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テンポラリー通信

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2016年 09月 27日

及川恒平&山田航ー撓む指(33)

このふたりの共演はもう5,6回にもなる。
世代もジャンルも違うふたりが、さらにその関係性
を深めている感のする今回のライブだった。
新しい短歌の旗手として、2012年処女作「さよなら・
バグチルドレン」で華々しくデビューした山田航。
多くの賞を受賞しペットボトル世代の代表として
世に喧伝された。
一方及川恒平はフォークソングの草分けのひとり
として「面影橋」のヒットや六文銭で小室等らと
長年活躍してきたフォーク歌手である。
北海道で生まれ、釧路の幣舞橋は父上の設計という。
フォーク全盛時代、メッセージ性の強い反戦や生活感
の濃い唄がフォークの主流だった。
その中で北方の透明な抒情を保った及川恒平の歌は。
同じフォークの仲間から、お前の歌はフォークじゃない
とまで言われたと聞く。
及川はフォークを一時辞め、テニスコーチをしていた
という。
しかし1990年代に再びフォークの世界に戻ってくる。
その時出したのがCD「みどりの蝉」だ。
北の自然に根差した透明で澄んだ曲・声・詩が溢れている
名作である。
ほとんど二季に近い北の風土。
その冬・春ー夏・秋が、切ないまでの透明な歌声で綴られて
心撃つ。
及川恒平は自然・風土を感性のトニカとして表現する歌い手
であると思う。

一方の山田航は第一歌集の標題のように、社会の外れ・エッジ
に感性の基準を置いて短歌を創り、読み手に語りかける。
彼は時代・社会に根を挿して歌う。

自然と社会とは、本来相対峙する存在だ。
原始林、大海原のまん中で人間は生きてはいけない。
人類は自然を開墾し人間の生きる環境を造ってきた。
自然と人間が共存する環境、自然と人間の調和できる緩衝地帯
である。
そこに生まれた文化・生活を人は風土と呼び、故里・故郷と呼
んだのではないだろうか。
その風土・故郷が摩滅し、自然と人間社会が剥き出しで向き合
っている。
そうした現代の時代状況の中で、及川恒平の自然。風土に根付く
北の感性と、山田航の社会的エッジ・北の感性とが、新たな界
(さかい)、新たな風土という、開墾の鍬を降ろそうとしている。

社会的北方感性と自然的北方感性が歌と唄を通して、中央南方感性
に対峙し、独自の風土・文化の根を耕す。
そんな期待を保って、これからもふたりの競演を見たいと思う。

*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー10月2日まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 :参加作家 森本めぐみ(美術)・野上裕之(彫刻)・佐々木恒雄(絵画)
 ・野崎翼(折り紙)・成清祐太(映像)・森美千代(書)・酒井博史(篆刻)
・竹本英樹(写真)・久野志乃(絵画)。
 :ライブ 及川恒平×山田航「橋」ー9月25日。
*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日ー30日
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-09-27 13:32 | Comments(0)


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