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テンポラリー通信

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2006年 11月 06日

さようならと総括ー冬のいのり(13)

暖かい雨が降っている。夏の終わりが残っている。冬の始まりと夏の終わりが行
き来している。さようならと総括。総括の時間が長いなあ。紅葉が雨に濡れて綺麗
だ。何の変哲もなかった木が凄く綺麗だ。歩いて見た途中の一本の木。円形に地
面の落ち葉を従えてそこだけがまあるく天地を繋いで一本の世界があった。命、革
(あらた)める時間。命、燃える個展の時間がある。雨が色彩を磨く。曇天の灰色の
空気が色彩を深くする。雨が音を吸う。一本の木の自然は自死も美だ。葉という衣
の解体、その死も美である。それは命の充実があるからだ。人間や動物にはそん
な死があるのだろうか。さようならと総括。生きている事の親しい曖昧。その曖昧さ
に死は容赦なく結界を轢く。曖昧なる生は一瞬息を止めうろたえるのだ。セキをした
りタバコを吸ったりアタマを掻いたり意味のないことを繰り返すのだ。でもそんな事
が90%を占めるのが掛け替えのない生の時間だ。一本の木と同じようにいつも紅
葉の美学にはいない。何の変哲もない姿をしている。だから死者は死の特権で生
者を責めるな。君たちは死の象嵌で紅葉の美学の内に居るのだから。さようならと
曖昧なまま総括。そして生きていく誇りにおいて、さらばと総括する。もう生きている
時の親しい曖昧さは捨てるよ。未練に棹さすさようならはもう言わない。時々一枚
のCDを聞くようにこの生きている曖昧な時間のなかで君の人生という曲を聞かせ
てくれ。そして君たちの人生はひとつの作品だったよと、時に確かめさせてくれ。

 初日を終えて、ホッとしている。

 書かなければならなかった多くの暗い話しを、
 もう書かなくてもいいのかも知れない。

 必要の無い小細工はいらない。

 美しい瞬間は、ゆっくりとだが、確実に到来する。

 (muraguishi・blog・July18・2006「展覧会」)


 

by kakiten | 2006-11-06 12:09 | Comments(0)


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