに道路とその周辺では「36号線にかなう ものはない。・・・重大なのは自然を汚損してこれを自然破壊と考えない方であろ う。国道36号線はその点においてすでに絶望的である。」そして勇払川を渡りふ っと気付くのだ。安平川となっていて勇払川が消えている。「ここは勇払場所の 中心であったところである。たんに太平洋を前にするばかりでなく内陸の千歳越 えをへて石狩場所とを結ぶ要衝であったところである。それが見事に消えた。」 苫小牧東部工業地帯の国家プロジェクトによる消失なのだ。そしてその草茫々の 湿地帯で見慣れぬ奇妙な構造物に出会う。それは新型の火力発電所という。そこ には一つ500キロくらいの重さのポリ袋が30万個もある。新型の発電をうりものに 実態は産業廃棄物の処理場である事を早川さんは見抜くのだ。「発電所といえば どこでも簡単に認可がでる。・・そのあとで燃料は廃棄物を利用すると申請すれば このむずかしい問題も認可をださざるを得ない。・・。この経過を見れば本州で廃 棄物の処理に困り北海道を利用しようとした、ということだ。」江別ー勇払=イぷッ ーその入り口とアイヌ語で伝わった石狩と太平洋を結ぶ入口は正に近代ー現代の ゴミの内に消えようとしているのだ。かって最も人間の生活に貢献した大事な所、 河口や源流、海浜。それらが新たな交通手段や直線道路によって見捨てられ廃棄 物の巣となっている。その最も濃い場所のひとつが勇払原野である。夕張にも江別 にも石狩にも衛生センターの名でそれらはあるがこの勇払は沙流川ダムにも波及 していく。公共という名のパブリックワークは自然という本来の公共を官と公の下に 収奪と破壊を繰り返している。経済的にも社会的にもそして文化的にも北海道が草 苅場である現実はここにもはっきりと現れているのだ。私たちを取り巻く第一の現実 がこのゴミ処理場に象徴される明と暗の風景にある事は事実なのだ。REPUBLI Cと私は熱くその<RE>を思う。それが第一の闘いだと。 *樫見菜々子展「微風」ー5月29日(火)-6月3日(日)am11時ーpm7時 *有本ゆかり展ー6月5日(火)-10日(日)am11時ーpm7時 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り tel/fax011-737-5503 Email→temporary@marble・ocn・ne・jp
by kakiten
| 2007-05-16 14:12
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