山田航の短歌には礫弾のような一行が秘められている。
地下のマグマのようなその言葉が、時として礫弾のよう
に31文字のカプセルから吹き出す。
今回の出品者はみなその言葉の礫弾を共有し、自らも
発射している。
昨日私が通院で出た痕、遅れていた最後の作品酒井博史さん
の展示があった。
選んだ一首は
濾過されてゆくんだ僕ら目に見えぬ弾に全身射抜かれながら
和紙に大小18個の篆刻でこの短歌を印字し表現している。
文字が文字として固有の彫りで躍り、<濾過>・<僕ら>・
<全身>等と紙に印字され額装し飾られている。
文字一字一字が彫刻されて、この短歌の保つ礫弾の広がり
を伝えてくれる。
<濾過されてゆくんだ僕ら>
この一行が山田航の喉奥の声の礫弾だろう。
その一行に酒井博史の活字職人・判子彫りの日常現実が響き
作品となって弾球を返しているのだ。
今回の参加者はみんな、いわゆるアーチストで生計を営んで
いる訳ではない。
生業を持ち、家庭があり、その傍ら絵画や彫刻等の表現を
続けている人たちである。
その日常の喉奥に表現者としてコアとなる声が潜んでいる。
その声が山田航の叫びのように秘められた礫弾の言葉に応
え、作品となっている。
普段露わには顕れない深い日常皮膚下の亀裂のような声。
その声は、山田航の作品から一首を選んだそれぞれの作家の
作品に触れ、私たちの内なる喉奥の声と響震している。
作品は同時代の深いエレメントとなり、こ~ん、という響き
を発しているのだ。
今回もこの場は、contemporaryの<con>を
響かせてくれた。
とても嬉しい。
*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー9月20日(火)ー10月2日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休。
参加作家 森本めぐみ(美術)・野上裕之(彫刻)・佐々木恒雄(絵画)
・野崎翼(折り紙)・成清祐太(映像)・森美千代(書)・酒井博史(篆刻)
・竹本英樹(写真)・久野志乃(絵画)。
:ライブ 及川恒平×山田航「橋」ー9月25日(日)午後5時~予約2500円
*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日ー30日
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日
*森本めぐみ展ー予定12月下旬ー1月初旬
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503