網走の佐々木恒雄さんの作品が届く。
小品ながら力のこもった夜の海の絵。
夜空に月、そして海に浮かぶ小舟にふたりの人影。
漁をする姿だろうか。
選んだ一首は
ガソリンはタンク内部にさざなみをつくり僕らは海を知らない
現代社会のエネルギー構造と対比するように、自らの職場・海の
情景を描いている。
その画面半分以上を占める海のさざなみが美しい。
そこにこの一首の風景と対峙する佐々木恒雄の現代への眼が
感じられる。
ガソリンまみれの都市構造タンク内のさざなみと向き合う眼だ。
昨日私が通院で留守した後、山田さんたちが展示を進めていたが、
その時写真家の竹本英樹さんが来て、作品を展示したようだ。
作品は愛嬢の小学校卒業証書を写したものだ。
名前は自らが消したという。
選んだ一首は
校庭に巻くつむじ風みんなあれが底なき渦とわかってゐたのに
結局竹本さんの一番コアな部分が出たなあ。
一人娘の成長を見詰める親の眼。
生活の根である家族への視線。
写真家としての写真とはまたひと味違う真っ直ぐで剛直な写し方だ。
竹本さんの普段露わには見せない根の部分だ。
成清祐太さんが展示の仕上げに入っている。
白い大きなパネルに大画面を投影し、そのパネルのまん中を切り抜き
そこにモニターを嵌め込み同じ画面が映し出される。
手で描いた絵を一枚づつ撮影し動画として構成するこの作品は、札幌
移住後最初の労作である、
選んだ一首は
水張田の面を輝きはなだれゆき快速列車は空港へ向かふ
水田に水を張る古代からの稲作の知恵。
その水面を<なだれゆき>快速列車と飛行機の影が過ぎる。
成清さんの画面はこの水面をイメージして現代と古代を繋いでいる
かのようだ。
ここにもこの一首に触発された作者の現代への眼がある。
水張田の水面はそのまま彼の描く画面のイメージともいえそうだ。
九州筑後で生まれ東京多摩美で学び、札幌に移住してきた成清さん
の流浪の人生も反映しているのかも知れない。
あと2点作品が午後3時以降届く。
酒井君と久野さんである。
出産して間もない久野志乃さんは、必死で制作に集中しているようだ。
生活の日常の現実の中で生まれるもうひとつの命。
作品とはそうした切実で真摯な生の産物なのだ。
今回の出品作をみてしみじみそう思っている。
*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー9月20日(火)ー10月2日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休・
:参加作家 森本めぐみ(美術)・野上裕之(彫刻)・佐々木恒雄(絵画)
・野崎翼(折り紙)・成清祐太(映像)・森美千代(書)・酒井博史(篆刻)
・竹本英樹(写真)・久野志乃(絵画)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503
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