テンポラリー通信

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2016年 09月 24日

選択にドラマがあるー撓む指(31)

今回それぞれの作家が選んだ一首には、それぞれの人生の
ドラマが潜んでいる。

<あをきまなざしよ散るな>森美千代
<みんなあれが底なき渦とわかってゐたのに>竹本英樹
<水張田の面を輝きはなだれゆき>成清祐太
<運転手フロムフイリピン未明から未明へ>森本めぐみ
<ぼくたちは始められないから終われない>久野志乃
<たそがれてあくびをするな顎を外すぞ>野上裕之
<・・・げんきでゐてほしいひと>野崎翼
<濾過されてゆくんだ僕ら>酒井博史
<ガソリンはタンク内部にささざなみを>佐々木恒雄

それぞれの作品のキーワードと思える一行を選んでみた。
この中で本人以外が選んだと聞く一首の作品がある。
竹本英樹さんの卒業証書写真と一首である。
愛娘のYちゃんが撰び指定したと聞いた。
竹本さんは今回迷ったのだろう。
自分自身で選べず娘さんに相談し、娘さんはこの一首を撰び
自らの卒業証書を撮影に指定したと聞く。
普段見る竹本英樹の写真とは違うくっきりした明解な写真
である。
私は以前娘さんが足を痛め車椅子に乗っている写真を思い
出していた。
ひょっとすると一生足が治らないかも知れない。
そんな時の写真だ。
パパ、と見上げる娘さんの眼。
その一瞬を愛おしさを籠めて何の衒いもなく、ばっちりと
その姿を撮っていた。
作品写真として多く発表されている竹本作品は、朦朧とした
輪郭の希薄な写真である。
この時の車椅子の写真は違った。
こういう剛直な一面が竹本さんにはある。
今回の写真もそうした一面が溢れている。
娘に相談し、娘の意向をすべて受け入れている。
これもひとつのドラマであると私は思う。
反抗期を見詰め、客観視した高校一年生の娘の心を受け
入れ、作品化したふたりのドラマだ。

今回の展示作品には、見えない日常のドラマが作品と
その背後に素直に在る。

*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー10月2日(日)まで。 
 月曜定休:am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2016-09-24 18:22 | Comments(0)


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