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テンポラリー通信

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2015年 08月 10日

伏流水・泉ー窓(20)

今朝パソコン開いて最初に目に飛び込んできたメール。
メタ佐藤さんの東川写真公募展でグランプリ受賞のメールだった。
昨年10月のテンポラリーでの個展「光景」を軸に、その後の
展開が受賞対象となったという。
昨年の個展は従来のメタ佐藤さんの作品歴の中で画期的な
転換を見せた作品展だった。
かっては風景をミクロ・マクロに非常に計算された構成で
凝視する作品が多かったが、昨年10月発表の「光景」展に
於いては、凝視から眼を上げ対象を受け留め、眼を緊張から
解放する瞼を眼いっぱい開放するような作品だった。
眼の緊張から解放された五体五感全身の触れる風景。
ぎゅっと凝視していた眼が、瞼いっぱいに開いて、風景を
体の芯・根で受け止めている。
「光景」はそんな写真だった。
そこで思い出したのは、同じ写真家のT氏がニューヨークの
地下歩道で経験したという路傍売りの話である。
最初は固い表情で本など読み客の声が掛かるのを待っていた
が、誰も寄らなかった。
そこで本を捨て前を見、目の遇った通行人を意識するようにし
たら、心が通じて作品を手に取り売れるようになったと言う。
人と同じように風景にも、眼のような結晶する一点が在る。
その一点で心が開く回路がある。
全体がそこで開き会話が始まる。
そんな風景の根のような一点を、眼を上げて見た佐藤さんは
「光景」としたのだ。
凝視から解放へ、解放から開放へ。
人も風景の心の根の回路は同じである。
ともに敬愛しあうメタ佐藤さんとT氏が、期せずして本質的に同じ
眼の回路を経験しそれが互いの作品と生き方も変えてゆくのは
不思議だった。
T氏はこの路傍展示体験の後、長年勤めた仕事から独立し写真
を主とする生活へその第一歩を踏み出したのだ。

凝視から根の回路へ。
風景も人も同じ身体を開き、心の掌(てのひら)を差し伸ばしてくる。
伏流水が風景の根のような場処で湧き上る、泉のように・・だ。

*村上仁美・高臣大介展「Water Fall ガラスと花」ー9月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-08-10 12:57 | Comments(0)


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