最終日佐藤歌織さんのピアノソロライブもあって和やかな雰囲気のうちに福井優
子展が終る。2階吹き抜けの周囲に四角いキヤンドルを置き火を灯した。すると会
場が一層立体的になり上の空間と下の空間が一体化してくる。最後に会場が完
成した気がする。演奏の最後に2階に上がって佐藤さんがオカリナを吹いていた。
音がよく響いた。福井さんは次回「蒼」をテーマの冬の作品展に繋がる春の第一
陣を終えた性か、本人はすつかりリラックスして吹き抜けの床に座り足をぶらぶら
させて演奏に聴き入っていた。外にも灯したキヤンドルの光がゆらゆらして会場の
内と外をシヨパンのノクターンの曲とともに青い空気の中を音と光が夜を繋いで静
かに更けていった。翌日休廊日有本ゆかりさんが個展前に作品を見て欲しいとい
うのでギヤラリーに出る。自然の木や草を色彩につかって描かれた作品でその淡
い色のバリエーシヨンが精霊のような不思議な世界を顕していた。明日から約1ヶ
月インドへ出かけると言う。その前に作品を見てもらい会期を決めたかったと言う。
落款に使う判も酒井博史さんに注文していて彼にも見てもらいたいという事で酒井
さんも程なく判を持ってやって来た。石と水牛の骨の判でこれを見た有本さんはす
っかり気に入ったようでご機嫌だった。6月初旬に個展の会期を決めその時作品に
落款を押そうかと言う。酒井さんにも手伝ってもらいふたりの共同作業がひとつの
コラボレーシヨンにも繋がる予感がする。酒井さんの唄のフアンでもある有本さん
とまた何かがきっと繋がっていくだろう。旧曙小学校が3月一杯で完全に廃止とな
りそこに情熱を注いだ酒井さんの心の空白をあるいは埋める何かがまた生まれる
かも知れない。先天性アトピーを患っていた有本さんは薬に頼る療法をすべて捨
て玄米を主とする食事療法に切り替え見事に身体の改造に成功し今意欲的に自
分の生き方を切り開こうとしている。今度のインド行きもその顕われでその後個展
を開きさらなる人生の展開を試みようとしているのだ。自分の生まれ育った場への
深い想いから母校でもある旧曙小学校への新たな地域への拠点造りに邁進し挫
折した酒井さんの喪失感と有本さんの復活へのエネルギーがどこかでリンクして
新たな命の場をここで再生できればいいなあと私は勝手に思うのだった。