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テンポラリー通信

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2017年 08月 10日

路傍の泉のようにー緑陰(12)

熱気と湿度の高さで、少し体力が落ちている。
血圧が低めでふらついた。
週末は特に週3日の透析治療の疲れが溜まる。
そんな週末遅れてギャラリーに着くと、ひとりの
青年がシュッターの前にいる。
中嶋幸治さんだ。
随分待ったよ~と第一声。
すまん、スマン・・・と謝った。
シャッターを開け展示の看板を出し、久し振りの
話を聞く。
北大総合博物館で展示の吉増剛造展を見て今日は
なんとしてもテンポラリーへ寄ろうと思って来た
という。
そういえば君のデザインした吉増展のフライヤーも
展示されていたでしょう、と言うと嬉しそうに頷いた。
4本の映像上映、その他に「怪物君」草稿「石狩シーツ」
草稿、ここでの2011年から毎年のフライヤー資料も
展示されているのだ。
津軽出身の彼は柔らかな外見に似ず、根は素朴で頑固な
津軽人である。
今年春、製本という形でひとりの写真家を本という作品
にした展示即売を2日間開いた。
人の目の前で製本を続け、その本を手にした人が購入する
という一種のインスタレーションである。
売価は3千円と昨今では本としては高価なものだったが、
完売し、予約も含めて百冊を超えるものだった。
辛抱強く手仕事の東北人らしい、良い仕事だった。
吉増さんの話、個人的な最近の生活の話などを聞いてると、
そこへ大丸「水に咲く」高臣大介展で挿花の手直しを終え
た村上仁美さんが来た。
そして写真家の竹本英樹さんも来る。
なにかこれまでの吉増展、今回の北大総合博物館の吉増展
のスタッフが揃ってきた。
竹本、村上さんは今回展示の主たる映像、石狩河口での
「石狩シーツ」吉増朗読シーンに鈴木余位さん撮影助手
として自らもカメラを回していたのだ。
当然3人の話は今回の吉増展を巡り弾んだ。
そうこうしていると、電話が鳴り、話題の本人吉増さん
からの声だった。
空港からで、これから東京へ帰るところという。
みんな関係者が来てるから替わりましょうか、と聞くと
先に用件といって、今年11月から始まる足利市立美術
館の吉増展「涯(ハ)テノ詩宴」の最終日にゲストで
来て欲しい、対話が企画されている、と言う。
今年末から来年にかけて、栃木県足利市、沖縄県立美術館、
東京松涛美術館等が予定されているのは聞いていた。
その一連の展示場所の最初は、映像鈴木余位さんの故郷
栃木県である。
これも不思議な縁と思えた。
ただ私は治療療養中の拘束がある。
昨年の東京国立近代美術館へも、悪友曰く・・死にそうな
顔をして・・いたそうだ。
ましてさらに対話となると、自信はない。
しかしこうして吉増さん本人から依頼されれば、出来得る
限りの事はしなればならない。
取り敢えずお受けし、他の人たちに順番に替わった。
なにかみんな嬉しそうで、楽しそうだった。
電話の向こうの吉増さんもそうだっただろう。
1994年「石狩河口/坐ル」の頃の孤独な個の追求
から生まれた長編詩「石狩シーツ」の時。
そして2011年3・11以降に始まった「石狩河口/
坐ル ふたたび」の時。
その節目ともいえる今回の石狩河口再訪・朗読撮影。
このふたつの間には、人という関係性が大きく変化し
個から<con>とも言える、<共に>という邂逅が
湧くように生まれている気がする。

北大総合博物館の在るかっての地形・・・
野傍の泉池(ヌプサムメム)のような時間だった。

*「大野一雄の記憶ー公演ポスターを主に」ー8月8日(火)ー27日(日)
 am11時ーpm4時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
 

by kakiten | 2017-08-10 18:32 | Comments(0)


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