露出した指先に寒気が凍みる。
悴んで鈍い痛み。
水道は凍っている。
止水のバルブも回らない。
ポットに入れておいた水を沸かす。
そのお湯をバルブに注ぎ緩める。
ストーブを点火し部屋を暖め、トイレは電気ストーブ
を点け排水槽の氷を溶かす。
それら一連の作業を終えて当たり前の日常が戻る。
多少気温は上がったが、室内は依然として冷え込む
毎日だ。
展示の無い日の日常風景。
合間を見て夕方からの水・金の通院とその前の時間に
寒さへの対応が日常だ。
先日、勤務先休日の村上仁美さんが最後の片づけをする。
作品に使ったコウゾの樹皮を束ね、やつと終ったわと言う。
大木のように立っていた樹皮は束ねられると、思いの外
小さくなる。
幹無く根も無く枝も無いのに、コウゾの皮は樹皮の位置に
構成されると、そこに木の存在感が生まれていた。
外され束ねられると、皮は皮だけの存在となり、小さく
薄い存在となる。
たまたまTVでコウゾの皮から和紙を創る東秩父の村の
映像を見たが、自然のコウゾの木の形は正しく展示して
いた形態と同じだった。
樹皮は皮膚のように自然にそうして立っていたのだろう。
吉増さんが、吉本隆明の追悼で語っていた、”没後の恩人”
という言葉をふっと思い出している。
吉本隆明の26歳~27歳に書かれた「日時計詩篇」を
筆耕し続けている「怪物君」草稿を見事にあしらいコウゾ
の樹皮を纏い作品化した村上作品の芯には、この追悼と再生
への深い想いが宿っていた気がする。
山田航さんの”ハイウエー”を連呼する詩の絶叫も見事だった。
吹き抜け階上から録音された朗読と唱和し競う階下の生の朗唱。
最終週の3日間幾度連呼した事か。
その度に朗唱は巧みとなり磨かれた。
その内のひとつを写真家の竹本氏が動画に収め、作業を終えた
村上さんに見せてくれた。
初めて見、聞いた村上さんは、感動している。
年末年始の仕事多忙で吉増さんとも会えず今回の山田さんの朗唱
も初めて聞いたのだ。
鈴木余位さんは、オープニングと最終日片付け後山田さんの朗誦
は撮影もしていたから、これで初めて3人の今回の作品が3人に
共有された事となる。
竹本さんの山田航動画はその内Uチューブで公開される事だろう。
「怪物君 歌垣」展後日。
一度倒され新たに完成したコウゾの樹皮の作品は見ずに帰京した
吉増さんからFAX通信来る。
1/9ケイオーの三田にて仁美さんのお心の姿の天に舞うよう
なミゴトな空気を文さまのケータイでのぞいていました・・・
「歌垣」の命でしたね。
冷えこんだ冬の空気が支配する日常の底で、いまも熱い底流が
伏流水のように流れていた。
その底流はまた泉となって、26日から始まる高臣大介展で
熱く溢れ出るだろう。
吉増さん、鈴木余位さん、村上仁美さん、山田航さん、そして
品切れともなった名作フライヤーを制作してくれた中嶋幸治さん、
酒井博史さん、要所要所的確な助言で会場構成を5年前の展示か
ら支えてくれた河田雅文さん、本当にありがとう御座いました。
*高臣大介ガラス展「みつめあう。」-1月26日(火)-31日(日)
前期器を中心に。2月2日(火)-7日(日)後期インスタレーション
を主に。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503