一冊の本が出来てゆく。
中嶋さんが一冊ずつ本の背を糸綴じしている。
その本に特集されているメタ佐藤さんの写真作品。
4っのシリーズ代表作が4点北壁に飾られ、正面
壁には本の内容がゲラ風に大きく2枚の紙に写さ
れ貼られている。
そこにふたりの折々のメモが寄せ書きのように
書かれている。
会場南側では中嶋さんが黙々と本の制作を進めて
いて、会場中央に製本された本が積まれている。
制作と同時進行の初日の風景だ。
本の出来映えが素晴らしい。
メタ佐藤さんの作品が包み直され、メタ佐藤さん
の作品が本を包み返している。
製本と中身は包み包まれる美しい関係にある。
製本された本も作品なら、本に抱かれた作品も
作品である。
こんな美しい関係がライブで会場がある。
そんな本との関係を経験する場が今まであっただろうか。
当事者のふたりがそこに居て、来た人は制作現場と
出来上がるものとを同時に立ち会うのだから。
2日間の短いこの時間は非常に濃い豊かな時空間と
なっている。
本という包むもの、作品という包まれるもの。
ここでは包み、包まれる関係が一体となってもう
ひとつの豊かな作品世界を生み出している。
餡と皮のような内・外の関係を、製本という作業を
通して改めて実感させてくれる希少な<行為>展と思う。
*中嶋幸治「分母第二号販売展・特集メタ佐藤ー包み直される風景
と呼び水」ー3月4日(土)5日(日)am11時ーpm7時
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月初旬~予定。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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