2007年 05月 15日
7月初めに個展をする後藤和子さんのアトリエを訪ねる。前から庭のシラネアオイ が咲く頃にと約束していたのだ。その時一緒にいたYさんも同行する。午後1時の 約束だったので少し時間があり江別の駅前を散策する。以前小川智彦、薩川益 明さんと古石狩川探索で歩いた事がある。旧北陸銀行跡の建物、廊下のある屋 敷。煉瓦の3階建ての家。石山軟石の倉庫。古い商店街のアーケード。もう一度 見たかったのだ。石山軟石の倉庫は外輪船という名のフリースペースになって 健在だった。庭も導入路が整備され縁側のある屋敷とよく調和していた。旧北陸 銀行の建物は喫茶店になっていた。どちらも定休日で内部は見れなかったが再 生されて付近の界隈性を損なうことなく存在していた。またすぐ近くにシアターど もが移転してきてこの界隈は新たな江別を再生しつつあると思った。なにかほっと して後藤さん宅へ向かう。後藤さんの家は同じ江別でも新興住宅街の大麻にあり 駅前の古い江別とは違う街、札幌を主とする街である。JR江別の駅前は旧夕張 鉄道の終点、また外輪船の港口ー石狩川に面し独自の発達をした場所である。ア イヌ語のイプッーその入口を語源とし元々交通の要所であった所だ。大麻は札幌 に開かれたベットタウンの様相が濃く別の江別と思う。初めて駅前のレトロな空間 に触れたYさんは感慨深い面持ちだ。約束の時間に後藤さん宅に着く。GパンにT シャツの軽やかな服装で後藤さんが迎えてくれた。なにか札幌で会うより活き活き して見える。奥のアトリエに案内され珈琲を振舞われて7月展示予定の作品を床 にひろげて見せて頂く。北面、南面の壁に展示する大作だ。しばし圧倒される。こ れはもう森だ。そして2階吹き抜けに抜けるこれはもう少し小さなサイズの作品を 出してくれる。くれはもう梢なのだ。縦に垂直に上に向かう力強い線。根元に近い 幹から中間の勢いが梢にと繁っていくその濃い緑、濃い青。この作品がテンポラ リーを覆うときそこは深い森の中になるだろう。そんな予感がした。ひととおり見終 わってから心づくしの手づくりの昼食をご馳走になる。昼からビールを飲めと言う。 <ワンカップ酒一杯の海でしょう>と言う。ありゃあ~私のブログを読んでいる。車 運転のYさんの羨ましそうな目を意識しながら勧められるままに杯を重ねた。それ から庭に出て丹精こめた花々を見る。シラネアオイ、ヒトリシズカ、エンレイソウ、 サンカヨウと花の咲いている季節のもの、これから咲くものとたくさんの野や山の 花があった。私は大好きな今年初めて見るシラネアオイに触れしばし山奥の沢沿 いの斜面を想っていた。ひとつづつ説明する後藤さんの活き活きした表情を見て 7月の個展のエネルギーの原点を見た気がする。5月の共和国。彼女の開かれ た表現の共和国がこのお庭から始まっている。さっぽろの自然が一杯詰まった野 生の花々の庭から。お父さんが鉢植えで大切にしていた野生の花々を庭に直接 植えなおし大事に手入れをしていると言う。隣家の園芸用の花とは違う本来のさっ ぽろの郊外に咲く花々である。オオワバユリやヤマシャクヤクもあった。秋まで花 も実も楽しみなのだ。お父上が亡くなられてからその残された花々を受け継ぎ何か が後藤さんの中で変ったのかも知れない。それが作品に反映して彼女は蒼い深い 森を創る。そんな感想を持って夕刻の後藤邸を辞した。 *樫見菜々子展「微風」-5月29日(火)-6月3日(日)am11時ーpm7時 *有本ゆかり展ー6月5日(火)-10日(日)am11時ーpm7時 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2007-05-15 14:17
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Comments(3)
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ねむいヤナイ@北海道美術ネット
at 2007-05-15 21:58
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後藤さんは4年前にお会いしたとき、CGに夢中だというお話をされてましたが…。
ひさしぶりの個展、たのしみにしています。 それはそうと、 >大麻は近年開かれた 中森さん、「近年」って、そりゃ江別駅前よりは近年かもしれませんが…。 大麻団地は半世紀近くがたち、高齢化が深刻な問題になっています。
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kakiten
at 2007-05-16 11:18
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ヤナイさん>そうですね。子供の声がなくなったと後藤さんもおっしゃって
ました。絵画教室もかっては子供が100人くらい来たって。ですから 近年という言い方は江別駅前との対比で街の構造的差異を云った積り です。誤解を招くようでしたら訂正します。
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ねむいヤナイ@北海道美術ネット
at 2007-05-17 00:42
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いえいえ、訂正なんて。
わたしも、札幌オリンピックよりあとのことをすべて「近年」でまるめてしまい、若い人からおどろかれることがありますから(笑)。 |
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