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2017年 03月 12日

山田航のモノローグ紀行ー湿地帯(20)

隔週で道新に連載されている山田航の短歌と
エッセイ「モノローグ紀行」が百回を迎えた。
札幌を主に色んな場所を廻りその場から一首
の短歌を創り場所の時空を文に記す。
道ひとつ、坂一つ、建物一つにも時間と歴史
が潜んでいる。
過去の時空が現代に甦り、今を撃つ。
札幌のような歴史の浅い筈の都市にも、この
百年の凝縮した近代の光源がある。
若い世代に属する山田航の目は、そんな地と
人間の根のような結びつきを鋭く掘り返し表現
してきた。
新しい筈の物が直ぐに古くなり、様々な処でスク
ラップアンドビルドが進む時代に、彼の継続する
作業は非常に貴重な仕事と思う。
カルチャーの原義「耕地」そのもののこの連載
は、同時にラデイカルな近代への問いかけであり、
今を撃つ先鋭な楔(くさび)のような批評でも
あると思われる。
<住>も<業>も<道>もすべてをパック化する
都市化が進むこの街で、場の時空は希薄化し人も
建物も道もまた希薄になる。
そして生まれた薄い時空間は、<移る>速さが
支配的になり、根を喪った難民構造に浮遊する。
それは札幌だけの事情ではない。
3・11以降に露呈したこの構造は、他の都市・
町・村にも及んでいる現実なのだ。

6年目を迎えた3・11フクシマの特集番組で
かっての福島産のお国自慢が披瀝されていた。
農産物・銘酒そして首都圏への大供給電力。
都市を支えるエネルギー源・電気の産地として
誇らかにその存在が語られていた。
銘酒・優れた農作物・お米・果実を育んだ産地。
その産地としての風土は、大都市圏に送る電気
を産む原子力発電所放射能汚染により深い傷
を負ったのだ。
産地という根が空洞化する危機を都市化という
怪物が地域まで包含して進んでいる象徴と思う。

山田航の百回を迎えた仕事の意味は、そうした現代
に立ち向かう蟻の1穴として評価されるべきだ。

*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月初旬~

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2017-03-12 18:20 | Comments(0)


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