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テンポラリー通信

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2006年 01月 11日

白く、透明な光溢れる世界だー高臣大介ガラス展

吊り下げられた透明なガラスが350本ほど窓際に氷柱のように、そして房のように
束ねられてシャンデリアのように天井からぶら下っている。総数で700近いガラス
が様々な形で上に下に並んでいる。透明でありながらほとばしる熱気がそこには
渦巻いていて、無彩色の内側に無数の色が犇めいている。もしひとたび色を投げ
込めば、キラキラと色彩が結晶しスパークするかのようだ。高臣大介のこの展覧
に賭ける情熱そのもののような個展である。製作中助手の人がフラフラになり
点滴で凌いだと聞いた。初めてする今回のオープニングパーテイーは、作品同様
熱気の渦となった。最初に太田ヒロさんのライブがあり、それから酒井博史さんの
飛び入りのギターと歌あり、一番最後は碇氏のトランペットのソロとなった。この間
人が3度ほど群れで集まってきた。そして自然に歌が楽器の演奏が生れた。
渦が固まりほぐれそしてまた新しい渦となった。いい展覧会の時はいつもそうだ。
固まりが固定しない。自由な渦となる。人が人に逢う、どんどん新しい輪となる。
初対面なのに、初対面ではなくなる。作家の人と作品がそうさせる。自然にひとが
ひとを開くのだ。ここの最後の展覧会なあ~んていう感傷はどこにも無かった。
軽く私に問い掛けても、今のこの時間の熱気にすぐに乾いて消えてしまった。
みんな黙って分かっていた。そのことが何よりの応えだった。閉じる精神(こころ
)はないのだ。みんな開いていた。それが、高臣大介展であり私の気持ちでも
あった。そして、忘れないだろう。漆喰の白い壁に映る透明なガラスの影と
、人の熱い渦巻き、声、それらがひとつに揺らいでいたその夜のひと時を。

晴れた夕刻僅かな時間に、外の光と内の明かりが同じ光度になる時がある。
その時光は一体になって、内と外を透明な空気で繋ぐ。青味を帯びた光が
内と外を結び柔らかな透明な時だ。ガラスはそんな時間によく似合う。
きっと人と人の間にもそんな時間がある。心の透明な運河、心の船が走る。
高臣大介展の初日は、作品を通してそうした透明な時間をもって始まった。


by kakiten | 2006-01-11 16:15 | Comments(0)


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