2017年 04月 20日

札幌モダニズム{Ⅲ)ー暗渠(10)

薩川先生の資料を見ていて、色んな事が想い出される。
几帳面な文字でびっしりと書かれた葉書・手紙の束。
そして地名の考察の原稿類。
特に地名の考察には自らが暮らす場所への深い関心が
土地に根を下ろすようにその眼差しが届いている。
手元にあったのは「篠路考」「烈々布考」「礼文華考」
「オシャマンベ考」の4本だ。
「篠路考」と「烈々布考」は札幌の東北部に残る地名で、
「礼文華考」と「オシャマンベ考」は晩年過ごした
道南の長万部地域の地名である。
化学の教師職を生業とし、現代詩の書き手でもあった
薩川先生のモダニズムのもうひとつの営みが見える。
それは生きている場という土地への眼差しだ。
晩年過ごした長万部では郷土史家として知られていた
と聞く。
戴いた4本の地名考を読み返しながら、その分析力に
化学者としての側面を、アイヌ語を媒介とする言葉へ
の深い関心に詩人としての側面を両方感じながら、なお
かつ、その近代思考のモダニズムを今生きている土地に
根差そうと意思する深い思いも同時に感じていた。
ススキノ界隈で生まれ牛乳配達をしながら苦学し、化学
を専攻し詩人ともなった人の先鋭なモダニズムの根を
最後は自分の生きる土地、札幌と長万部の地に根付かせ
るように地名への想像力と分析が赴いていたような気が
するのだ。

八木保次・伸子展の二日目に届いた薩川先生の訃報。
やっちゃん、まっちゃんと呼び合っていたふたりのモダ
ーンボーイ。
ひとりは地名考という形で故郷の足元に言葉の根を張ろ
うとし、ひとりは故郷の光彩を絵画に根付かせようとした。
ともに私達が真摯に受け継がなければならない、真のモダ
ニズムの系譜・財産であると思う。

*「彩」八木保次・伸子展ー4月23日(日)まで。
 am11時ーpm7時:都合により金曜日午後3時閉廊。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月9日ー28日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2017-04-20 16:18 | Comments(0)


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