テンポラリー通信

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2006年 09月 05日

ジンギスカン鍋の火ー秋のはなし(5)

3日の日曜日夕方から隣のテーラーさん岩澤ご夫妻の呼掛けで村岸さんを偲ぼ
うと外の駐車場脇でジンギスカンが始った。近くの床屋さんも来た。岩澤さんとふ
たり白樺を抱いて耳を当て川の音を聞いている写真が村岸さんのホームページ
に残っている。酒井博史さん、河田雅文さんも来てささやかな人数だったが心の
篭もった宴が始った。昨日山口文庫の小山玲子さんが届けてくれたお花と森さん
の撮った多重露光の村岸さんの写真を近くに置いた。5月にここに引っ越してきて
まだ三ヶ月になるかどうかだったがその間会った何人かのひとりの村岸さんをこう
して悼む集まりがぽっとできるのも不思議といえば不思議な事だった。なにも大向
うを意識したセレモニーの要素は微塵も無い集まりだ。作品と人そこで触れた人の
世界。個から発して他者と繋がった思い出。それぞれの村岸宏昭。岩澤さんの奥
さん雅子さんの話が心に残った。仮オープンニングの五月、酒井さんのてん刻ラ
イブの六月。その時にお蕎麦や焼きそばを作って一番最後に全部平らげてくれた
村岸さんの顔が忘れられないと言う。あの時の顔がどうしても彼で白樺と家紋の重
なった写真の横顔は自分のイメージにある村岸さんではないと言うのだ。何度も言
った。普段は少し奥に引いて澄ましている控えめな印象が多い。滅多に見れない
が確かにお皿を片手に掻き食っている素顔の素直な22歳の顔がその時あったの
だろう。その村岸さんを岩澤さんの奥さんは忘れられなく可愛いと大事に想ってくれ
ていたのだった。ご主人の岩澤さんは男だけにそんなことはない、この写真は村岸
君だと言って何度も写真を手にとって奥さんの話を遮ったが最後はおとなしく奥さ
んの話を聞いていた。どこか透明な柱のように立ち気配を消すような所があったが
ちゃんと居た、いつのまにか最後には居た。岩澤さんの奥さんが記憶する彼はそ
の年齢相応に”居た村岸”さんだったのだろう。川や木の翳に隠れて澄ましても
もう見抜かれているぜ!村岸クン!岩澤さんが写真を宙に翳して誰に言うともなく
呟くように言った。<村岸君、見てるかなあ。きっと来てるよなあ>星も見えない夜
だったが近所の人や友人もふっと集まったそんな夜にジンギスカン鍋の炭火がい
つまでも赤かったな。
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by kakiten | 2006-09-05 13:37 | Comments(0)


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