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テンポラリー通信

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2005年 11月 26日

及川恒平さんの<北>

フオーク歌手としてすでに知る人ぞ知る数々のヒットソングをとばしている及川恒平
さんが来た。今年の3月「歌と唄」をテーマに現代詩や現代短歌を、自らの声で唄
にする試みだった。普段活字で目で見ている詩や短歌が、声に置き換えられると
それはまた別の世界を形成する。及川さんの声は、澄んで暖かく、北の空を其処
に秘めていると思われた。例えば井上陽水が<氷の世界>と歌ってもそこに北の
氷は感じられない。彼は九州の出身で同じ澄んだ声でも及川さんとは違う。及川さ
んが極端な話傘と声にすれば、もう其処には<北>の光と空気が漂ってくる。3月
を皮切りに、6月、10月と立て続けに今年はもう3回カフエスペースとテンポラリー
スペースでコンサートを開いたが、美唄生れの釧路育ちの彼にとってこの半年は、
自らの原点<北>の確認の為の行脚でもあったように思われる。6月に出会った
札幌在住の優れた歌人糸田ともよさんとの出会いによって新たな及川ワールドが
現出しつつある。歌は唄によって開かれ、唄は歌によって開かれつつある。声とい
うものは、不思議なその直接性によって言葉を蘇らせ、解き放つ。2人の分野は
違う表現者同士の濃く深い友情は何よりの豊かさを、そのステージにもたらしてい
た。ライブとは、そうした掛け替えのない時間の共有を指すのではないだろうか。
聞く者、立ち会う人も含めて、そうした時間の生れる固有の場、空間そして人それ
は自然界の荒磯や渚、森や草原、川や澱み、渓谷と同じようにそこから立ち上っ
てくる自立した掛け替えのないものと思われる。及川さんが札幌で出会ったもの
はきっと、遠い<北>の自らの生れた空気や風の記憶、磯や川や山の保つ呼吸
だったのかも知れない。護岸化し直線化した海や川、都市や道路ではなく、記憶
の底に種子のようにアンダーマインされ、侵食していた及川恒平の<北>として。

by kakiten | 2005-11-26 14:28 | Comments(2)
Commented by sichihuku at 2005-11-27 02:28
私は色数を多く使った絵を描くけれど、生まれ育った場所は寂れた田舎ど真ん中。
冬になると閉ざされるように降り積もる雪の中で生活をするのですが、
そういった環境も自分の中に流れる「血」になっているのではないだろうかと最近考えたりします。
雪も日に照らされてピカピカ光ったり、黄金色になったり
薄いブルーや夕焼けを映し出したりしますものね。
及川さんと糸田さんの歌・唄の融合のお話、いいなぁと思います。
例えば街でよく見る二人展やグループ展などをみるといつも首をかしげてしまうのです。
違うものを持った物同士が何かひとつのことをする場合、
やはり共鳴させて一つの空間をつくるからこそ。
ハイレベルな話になると、土地や風土から個人の感性と繋がって広がって、
お互いの時間を共有する事なのでしょうね。
素晴らしかったんだろうな、及川さんのライブ。聴きたかったな。
Commented by kakiten at 2005-11-27 10:12 x
まだ行間の取り方、文章の推敲の余裕がありませんね。
書いて即送信なので読み返すと欠点が目につきます。28日夕及川さん
来廊今回内輪でライブあるかもしれません。
今日は小川智彦さん展示撮影です。環境アートの作家で、現在モエレ沼
イサムノグチ公園に勤務。テンポラリースペースでは過去3回ほど発表
しています。


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